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米国が日本の占領から学ぶべきこと
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投稿者   日時 2003 年 2 月 28 日 02:47:28:

Last Updated: 16:15 02/27/2003
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米国が日本の占領から学ぶべきこと
岡崎久彦 (岡崎研究所所長)


オリジナルの英文:
"U.S. Must Learn Lessons from Occupation of Japan"
http://www.glocom.org/debates/20030227_okazaki_us/


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要 旨


日本の占領を成功と見て美化し、些細な問題を無視するような史観は、誇り高い大国である米国にとっては必要で、それによって国民は自国に誇りを持ち、また偉大な国であり続けるのである。それにはそれ自体の価値がある。ただそうした一種の神話を歴史的事実の検証なしに、現実の政治、すなわちイラクの戦後処理にそのままあてはめようとするのは危険である。


自分自身での改革
占領下で日本が民主化できたのは、日本政府がポツダム宣言を遵守したことにある。つまり、満州事変(1931年)の直前までの大正デモクラシーの復活強化である。戦争直後の日本の内閣は、むしろ占領軍が治安面の悪影響を懸念するのを押し切って、言論と結社の自由化を支持し、さらに大正デモクラシー時代以来の懸案であった婦人参政権、進歩的な労働組合、農地解放などを占領軍の指示を待たず着手した。これらの改革はすべて新憲法の成立を待たず、明治憲法の議会で法制化され今に残っている。


占領の滑り出しは順調だった。軍は完全に武装解除したが、国内の治安はいささかの乱れもなかった。やがて襲ってきた食糧危機は、マッカーサーの命令による輸入食糧放出で救われた。


マッカーサーの心配
ところがそれ以降、占領軍の統治機構(ビューロクラシー)が確立し、活動し出してからの諸措置は、その後半世紀以上にわたる日本の政治、社会、そして日米関係にとって、プラスよりマイナスの方がはるかに大きかった。


一つは、当時の国務省やソ連等の発言力が強い極東委員会と極東軍事裁判のあまりに強い反日姿勢が、天皇制維持を中心とする占領政策を危うくするのを恐れたマッカーサーが、先制防衛策として、天皇制維持と極端な平和主義を二つの柱とした新憲法を急遽作成して日本政府に押し付けたことである。これが後々まで問題を残すこととなる。


もう一つは、占領行政機構の中心が、左翼的ニューディーラーによって占められた事である。彼らは新しい日本を作るためと称して、過去の日本の伝統を徹底的に破壊しようとした。その手段である徹底した言論統制と公職追放の不公正さも、占領政策の傷となった。


誤った政策の後遺症
この政策は占領軍内部でも批判は強く、間もなく放棄された。ところが、日本を精神的、軍事能力的に弱体化させ、無力化させるというこの政策は、冷戦下における国際共産主義勢力の欲する所とぴったり適合した。


その後は占領軍ではなく共産主義勢力の強力なプロパガンダの下に、左傾化した教育、マスコミの労組を通じて、それが日本国民全体の思潮に浸透した。その結果、その後、米国の政策は保守政権によって受け容れられたにもかかわらず、常にマスコミ、世論の反対する所となり、米国の対日政策は挫折と失望を繰り返すことになる。


本論の目的は日本占領政策を批判する事ではなく、イラク占領政策立案に何らかの貢献ができればと思って書いているのである。日本占領政策の最大の失敗は、日本専門家を占領政策から疎外し、中国専門家を顧問にしたことにあるといえる。


「イラクの友人」が必要
イラクの場合も、地域専門家を重用すべきである。それも、その国の政治家、学者等の指導的知識者と交遊し、相互の尊敬を勝ち得られるような、いわゆる「イラクの友人」といえるような人の意見を尊重すべきである。


イラクの歴史は、現在民主主義を享有している多くの国とそう異なるものではない。90年代に至って、韓国、台湾、タイ、インドネシア、南米諸国が議会民主主義に行き着いているのは、イラクの前途に希望を持たせてくれる。


民主主義の定着には歴史がいる。英国の民主主義も、マグナ・カルタから名誉革命まで5世紀の試行錯誤を繰り返した。日本の現在の民主政治は、政治の実態からいって大正デモクラシーとほとんど変わらないが、一番大きな違いは、その間に試行錯誤があまりに壊滅的だったために、国民の間にもう民主主義以外の選択肢が存在しなくなっている、その安定性にある。


戦争裁判は不必要
サダム・フセインの個人的独裁にさいなまれた経験は、今後のイラクの民主主義にとって逆に財産となるかもしれない。イラクには部族、宗教等、日本占領とは比べものにならない固有の複雑な問題もあるが、この長い歴史の試行錯誤の結果得られた自由が、こうした諸問題を乗り越える価値として提示されることに成功すれば、イラクの前途に希望が持てる。


戦争裁判は、国際法的にまだまだ難点があり、これを強行することはプラスにはならない。むしろ、権力の濫用だけでも十分訴追理由はあるのだから、裁判はイラク国民の手に委ねたらどうであろうか。


最後に物質的な豊かさの見本を示すことは重要である。米国の占領政策にいかなる問題があっても、日本人が結局、これに抵抗できなかったのは、米国風民主主義が達成した物質的豊かさに圧倒されたからといえる。

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