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イラクが最終的に国連決議を受託したことで、当面の間アメリカによるイラク攻撃は無さそうだ。だからといって絶対にアメリカがイラクを攻撃しないかといえばそうではないだろう。ただ、アメリカには攻撃するにあたり相当の覚悟がいるということが、アメリカ自身に分かってきたのではないか。
イラクが国連の決議を受託したことで、第二ラウンドはイラクの勝利ということに過ぎない。述べるまでも無く第一ラウンドはアメリカが相当脅しをかけ、その効果が出たということだ。
第三ラウンドはイラク・アメリカ双方が、この戦争の無い状況の中で何をそれぞれに自国有利へ導いていくかということになる。イラクはアメリカの後押しと挑発により、イラク国内でうごめき始めるであろう反体制の動きを厳しく監視し、出てくる反体制の芽を早期に摘むことだろう。国内の体制のなかから起こってくる可能性のある、反体制の動きが現在の段階ではサッダームフセイン大統領にとって最も危険なものである。国外の反体制派の怖さはあまり感じていないと思う。
実際に反体制派各派は、もしかして倒されるサッダームフセイン大統領体制後の権力闘争を今のうちから始めており、反サッダームフセイン大統領の統一戦線はなかなか組めそうに無い。例え組んでもそれほどの力にはなるまい。あえてイラク国内への影響力を保持しているグループはといえば、シーア派ぐらいのものだが、これもそう力があるとは思えない。
だからこそシーア派リーダーのハキームはイラクへの攻撃をしないで欲しい、イラクは分裂させないで欲しい、などといった穏健な対応を望んでいるのだ。それではハキームは何をイラク国内で変えさせるというのか。そもそも彼よりも上位にあるマルジャイルアーラーがアメリカによるイラクへの戦争は明確な敵対行為であることから、イラク国民は皆立ち上がって抵抗すべき、というファトワを出している。そのファトワはハキームよりも上位の人物のものであるだけに、ハキームがそれ以上の影響力を発揮するファトワを出せるとは思えない。
イラクを攻撃することになれば、アメリカは当然、南部と北部から攻撃を始めるであろうし、そうなれば一番被害を受けるのはシーア派住民ということになる。そのことはアメリカ側にたってハキームのグル―プが動くことになれば、イラク国内に留まるシーア派の賛同は得られないだろうということだ。
北部のクルドも同様で、現状維持が一番有利なのは誰の眼にもわかろう。国連が直接手渡してくれる金と、密輸の関税、イラク政府からの支給とで３重取りしているのだ。しかも、もし新生イラク政府が誕生しても、クルドが中心の政府が出来る可能性はゼロであり、結局のところマイノリテイの立場に置かれ、場合によってはサッダームフセイン大統領と出来ている妥協も成立しないかもしれないという不安があろう。
戦争になればアメリカが最初に攻撃するのは南部のシーア派地域と、北部のクルド地域に違いは無い。ばかばかしくて本気で戦争などする気になれないということであろう。
結局のところ、アメリカはいろいろなことをいいながらも、イラク国内の体制の中から起こる可能性のある、サッダームフセイン大統領打倒を期待しているということだ。しかし、サッダームフセイン大統領を倒せる立場にいるイラク国内の人物たちは、サッダームフセイン大統領と運命を共有する人たちでもある。
それでも、そのなかから不穏な動きがでてくれば、それはサッダームフセイン大統領も厳しく監視していようから、発覚し、処刑されるということになろう。従って、サッダームフセイン大統領は戦争の無い当分の間、国内の謀反分子の摘発に神経を集中するだろう。
一方、アメリカはイラク国内の体制内革命、クーデターが起こりやすい環境を作っていこうとするだろう。しかしその成功の確率は低いということだ。
イラク周辺のいずれの国も、イラクの中でクーデターが起こることを望んでいまい。サウジアラビアではクーデターが起こり、イラクが民主的な国家などになろうものなら、たちどころに自国内の民主化への動きが活発化し、体制不安になろう。しかも、サウジアラビア政府は、アメリカが現在のような旧態依然の体制を民主的なものに変えたい、と望んでいると考えているから、なんとしても自国内で民主化の動きを起こさせたくない、と望んでいよう。
アメリカがそのような民主化の動きが、サウジアラビア国内で起こった場合、最初のうちは体制支持に回っても、途中から民主化運動の側を支援することになる危険性は高いからだ。
イランも同様に、保守派と改革派の摩擦がどんどん高くなってきている。そうした中では、外部の影響を出来る限り抑えたい、と願っていよう。改革派は別としても、保守派は大嫌いなイラクのサッダームフセイン大統領体制が続いてくれることを今は望んでいよう。
イランもサウジアラビアも共通していることは、イラクのサッダームフセイン大統領体制が倒れイラクの石油がアメリカの手に落ちた時、石油価格はアメリカの意向で決まるということであり、それはイランとサウジアラビアの国家収入が強い影響をアメリカから受けるということであり、自国の経済維持上、且つ又そのことから来る国内の不満解消の上で危険だということだ。
トルコも同様、クルドが国家を持ちうる危険性のある戦争は、起こって欲しくないと願っている。アメリカはモースル、キルクークまでの解放戦争で、トルコを使いたいといいながら、トルコにあたかもその地域を割譲するような発言をしているが、トルコがそれを信じるほど愚かとは思えない。
つまるところ、アメリカが戦争をし、サッダームフセイン大統領を倒すといっても、周辺諸国は何処もそれを望んでいないということだ。せいぜいサッダームフセイン大統領の体制が弱体化し、イラクの戦争能力が低下するように、アメリカやイギリスが空爆を継続してくれるのを望んでいるに過ぎないのではないか。
どうやらその意味では今、新しく始まっている第三ラウンドの勝者は、サッダームフセイン大統領なのかもしれない。
もし、クーデターに類したものがイラクで起こり成功するとすれば、ウダイがソフトクーデターをやるということかもしれない。つまりサッダームフセイン大統領が辞任し彼が後任という形だ。
（中東コンフィデンシャル アメリカとイラクの駆け引き）
http://www.tkfd.or.jp/jp/meast/200211/rf20021116.html
（私の意見）
アメリカ政府は本音としてはイラクを攻撃したくはない。攻撃したくないからこそ北朝鮮を挑発して、核開発やCB兵器の開発を暴露した。アメリカは以前から知っていたにも拘らず、今になって公表した。イラクより北朝鮮のほうが危険な存在であるにも拘らず、イラクを攻撃するのは理由として弱くなる。
イラクを石油のために攻撃するのだろうか。しかしどうやって攻撃するのだろうか。空爆は出来るが地上軍はどうするのか。イランもサウジアラビアも攻撃に反対しており、東西からは攻め込めない。狭い南北から攻め込むにしても補給が難しい。湾岸戦争の時のような正規軍どうしの戦闘とはならず、対ゲリラ戦に引きずり込まれる。
イラク軍は戦闘が不利になればイランやサウジアラビアに逃げ込み、アメリカ軍は勝利なき戦いになるだろう。この事はアメリカの軍部は良くわかっているから攻撃に反対している。アフガニスタンですら北部同盟の協力がありながらいまだに平定できていない。タリバン勢力も再結集されて小さな反撃が行われるようになった。戦闘の長期化はどのような大国でも大きな負担だ。
イラクを軍事的に平定できたとして、どのように民主化するのだろうか。アフガニスタンのカルザイ政権は完全な飾り物だ。周辺諸国からの反発が起こり、とても政権をすえることなど出来るはずがない。日本のマスコミはアメリカやイギリスの通信社の垂れ流し報道に終始しており、専門家や評論家たちもイラク攻撃は時間の問題とばかり言っている。
今はインターネットの時代であり私のような素人でも多方面から情報を集めることが出来る。だからこそ私はイラク攻撃は無いと最初から予測している。アメリカ共和党の保守本流も親アラブであり、イラク攻撃を主張しているのは親イスラエルの一派だ。このような状況ではとてもイラク攻撃できる状況ではない。
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。