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R.クラーク氏 国連安保理への公開書簡
投稿者 ベトナム戦争時代の元米国司法長官:R.クラーク 日時 2003 年 1 月 21 日 23:52:04:

R.クラーク氏 国連安保理への公開書簡本文日本語訳
2002年9月20日

1.ジョージ・ブッシュは、イラク攻撃と政権転換を決意して大統領になった

 ジョージ・ブッシュは、彼の戦争を止められることなく即座に行うため、速やかに行動している。彼は先週金曜日の演説で(訳注:2002年9月13日)、イラクが国連の査察を受け入れるとは信じないと発言した。ブッシュは、イラクが即座に無条件で査察を受け入れると信じるのは「まやかしの希望」であり、国連が行動を起こさないなら、アメリカ単独でも攻撃をすると約束した。ブッシュは、イラクと戦争し、力づくで彼の傀儡を立てイラクを支配させたいという欲望にとりつかれている。国連においてこれまでに行われた最も好戦的な演説(これは国連憲章、法の支配および平和の希求に対する先例のない攻撃だ)の数日後、アメリカは、過去11年言ってきたイラク国内の標的を、毎日不法にイラク領空を侵犯していたアメリカ機への脅威や攻撃に対する報復から別のものに変更すると発表した。アメリカの航空機が1度も攻撃されていないというのに、その脅威がどれだけ深刻なのだろうか。一方、何百ものイラクの人々が、いわゆる「飛行禁止空域」だけでなくバクダッドの市中においても、アメリカのミサイルや爆弾で殺されたのである。今やアメリカは、イラク侵略の準備として、イラク国内の主要な軍事施設を破壊する意向を宣言している。これは明らかな攻撃の約束である。毎日、ジョージ・ブッシュの戦争への猪突猛進に抵抗する勢力を打ち負かす為に、脅迫とプロパガンダが仕掛けられる。もし非暴力の説得工作が成功しなければ、このような戦争への加速は、戦車が走り出すまで止まらないだろう。

2.ジョージ・ブッシュは、終わりなき戦争という無法の世界へと、米国を導き、国連とすべての国を拉致する

 ジョージ・ブッシュは、彼の「テロリズムとの戦い」において、どんな国、組織、人々に対しても、警告なく、自分だけの裁量で、攻撃を仕掛ける権利を主張してきた。彼と彼の政府の高官は、政府による攻撃や人民への抑圧に対して法が課そうとしてきた古くからの制約は、もはや国家安全保障と一致しないと宣言した。テロリズムは危険なのだから、米国は必要に迫られてやむをえず、先制攻撃をかけて外国からのテロ活動の可能性を潰し、外国、米国内をとわず人々に対する恣意的な逮捕、拘留、尋問、管理、処遇を行うのだ彼らは言う。法は公共の安全の敵となった。「必要性とは独裁者の理屈」。「必要性がまともな取り引きをしたためしはない」

 ナチスのゲシュタポ長官だったハインリヒ・ヒムラーの「まず射て、尋ねるのは後。そうすればお前を守ってやろう」という言葉は、ジョージ・ブッシュによって正しさが証明されている。ホルヘ・ルイス・ボルヘスが「ドイツレクイエム」の中で描写したドイツのように、ジョージ・ブッシュは今や、剣への信仰と暴力を全世界に提供している。そしてボルヘスが書いているように、剣への信仰にとって、ドイツが敗れたことなど問題ではないのだ。「大事なのは、暴力が……今や支配するということだ。」。ドイツ人は、二世代にわたってこの信仰を拒んできた。ドイツ人が平和の追求において示した粘り強さは、あらゆる国で、次世代からの尊敬を勝ち得るだろう。

 国連加盟国の国民は、ジョージ・ブッシュのテロリズムとの戦い及びイラク侵略の決意によって、国際法と人権擁護の終焉の危機にさらされている。

 ジョージ・ブッシュが「テロリズムとの戦い」を宣言して以来、他の国々も先制攻撃の権利を主張している。インドとパキスタンは、地球と彼ら自身の国民を、1962年の10月(訳注:キューバ危機)以来のどのときよりも核戦争の危機へと近づけた。これは、アメリカが、一方的な決定にもとづき、国連に諮ることなく、審理もなく、あるいは、攻撃目標はテロリストであって、彼らだけに限定されるのだという主張になんら事実にもとづく明らかな根拠を示さすことなく、テロリストを追跡して殺し、あるいは彼らをかくまう国を攻撃する無制限の権利を主張したことの直接の結果である。

 テロリズムとの戦いにおけるジョージ・ブッシュの力の主張を根拠に、他国を攻撃したり、自国の人々の人権に対する侵害を強めることは、今や多くの国に蔓延しているといっていい。メアリー・ロビンソンは国連人権高等弁務官としての任期終了時の、静かな勇気にみちた演説の中で、アメリカの先制攻撃権と基本的人権保護中止権の主張がもとうとしている「波及効果」について語っている。

 2002年9月11日、アメリカの強力な保護を受けているコロンビア新政権は、「逮捕令状なしに容疑者を逮捕し、諸地区を軍の管理下に置く権限を主張した」。それには「電話の盗聴や、紛争区域への外国人の立ち入り制限を容易にし、・・・治安警察官が疑わしいと思えば、一日中いつでも、人の家やオフィスに、捜査令状なく入ることを許す新たな権限」が含まれる。これら新たな人権侵害は、人口4000万の国に100万の密告者の組織を作る、9月11日以後に立てられた「緊急事態」計画に従ったものなのである。2002年の9月12日のニューヨークタイムズA7面を参照していただきたい。

3.イラクではなく、アメリカこそが国連の独立と目的への最大の脅威である

 イラクは戦争を正当化する脅威だというブッシュ大統領の主張はまやかしである。イラクの軍事力の80%が91年に破壊されたことは国防総省が明らかにしている。大量破壊兵器を作るための材料・設備も、国連の8年以上にわたる査察で90%が破壊された。イラクは、1990年には、近隣諸国に比べて強大だった。今では、弱い国である。イラクで生まれる赤ん坊の4人に1人が、体重2キロに満たず、短命で、病弱で、正常に発育できないことは目に見えている。1989年には、2キロ以下で生まれてくる新生児といえば、20人に1人もいなかった。かりにイラクが平和の脅威になるとしても、それは遠い将来の、他のどんな国や集団に比べても僅かな可能性でしかないので、それに対して暴力的な攻撃を加えることは正当化できない。イラクを攻撃すれば、アメリカとそれを支援した国への報復が、これからの時代には、はるかに多く起ることだろう。
 
 ジョージ・ブッシュはイラクを国連の権威への脅威だと言いふらしているが、アメリカが強制した国連による制裁こそが、イラク国民の死亡率を上昇させつづけているのである。国連制裁によるイラク国民の死亡率は、過去12年にわたり、ジェノサイド級のレベルである。イラクは、自国民へのこんな犯罪をやめてくれるよう、望みのない嘆願をすることしかできない。対イラク制裁において国連のはたす役割は、国連の誠実性と名誉を損ない、汚すものである。それだけに、いま国連がこの戦争に反対することはなおさら重要なのである。

 査察は、制裁を八年も継続する口実として使われ、その間に毎月何千人ものイラクの子供や老人が死んでいった。イラクは、91年に解かれるべきだった犯罪的な制裁の被害者である。9.11のテロの犠牲者1人に対し、500人の割合で、イラクでは人が制裁によって死んできたのだ。
 
 アメリカこそが、国連の権威だけでなく、その独立性や誠実性、有効性への希望までも脅かしている。アメリカは、自分の好きなときに、好きな額だけ国連分担金を払う。加盟国の投票を強制する。事務局の人事を強制する。ユネスコの目的そのものに18年間反対してきた後に、一時的好意を獲得するために復帰する。そして、国連査察団にスパイを送り込む。
 
 アメリカは、核兵器とその拡散を統制する条約を拒絶し、生物兵器協定の施行を可能にする議定書に反対票を投じ、地雷禁止条約を拒否し、国際刑事裁判所の創設を阻止するべく力を尽くし、開設されてからはその骨抜きを図り、国際労働機関(ILO)の子どもに関する協定の成立を阻み、子どもに戦争を行わせることを禁止するのにも反対する。アメリカは、戦争を抑えたり制限する努力、環境を守る努力、貧困を減らし健康を守る努力に、ほとんどすべて反対した。

 ジョージ・ブッシュはイラクが過去22年間に行った二度の侵略を引き合いに出す。アメリカが過去220年に何十ぺんもアフリカ、アジア、ラテンアメリカで他国を侵略、襲撃したこと、ネイティブアメリカンその他の国民からフロリダ、テキサス、アリゾナ、ニューメキシコ、カリフォルニア、プエルトリコなどの土地を力と脅迫によって永久的に取り上げたことを無視している。

 この同じ過去22年間に、アメリカはグレナダ、ニカラグア、リビア、パナマ、ハイチ、ソマリア、スーダン、イラク、ユーゴスラヴィア、アフガニスタンを侵略、攻撃する一方、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、ラテンアメリカで、攻撃と侵略を支援してきた。

 アメリカが、1983年に、1年間の脅迫ののちに小国グレナダを侵略、占領して、何百もの民間人を殺し、小さな精神病院を破壊して、多くの患者を死なせたことを覚えているのは健全なことである。1986年4月のトリポリおよびベンガジの寝静まって無防備な都市に対する不意打ちの攻撃では、アメリカは、何百もの民間人を殺し、外国の大使館4箇所を破損した。それに、1998年8月にはスーダンの首都ハルツームのアル・シファ製薬工場に21発ものトマホーク巡航ミサイルを打ち込み、スーダンの人々が利用できる薬品の製造設備を半分も破壊した。ウガンダとスーダン南部には、何年もの間、スーダン政府と闘う軍事勢力を持っていた。湾岸戦争以来、今週も含めてイラクを何百回も爆撃し、その爆撃機にはなんの負傷も損傷も被らずに、数百人もの人々を殺している。

4.ジョージ・ブッシュはなぜ今イラクを攻撃しなければならないと決めたのか

 米国あるいはその他のどんな国にとっても、イラクが脅威だという合理的根拠はない。イラク攻撃の理由は、ほかに求めなければならない。
 テキサス州知事時代に、ジョージ・ブッシュは、百数十人の死刑囚を処刑させた。これは、米国で1976年に(1967年以後中断されていた)死刑が再導入されて以後、どの知事よりも多い[訳注 1976年に連邦最高裁で死刑が合法とされてから、2000年までに米国で行われた処刑は約600件]。州知事として、未成年者や女性、知的障害者や、「外交関係に関するウィーン条約」の規定(逮捕された場合、自国の外交使節団に通知されなければならない)にもとづく権利を蹂躙された外国人を処刑するのに示したのと同じ熱意を、いま彼は、イラク「体制転換」に示している。米国の連邦最高裁は、精神遅滞者の処刑は、米国憲法に反する残虐で異常な刑罰であると認めている。ジョージ・ブッシュは、同じ価値観と強情さで国連に対しても臨んでいるのだ。
 彼がイラクに戦争をしかける動機としては、健全だった経済と財政黒字を何兆ドルもの赤字に変えてしまった大統領として支持を挽回すること、米国の一部特殊権益層に役立つ新世界秩序という、悪夢になるはずの夢を達成すること、イラクに対するブッシュ家の恨みを晴らすこと、アラブ民族を一国ずつ弱めていくこと、イラスム教国を叩いてイラスム勢力を弱らせること、あるいは中東での米国の支配を強化すること、イラクの石油を支配下に置いて米国の利権を強め、この地域の石油に対する支配をさらに徹底して、石油価格を思い通りにすることなどがあるだろう。これらのどの目的によるにせよ、イラクに対する攻撃は犯罪であり、侵略の定義に関する1974年12月14日の国連総会決議をはじめとする国際条約および国際法の非常に多くに違反しているのである。
 これまでに米国によって行われた体制転換で権力の座に就いた独裁者は枚挙にいとまがないが、イランのシャー・モハメッド・レザ・パーレビ、ザイールのモブツ、チリのピノチェトといったそれら指導者はいずれも、民主的に選出された政府の長に取って代わった人々である。

5.中東における大量破壊兵器の脅威を減少させるための理性的な政策はイスラエルを含むべきである

 攻撃のために米国の敵を選択するという国連または米国の政策は犯罪的であり、憎悪と分離とテロリズムを強めて、戦争につながるだけである。米国がイスラエルに対して与えている援助の国民1人あたりの額は、サハラ以南のアフリカ諸国の国民1人あたり得られる、あらゆる源泉からの所得総額よりはるかに多い。米国により強制された経済制裁は、イラク民衆1人あたりの所得を1989年以来75%低下させた。過去10年間のイスラエル国民1人あたりの所得は、パレスチナ人民1人あたりの所得の約12倍である。
 イスラエルは、ジョージ・ブッシュの対テロ戦争の宣告を口実に、パレスチナ民衆に対する数十年来の攻撃を増強して、ヨルダン川西岸およびガザ地区の都市と町を無差別に破壊し、国際法と何度もの国連安保理事会および総会の決議に違反して、さらに多くの土地を奪い取っている。
 イスラエルは、米国から得た何百発もの核弾頭の備蓄、何千キロもの遠距離からでも正確に発射することが可能な高性能のロケットをもち、さらに高性能なロケットその他の兵器を共同開発する契約を米国との間に結んでいる。
 敵対抗争の歴史をもつ地域で、たった一つの国が大量破壊兵器をたくさん保有することは、核拡散競争と戦争を促進する。国連は、すべての大量破壊兵器を減らし、取り除くよう行動すべきであり、そのような兵器およびそれを他国に与える能力の大半をもっている大国の悪と敵の地域を処罰したいという要求に従うべきではない。
 イスラエルは40年間にわたって、他のどの国よりも多く国連の決議に違反し、無視してきた。イスラエルのそういう行為は免責されてきたのである。
 安全保障理事会決議違反は、どのような国あるいは民衆に対してであれ平和時あるいは差し迫った脅威のない時に国連承認による攻撃を行うための根拠となってはならないが、安全保障理事会決議に違反するすべての国に対しては、決議を実施するため、それに匹敵する努力がなされるべきである。

6.選択肢は戦争か平和かである

 国連と米国は、戦争ではなく、平和を追求しなければならない。イラクに対する攻撃は、世界を、数十年におよぶ暴力の蔓延へと運命づけるパンドラの箱を開けることになるだろう。平和は可能であるばかりではない。科学技術によって、この惑星と自分自身を破壊する人類の能力がいかに高められたかを考えれば、平和は不可欠なのである。
 もしジョージ・ブッシュが、国連の承認があろうとなかろうと、イラクを攻撃することが許されるなら、彼は、社会の敵第一号となるだろう。そして、国連そのものも、無益というよりなお悪い。戦争の終結を目的として創設された機関でありながら、戦争の共犯者となるだろう。全世界の民衆は、そのとき、戦争という災厄に終止符を打ちたいと望むなら、国連に代わる何らかの方法によって、新規まき直しを図らなければならない。
 いまは、国連にとって決定的な瞬間である。国連は、強固に、独立して、憲章と国際法とこの機関の存在理由に対して忠実でいられるだろうか、それとも、我々を無法の世界に引きずり込む大国の強制に従い、文明の発祥地に対する戦争を容認することになるのだろうか?
 そんな事態が起こらないようにしていただきたい。

 敬具
 ラムゼー・クラーク

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(注記1)ラムゼー・クラーク氏について


■略歴:ベトナム戦争時代の元米国司法長官。
    湾岸戦争であまたの戦争犯罪を犯したブッシュ(現ブッシュ大統領の父)
    を裁いた民衆法廷の中心人物。

■日本で手に入る著書

・『被告ジョージ・ブッシュ有罪』 国際戦争犯罪法廷への告発状
 ラムゼイ・クラーク著/柏書房/1991.10/\650
・『アメリカの戦争犯罪』  
 ラムゼイ・クラーク編著 戦争犯罪を告発する会 訳/柏書房/1992/\4,800
・『ラムゼー・クラークの湾岸戦争』 いま戦争はこうして作られる
 ラムゼー・クラーク著 中平信也 訳/地湧社/1994/\3,914

■International Action Center
 クラーク氏が主宰するキャンペーン団体
 http://www.iacenter.org/

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