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http://www.saga-s.co.jp/pubt/ShinDB/search.html

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■■■■■飯塚市小一2女児殺害事件■■■■■
■■■■■   1992年2月20日   ■■■■■
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福岡・飯塚で小1女児2人不明 登校中「行きたくない」92.02.21 西部読売朝刊
23頁(全603字)
 二十日朝、福岡県飯塚市潤野、小学校教諭中川雅彦さん(34)の長女藍ちゃん
(7つ)と同所、会社員梅野久さんの長女裕莉(ゆり)ちゃん(7つ)(いずれも
潤野小一年)の二人が、登校中、行方がわからなくなり、飯塚署は夜になって全署
員を招集、事件、事故の両面から捜索している。
 同署や学校によると、二人はこの日午前七時五十分ごろ、近くの友達の計三人で
学校に向かった。途中、裕莉ちゃんが「行きたくない」と泣き出したため、藍ちゃ
んがなだめ、友達は先に行った。同八時二十分の健康観察の時間に二人がいないの
に担任の犬丸千秋教諭が気付き、保護者に連絡。二人とも家に帰っていないことが
確認された午後零時半、捜索願を出した。
 同小はこの日、四時間目で授業を打ち切り、教職員、PTA計三十五人で通学路
を中心に捜し、同署も事件に巻き込まれた可能性もあるとみて、夜になって全署員
約百人を動員、地元消防団員らも捜索している。
 二人の自宅は学校から約一・五キロ離れた新興住宅地で、午前九時ごろ、二人が
学校と反対側に向かっているのを近くの人が見ている。
 藍ちゃんは一・一六メートル。白のジャンパーにチェックのスカート姿、ピンク
のランドセル。裕莉ちゃんは一・一八メートル。黄色のジャンパーに赤いえり付き
トレーナー、赤色キュロットスカート姿で、茶のランドセル。
 同小では昭和六十三年十二月、一年生の松野愛子ちゃん(当時七つ)が遊びに出
て行方不明になっている。


福岡・飯塚の女児2人なお不明92.02.21 西部読売夕刊11頁 写有(全386
字)
 福岡県飯塚市潤野で二十日朝から、登校途中の小学一年の女児二人が行方不明に
なっているが、飯塚署や地元消防団、住民、PTAら約三百人は二十一日も早朝か
ら人通りの少ない裏道や公園、空き地などを捜索した。
 行方不明になっているのは飯塚市潤野、小学校教諭中川雅彦さん(34)の長
女、藍ちゃん(7つ)と、同所、会社員梅野久さん(31)の長女裕莉ちゃん(7
つ)(いずれも潤野小一年)。
 二人の自宅は学校から約一・五キロ離れた新興住宅地で、午前九時ごろ、二人が
学校と反対側に向かっているのを近くの人が見ている。また午後一時ごろには、二
人と見られる子供が市内の繁華街で見掛けられているほか、同六時四十五分ごろま
での情報があり、確認を急いでいる。
 学校では二十一日の一時間目、臨時の朝礼を開き、細川清司校長が「まだ見つか
っていない。知っていることがあったら担任の先生に教えてください」と呼び掛け
た。


小1女児2人が不明 20日朝、学校に向かったまま 飯塚 【西部】92.02.21
朝日夕刊 9頁 1社 写図無 (全398字)
 福岡県飯塚市潤野の潤野小学校(細川清司校長、559人)の1年生女児2人が
20日朝から行方が分からず、飯塚署は事件、事故に巻き込まれた可能性もあると
みて21日、同署員や消防団員、学校関係者、父母ら約150人が学校周辺などを
捜索している。
 行方不明になっているのは同市潤野、小学校教諭中川雅彦さん(34)の長女の
藍ちゃん(7つ)と、同所の会社員梅野久さん(31)の長女、裕莉(ゆうり)ち
ゃん(7つ)。2人は1年3組の同じクラス。
 飯塚署や学校関係者によると、2人は別の同級生(7つ)と3人で、20日午前
7時40分ごろ、藍ちゃん宅に集合して学校へ向かった。
 藍ちゃんは身長116センチ、体重19キロ。おかっぱ頭で白いフードつきのジ
ャンパーにチェックのスカート姿。ピンクのランドセルに黄色い傘を持っていた。
裕莉ちゃんは118センチ、22キロ。赤いランドセル。黄色のジャンパーに赤の
キュロットスカート姿。


小1の女児2人殺される 前日、登校途中不明に 遺体を発見/福岡・飯塚市92.0
2.22 東京読売朝刊1頁 一面 写有(全677字)
 福岡県飯塚市で二十日朝、小学一年の女児二人が登校途中に行方不明になり、飯
塚署などで捜索していたところ二十一日夕、約二十キロ離れた同県甘木市の国道わ
きで二人の遺体が見つかった。県警捜査一課と甘木、飯塚署は遺体の状況から殺
人、死体遺棄事件と断定、変質者によるいたずら目的の犯行とみて、捜査に全力を
挙げている。
 行方不明になっていたのは飯塚市潤野、小学校教諭中川雅彦さん(34)の長女
藍(あい)ちゃん(7つ)と同所、会社員梅野久さん(31)の長女裕莉(ゆう
り)ちゃん(7つ)=いずれも潤野(うるの)小一年三組=。
 二十一日午後四時五十五分ごろ、甘木市野鳥の国道三二二号線わきの約十メート
ル下の雑木林で、女児二人が倒れているのを通行人が見つけ、甘木署で調べたとこ
ろ、二人はすでに死亡しており、父親が身元を確認した。
 藍ちゃんは西向きにうつぶせ、裕莉ちゃんは北向きにあお向けで、藍ちゃんの体
の下に裕莉ちゃんの足が入り、重なるように倒れていた。二人とも登校時のままの
服装が乱れ、顔などに殴られたとみられる出血や外傷があった。
 捜査本部では〈1〉遺体発見現場が二人の自宅から二十キロも離れた山中〈2〉
靴やランドセル、傘などがない――ことなどから、犯人は別の場所で殺害し、車で
運んだものとみている。
 県警や学校によると、二人は二十日午前七時五十分ごろ、友達と計三人で学校へ
向かった。途中、裕莉ちゃんが「行きたくない」と泣き出したため、藍ちゃんがな
だめ、友達は先に行った。
 同八時二十分の健康観察の時間に二人がいないのに担任教諭が気づき、家族から
捜索願が出された。(関連記事社会面に)


福岡・飯塚の2少女殺害 通学路でだれが襲った? ガケ下で無残な姿に92.02.22
東京読売朝刊31頁 社会面 写有(全1262字)
 ◆「わが子だ…」絶句する父
 「だれが、こんなむごいことを」――。福岡県甘木市の山中で二十一日夕、行方
不明になっていた同県飯塚市潤野、小学校教諭中川雅彦さん(34)の長女、藍ち
ゃん(7つ)と同所、会社員梅野久さん(31)の長女、裕莉(ゆうり)ちゃん
(7つ)(いずれも潤野小一年)の遺体が発見されたとの知らせに、無事を祈って
捜索を続けていた関係者らに衝撃が走った。愛らしい女児を二人も連れ出して殺し
たうえ、山中に捨てた犯人はいったい、どんな人間なのか。悲報に接した家族や先
生たちはやり場のない怒りに、身をふるわせた。
 対策本部が置かれた飯塚市潤野小の職員室前にある視聴覚室には午後六時過ぎ、
連夜の捜索のため飯塚署員をはじめ教職員や地元消防団、PTA、町内会役員ら約
五十人が集まっていた。
 同小ではこの日に予定していた授業参観を父母集会に切り替えて経過を説明。飯
塚署も直前にチラシを作り、公開捜査に踏み切ったばかり。そこへ相次いで伝わっ
た悲報。
 職員室では女性教諭約八人が自分の席で、手で顔を覆い、すすり泣きやおえつを
もらした。
 遺体を発見した同県杷木町の団体職員(52)は、車で通りかかって用を足そう
として車を降り、道端からガケ下を見下ろして見つけた。「林の中にマネキン人形
のように突き出た足にギョッとした」と言う。すぐ車で甘木署に飛び込んだ。
 午後八時五十七分、二人の遺体を乗せた車は甘木署に到着。すぐに双方の両親が
降ろされたひつぎのそばに来たが、ともに父親だけが対面。「間違いありません」
と二人ともしぼり出すような声で、捜査員にわが子であることを告げた。遺体は九
大医学部で解剖、死因などを調べる。
 二人は家が近いこともあって仲良しで、とくに藍ちゃんは明るく活発な子だった
という。
 発見場所は、甘木市の中心部から北へ約十五キロ。旧秋月藩の城跡に近く、ツゲ
などの原始林が茂る古処山(八六二メートル)の三合目付近。周辺に民家はなく車
の通行も少ない所。
 現場から約三キロ下流に住む同市野鳥、主婦陣上トシ子さん(60)は「私にも
同じ年齢の孫がいるので、他人ごとではありません。あんな所に遺体を捨てるなん
て」と声を震わせていた。
 また、近くの平木源吾さん(73)は「住んで六年になるが、事件らしい事件が
ないのんびりしたところで、こんなにかわいそうな事件が起きたのはとても悲し
い。早く犯人が捕まってほしい」と話していた。
 ◆4年前にも小一少女不明に
 潤野小では、昭和六十三年十二月にも一年の飯塚市明星寺、市営明星寺団地、松
野愛子ちゃん(当時七つ)が姿を消し、行方不明になっている。
 愛子ちゃんは同年十二月四日午前九時半ごろ、弟と近くの友達の家に遊びに行
き、その後、自宅から約百五十メートル離れた住宅建築現場で一人で遊んでいると
ころを団地内の子供が見かけたのを最後に行方を絶っている。県警と飯塚署は延べ
一万人以上の捜査員を投入したが、手掛かりが得られず、捜査は暗礁に乗り上げて
いる。また、最近になって「数か月前から小学校周辺で変質者が出没している」と
の情報もあった。


むごい 仲良し2女児殺害 「無事」の願い裂かれ泣き崩れる母/福岡・飯塚92.0
2.22 西部読売朝刊27頁 写有(全1193字)
 「だれが、こんなむごいことを」――。父親がしぼり出すような声で我が子の変
わり果てた姿を確認した瞬間、「無事でいて」との関係者のいちるの望みは無残に
打ち砕かれた。二十一日夕、福岡県甘木市での同県飯塚市潤野、小学校教諭中川雅
彦さん(34)の長女、藍ちゃん(7つ)と同所、会社員梅野久さん(31)の長
女、裕莉(ゆうり)ちゃん(7つ)(いずれも潤野小一年三組)の殺人、死体遺棄
事件。仲良しの二人を連れ出し、むごたらしい殺し方をして捨てた犯人は、いった
い、どんな人間なのか。二人を捜し続けていた家族や先生たちは、やり場のない怒
りに身を震わせた。
 ◇遺族
 二人の遺体を乗せた車は午後八時五十七分、両親の待つ甘木署に到着した。すぐ
に双方の家族が、降ろされたひつぎのそばに来たが、ともに父親だけがひつぎをの
ぞき込んだ。「間違いありません」と、本人であることを確認すると、母親らは
「藍」「裕莉」と娘の名を何度も呼びながら、ひつぎに泣きくずれ、付き添った人
たちに支えられた。
 午後九時三分、二人の遺体は解剖のため、警察官らが合掌して見送る中、福岡市
の九州大医学部へ向かった。
 ◇自宅
 午後七時前、ニュースで惨劇を知った知人の女性が中川さん方を訪ねた。藍ちゃ
んの母親が応対したが、「甘木で殺されていたそうで……。何と言っていいのか」
と泣き崩れた。同八時前には、自宅から読経がもれ、すすり泣く声も。
 中川さん方から約百メートル離れた梅野さん方は室内に明かりがついているもの
の、呼びかけにも応答はなかった。
 近所の人は「中川さん親子は、私の家によく遊びに来ていた。藍ちゃんは活発
で、とても明るい子だった。何てむごいことを……。許せない」と怒りをあらわに
した。
 ◆悲報に顔を覆う教諭
 ◇学校
 午後六時過ぎ、テレビニュースで殺人事件と報じられると、職員室にいた女性教
諭八人が、たまらず手で顔を覆い、すすり泣きやおえつを始めた。
 校長室には保育園時代、藍ちゃんと三年間、仲良く遊んだという同市伊岐須、自
営業菊光義夫さん(41)の長女、幸ちゃん(7つ)(伊岐須小一年)も父親と一
緒に訪れていた。幸ちゃんは「藍ちゃんはままごとが好きで、優しかった」と、し
きりに藍ちゃんを心配していたが、ざわめき立つ部屋の様子を感じ取り、何度も父
親に「どうしたの。藍ちゃん死んじゃったの」と聞いていた。
 / 現 場
 遺体が見つかった所は周辺に住宅のない山中。折からの冷え込みで、時折、雪の
舞う中で検証が続き、現場に通じる道路では一斉検問が行われた。
 現場から約三キロ下流の同市野鳥、主婦陣上トシさん(60)は「私にも同じ年
の孫がいるので他人ごとではありません。あんな所に遺体を捨てるなんて」と、声
を震わせた。また近くの八丁苑キャンプ場そばに住む平木源吾さん(73)は「事
件らしい事件のない所で、こんなにかわいそうなことが起きるとは。早く犯人が捕
まってほしい」と話していた。


小学校1年生の女児2人、殺される 登校途中に行方不明−−福岡・甘木の山林92.
02.22 毎日東京本紙朝刊 31頁 社会 写図有 (全852字)
 二十一日午後四時五十五分ごろ、福岡県甘木市野鳥の国道322号の八丁峠頂上
近くの道路わきの山林で二十日朝から行方不明になっている同県飯塚市潤野、小学
校教諭、中川雅彦さん(34)の長女藍ちゃん(7つ)と同所、会社員、梅野久さ
ん(31)の長女裕莉(ゆうり)ちゃん(7つ)=いずれも同市立潤野小一年=が
死んでいるのを通りかかった人が見つけた。福岡県警捜査一課は、発見場所が自宅
から約十七、八キロも離れた山中で、二人の顔から血が流れているなどの状況か
ら、何者かに殺害されたものと断定、捜査している。
 調べでは二人の遺体は、藍ちゃんが白色ジャンパー姿で頭を北向きにしてうつぶ
せに、裕莉ちゃんは茶色ジャンパーであお向けで倒れていた。二人の顔に殴られた
ような跡があり、血が流れた跡もあった。着衣は、二人が行方不明になった当時の
ままだった。二人とも靴をはいておらず、失そう当時持っていたランドセルや傘も
見つかっていない。直接の死因は不明で、同日夜、司法解剖して調べる。
 飯塚署によると、二人は二十日午前七時五十分ごろ、それぞれ家を出た。途中、
別の友達と一緒に三人で登校した。ところが、小学校の約五百メートル手前で二人
のうち一人が泣き出し、なだめたもう一人が遅れ出したため友達一人だけが登校
し、藍ちゃんと裕莉ちゃんは登校しなかった。同日昼過ぎ、同小から「二人が行方
不明」と飯塚署に届け出があった。その後、同署員や地元関係者ら約六百人が捜し
たが、同日午後一時から二時の間に飯塚市内の繁華街で二人らしい女児を見掛け
た、との情報があっただけで、消息は途絶えていた。
 現場は飯塚市から甘木市へ抜ける国道322号沿い。曲がりくねった急坂が続く
ため、地元の人の多くも近くの国道200号の通称「冷水道路」にう回する。通行
量は極めて少ない。捜査一課はこうした状況を知った者の犯行の可能性もあるとみ
ている。
 また遺体の状況などから、犯人は二人を車で運び、カーブ地点のガードレールの
切れ目に車を乗り入れたうえ、遺体を道路下の斜面に投げ捨てたとみている。


小学1年生の女児2人殺される、登校中に不明、自宅から18キロの山中に遺体−
福岡92.02.22 毎日大阪本紙朝刊 1頁 1面 写図有 (全810字)
 二十一日午後四時五十五分ごろ、福岡県甘木市野鳥の国道322号の八丁峠頂上
近くの道路わきの山林で二十日朝から行方不明になっていた同県飯塚市潤野、小学
校教諭、中川雅彦さん(34)の長女藍(あい)ちゃん(7つ)と同所、会社員、
梅野久さん(31)の長女裕莉(ゆうり)ちゃん(7つ)=いずれも同市立潤野小
一年=が死んでいるのを通りかかった団体職員(52)が見つけ、甘木署に通報し
た。福岡県警捜査一課は、発見場所が自宅から約十七、八キロも離れた山中で、遺
体の状況から、二人は、何者かに殺害されたものと断定、同県警飯塚署と甘木署に
それぞれ捜査本部、準捜査本部を置き、殺人、死体遺棄事件として捜査している。
(31面に関連記事)
 調べでは二人の顔面に殴られたような跡があり、血が流れた跡もあった。着衣は
二人が行方不明になった当時のままだった。直接の死因は不明で、同日夜、司法解
剖して調べる。しかし、二人とも靴をはいておらず、付近にもなかった。失そう当
時持っていたランドセルや傘も見つかっていない。
 飯塚署によると、二人は二十日午前七時五十分ごろ、それぞれ家を出た。途中、
別の友達と一緒に三人で登校した。ところが、小学校の約五百メートル手前で一人
が泣き出し、なだめ役のもう一人と遅れ出したため、友達一人だけが登校し、藍ち
ゃんと裕莉ちゃんは登校しなかった。同日昼過ぎ、同小から「二人が行方不明」と
飯塚署に届け出があった。同日午後一時から二時の間に飯塚市内の繁華街で二人ら
しい女児を見掛けた、との情報があっただけで、消息は途絶えていた。
 遺体の状況などから、犯人は二人を車で運び、カーブ地点のガードレールの切れ
目に車を乗り入れたうえ、遺体を道路下の斜面に投げ捨てたとみている。
 88年末にも女児行方不明
 二人が通っていた潤野小では一九八八年十二月四日午前、飯塚市明星寺団地、松
野愛子ちゃん=当時同小一年、七歳=が自宅付近で消息を絶ち行方不明になってい
る。


冷え込み厳しい山中で遺体発見、捜索の父母ら号泣−福岡・小学1年生の女児殺害
事件92.02.22 毎日大阪本紙朝刊 31頁 社会 写図有 (全868字)
 行方不明になっていた福岡県飯塚市の潤野小学校一年の中川藍(あい)ちゃん
(7つ)と梅野裕莉(ゆうり)ちゃん(7つ)は、約三十三時間後の二十一日夕、
自宅から二十キロ近く離れた山中で殺されているのが見つかった。事件は、厳しい
冷え込みの中で最悪の展開を見せ、二人の笑顔を待っていた家族や同級生を悲しみ
と恐怖に陥れた。「あんな可愛い子をいったいだれが……」「許せない」。おえつ
と号泣は、やむことがなかった。
 ●家族
 飯塚市郊外の新興住宅地にある中川雅彦さん(34)方は、ドアを固く閉ざし、
報道陣がインタホンで呼びかけても応答はなかった。しかし、子供連れの近所の人
が弔問に訪れると中に入れ「何でこんなことにならんといけんの」という女性の泣
き声が聞こえた。玄関先での号泣はいつまでも続き、途切れ途切れに「もう藍ちゃ
んには会えないのよ」「何も悪いことをしとらんのに」「こげな寒か日に山に連れ
て行って殺さんでもよかろうもん」といった声が漏れていた。
 潤野の会社員、梅野久さん(31)方も雨戸を閉め切ったまま。急を聞いて知人
が見舞いに駆けつけた。
 裕莉ちゃんと同級生の娘を持つ近所の主婦(37)は「今日も朝から地区ごとに
分かれて裕莉ちゃんを捜していたのに残念です……。何でこんなことに」と声を詰
まらせた。梅野さんのすぐ近くに住む公立高校三年生の女生徒(18)も「つい最
近、友達が変な男の人に追いかけられて、怖がっていました」と話していた。
 ●学校
 捜索を続けていた教職員や父母の待合室になった潤野小の校長室。捜索を終えた
人たちが次々に戻ってきたが、午後六時過ぎテレビが「甘木で女児二人の死体を発
見」のニュースを流すと、「えっ」という驚きの声が漏れた。「何でこんなことに
……」「ウソだろう」。座り込んだまま泣きじゃくる婦人の姿も見られた。
 小学校では午後八時過ぎから教職員とPTA役員らが、善後策を話し合う緊急会
議を開いた。細川清司校長(55)は「明るくていい子たちだったのに……最悪の
事態になってしまった」と沈痛な表情。
 当面、父母が付き添って集団登下校をすることにした。


福岡・飯塚の2少女殺害 ランドセルなど発見92.02.22 東京読売夕刊18頁 社
会面(全769字)
 福岡県飯塚市潤野、潤野小一年中川藍ちゃん(7つ)と同所、同梅野裕莉ちゃん
(7つ)が登校途中に行方不明となり、二十一日夕、同県甘木市の山中で遺体で見
つかった事件で、飯塚署の捜査本部は二十二日未明、二人の遺体を九州大医学部で
解剖した結果、死因は首を手で絞められての窒息死とわかった。同本部では、犯人
がいたずら目的で連れ回した後、別の場所で殺害、遺体を車で運んで捨てた、との
見方を強め、同日早朝から、犯人の遺留品や藍ちゃんらの所持品の捜索をするとと
もに、飯塚市周辺から遺体発見現場までの聞き込み捜査に乗り出した。
 解剖結果によると、死亡推定時刻は二十日午後三時から同七時の間。藍ちゃんは
頭、裕莉ちゃんは顔に殴られた跡があるほか、手足などにすり傷があった。同本部
は殴った後、首を絞めて殺害、国道三二二号線から約十メートル下の雑木林へ投げ
捨てた、とみている。
 また、着衣の一部などが遺体発見現場にないことから、犯人が殺害の前後に捨て
た可能性もあるとみて、朝から現場周辺で鑑識活動を再開。さらに、新たに県警機
動隊員ら約二百人を動員し、一帯の山中に範囲を広げて捜索の結果、二十二日午前
十時四十五分ごろ、遺体発見現場から約四キロ離れた甘木市と嘉穂町の境界にある
国道三二二号線わきの杉林で、ランドセル、傘などを見つけた。
 いたずら目的で少女二人を連れ回し、同時に殺害するという特異な犯行であるこ
とから、捜査本部は変質者の犯行との見方を強めており、変質者の洗い出しに全力
を挙げている。
 これまでの調べで、行方不明になった二十日の午後二時ごろ、二人とみられる女
の子が飯塚市内のおもちゃ店で目撃されている。さらに同七時三十分ごろには同市
本町の商店街で、少女二人が中年の男二人に話しかけられているところを目撃して
おり、捜査本部はこれが藍ちゃんらかどうかの確認を急いでいる。


福岡の2女児殺害 父「捜せなくてごめん」 遺体、悲しい帰宅92.02.22 西部読
売夕刊11頁 写有(全1487字)
 怖かったろう、苦しかったろう――。家族や学校関係者、住民らの祈りもむなし
く、無残な姿で発見された福岡県飯塚市潤野、小学教諭中川雅彦さん(34)の長
女藍ちゃん(7つ)と同所、会社員梅野久さん(31)の長女裕莉ちゃん(7つ)
(いずれも潤野小一年)の遺体は二十二日早朝、二日ぶりに無言の帰宅をした。両
遺族とも言葉少なく、怒りと悲しみを新たにしていた。
 当初、解剖後直ちに飯塚市内の葬祭場に安置する予定だった藍ちゃんの遺体は、
遺族の強い意向で午前八時二十分、いったん自宅に帰った。小さなひつぎに納めら
れた無言の帰宅となった。
 「前日に買ったばかりの、新しいスカートをはかせてやると、大喜びで学校に出
かけたのに……」と雅彦さん。突然襲った悲劇に、大粒の涙がこぼれ落ちた。
 「優しい子で妹の面倒もよく見てくれた。二人で一生懸命に犯人と戦ったと思い
ます。よく頑張ったねとほめてあげます」とも。
 そして、「しばらく暖かい布団にゆっくり寝かせてやりたい。今でも娘が死んだ
とは思いたくないが、葬儀の手続きをしているうちに、悔しさがこみ上げてくる。
市内はくまなく捜したつもりだったが……。『お父さんが捜し出すことも出来ずに
ごめんね』と謝りたい」と、ひざのこぶしをぐっと握りしめて肩を震わせた。
 藍ちゃん方には午前六時四十分、潤野小の細川清司校長が「藍ちゃんに会いた
い」と訪ねたほか、雅彦さんの同僚の教師、近所の人たちなどが次々に集まって、
霊前に手を合わせた。
 二十二日夜、仮通夜をし二十三日午後七時半から通夜、二十四日午前十一時から
飯塚市新立岩、日本善光会館飯塚会場で告別式をする。
 裕莉ちゃんの遺体が自宅に着いたのは、午前四時五十分。女性一人を含む五人が
軽ライトバンと乗用車で到着。車から降りたどの顔も沈痛な表情で、怒りと悲しみ
をこらえた様子がありあり。終始無言のまま、ひつぎを屋内に運び入れた。親類と
みられる男性が報道陣に「殺されたんだよ。あんたたち子供もあるだろう。写真は
撮らないでくれ」という場面もあり、遺族の気持ちを表していた。
 ◆「優しい2人でした」 潤野小全校集会で黙とう
 二人が通っていた潤野小(五百五十七人)では、二十二日午前七時半から、通学
路に父母や教諭約六十人が立ち、一人で登校中の児童は、その場で待たせ、後から
来た子供たちと一緒に登校させるなどの安全指導をした。また、母親が、数人ず
つ、マイカーで送る光景も目立った。
 午前九時過ぎからは、体育館で全校集会。細川校長が「悲しいお知らせがありま
す。一年生の二人の友達が何者かに連れ去られ、遠くで亡くなりました。残念で仕
方ありません。一人や二人で登校している人は助け合って他の人と来るようにして
下さい。皆で力を合わせて頑張っていきたいと思います」と涙に詰まりながら話し
た。続いて一分間の黙とうをした。
 全校集会の後、各クラスで担任から登下校の注意点などについて話があったが、
二人が在籍していた一年三組では担任の犬丸千秋教諭が「藍ちゃんと裕莉ちゃんに
はもう会えないよ」と子供たちに説明した。
 犬丸教諭は「二人はとても優しい子でした。私が渡した手紙をポケットに入れ
『先生の手紙持っちょんよ』と言ったことを思い出します。悔しいとかいうのを通
り過ぎています」と涙を流した。
 犬丸教諭によると、藍ちゃんは手紙を書くのが好きで「今度、父さんがスケート
に連れてってくれるよ。二年も犬丸先生?」などと書いてくれた。裕莉ちゃんは漫
画をかくのが大好きで、人形さんの漫画をかいて、犬丸教諭や友達に贈っていた。
 学校はこの日から集団登下校を指示し、三学期いっぱい続けることを決めた。


死因は絞殺と断定 遺留品とみられるランドセルも発見−−福岡・飯塚の2少女殺
害92.02.22 毎日東京本紙夕刊 13頁 社会 写図無 (全448字)
 福岡県飯塚市の潤野小一年、中川藍ちゃん(7つ)と梅野裕莉ちゃん(7つ)が
殺されて見つかった事件で、福岡県警飯塚、甘木両署の捜査本部は二十二日早朝か
ら、二人の遺体が見つかった福岡県甘木市野鳥の国道322号の山林付近を捜索し
た。その結果、同日午前十時四十五分ごろ、遺体発見現場の北約四キロの甘木市と
同県嘉穂郡嘉穂町の境界近くの山林で、遺留品とみられるランドセル二個が見つか
った。
 殺害・死体破棄の仕方などから捜査本部は変質者の犯行の可能性が強いとみて、
変質者のリストアップも急いでいる。
 また、司法解剖の結果、死因は二人とも絞殺で、死亡したのは行方不明になった
当日の二十日午後五時を中心に午後三―七時の間と分かった。
 また、藍ちゃんは頭部に、裕莉ちゃんは顔面に何か固い物で殴られたような傷が
あり、生体反応があった。捜査本部は「手で殴られたと考えるのが自然」といい、
殺害される前に殴られたとみている。遺体発見現場には目立った痕跡もないことか
ら、捜査本部は、殺害は別の場所で、現場に車で運ばれたと判断している。


福岡・女児殺害事件 現場の4キロ北でランドセル2個発見 死因は絞殺92.02.22
毎日大阪本紙夕刊 3頁 社会 写図無 (全326字)
 福岡県飯塚市の潤野小一年、中川藍ちゃん(7つ)と梅野裕莉ちゃん(7つ)が
殺されて見つかった事件で、福岡県警飯塚、甘木両署の捜査本部は二十二日早朝か
ら約四百三十人の捜査員を動員し、本格的な捜査を始めた。二人の遺体が見つかっ
た福岡県甘木市野鳥の国道322号の山林付近を捜索した結果、同日午前十時四十
五分ごろ、遺体発見現場の北約四キロの甘木市と同県嘉穂郡嘉穂町の境界近くの山
林で、遺留品とみられるランドセル二個が見つかった。二人が最後に目撃された飯
塚市内の繁華街などで聞き込みを行い、当日の行動確認にも力を入れている。
 また、二十二日未明、九州大医学部で二人の遺体を司法解剖した結果、死因は二
人とも手による絞殺で、死亡したのは二十日午後三―七時の間と分かった。


福岡・飯塚の2女児殺害 母の病院探し?市街地へ 裕莉ちゃんら足取り一部判明9
2.02.23 西部読売朝刊31頁(全840字)
 福岡県飯塚市潤野、潤野小一年中川藍ちゃん(7つ)と同梅野裕莉(ゆうり)ち
ゃん(7つ)が登校途中に消息を絶ち翌二十一日夕、甘木市の山中で他殺体で見つ
かった事件で、二人は病気をした裕莉ちゃんの母親を心配、病院を探して、市街地
に向かったらしいことが二十二日、関係者の話からわかった。最後に目撃された商
店街は、母親のかかっている病院に近く、母親思いの裕莉ちゃんに藍ちゃんが同情
したことが、事件の伏線になった可能性もあるとみて、福岡県警捜査一課と飯塚、
甘木両署の捜査本部は、この話を重視している。
 これまでの捜査本部の調べや住民らの話を総合すると、二人は二十日午前八時ご
ろ、近くに住む別のクラスの一年生の女児と三人で登校を始めた。裕莉ちゃん方か
ら約四百メートルの所にバス通りを横断する地点があり、三人はいつも一緒に、七
時五十分から八時すぎの間に通りかかるのに、この日は、八時十分ごろ、別のクラ
スの女児だけが通り、二人の姿はなかった。
 ここで毎日交通指導をしている男性(64)は、二人は先に行ったのだと思い、
五分後に帰宅したという。
 その直後、近所の人が、横断地点の手前で、裕莉ちゃんが泣き、藍ちゃんがなだ
めているところを目撃。八時二十分ごろには、同地点の約百メートル先で、また、
同三十分には、学校の三百メートル手前の三差路を、学校とは逆の方に歩いて行く
のを、それぞれ別の人が見ていたことがわかった。
 別のクラスの女児も、学校から事情を聞かれ「裕莉ちゃんは泣いていたようだ」
と証言。学校側は「藍ちゃんが裕莉ちゃんをなだめながら、学校の近くまで来たも
のの、結局、母親を心配する裕莉ちゃんについて、病院のある市街地に向かったの
では」と推測、教頭と交通指導の男性とが、母親のかかった病院を訪ねたが、母親
は午前十時ごろ、診察を終えて帰宅、二人は姿を見せていなかった。
 母親の病院は、市中心部にあり、潤野地区から約二キロ離れている。二人が午後
二時ごろ、最後に目撃された商店街のがん具店は、病院から約五百メートル。


福岡・飯塚の2女児殺害 涙さそう中川藍ちゃんと梅野裕莉ちゃんの仮通夜92.02.2
3 西部読売朝刊31頁(全198字)
 中川藍ちゃん、梅野裕莉ちゃんの二人の遺体は二十二日早朝、飯塚市潤野の自宅
に相次いで帰り、同日夕から仮通夜が営まれた。花輪が並べられた裕莉ちゃん方に
は供物が次々と運び込まれ、近所の人たちが焼香に訪れ、涙を新たにした。藍ちゃ
ん方には同日午後六時過ぎ遺影が掲げられた。本通夜はいずれも二十三日、葬儀は
藍ちゃんが二十四日午前十一時から、日本善光会館飯塚会場で、裕莉ちゃんは同日
午後一時から自宅で行われる。


福岡・飯塚の2女児殺害 別の時間、場所で殺された?92.02.24 東京読売朝刊3
1頁 社会面(全193字)
 福岡県飯塚市潤野、潤野小一年、中川藍ちゃんと梅野裕莉ちゃん(ともに七歳)
が登校途中に行方不明となり、他殺体で見つかった事件で、甘木署と飯塚署の捜査
本部は二十三日、二人は別々の時間帯に違った場所で殺されたとの見方を強め、引
き続き捜査に全力を挙げている。解剖の結果、胃の内容物に違いがあったためで、
犯人は二十日午後、二人と出会って間もなく藍ちゃんを殺害、数時間後に裕莉ちゃ
んを殺したらしい。


福岡の2女児殺害事件 白い車が児童つけ回す 変質者情報相次ぐ92.02.24 西部
読売朝刊27頁(全1162字)
 福岡県飯塚市潤野、潤野小一年の中川藍ちゃんと梅野裕莉ちゃん(ともに七歳)
が殺された事件で、福岡県警捜査一課と飯塚、甘木署の捜査本部は二十三日まで
に、最近、同小校区や隣の同県穂波町の若菜小校区で、子供たちが不審な白い車に
つけられていたことをつかんだ。ほかにも、男が下半身を出して見せたり、「一緒
に行こう」と誘うなど、変質者がいるとの情報が多く、事件との関連性を調べると
ともに、近隣の学校などに、改めてこれまで変質者を目撃したなどの情報提供を求
めた。また、遺体解剖の結果、胃の内容物に違いがあることから、二人は別々の時
間帯に殺されたとの見方を強めている。
 潤野小校区では、殺された二人の自宅近くで今年に入って、白色の軽乗用車に乗
った男が、通りかかった六年生の女子に向かい着ていたコートの前を開き、裸を見
せた事件があった。
 同小校区と、二人が最後に目撃された同市本町商店街の中間にある若菜小校区で
は、「白い車」が、児童をつけ回すケースが相次ぎ、父母らの間で心配する声が上
がっていた。父母らの話では、止まっていた車の横を通り過ぎると、ゆっくりス
タートし、振り返ると止まるなど、怪しい動きをしていたという。
 また、先月末には、二人が二十日朝通ったとみられる道のすぐ近くの商店で、目
当てのマンガがなく帰ろうとした五年生の男子二人に、中年の男性が「マンガがあ
る店を知っている。一緒に行こう」と誘った。二人は無視した。すぐ近くでは、二
人が行方不明になる直前の十五日ごろにも、男が四年生の女児三人を集め、その前
で小用を足すという事件もあった。
 解剖所見では、藍ちゃんの胃には何も残っていなかったが、裕莉ちゃんの胃に
は、米粒のようなものが消化できずに残っていた。消化には、食後三―四時間かか
ることから、〈1〉藍ちゃんを殺した後、裕莉ちゃんに食事を与えた〈2〉二人に
食事をさせた後、まず裕莉ちゃんを殺害、しばらくして藍ちゃんを殺した――の二
通りのケースが考えられるが、捜査本部では「〈1〉の可能性が高い」としてい
る。
 また、二人の遺体のうち一方にだけ、枯れ草のようなものが付着しており、別々
の場所で殺されたことを裏付けると見ている。
 このほか、二十二日、甘木市の八丁峠の杉林で見つかった二人のランドセルなど
の近くから、総菜屋の弁当用らしい包装紙に包まれたパックが見つかった。裕莉ち
ゃんらに食べさせた可能性もあり、販売店の割り出しを急いでいる。
 ◆筑豊6署が連携強化
 事件の早期解決を目指し、二十三日、筑豊地区六署と甘木署の署長、刑事課長が
飯塚署の捜査本部に集まって緊急会議が開かれ、〈1〉筑豊各署から応援を出し、
捜査の充実強化を図る〈2〉連携を密にし変質者の洗い出しなど情報収集体制の一
元化を図る〈3〉学校関係者らと協力して防犯対策の徹底――などを申し合わせ
た。


殺害女児2人の告別式 親族、級友が最後の別れ/福岡92.02.24 東京読売夕刊1
8頁 社会面(全344字)
 登校途中に行方不明となり、二十一日、福岡県甘木市の山中で他殺体で見つかっ
た同県飯塚市の潤野小一年中川藍ちゃん、梅野裕莉ちゃんの告別式が、二十四日営
まれ、親族や知人、同級生らが二人に最後の別れをした。あどけない遺影を前にし
た参列者は、改めて犯人への怒りに唇を震わせ、涙ぐんだ。
 藍ちゃんの告別式は午前十一時から飯塚市新立岩の日本善光会館飯塚会場で始ま
った。藍ちゃん、裕莉ちゃんと同じ一年三組の児童三十二人、潤野小教諭二十人ら
約五百人が参列。
 細川清司校長の弔辞のあとクラスを代表して楠智絵ちゃんが「藍ちゃんは優しい
仏様になったね。生まれ変わったら赤ちゃんからやり直しだね」と、お別れの言葉
を述べると、会場のすすり泣きの声は一段と高くなった。
 裕莉ちゃんの告別式も午後一時から、自宅で執り行われた。


福岡・飯塚の2女児殺害 潤野地区で夕方目撃? 死亡推定午後6−9時に92.02.2
4 西部読売夕刊9頁(全880字)
 福岡県飯塚市潤野、潤野小一年の梅野裕莉ちゃんと中川藍ちゃん(ともに七歳)
が同県甘木市の山中で絞殺体で発見された事件で、二人が姿を消した二十日の午後
七時ごろ、潤野地区にある嘉穂高校のそばに、二人らしい児童がいるのを、通行人
が目撃していたことが、福岡県警捜査一課と飯塚、甘木署の捜査本部の調べでわか
った。さらに、死亡推定時刻が、これまでの見方より二時間程度ずれ込むことも判
明しており、二人は市中心部の商店街から、同地区に戻った後、連れ去られた可能
性も出てきた。商店街でなく、潤野地区で犯人と出会ったとすれば、三年前に地区
内で姿を消した松野愛子ちゃん事件との関連性も強まることから、捜査本部では情
報の確認を急いでいる。
 調べによると、目撃したのは同高一年の男子生徒。午後六時半から七時の間に、
同高正門そばの小川に架かる橋のたもとに、小学校低学年の児童二人がたたずんで
いるのを見た。「遅くまで遊んでいるな」と思いながら、通り過ぎ、約百メートル
離れた商店で、女児二人が行方不明になっていることを知り、慌てて引き返した
が、いなくなっていた。
 暗くなっていたので、ランドセルには気付かなかったが、うち一人とは視線が合
い、女の子であることがわかった。他方は性別不明だが、同じ背丈で、どちらも髪
が短かった。裕莉ちゃんと藍ちゃんはそれぞれ一一八センチと一一六センチ。
 橋は、二人がこの日午前八時半ごろ、市中心部に向かって歩いている所を目撃さ
れた農協支所から、中心部寄りに約五百メートルの地点。
 当初、死亡推定時刻が午後三時―七時とされていたため、この情報は重視されな
かったが、その後、午後六時―九時にずれ込む可能性が強まったことから、情報の
見直しを始めた。
 また、これまで、二人の足取りは、午後二時、同市本町商店街のおもちゃ屋で途
切れていたが、夕方遅く、潤野地区に戻った所を、連れ去られたとの見方も出てき
た。
 三年前の愛子ちゃんは、嘉穂高校前の橋の西約一キロの潤野地区内で姿を消して
おり、地元に変質者に関する情報も多いことから、捜査本部は、商店街周辺に加え
て、潤野地区での捜査も強化している。


福岡の2女児殺害 不審な白い車の男 91年秋から度々目撃92.02.25 東京読売
朝刊31頁 社会面(全532字)
 福岡県飯塚市潤野、潤野小一年の梅野裕莉ちゃんと中川藍ちゃん(ともに七歳)
が殺害された事件で、遺体発見現場の同県甘木市野鳥に近い同市秋月地区に、昨年
秋ごろから、白い車の男が出没し、たびたび児童につきまとっていたことが県警捜
査一課と飯塚、甘木署の捜査本部の二十四日までの調べなどでわかった。潤野地区
でも、白い車の男に声をかけられたなどの情報が多いうえ、三年前、当時潤野小一
年だった松野愛子ちゃんが失跡した前後にも、秋月地区で白い車による拉致(ら
ち)未遂事件が続発していることから、捜査本部では、両地区の地理に詳しい同一
人物が行き来していたと見て、この男の割り出しを急いでいる。
 男が出没した秋月地区は、同市野鳥から三、四キロ下った一帯。捜査本部の調べ
や地元住民の話によると、昨年十一月ごろ、秋月小近くの道路で、登校中の同小の
女児が「学校に送ってやろう」と、白い車の男に誘われた。
 その前後にも、登下校途中の女児らが、三十―四十歳の男から、「たばこを買っ
てきて」「学校はどこね」などと、声をかけられる事件が続いたが、いずれも女児
らは気味悪がって逃げ、無事だった。
 また、三年前にも、白い乗用車が女児につきまとう事件が相次ぎ、この時は、甘
木署が地区内のパトロールを強化していた。


福岡・2女児殺害 遺体発見の翌日、藍ちゃん宅に不審電話 犯行におわせる92.0
2.25 西部読売夕刊11頁(全553字)
 福岡県飯塚市の潤野小一年中川藍ちゃんと梅野裕莉ちゃん(ともに七歳)が殺さ
れた事件で、福岡県警捜査一課と飯塚、甘木署の捜査本部は二十五日までに、二人
の遺体が同県甘木市の山中で発見された翌日の二十二日、藍ちゃんの自宅に、犯人
であることをにおわせる不審な電話がかかっていたことをつかんだ。
 調べによると、電話があったのは二十二日午後三時ごろ。藍ちゃんの父親の雅彦
さん(34)(小学校教諭)と告別式の段取りを話し合っていた男性の知人が受け
た。
 「もしもし」と応答したが、十五秒ほど無言が続き、その後、中年の男の声で
「藍ちゃんらと一晩過ごさせてもらった」といった内容のことをしゃべって、切れ
た。低い押し殺したような声だったという。
 捜査本部は、犯人である可能性もあるとみて、中川さん宅の電話にテープレコー
ダーを付けたが、その後はかかってきていない。
 雅彦さんは「犯人だと思った。いたずらだとしたら、家族が苦しんでいる時に、
どうしてこんなことができるのか、信じられない」と話している。
 また、これまでの調べでは、藍ちゃんらが犯人と出会った時や場所は不明のま
ま。犯人らしい人物と一緒にいる所を目撃したとの情報もない。このため、捜査本
部では犯人像を絞り込めないでおり、飯塚市や甘木市とその周辺で変質者や前歴者
の洗い出しを急いでいる。


福岡・2女児殺害 おにぎり食べる? 死亡時間やはり同時か92.02.26 西部読売
朝刊23頁(全490字)
 福岡県飯塚市の潤野小一年梅野裕莉ちゃんと中川藍ちゃん(ともに七歳)が殺さ
れ、同県甘木市の山中で見つかった事件で、県警捜査一課と飯塚、甘木署の捜査本
部の二十五日までの調べで、裕莉ちゃんの胃の中に残っていた未消化の食物は米粒
だけだったことがわかった。捜査本部は犯人が二人におにぎりを食べさせたとみ
て、米の品種を特定するため、県警科学捜査研究所に鑑定を依頼した。
 調べによると、米粒は三―四時間で消化されるが、裕莉ちゃんの胃の中には、ま
だ形をとどめた米粒が残り、藍ちゃんの胃の中の米は、すでにおもゆ状になってお
り、粒は確認できなかった。
 このため、食後二人の殺害時間が異なり、早い時間に藍ちゃんが殺されたとの見
方も出ていたが、消化時間には個人差があり、極度の緊張状態にあった場合、消化
が不安定になることから、ほぼ同時に殺害されたとの見方も捨てていない。
 また、甘木市山中のランドセルなどの遺留品発見現場で、たこ焼きか焼きそばが
入っていたらしい草色の包装紙に包まれた透明の樹脂パックが見つかったが、二人
の胃の内容物に該当する食物がないことから、事件との関係がないか、犯人だけが
食べたとみている。


福岡の2女児殺害 深まるナゾ 遺体隠蔽の跡なし 見つからぬ靴片方ずつ92.02.2
6 西部読売夕刊9頁 写有(全1248字)
 福岡県飯塚市潤野、潤野小一年中川藍ちゃんと梅野裕莉ちゃん(ともに七歳)が
殺害された事件は、捜査本部の懸命の努力にもかかわらず、二十六日になっても依
然、犯人に結びつく有力な情報が得られていない。これまでの捜査で、学校付近か
ら遺体遺棄現場までどうしてほとんど目撃情報がないのかなど、いくつかの「な
ぞ」が浮かび上がってきた。
 ◆空白の5時間 二人は二十日午前八時三十分ごろ、飯塚市潤野、潤野小学校の
三百メートル手前で目撃されたのを最後に、一度は消息を絶つ。その後、二人が再
び姿を見せるのは、東へ約三キロも離れた市の繁華街、本町商店街の書店とがん具
店で、午後一時四十分から二時にかけて。いずれも女性従業員が目撃した。大量の
捜査員を動員して、二つの地点を結ぶ沿線で聞き込みを続けているが、この約五時
間の目撃情報がほとんどなく、足取りがまったくつかめていない。
 このため、捜査本部は、二人が犯人と商店街周辺で出会ったとの見方とともに、
商店街から夕方、学校近くに戻ったところをら致されたなどの可能性も捨てきれな
いとして、潤野地区での捜査も強化している。
 また、商店街から死体遺棄現場の福岡県甘木市山中までの約三十キロの足取りに
ついても、有力な手掛かりは得られていない。
 ◆食べたのは米粒だけ 解剖の結果、二人の胃の中には、米粒だけしか残ってい
なかった。おかず類がないことから、捜査本部は、犯人がおにぎりを食べさせたと
みて、県警科学捜査研究所に米の品種の特定を依頼している。だが、手軽にファス
トフードを手に入れられるのに、なぜ、白米だけのおにぎりを与えたのか。
 ここから、捜査本部内には、犯人は独り暮らしの顔見知りの男で、二人を自宅に
連れ込み、自分でおにぎりを作って食べさせたとの見方も出ている。殺害現場が室
内だったとすれば、目撃者が極めて少ないこととも符合する。
 ◆死体遺棄 死体は、嘉穂町と甘木市の境から四・五キロの国道三二二号線沿い
の雑木林に捨てられていた。道路からわずか五、六メートル下の斜面で、第一発見
者が「まさかこんなところに死体があるとは思わず、マネキンだと疑わなかった」
というような捨て方だった。
 また、ランドセルなど遺留品の大半が見つかった場所も、国道沿いで、ただ道路
から投げ捨てただけ。
 隠蔽(いんぺい)工作の跡がほとんど見られない。捜査員も「隠す余裕がなくあ
わてていたのか、ただ単に大胆で粗雑なだけなのか」と首をひねる。
 ◆行方不明の靴 失跡時、藍ちゃんはウグイス色の靴、裕莉ちゃんはピンクのラ
インが入った靴を履いていた。遺留品発見現場からは、二人の靴の片方ずつしか見
つかっていない。
 これについては〈1〉殺害現場でなくした〈2〉捨て忘れて車の中に残った〈3
〉別の場所に捨てた――などの可能性がある。しかし、行方がわからないのが片方
ずつという不自然さから、埼玉の連続幼女殺害事件で犯人が遺体のビデオ記録を残
したように、犯行の“記念品”として犯人が手元に置いているのではないかと、変
質者特有の心理を指摘する捜査員もいる。


福岡の女児2人殺害 白い車に藍ちゃん 不明当日に目撃者92.02.27 東京読売朝
刊31頁 社会面(全517字)
 福岡県飯塚市潤野の潤野小一年中川藍ちゃんと梅野裕莉ちゃん(ともに七歳)
が、同県甘木市内の山中で他殺体で見つかった事件で、県警捜査一課と飯塚、甘木
両署の捜査本部は二十六日、潤野小から南東へ約八百メートルの同県穂波町の町道
交差点付近で、二人が姿を消した二十日の午後四時半ごろ、車に乗った藍ちゃんを
見たという目撃証言を得た。ほとんど目の前で見ており、顔の特徴がそっくりであ
ることなどから、有力な情報とみて、車両と運転手の割り出しを急いでいる。この
町道は約三十キロ離れた死体遺棄現場へ通じる国道と接続している。
 目撃したのは、近くの自営業の男性(39)。交差点そばの自動販売機で買った
缶コーヒーを飲んでいたところ、一メートルほど離れた真横に、白色のハッチバッ
ク式小型車が止まった。車の後部座席を見ると、小学一年生くらいの女児が床にひ
ざまずき座席に手をついた不自然な格好で、身を隠すように後ろ向きにうずくまっ
ていた。女児は、目を見開き、脅えきったような表情だったという。
 十秒ほどで車は国道二〇〇号線方向へ走り去り、運転手の顔やナンバーは見てい
ない。二十二日夜に新聞で殺害事件を知り、女児が藍ちゃんの顔写真によく似てい
ることに一目で気づいたという。


福岡の2女児殺害から1週間 ローラー作戦不発 捜査難航 犯人、顔見知り説も9
2.02.27 西部読売夕刊9頁(全1020字)
 福岡県飯塚市潤野の潤野小一年中川藍ちゃんと梅野裕莉ちゃん(ともに七歳)が
殺された事件は、二十七日で事件発生から一週間。福岡県警の捜査本部は連日大量
の捜査員を投入、懸命の聞き込みなどで事件解明を目指しているが、犯人に直接つ
ながる有力情報はなく、捜査は難航の様相も見せ始めている。
 ―――捜査体制
 二人の女児が行方不明になり、殺されて見つかるという異常な犯罪に、県警は遺
体発見翌日から連日四百三十人の捜査員を動員、これまでに延べ約二千五百人を投
入した。聞き込みでは、女児が目撃された潤野地区や本町商店街など繁華街を中心
に、飯塚市内の約二万九千世帯を対象にローラー作戦を行っているほか、死体遺棄
現場に通じる複数の道路沿いなど周辺市町にも対象を広げている。
 市内七か所、遺棄現場への道路沿い五か所で定時検問を実施。また、変質者の情
報収集や遺留品の分析など「あらゆる方向に間口を広げて」捜査、これまでに約百
件を超す情報が寄せられているが、直接犯人に結びつくものはない。
 ―――犯人像
 死体遺棄現場が、約二十キロ離れた山中で、着衣が乱れていたことから、犯人は
「車を運転出来る変質者」と見られている。しかし、知らない人についていかない
ように言われていて、これまでも他人の車に乗ったりしたことのない女児が二人そ
ろって事件に遭っていることから「犯人は顔見知りか、不安を与えない優しい感じ
の男では」との見方もある。
 ―――白い車
 潤野小手前など校区内や周辺の校区、近隣市町など筑豊地区一帯では、「女児に
声をかけて連れ出そうとした」など変質者の情報が異常なほど多い。そのほとんど
が白い軽乗用車に乗った男で行方不明になった当日に「藍ちゃんらしい女児が白い
車の男に声を掛けられていた」、「白い車に乗っていた」といった複数の目撃情報
も寄せられている。
 ―――逃走経路
 二人の遺体が見つかったのは、潤野地区から約二十キロ離れた甘木市野鳥の国道
三二二号線沿いの斜面の下。同じ国道を約三・五キロ筑豊側に戻った所にランドセ
ルや衣服などがまとめて捨ててあった。「遺体を先に捨てたはず」というのが捜査
本部の見方だが、飯塚市から野鳥地区に向かう経路は、主要な路線だけでも、国道
二〇〇号線経由が三通り、三二二号線八丁峠を越えるコースが二通りの計五通りあ
る。このため、山間部を挟んで筑豊側五か所と甘木側二か所で夜間の定時検問を続
け、目撃情報の収集に懸命だが、逃走経路を絞れないことも捜査を難しくしてい
る。


福岡の2女児殺害 「パック」犯人が食べた? 午前中、新たな目撃も92.02.28
西部読売朝刊27頁(全524字)
 福岡県飯塚市の潤野小一年中川藍ちゃんと梅野裕莉ちゃん(ともに七歳)が殺害
された事件で、甘木市の山中で二人のランドセルなどと一緒に見つかったたこ焼き
などの持ち帰り用のパックは、二十七日までの県警捜査一課と飯塚、甘木署の捜査
本部の調べで、犯人が食べたものとの見方が強まった。犯人につながる可能性のあ
る物証で、捜査本部は、逃走経路に当たると見られる複数のルート沿いでの聞き込
み捜査に全力を挙げている。また、同日までに、二人らしい女児が行方不明になっ
た当日の午前九時ごろ、潤野小まで百メートルの地点にいたとの新たな目撃情報を
得た。午前中の足取りでは、最も遅い時間帯のもので、確認を急いでいる。
 調べによると、パックは透明の樹脂製で、草色の包装紙に包まれていた。たこ焼
きか焼きそばが入っていたと見られるが、裕莉ちゃんらの胃の内容物は米粒だけ。
 だが、ランドセルなど他の遺留品と一緒に捨てられた可能性が強く、二人を殺害
後、山中に向かう途中に沿線の店で買って、食べたとの見方もある。
 また、新たな目撃証言はタクシーで通りかかった近くの女性(45)から得た。
はっきりとは確認していないが、ランドセルを背負っていたようで、「こんな時間
に小学生が……」と不審に思ったという。


福岡・飯塚の2女児殺害 午前中犯行の見方も 商店街目撃、はっきりせず92.02.2
8 西部読売夕刊13頁(全873字)
 福岡県飯塚市潤野、潤野小一年中川藍ちゃんと梅野裕莉ちゃん(ともに七歳)
が、甘木市の山中で他殺体で発見された事件で、二人が通学路上にいたことが確実
な午前八時二十分ごろから、本町商店街にいたという情報のある午後二時までの約
五時間の空白を埋める目撃情報が依然少なく、福岡県警捜査一課と飯塚、甘木署の
捜査本部は二十八日も、潤野、本町地区と両地区を結ぶ一帯で、不審な男と一緒に
いる二人を見かけた人がいないか聞き込みを続けている。二人が犯人に出会った時
間帯と場所を絞り込めないため、午前中に殺されたとの見方も出てきており、捜査
本部では「死亡推定時刻の見直しも必要」としている。
 二人についての確実な情報は、午前八時二十分ごろ、学校まで約四百メートルの
通学路上にいるところを、農協職員が見たという証言。
 その後、確かな情報は途絶え、午後二時ごろ、約三キロ離れた本町商店街のおも
ちゃ店にいるところを、店員が目撃したとされている。捜査本部は、服装などから
確度が高いとみていたが、商店街なのに、その前後に、目撃者がほとんどいないな
ど、はっきりしない面も出てきた。
 さらに「通学路をそれて、学校とは反対の本町方向に曲がった」という当初の情
報は、不確かであることがわかり、潤野地区―商店街間で目撃者がいないことと併
せて、商店街での目撃情報については、捜査本部内でも評価が分かれている。
 このため〈1〉朝のうちに拉致(らち)され、早い時間帯に殺された〈2〉午
後、商店街周辺で拉致され、夕方以降に殺された、との見方に加えて、〈3〉朝、
犯人に出会い、車で商店街に行った後、午後、犯人と待ち合わせて、連れて行かれ
た――という第三の見方が浮上。〈3〉の場合、犯人は二人か二人のうちの一方と
顔見知りである可能性が相当高くなる。
 これらのことから、捜査本部は、これまで午後三時―七時、または同六時―九時
とされていた死亡推定時刻の見直しを始めている。二人の胃の中には、米粒のほか
葉野菜類が残っていたことが新たにわかり朝食のものとも考えられるため、二人が
当日の朝、何を食べたか、遺族に再度確認した。


福岡の2女児殺し 有力情報なく捜査長期化か92.02.29 西部読売夕刊13頁(全
416字)
 福岡県飯塚市潤野、潤野小一年中川藍ちゃんと梅野裕莉ちゃん(ともに七歳)が
同県甘木市の山中で他殺体で見つかった事件は、犯人と直接結びつく有力情報が少
なく、捜査は長期化の様相を示し始めている。
 これまでの県警捜査一課と飯塚、甘木署の捜査本部の調べによると、二人は二十
一日夕、甘木市の山中の国道沿いの雑木林で他殺体で見つかった。翌二十二日午
前、現場から四キロ北の雑木林で、二人が所持していたランドセルなどが発見され
たが、いずれも片方の靴だけ見つかっていない。
 二人は、投げ捨てられた時にできたとみられるすり傷が多数あったが、足の裏
に、泥は付いていなかった。このため、本部は、殺害場所は屋外ではなく遺体は車
で運ばれ、捨てられたとの見方を強めている。
 捜査本部に寄せられる情報には今のところ、犯人に直接結びつくような有力なも
のはないうえ、犯人が残したとみられる物証も少ないことから、本部は、引き続
き、連日四百三十人態勢で聞き込み、捜索などを続ける。


[ニュース・アイ]福岡の2女児殺し 埋もれていた変質情報 事件後に証言続々9
2.03.02 西部読売夕刊9頁(全827字)
 福岡県飯塚市潤野、潤野小一年中川藍ちゃんと梅野裕莉ちゃん(ともに七歳)が
登校途中に行方を消し、翌日、同県甘木市の山中で絞殺死体で見つかった事件は、
有力な手掛かりがないまま、二日で遺体発見から十日が経過する。現地を取材して
気付くのは、変質的な事件に関する情報の多さだ。三年前、同じ潤野小一年の松野
愛子ちゃんが失跡した事件の記憶も新しいのに、これらの情報はほとんど警察に届
いていなかった。住民らも、「愛子ちゃん事件を教訓にできなかった」という苦い
思いに捕らえられているようだ。
 潤野小校区は、かつて炭鉱で栄え、多くの炭住があった。約三十年前に最後のヤ
マが閉山後、もとの農村に戻っていったが、この四、五年、宅地化が進み、小学校
の児童数も増えてきた。
 最近、多かった変質者に関する情報は「白い車の男が変な行動をした」「車に乗
るように誘われた」などで、周辺の校区でも同様の情報が多い。
 中には、拉致(らち)事件に発展しかねなかった危険なケースもあったが、飯塚
署は「把握していなかった」と言う。地元の大人たちも、今回の事件の後に、変質
者が多かったことを聞かされて、驚いたという人が少なくない。
 潤野小では、二月六日に児童から変な行為についての報告があり、十日間ほど教
職員でパトロールしたが、その後は事件がなかったので、警察には届けなかった。
今回の事件後、改めて児童に尋ねると、十数件の情報が寄せられたという。
 潤野小PTAは、愛子ちゃん事件の後、不審者情報を地区住民に知らせる広報委
員会を設置、子供たちへの指導も徹底してきただけに、ショックが大きく、「取り
組みは、ベストだったか」「二人が殺されたのは、大人たちの責任では」と、自問
する会員も。
 飯塚市教委は、藍ちゃんらが拉致された二月二十日を忘れまいと、この日と一学
期の四月二十日、二学期の九月二十日を「子どもの生命と安全を考える日」とする
方針を決めた。愛子ちゃん事件と今回の二人の死を、今度こそ教訓として生かそう
という趣旨だ。


飯塚市の2女児殺人事件報道 新聞編(メディア92) 【西部】92.03.25 朝日
朝刊 29頁 福岡 写図有 (全2517字)
 福岡県飯塚市立潤野小学校の1年生女児2人が、2月21日夕に殺されて見つか
った事件は、22日付各紙の朝刊最終版でみると、毎日新聞、読売新聞、西日本新
聞、フクニチ新聞、日本経済新聞は実名、顔写真入りで報道した。産経新聞は大阪
と東京本社の判断が分かれ、朝日新聞は匿名にした。

 この事件が表面化したのは、2人の行方不明が報じられた21日付の朝刊と夕刊
だった。この時点では、読売と朝日は実名で書き、毎日と西日本は匿名にした。し
かし、翌日に遺体が見つかると、朝日は匿名に、毎日と西日本は実名へと変わっ
た。
 毎日新聞の苗村隆太・福岡総局次長は「事件の異常さを重視し、社会に警告する
意味で実名にした。犯罪の報道の仕方には配慮した。行方不明の段階で、すでに公
開捜査として実名が出ており、それをあえて伏せるのはかえって不自然」と話し
た。
 フクニチ新聞の内川秀治編集委員も、行方不明の報道からの連続性をあげて、
「実名の方が容疑者に結びつく情報が得やすい、と判断した。殺されたのがわかっ
たからといって、警察が発表したものを翻すのもおかしい」という。
 読売新聞は「この事件の悪性を訴える意味からも、(実名は)不可欠。衝撃的な
事件では、可能な限り被害者像に迫ることが必要」とし、西部本社の首藤鳳一郎社
会部長は「実名か匿名か、で迷ったが、本来の実名主義を変える必要はない、と判
断した。単に抽象的な『A子ちゃん』『B子ちゃん』の表記では、事件の重大性を
見失う」と話した。
 西日本新聞の寺崎一雄社会部長は「1年前に社内でまとめた手引き『人権報道の
基本』に照らして、事件の残忍さなどからみて、匿名にするのが原則とも考えた。
しかし、この事件の場合、被害者の人権やプライバシーにかかわる内容にはいっさ
い触れず、真相究明のために、新聞のリアリティーを重視した」と、実名の理由を
説明した。
 産経新聞は地元九州に届ける大阪本社発行の紙面は最終版まで実名とし、東京本
社発行分は最終版では匿名に切り替えた。横田憲一郎・大阪本社社会部長は「一報
は提携している地元紙や通信社からの情報を基に判断した」という。東京本社は
「実名が大原則だが、例外として性犯罪の被害者などは匿名にする」としている。
 日経新聞西部支社の島田昌幸報道部長は「犯人逮捕の手掛かりや同種事件の防止
という事件報道の目的に従い、人権に配慮しつつ実名にした。痛ましい事件だが、
想像をかきたてるような表現は極力避けた」と言っている。

 ○「論議を重ね試行錯誤」 遺族の心情に配慮 本社
 飯塚市の女児殺人事件で、朝日新聞は殺された2人を匿名で報道したが、はじめ
から匿名ではなかった。
 遺体発見前日の行方不明時は実名であり、発見当日の最初の原稿には2人の実名
と顔写真があった。ただ、「今後の調べで、2人が性的被害に遭っていたことが分
かれば、匿名とし、顔写真もはずす」という社内向けのただし書きをつけた。
 その後、福岡県警や飯塚署、遺体発見現場の記者から寄せられた情報は「着衣の
乱れなどから、いたずら目的の犯行の可能性が高い」で一致していた。
 朝日新聞には事件報道の在り方を検討する事件報道小委員会があり、「実名報道
を維持しながら、一般犯罪については匿名報道の範囲を拡大する」という方針を出
している。また、性犯罪の被害者が殺害された場合、原則として匿名にすることも
決めている。
 しかし、原則を機械的に適用したのではなかった。西部本社報道センターデスク
は、同センター部長代理を兼ねている堀鉄蔵社会部長や福岡県警キャップ、それに
東京など他本社の社会部デスクとも相談した。その結果、「この事件の場合、匿名
にしても事件の残虐性は伝わる。むしろ、被害者の人権やご遺族の心情に配慮すべ
きだろう」という意見が多数だった。
 原稿から実名を削って「Aちゃん」「Bちゃん」とし、顔写真をはずした。
 それでも、匿名と判断した後、「いたずら目的などについて表現を和らげ、実
名、顔写真使用を検討してはどうか」といった指摘が社内からあった。だが、「事
実をゆがめてまで実名報道にすべきでない」として匿名を続けることにした。
 匿名報道後、西部本社をはじめ東京、大阪、名古屋各本社編集局の部長会でも論
議になった。「1紙が匿名で現場状況を報道し、別のテレビが実名で報じれば、両
方を見ると全体がわかってしまうのではないか」「匿名性は事実上なくなっている
が、やはり遺族へのいたわり、配慮が必要だろう」「名前を出さないメディアがあ
る。そのことが社会にある影響を与えると思う」などだった。
 西部本社読者情報室には、「行方不明時は実名なのに、その後匿名にしたのはな
ぜか」という読者からの問い合わせが何件も寄せられた。同室員が「行方不明時点
では分からなかった性犯罪の被害者である可能性」などを説明すると、多くの読者
は納得してくれたという。
 後日、飯塚市内の子どもの人権を守る市民団体から、犯罪報道の在り方について
質問状が寄せられた。堀社会部長は回答の中で「日々の事件報道に当たっては、実
名か匿名か、顔写真を掲載すべきかどうかについて、その都度、記者やデスクが論
議し、迷い、悩みながら、試行錯誤を繰り返しているところ」と述べた。
   ◇
 飯塚市の事件後も、各紙の判断が揺れる殺人事件が続いた。3月5日、高知市で
高校1年の姉が中学1年の妹を刺し殺す事件が起き、翌6日には、千葉県市川市で
高校生の長女を除く家族4人の他殺死体が見つかった。
 高知市のケースでは、一報の夕刊で被害者の名前を出した社が多かったが、姉が
犯行を認めた後の翌日朝刊から被害者を匿名に切り替えた。また市川市の事件の一
報では、日経新聞が長女を含めて一家5人全員を実名にし、産経新聞は正反対に全
員を匿名に。朝日、毎日、読売は、殺された4人を実名で、生き残った長女を匿名
で報道した。
 実名か匿名かの事件報道は、89年、東京都足立区の少年グループが女子高校生
を監禁し殺害した事件で被害者の実名報道が問題となり、論議が高まった。以後、
各紙とも「原則は実名報道」としつつ、被害者の人権に配慮し、匿名報道の範囲が
広がる傾向にある。


福岡・飯塚の2女児殺し 不審な車2台目撃 通学路近くと甘木で92.04.20 西部
読売朝刊27頁(全556字)
 二月二十日、福岡県飯塚市潤野、潤野小一年中川藍ちゃんと梅野裕莉ちゃん(と
もに当時七歳)が登校途中に行方不明となり、翌日、甘木市内の山中で絞殺体で見
つかった事件で、福岡県警捜査一課と飯塚、甘木署の捜査本部は十九日までに、通
学路近くと所持品の遺棄現場で不審な黒色乗用車と紺色ワゴン車の新たな目撃情報
をつかんだ。捜査本部は事件解決に結びつく可能性があるとみて車の特定を急いで
いる。
 調べによると、黒色乗用車が目撃されたのは潤野小校区に隣接する穂波町若菜小
校区。二十日午前八時半すぎ、T字路で女性が停車中、前方を大型でやや古いタイ
プの黒色乗用車が横切った。
 運転していたのは中年の男性で、後部座席に乗った女児二人をしかりつけ、女児
たちは窓にへばりつくようにしており、助けを求めているようにも見えた、とい
う。
 一方、紺色ワゴン車を見たという情報は潤野地区と、甘木市のランドセルなどの
遺棄現場の二か所。潤野地区では二十日午前九時ごろ、女児二人がおびえた様子で
乗っているのを、女性商店主が見たといい、後輪がダブルタイヤだったという。筑
豊地区の約千六百台に絞って捜査中。
 甘木市では、二十一日昼、遺体発見現場から約三キロ飯塚市寄りの所持品遺棄現
場の国道三二二号線わきに止まっているのを、車で通りかかった人が目撃、女児は
見なかったという。


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■■■■■仙台三高校生連続自殺事件■■■■■
■■■■■1992年2月9日〜4月9日■■■■■
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連鎖自殺?仙台でも 中学同窓男子3人 成績、いじめを苦に92.07.05 東京読売
朝刊31頁 社会面(全550字)
 同じ中学校を卒業した仙台市内の十七歳の男子高校生三人が、二月から四月にか
けて、それぞれの自宅で相次いで首をつって自殺していたことが四日、明らかにな
った。大阪府熊取町でも、少年の“連鎖自殺”が明らかになったばかりで、教育関
係者はショックを受けている。
 仙台南署などの調べによると、最初の自殺は二月九日夜。農業高校二年A君(1
7)が「授業についていけない。ごめんなさい」との遺書を残し、自宅で首をつっ
た。
 四月一日深夜には、別の商業高校に通う三年への進級を前にしたB君(17)が
家族にあてた遺書を残して自殺。さらに、同九日夕には、A君と同じ農業高校に通
う三年C君(17)がやはり自殺した。遺書はなかったが、始業式だった前日にも
手首を切って自殺を図っており、母親には「学校でいじめにあった」と話していた
という。
 三人は同じ中学を平成二年に卒業した同窓生で、A君とB君はお互いの家に行き
来するなど非常に仲が良く、A君とC君も同じ高校に通う友人同士だった。このた
め、教育関係者の間で、多感な青年期の“連鎖反応”と指摘する声も出ている。
 二人の自殺者が出た農業高校では「生命の尊さを学ぶよう努力してきたのに残念
でならない。学校の調査ではいじめの事実はないとの結論に達しており、動機につ
いては全くわからない」と話している。

3高校生、相次ぎ自殺 中学同窓、2〜4月に自宅で首つり−−宮城・仙台92.07.0
5 毎日東京本紙朝刊 27頁 社会 写図無 (全534字)
 仙台市内の同じ中学校を卒業した高校生三人が今年二月から四月にかけ、相次い
で自宅で首つり自殺していたことが四日明らかになった。先月には大阪府泉南郡熊
取町内で中学時代の友人などつながりのある三人がほぼ一週間おきに自殺した事件
があり、似たような事件の発生に宮城県教委や仙台南署は自殺の動機や関連性を調
べている。
 県教委の説明などによると、三人は同市南部の公立中を一昨年卒業。クラスは
別々だったが自宅が近所で、一緒に登下校する仲だったという。
 二月九日夜、高校二年生のA君(当時十七歳)が自宅の自室で首をつって死んで
いるのを家族が発見。仙台南署で調べたところ、遺書などは発見できなかったが、
自殺と断定した。
 A君の四十九日法要直後の四月一日深夜、別の高校に進学したB君(同)、さら
に同九日夕方にはA君と同じ高校に通っていたC君(同)が首をつって自殺した。
いずれも動機は不明。
 関係者の話ではB君、C君の二人はA君の突然の死にショックを受けていたらし
く、特にB君はA君の通夜に出席し、遺体とともに一晩を過ごしていたという。
 警察では後追い自殺の可能性もあるとみている。県教委も三人の出身中学、高校
に調査を指示。各学校に対し、生徒の悩みなどをできるだけ把握し、再発を防ぐよ
う口頭で通達した。


仙台で2―4月にかけ高校生3人が相次ぎ自殺 同じ中学卒業生92.07.05 毎日大
阪本紙朝刊 31頁 社会 写図無 (全460字)
 仙台市内の同じ中学校を卒業した高校生三人が今年二月から四月にかけ、相次い
で自宅で首つり自殺していることが四日明らかになった。先月には大阪府泉南郡熊
取町内で中学時代の友人などつながりのある三人がほぼ一週間おきに自殺した事件
があり、似たような事件の発生に宮城県教委や仙台南署は自殺の動機や関連性を調
べている。
 県教委の説明などによると、三人は同市南部の公立中を一昨年卒業。一緒に登下
校する仲だったという。
 二月九日夜、高校二年生のA君(当時十七歳)が自宅の自室で首をつって死んで
いるのを家族が発見。仙台南署で調べたところ、遺書などは発見できなかったが、
自殺と断定した。A君の四十九日法要直後の四月一日深夜、別の高校の三年に進学
したB君(同)、さらに同九日夕方にはA君と同じ高校に通っていたC君(同)が
首をつって自殺した。いずれも動機は不明。
 関係者の話ではB君、C君の二人はA君の突然の死にショックを受けていたらし
く、特にB君はA君の通夜に出席し、遺体とともに一晩を過ごしていたという。警
察では後追い自殺の可能性もあるとみている。


次々「死」を選んだ少年たちの風景 仙台市と大阪・熊取町92.07.09 朝日朝刊
30頁 2社 写図無 (全1497字)
 大阪府泉南郡熊取町で少年の連続自殺があったが、仙台でも2月から4月にかけ
て、高校生3人が次々に自殺していたことがわかった。熊取町と同じ人口急増地域
で、3人は同じ中学校の卒業生、うち2人は親友だった。学校関係者と家族は「互
いの自殺に関連はないと思う」といっているが、それぞれ交友関係などで悩んでい
たとみられる。3人とも自宅で首をつるなど、死に追い詰められるまでの状況に
は、いくつかの共通点があった。

 3人が住んでいたのは仙台市南部の田園地帯。市域の膨張で新興住宅街に変容し
つつあるところだ。
 最初に自殺したのは農業高校2年生のA君(当時17)。2月9日の夜だった。
家族などへの感謝を短い言葉でつづった遺書が見つかった。母親によると、スポー
ツ好きで、繊細な優しい性格だったという。
 家族は普通高校への進学を勧めたが、A君は「機械を勉強したい」と、農業機械
のある高校に進学した。親の助言を押し切っての進学だったため、だれにも相談で
きずに悩んでいたふしがあった、と母親はいう。
 2人目は、商業高校に通うB君(同)。3年になった4月1日に死を選んだ。学
校では1人でいることが多かったという。
 中学校時代からA君とは仲が良く、高校に入ってからは毎週のように2人で釣り
に出かけ、一緒にアルバイトもしていた。A君の葬式には一番最初に駆けつけ、式
の間じゅう泣き続けていたという。
 3人目はA君と同じ高校に通うC君(同)。翌日から新学年の授業が始まるとい
う4月9日のことだ。A君やB君と特に親交があったわけではないという。亡くな
る直前、家族に学校でいじめにあったと話していたというが、高校側は「調べてみ
たが、いじめは全然なかった」と話す。
 3人の自殺を調査した宮城県教委は「互いに関連性はなかった。偶然が重なった
と考えるほかない」との結論を出した。
 城丸章夫・千葉大学名誉教授(教育学)は「現代の若者は過度の競争の中で、あ
るところから少し落ちただけで、先が見えてしまったと絶望感を抱きがちだ。行き
所を失った若者が、自殺という選択肢を身近に見ることで、心を動かされたことも
考えられる」と分析する。
    ◇
 大阪府熊取町では6月、1週間おきに無職D君(当時17)、建設作業員E君
(同18)、旅館従業員F君(同)の3人が自殺した。D君とE君は中学時代の友
人。E君とF君は建材会社で一緒に働いた仲だった。
 タマネギ小屋でD君が首をつった後に自殺したE君の通夜と葬儀には、同じ世代
の男女が約400人も集まった。F君も勤め先の三重県から出席していた。少年ら
は一様にうなだれ、じっと立ち尽くした。「式が終わっても帰ろうとしない。異様
な感じでした」と親類の1人はいう。
 調べでは、3人とも首つりで遺書はなく、D君が借金を返しておくことを頼むメ
モを残しただけ。F君は失恋が引き金になったとみられているが、いずれもはっき
りとした自殺の理由はわからない。
 同町は70年代後半に人口がどっと増え、増加率が府下でトップだったこともあ
る。近くの泉州沖では関西新空港の建設が進み、急速に都市化の波に洗われてい
る。
 北海道白老町で87年に起きたシンナー仲間5人の連続自殺を著書「『事件』を
見にゆく」で取り上げたルポライターの吉岡忍さんは、地域の崩壊に共通点を見い
だす。
 「少年らは学校や地域社会からはみ出して、同じ境遇、同じ世代の仲間としか付
き合えなかったのではないか。こうした少年を受け入れてきた地域のシステムが都
市化によって崩壊しているのに、不満を発散できるような盛り場は少ない。彼らは
想像以上の閉塞(へいそく)感の中にあったのだと思う」


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■■■■■熊取7人連続自殺変死事件■■■■■
■■■■■1992年4月29日〜7月2日■■■■■
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仲間の少年が3人自殺 1週間おき、後追い? 大阪府熊取町【大阪】92.06.26
朝日朝刊 1頁 1総 写図有 (全952字)
 大阪府泉南郡で、今月に入って約1週間おきに10代の少年3人が次々に自殺
し、25日にも現場近くで少年と見られる4人目の男性が自殺しているのが発見さ
れた。大阪府警は、現場がいずれも半径約600メートル内で極めて近く、最初の
3人については友人や遊び仲間だったことから、後追い自殺の可能性もあるとみて
いる。また、4人目の身元確認を急いでいる。4月にも現場近くで17歳の少年が
死亡しており、この少年も最初の3人のうちの1人と顔見知りだったことから関連
を調べる。

 泉佐野署の調べでは、今月4日、泉南郡熊取町のタマネギ小屋で同町の少年A君
(17)がロープで首をつって死んでいるのが見つかった。
 6日後の10日には、同じ町の近くの納屋で、熊取町に隣接する泉佐野市の土木
作業員の少年B君(18)がナイロンロープで首をつって死んでいた。現場は1年
前まで住んでいた自宅の納屋だったという。
 さらに1週間後の17日、三重県鳥羽市の旅館従業員の少年C君(18)が熊取
町の農作業小屋の中でビニールひもで首をつっていた。
 また、25日、熊取町内の飛び地にある貝塚市の林の中で少年と見られる男性が
首をつって死んでいた。身元は分かっていないが、バスケットシューズをはいてお
り、スポーツマンの体形だった。
 同署などの調べでは、A君とB君は友人、C君も顔見知り。それぞれの自殺の原
因はわかっていないが、A君は「借金を返しておいてほしい」という内容のメモを
残していたという。4件の現場は、熊取町と貝塚市の境付近で半径600メートル
の範囲内で、一部にはシンナー臭もあった。
 また、最初の自殺の約1カ月前の4月29日にも、同じ町で、17歳の少年が池
で死亡しており、警察は事故の可能性が高いとしている。少年はA君の友人で、A
君はこの少年の葬儀に出席していた。
 府警などによるとB君の葬儀の際、「どこかに縄はないか」などと自殺をほのめ
かす言葉を繰り返していた少年がおり、これがC君と見られている。
 大阪府警の調べでは、いずれも事件性はない。身元のわかっている3人について
は、自殺の具体的な動機がはっきりしないことから、最初に池で死亡した少年の死
に何らかの影響を受けた後追い自殺の可能性もある、としている。この4人はオー
トバイなどを趣味にするグループ。


少年の心に何が起きた 「初七日」意識か 少年連続自殺事件【大阪】92.06.26
朝日朝刊 31頁 1社 写図無 (全1137字)
 少年たちは初七日を意識するかのように、約1週間おきに自ら命を絶っていっ
た。タマネギ畑が広がる大阪府泉南郡熊取町周辺で起きた連続自殺。この3週間ほ
どの間に亡くなった4人のうち、3人はお互い顔見知りだった。動機をほのめかす
ような遺書は見つかっていない。そこに、社会への疎外感を指摘する声もある。何
が少年たちを追い詰めていったのか。

 4日に熊取町のタマネギ小屋で亡くなった17歳のA君は、4月29日、同町の
池で死んだ少年(17)と同じ中学校に通っていた。父親は「だれかに脅されてい
るといううわさがあったので、調べてみたが、そうではなかった。(自殺の)理由
についてはわからない」と戸惑う。
 6日後、A君の後を追うように首をつったB君(18)は、友人同士だった。近
所の人の話では、B君は地元の中学を卒業し、父親の仕事の手伝いなどをしてい
た。1年ほど前に、隣接する泉佐野市へ。A君の初七日の日、以前いた家に戻り、
廃屋となった納屋で死んだらしい。
 その1週間後の17日に農作業小屋で死んだC君(18)は、高知県出身。亡く
なる直前まで勤めていた三重県鳥羽市の旅館などの話では、高知県の私立高校を中
退した後、91年5月に大阪に出て、B君の父親の会社に勤めた。今年3月から旅
館に就職し、レストランのウエーターとして勤務。今月11日、上司に「大阪の友
達が亡くなった。墓参りに行きたいので2、3日休ませてほしい」と頼み、12日
に大阪に向けて出発した。この友人がB君と見られる。
 大阪府警は当初、自殺をそそのかした者がいないかどうか、また、自殺を装った
殺人事件の可能性はないかなどについて、慎重に捜査したが、いまのところ事件性
は出てきていない。
 一方、友人らの話などから、彼らが漠然とした疎外感や孤独感を抱いていたとみ
られることから、府警は「連鎖反応的に自殺を引き起こしたのではないか」とみ
る。捜査員の1人は「友人がひとりずつ亡くなり、なんとなく引きずられたとも言
える」と話している。
 熊取町に住む会社員は「近くで毎週、少年の自殺が相次いでいるのは聞いてい
た。単車を乗り回すグループ仲間だったらしいが、詳しいことは分からない」と言
葉少な。同町は近く、青少年問題協議会の会合を開き、一連の自殺について警察な
どから事情を聴き、今後の対応を検討することにしている。

 ○何かを約束する?
 推理作家佐野洋さんの話 少年たちがどういう関係にあったかなど具体的なデー
タが乏しいので、軽々なことは言えないが、一つは何かに影響を受けて、厭(え
ん)世的に連続的に自殺したと考えられる。このほか、例えば不治の病などで亡く
なった友人の後を追った昔の女学生のように、何かを約束しあっていて、順番に自
殺したという見方もできる。


1ヵ月に4少年自殺 うち3人は知り合い 大阪府・泉南郡92.06.26 朝日夕刊
15頁 1社 写図無 (全647字)
 大阪府泉南郡で、今月に入って約1週間おきに10代の少年3人が次々に自殺
し、25日にも現場近くで少年と見られる4人目の若い男性が自殺しているのが発
見された。大阪府警は、現場がいずれも半径約600メートル内で極めて近く、最
初の3人については友人や遊び仲間だったことから、後追い自殺の可能性もあると
みている。また、4人目の男性の身元確認を急いでいる。
 泉佐野署によると、今月4日、泉南郡熊取町のタマネギ小屋で同町の少年A君
(17)がロープで首をつって死んでいるのが見つかった。6日後の10日には、
同じ町の近くの納屋で、熊取町に隣接する泉佐野市の建設作業員の少年B君(1
8)がナイロンロープで首をつって死んでいた。
 1週間後の17日、三重県鳥羽市の旅館従業員の少年C君(18)が熊取町の農
作業小屋の中でビニールひもで首をつっていた。
 さらに、25日には、熊取町内の飛び地にある貝塚市の林の中で男性が首をつっ
て死んでいた。身元は分かっていない。
 同署などの調べでは、A君とB君は友人、C君も顔見知り。
 最初の自殺の約1カ月前の4月29日には、同じ町で、17歳の少年が池で死亡
しており、警察はシンナー吸引による事故の可能性が高いとしている。少年はA君
の友人で、A君はこの少年の葬儀に出席していた。
 大阪府警の調べでは、いずれも事件性はない。身元のわかっている3人について
は、自殺の具体的な動機がはっきりしないことから、最初に池で死亡した少年の死
に何らかの影響を受けた後追い自殺の可能性もある、としている。


さらに1人死亡 シンナー吸引が原因か 熊取町の連続自殺 【大阪】92.06.26
朝日夕刊 19頁 1社 写図無 (全660字)
 4月に起きた少年の事故死を最初に仲間の少年3人が今月、相次いで自殺した大
阪府泉南郡熊取町で、5月下旬にも別の少年がシンナー吸引がもとで死亡していた
ことが26日、大阪府警や同町の調べでわかった。最初の事故死もシンナーが原因
と見られることから、同町では青少年指導員などを動員してシンナー遊びの予防に
乗り出した。一方、25日に自殺体で見つかった少年と見られる男性の身元は、不
明のままで、大阪府警泉佐野署は割り出しを急いでいる。
 同署などによると、新たに死亡が分かったのは17歳の少年。5月29日に、シ
ンナーの吸引が引き金になったとみられる心不全で死亡していた。4月29日にも
別の17歳の少年が池で泳いでいて死亡しているが、この少年もシンナーを吸って
いたらしい。
 同署によると、6月4、10、17日に首つり自殺した3人は友人か顔見知りだ
った。4、5月に死亡した少年2人も同年代であることから、つき合いがあったか
どうか調べている。また、25日に自殺した男性は、前の3件の現場近くで、同じ
く首をつっていたことから、3人の知人らに照会したが、該当する少年はいなかっ
た。
 このため、大阪府下の各警察署に手配し、家出人や行方不明者との照合を進める
一方、同町内で聞き込みをしている。
 自殺をした中にも、シンナーを吸っていたとみられるケースがあった。このた
め、同町は1週間ほど前から、各区長や青少年指導員が夜、町内を回り、注意して
いる。7月9日には、改めて区長会で、シンナーを吸っている少年を発見した時の
適切な対応を要請することにしている。


少年4人“自殺連鎖” 遊び仲間、この3週間に/大阪92.06.26 東京読売夕刊2
3頁 社会面(全566字)
 大阪府熊取町周辺で、今月四日からほぼ一週間おきに十七、八歳の少年三人が相
次いで自殺、二十五日にも近くで同年配の少年が自殺しているのが見つかった。三
人は遊び仲間などで、四月二十九日に同町内の池に転落して死亡した中学同窓生の
少年の葬儀に参列した者もいることから、「初七日」の連鎖自殺の可能性もあると
みて泉佐野署は関連や背景を調べている。
 調べによると、熊取町内では、さる四日に、タマネギ小屋で近くの無職少年(1
7)がロープで首をつって死んでいるのが見つかった。その六日後の十日、自宅納
屋で泉佐野市内の土木作業員(18)、さらに七日後の十七日には野小屋で三重県
鳥羽市の旅館従業員(18)がそれぞれ首をつって死んでいるのが発見された。
 泉佐野署で調べたところ、うち無職少年と土木作業員の二人は以前、お互いの家
が近くでバイク仲間。旅館従業員は今月十一日、勤務先に「友人(土木作業員)の
葬儀に出たいので休ませてほしい」と言って休みを取り、熊取町内で営まれた葬儀
に参列していた。
 さらに無職少年と同じ中学出身者の板金工(17)が、四月二十九日に同町内の
池に転落死し、少年が葬儀に出ていたこともわかった。 また今月二十五日には同
町に接した貝塚市内で十七、八歳の少年が首つり自殺しているのが見つかり、身元
はまだわからず、同署と貝塚署で関連の有無を調べている。


この6月、何があった? 友人、知人…少年自殺、週1人ずつ−−大阪・熊取町92.
06.26 東京本紙朝刊 31頁 社会 写図有 (全407字)
 大阪府泉南郡熊取町で二十五日午後、十代後半とみられる男性の首つり死体が見
つかった。身元はわかっていないが、同町内では今春以降、少年の事故死、自殺が
相次ぎ、特に今月に入ってからは、毎週一人ずつ自殺している。いずれも動機は不
明で、相次ぐナゾの死に、住民の間に不安が広がっている。
 同署の調べによる死者は別表の通り。いずれも、発見前の二十四時間以内に死亡
したとみられる。
 身元不明の男性を除く四人は、同町内の中学校の同窓生や友人同士で、なんらか
のつながりがある。特に、旅館手伝いの少年は、旅館の経営者に「友人が死んだの
で墓参りに行く」と言い残して、熊取町に来て自殺した。
 こうしたことから同署は、池に転落死した板金工の不慮の死をきっかけにした連
鎖的な自殺の可能性もあるとみているが、ただ一人、無職の少年が残した遺書めい
たメモからも動機はうかがえず、真相はわからない。(この記事には表「熊取町で
自殺・事故死した少年」があります)


10代後半の少年自殺相次ぐ、6月に入り4人、動機は不明、連鎖反応か−大阪府
熊取92.06.26 毎日大阪本紙朝刊 31頁 社会 写図無 (全528字)
 大阪府泉南郡熊取町で二十五日午後、十代後半とみられる男性の首つり死体が見
つかった。身元はわかっていないが、同町内では今春以降、少年の事故死、自殺が
相次ぎ、特に今月に入ってからは、毎週一人ずつ自殺している。いずれも動機は不
明で、事態を重視した町は来月六日、緊急対策会議を開き、大阪府警泉佐野署も自
殺の動機など捜査を始めた。
 同署の調べによる死者は別表の通り。いずれも、発見前の二十四時間以内に死亡
したとみられる。
 身元不明の男性を除く四人は、同町内の中学校の同窓生や、友人同士で、なんら
かのつながりがある。特に、旅館手伝いの少年は、旅館の経営者に「友人が死んだ
ので葬式に行く」と言い残して、熊取町に来て十二日の作業員の葬儀に参列。その
後、自殺した。
 同署は、池に転落死した板金工の不慮の死をきっかけにした連鎖的な自殺の可能
性もあるとみているが、無職の少年が残した遺書めいたメモからも動機はうかがえ
ず、真相はわからない。
 同署や熊取町教委によると、ここ数年、同町(人口約三万九千人)での少年の自
殺はゼロ。
 一方、昨年一年間の大阪府内での少年の自殺は、ここ三十年間で最低の三十六
件。八六年の五十六件以降年々減少傾向にある。病気や学校問題の悩みで死を選ぶ
ケースが多いという。


自殺男性は市職員 少年の連続自殺とは無関係 大阪92.06.27 朝日朝刊 30頁
 2社 写図無 (全165字)
 大阪府貝塚市で25日、首をつって死んでいた男性は、泉佐野署の26日の調べ
で、泉南郡熊取町内に住む岸和田市職員(22)とわかった。同町内では今月に入
り、少年3人が1週間おきに首つり自殺をし、4月と5月にも、シンナーが引き金
になった事故や病気で少年2人が死んでいたが、同署では、この職員と少年らとの
付き合いはなく、無関係と見ている。


貝塚の自殺男性 3少年とは無関係/大阪92.06.27 大阪読売朝刊27頁(全12
0字)
 大阪府貝塚市内の山林で二十五日、男性が自殺しているのが見つかったが、泉佐
野署の調べで二十六日、熊取町大久保の岸和田市職員(22)とわかった。現場近
くの熊取町内で今月四日から十七日にかけ相次いで自殺した少年三人とは、面識も
なく、無関係らしい。


熊取町の首つり男性、身元判明 連鎖自殺との関連薄い92.06.27 毎日大阪本紙朝
刊 27頁 社会 写図無 (全185字)
 大阪府泉南郡熊取町内にある貝塚市の飛び地の林で二十五日夕、首をつって死亡
していた男性は二十六日、同町大久保、公務員、Aさん(22)とわかった。同町
内では今月に入り三件の少年の首つり自殺が相次いでいるが、Aさんは三人と血縁
や友人関係にないことなどから、連鎖的な三人の自殺との関連性は薄いとみられ
る。Aさんは二十五日朝、自宅を出てそのまま職場を無断欠勤。家族らが捜してい
た。


[NEWSズームアップ]大阪・熊取の少年連続自殺 孤独共有、死まで連鎖?92.
07.01 大阪読売夕刊7頁 写有 表有(全2624字)
 大阪府熊取町で起きた少年三人の連続自殺。ほぼ一週間おきに、半径六百メート
ルの範囲内でロープで首をつる――という奇妙な一致から後追い自殺との見方もあ
ったが、取材を進めると直接の動機は異なり、家庭環境や仕事、交友関係の中でそ
れぞれに悩む、孤独な若者の姿が浮かび上がってきた。だが、死を決意するほどの
動機はなかなか見つからない。少年たちの周辺の証言をもとに、何が少年たちを死
に駆り立てたか――を探ってみた。
 連続自殺は先月四日朝、タマネギ畑の一角にある小屋で、ロープで首をつった無
職A君(17)が見つかったのが最初だった。その六日後、南約一キロの納屋で土
木作業員B君(18)が、さらに一週間後には北東約一キロの野小屋で、旅館従業
員C君(18)も同じようにして自殺した。
 A、B両君は中学二年まで同じ学校。C君は高知県の高校を中退後、B君の父親
の経営する土建会社に数か月勤めていた。三人とも同じバイク・グループに入って
いたが、一年前に解散している。
 〈弟がA君のことを話しているのを聞いたことがない。親しい五、六人の中には
入っていなかった〉(B君の姉)
 〈三人ともグループ内で特に親しくはなかった〉(バイク仲間)
 三人を取り巻く人は、いずれも「後追い自殺をするような関係ではなかった」と
口をそろえる。
 《A君のケース》
 中学を卒業後、美容専門学校に入ったが、半年で中退。四日午前零時ごろ自宅に
帰り、同二時ごろ再び外出、その三時間後に遺体で見つかった。仏壇に金を借りた
とみられる友人二人の名前と十数万円と記したメモが残されていた。
 〈金を返すよういわれていたらしいが、そんなことで死ぬとは考えられない〉
(グループの先輩)
 〈玄関先でバイクをいじる姿は楽しそうだった。おとなしい、やさしい子でした
〉(近所の人)
 A君の死ぬ一か月前、同じ町内で一年後輩の板金工(17)がシンナーを吸引し
た後、「泳ぐ」と池に入って死亡している。
 〈A君はこの後輩とは別グループ。後輩の死はそんなにショックではなかったは
ず〉(同窓生)
 《B君のケース》
 中学卒業後、父親の土建会社を手伝い「会社を大きくする」と張り切っていた。
会社は間もなく倒産し、父親は家を出、母親、姉と生活。昨年六月、生まれ育った
家が借金のかたに取られた。死に場所に選んだのは、かつて一家が住んでいた家の
納屋だった。 〈卒業のとき、「父の会社で二十歳までに専務になるんや」と話し
ていた。自宅が人手に渡ってからは、「買い戻したい」とけなげに働いていまし
た。しっかりした子でした〉(中学時代の教師)
 〈自殺した場所が、原因と関係あるような気がする〉(友人)
 八日夜、家族に「明日から仕事に出るので、弁当を作って」と頼んだ。翌九日午
後十一時半、父親に電話し、仕事の打ち合わせをしている。死亡推定時刻はこの二
時間後。急激な心境変化があったようだ。
 〈シンが強く人を引っ張る力があった。後追い自殺するようなやつじゃない〉
(グループの先輩)
 〈A君が死んだ翌日、「悩みを相談し合おう。A君の分まで頑張って生きよう」
と仲間を励ましていたのに〉(友人)
 《C君のケース》
 今年三月から三重県鳥羽市の旅館で働き、B君が自殺した二日後の十二日、大阪
へ。葬儀には間に合わず、十三日午後、旅館に「明日帰ります」と電話し、その四
日後に自殺した。
 〈礼儀正しく、非常にまじめな子でした〉(旅館の支配人)
 大阪で久しぶりに遊び仲間と再会、笑顔で近況を話し、楽しそうにしていた。
 自殺前日の十六日昼、仲間とシンナーを吸っている最中、昨年秋に交際していた
女店員(17)に会いたいと言い出した。友人二人に付き添われて女店員宅に行
き、十七日午前零時ごろ、女店員から「近く結婚するの」と聞かされて顔色が変わ
った。その直後に「ロープはないか」と探し、友人と別れた六時間後に遺体で発見
された。
 〈本気で自殺を考えている様子だったので、ロープを探すふりをして「ない」と
言ったのに……〉(一緒に女店員に会いに行った友人)
 ◆現実逃避で心に安らぎ
 少年らはどうして同じような場所、同じ方法で死んだのか。
 薬物専門家によると、シンナーの常習グループの間では一人が「チョウが見え
た」と口にすると、他の仲間も同じ幻覚にとらわれることがある。シンナーを吸っ
ていないときでも、ストレスを受けたり睡眠が不足したりすると、幻覚状態に陥る
ともいわれる。死に関する何らかの幻覚を共有したのか。
 シンナーを吸えば恐怖心がマヒし、何でも出来ると思うこともある。
 〈仲間が死んだことで死も身近に思えてしまった。そこで、当面の不安、悩みの
解決策として、簡単に死を選んだことも考えられる〉(捜査員)
 〈些細(ささい)な悩みが仲間の死で増幅され、生と死の境が見えにくくなった
のでしょう〉(カウンセラー)
 自殺がいずれも週半ばだったのはなぜか。
 〈あの子たちは週末にバイクやシンナーにのめり込み、週明けはいつもグッタリ
していました〉(遺族の母親)
 興奮から覚め、現実に直面するのがいつも週半ば。現実の生活に手ごたえを見い
だせず、生きることに弱気になるのがこの周期だったのだろうか。
 ◆社会の枠に身動き取れず
 「日本子どもを守る会」会長の大田尭・東京大名誉教授(教育学)の話「この世
代の若者たちは、体は大人だが、社会からは一人前とは認められず、自分の存在意
義を自覚出来ないでいる。大人たちが勝手に決めた学校、家庭などの枠に閉じ込め
られ、身動きの取れない中途半端な立場に追いやられた結果、絶えず生の不安感を
抱いている。その意味では、現代社会の犠牲者ともいえる。
 今回の場合、少年らは狭いコミュニティーを形成し、シンナーやバイクという現
実逃避の手段を通して互いに確認し合い、生を充足させていたのではないか。それ
が仲間の一人の自殺というつまずきに直面し、最後のとりでであるコミュニティー
の存在意義が崩れて、生きる当てを失い、連鎖的に自殺に走ったのではないだろう
か」
                ◇
           熊取町の少年連続自殺死亡者     発見  日時
      自殺の背景年齢は当時       場所 無職     6月4日
(木)朝    約1か月前、中学の後輩がシA君(17) タマネギ小屋
   ンナー中毒で死亡。友人から
                   の借金を記したメモを残す土木作業員
 6月10日(水)午前  父親が経営する会社が倒産。 B君(18) 元自宅
の納屋      借金で自宅が他人に渡り、家
                   族は別れて生活旅館従業員  6月17
日(水)朝   以前に交際していた女性のC君(18) 野小屋
  結婚を知り落胆。直後にシン
                   ナーを吸引した


女子学生自殺図る 胸を刺し血まみれ また大阪・熊取町で92.07.03 大阪読売朝
刊31頁(全228字)
 二日午後八時四十分ごろ、大阪府熊取町の道路わきの溝で、近くの大学一年A子
さん(19)が血まみれになって倒れているのを、通行人が見つけた。A子さんは
病院に運ばれたが、胸部を切り重体。
 泉佐野署は、体の下に果物ナイフが落ちており、ためらい傷があることなどか
ら、自殺を図ったと断定した。
 熊取町では六月四日から十七日までの間、十七歳と十八歳の少年二人の計三人が
ほぼ一週間おきに半径六百メートルの範囲内で首つり自殺しており、A子さんが見
つかった現場もこの範囲内だった。


自殺図った女子大生死亡/大阪・熊取町92.07.03 大阪読売夕刊23頁(全70
字)
 大阪府熊取町久保の町営グラウンドで二日夜、自分で左胸を果物ナイフで刺した
近くの大学一年の女性(19)は三日午前二時十分、出血多量で死亡した。


大阪・熊取町、なぞの連続自殺(日曜スコープ) 【大阪】92.07.05 朝日朝刊
30頁 2社 写図無 (全2103字)
 1人の少年の死が誘い水になったのだろうか。あまりにもあっけなく、次々に少
年たちが死んでいった。大阪府泉南郡熊取町で1週間おきに起きた少年3人の連続
自殺。警察の捜査でも、はっきりとした動機はわからないが、仲間と集まってバイ
クに乗ったり、シンナーを吸ったりしていたという。地元ではその後も青少年の自
殺が相次いだ。なぜ、彼らは死を急いだのか。取材を通じて疎外感や連鎖性がほの
見えてきた。

 ◆仲間◆
 タマネギ小屋で無職A君(17)が首をつってから6日後に自殺した建設作業員
B君(18)の通夜と葬儀には、同じ世代の男女が約400人も集まった。少年ら
は一様にうなだれ、じっと立ち尽くした。「式が終わっても帰ろうとしない。異様
な感じでした」と親類の1人はいう。
 B君は、A君と中学時代の友人だった。その1週間後に自殺したC君とは父親の
建材会社で一緒に働いた仲。C君も勤め先の三重県からこの葬儀に出席していた。
 これまでの調べでは、3人とも首つりで遺書はなく、A君が借金を返しておくこ
とを頼むメモを残しただけ。C君は失恋が引き金になったとみられているが、いず
れもはっきりとした自殺の理由はわからないままだ。
 3人が自殺する前の4月と5月に17歳の少年2人がシンナーが原因で事故死し
た。B君は2人を知っており、葬儀にも出席していた。友人らは「彼らは一緒に走
ったり、シンナーを吸ったりする仲間」というが、「それぞれに仲のいい友だちは
ほかにいた」と口をそろえる。捜査員は「彼らは特別親しい間柄ではなく、希薄な
つながりでしかなかったようだ」という。

 ◆願望◆
 自殺のなぞを解く手がかりになりそうなデータがある。大阪府警が89年に実施
した調査で、「暴走少年の3人に1人が自殺を図ったことがある」という結果が出
た。大阪少年鑑別所に入所する暴走族からの聴き取りをもとにまとめたものだ。
 「自分は他人より劣っており、周囲から相手にされない落ちこぼれだと考え、将
来に希望が持てない」。調査は疎外された少年の心理をこう分析している。
 大阪府立公衆衛生研究所精神衛生部の藤井久和部長は「自殺は誘発して連鎖的に
発生することはある。精神的に行き詰まった少年がシンナーの事故死に誘発された
可能性は十分に考えられる」という。
 C君が自殺した8日後の25日、同町内に住む岸和田市職員(22)が3人の自
殺現場近くで首をつった。さらに1週間後の今月2日夜、町内のグラウンド横で鳥
取県出身の女子大学生(19)が果物ナイフで胸を刺し、翌日死亡。2人とも少年
たちとは付き合いはなかった。
 「最近の若者は他人の行為をシンボル的、記号的にとらえ、簡単に同調する傾向
が見られる。彼らに個別の事情はあるにせよ、『1週間おきの自殺』という側面に
同調した『記号自殺』と呼べるのでは」。若者の意識調査を数多く手がける日本青
少年研究所の千石保所長の分析だ。

 ◆地域◆
 「熊取町ばかりで…」と戸惑いながらも、同町はB君の自殺後、青少年指導員や
区長が町内巡回を続けている。しかし、「活動がかえって自殺をあおっては」とジ
レンマに悩む。同町は70年代後半に人口がどっと増え、増加率が府下でトップだ
ったこともある。近くの泉州沖では関西新空港の建設が進み、急速に都市化の波に
洗われる。
 北海道白老町で87年秋に起きたシンナー仲間5人の連続自殺を著書「『事件』
を見にゆく」で取り上げたルポライターの吉岡忍さんは地域の崩壊に共通点を見い
だす。「少年らは学校や地域社会からはみ出して、同じ境遇、同じ世代の仲間とし
か付き合えなかったのではないか。こうした少年を受け入れてきた地域のシステム
が都市化によって崩壊しているのに、不満を発散できるような盛り場は少ない。彼
らは想像以上の閉塞(へいそく)感の中にあったのだと思う」

 ●熊取町で相次いだ少年たちの死
  死亡者       発見日時、場所   直前の行動
 板金工(17)   4月29日(水)  友人3人とシンナーを吸い
           自宅近くの池で水死  、1人で泳ぎ出す
 大工手伝い(17) 5月29日(金)  自室でシンナー吸引
           自宅で死亡
 無職A君(17)  6月4日(木)   当日未明、メモを仏壇に
           自宅近くのタマネギ 置き外出
           小屋 (自殺)
 建設作業員B君   6月10日(水)  彼女や友人と遊んだ後、
 (18)      以前住んでいた自宅 シンナーを吸い、別れる
           (同)
 旅館従業員C君   6月17日(水)  交際したことのある女性
 (18)      町内の野小屋(同) の結婚話に落胆。自殺を
                     示唆
 岸和田市職員(22)6月25日(木)  不明
           貝塚市の飛び地の林
           (同)
 女子大学生(19) 7月2日(木)   今春、近くの大学に入学。
           町内のグラウンド  カウンセリングを数回受け
           横(同)      けていた


少年らの自殺相次いだ熊取町 非行防止へパトロールを強化 大阪92.07.07 朝日
朝刊 大阪版 写図無 (全472字)
 町内で若者の連続自殺が相次いだ泉南郡熊取町は6日、青少年問題協議会(会
長・下中融町長)を開き、改めて青少年の非行防止に町をあげて取り組むことを確
認した。具体的には、町内のパトロールを強化し、非行の芽を摘み取っていくこと
にしている。
 同町では6月以降、少年ら5人の若者が自殺した。以前にも、少年2人がシン
ナーの吸引が原因とみられる事故などで死んでいる。
 同協議会には、委員のほかに泉佐野署の担当者や各中学校の校長ら計約30人が
出席。一連の背景に、シンナーの乱用や暴走行為といった非行問題があるのでは、
と今後の対策を話し合った。
 対策として、特に町内のパトロール強化を打ち出した。青少年指導員や学校、P
TAのほかに、地域住民が班を編成し、少年らが集まる場所などを重点的に巡回す
る。また、警察と連絡を取り合うほか、塗装店などシンナーを扱う業者に改めて厳
重な保管を要請することにしている。
 下中町長は「もっと的確に早く動いておれば、何人かの命を救えたかもしれな
い。痛ましいことだ。力不足を反省し、改めて町をあげて万全の対策を取ってい
く」と話していた。


連続自殺(窓・論説委員室から)92.07.07 朝日夕刊 1頁 1総 写図無 (全
779字)
 病気、借金、失恋、受験、不仲などと、苦の種は、人生百般、いくらでもある。
人が自殺するときは、たいてい、これらの何かを苦にしているのだ。
 先月以来、大阪府熊取町で、5件の自殺が続発した。
 そのうち3件は、顔見知りの少年の自殺だ。共通しているのは、動機らしいもの
があるにはあるが、どれもはっきり動機といいきれないことである。
 3人は、無職、作業員、旅館従業員で、17、8歳。ほぼ1週間の間隔をおい
て、半径600メートルの範囲内で首をつった。以前は同じバイクグループに入っ
ていたし、そろってシンナー歴がある。
 こうなれば当然、青春時代にありがちな後追い自殺、という推測が成り立つだろ
う。しかし、たがいの人間関係は、「一緒に死のう」と思い詰めるほど濃密ではな
かったようなのだ。
 では、少年たちに別々の動機があったのだろうか。
 無職の少年は、借金したらしい友人の名と金額を書いたメモを残していた。た
だ、だからといって借金が動機とはいいきれない。
 作業員の少年の場合、最近、家族が別れて暮らすようになった。旅館従業員の場
合は、以前に交際していた女性が他の男性と結婚することを知った。
 シンナー。バイク。借金。家庭問題。男女交際。それは現代少年を取り巻く状況
そのものである。だが、それで「連続」の意味が説明できるだろうか。
 自殺を試みたか、または考えたことのあるグループと、そうでないグループの間
で、「生」と「死」についてのイメージが違うかどうか。岡山の大学が去年、二百
数十人の学生を対象にした自殺心理の調査結果を発表した。
 報告によると、「死」については、それほど違わないのだが、「生」のイメージ
は、際立って違う。自殺傾向の高い者は、「生」を悲しい、暗い、苦しいものとし
てとらえていた。
 連続自殺に共通する隠れた動機は、この「生」のとらえ方であるかもしれない。
 〈畠〉


次々「死」を選んだ少年たちの風景 仙台市と大阪・熊取町92.07.09 朝日朝刊
30頁 2社 写図無 (全1497字)
 大阪府泉南郡熊取町で少年の連続自殺があったが、仙台でも2月から4月にかけ
て、高校生3人が次々に自殺していたことがわかった。熊取町と同じ人口急増地域
で、3人は同じ中学校の卒業生、うち2人は親友だった。学校関係者と家族は「互
いの自殺に関連はないと思う」といっているが、それぞれ交友関係などで悩んでい
たとみられる。3人とも自宅で首をつるなど、死に追い詰められるまでの状況に
は、いくつかの共通点があった。

 3人が住んでいたのは仙台市南部の田園地帯。市域の膨張で新興住宅街に変容し
つつあるところだ。
 最初に自殺したのは農業高校2年生のA君(当時17)。2月9日の夜だった。
家族などへの感謝を短い言葉でつづった遺書が見つかった。母親によると、スポー
ツ好きで、繊細な優しい性格だったという。
 家族は普通高校への進学を勧めたが、A君は「機械を勉強したい」と、農業機械
のある高校に進学した。親の助言を押し切っての進学だったため、だれにも相談で
きずに悩んでいたふしがあった、と母親はいう。
 2人目は、商業高校に通うB君(同)。3年になった4月1日に死を選んだ。学
校では1人でいることが多かったという。
 中学校時代からA君とは仲が良く、高校に入ってからは毎週のように2人で釣り
に出かけ、一緒にアルバイトもしていた。A君の葬式には一番最初に駆けつけ、式
の間じゅう泣き続けていたという。
 3人目はA君と同じ高校に通うC君(同)。翌日から新学年の授業が始まるとい
う4月9日のことだ。A君やB君と特に親交があったわけではないという。亡くな
る直前、家族に学校でいじめにあったと話していたというが、高校側は「調べてみ
たが、いじめは全然なかった」と話す。
 3人の自殺を調査した宮城県教委は「互いに関連性はなかった。偶然が重なった
と考えるほかない」との結論を出した。
 城丸章夫・千葉大学名誉教授(教育学)は「現代の若者は過度の競争の中で、あ
るところから少し落ちただけで、先が見えてしまったと絶望感を抱きがちだ。行き
所を失った若者が、自殺という選択肢を身近に見ることで、心を動かされたことも
考えられる」と分析する。
    ◇
 大阪府熊取町では6月、1週間おきに無職D君(当時17)、建設作業員E君
(同18)、旅館従業員F君(同)の3人が自殺した。D君とE君は中学時代の友
人。E君とF君は建材会社で一緒に働いた仲だった。
 タマネギ小屋でD君が首をつった後に自殺したE君の通夜と葬儀には、同じ世代
の男女が約400人も集まった。F君も勤め先の三重県から出席していた。少年ら
は一様にうなだれ、じっと立ち尽くした。「式が終わっても帰ろうとしない。異様
な感じでした」と親類の1人はいう。
 調べでは、3人とも首つりで遺書はなく、D君が借金を返しておくことを頼むメ
モを残しただけ。F君は失恋が引き金になったとみられているが、いずれもはっき
りとした自殺の理由はわからない。
 同町は70年代後半に人口がどっと増え、増加率が府下でトップだったこともあ
る。近くの泉州沖では関西新空港の建設が進み、急速に都市化の波に洗われてい
る。
 北海道白老町で87年に起きたシンナー仲間5人の連続自殺を著書「『事件』を
見にゆく」で取り上げたルポライターの吉岡忍さんは、地域の崩壊に共通点を見い
だす。
 「少年らは学校や地域社会からはみ出して、同じ境遇、同じ世代の仲間としか付
き合えなかったのではないか。こうした少年を受け入れてきた地域のシステムが都
市化によって崩壊しているのに、不満を発散できるような盛り場は少ない。彼らは
想像以上の閉塞(へいそく)感の中にあったのだと思う」


[?????]尾ひれがついて 熊取で92.07.13 大阪読売夕刊12頁(全524
字)
 「死ぬ直前に黒い車に追われていた」「通り魔が横行している」「遺体は手足を
縛られていた」……。
 先月初めからほぼ一週間おきに、若者五人が自ら命を絶った大阪・熊取町で、こ
んなうわさが飛び交っている。亡くなった少年の友人の中には「本当は自殺でな
く、他殺だ」と思い込み、夜は一人で外出するのさえ怖がっている若者もいる。
 事実、自殺した少年の一人は後ろ手に縛っていた。だが、現場には争った形跡は
なく、すぐ近くの民家の人も物音を全く聞いていない。首つりのロープをほどかな
いよう、自分で縛っていたのだ。女子大生がナイフで胸を刺した日、近くに車は止
まっていたが、彼女を追い回していたという事実はない。
 警察も慎重に調べたが、鑑定や聞き込み捜査の結果、いずれも自殺と断定してい
る。あまりにも自殺が続くので、ちょっとした事実に尾ひれがついて、うわさにな
ったのだろう。
 毎週、水曜か木曜に死者が出るという“連鎖”は先週で断ち切られた。関係者ら
は町内パトロールに乗り出し、彼らを死に追いやった背景を見つめ直そうという動
きも盛んだ。無責任なうわさを広げないよう、そして何よりも不幸を繰り返さない
よう、町をあげての真剣な取り組みが始まっている。(川)社会部(電)06−3
11−3111


[ニュース発掘]大阪で少年3人ナゾ呼ぶ連続自殺 ある日突然…大人は困惑92.0
7.29 東京読売夕刊3頁 三面 写有 表有(全1649字)
 建設中の関西国際空港にほど近い大阪府熊取町で六月、元バイク仲間の少年三人
が相次いで自殺した。死を選ぶほどの動機は見つからず、一か月以上たった今も、
その死は依然ナゾのままだ。
 ◆動機不明のまま 別に変死も4人/大阪・熊取町
 「穏やかな農村だったこの町に一体、何が起きたのか。正直、困惑しています」
と自治会長の阪上春男さん(60)は顔を曇らせた。大阪市内に電車で三十分とい
う便のよさから、昭和五十年代から宅地開発が進み、大阪府下でも指折りの人口急
増地区に数えられる熊取町。六月四日にA君(17)、十日にB君(18)、十七
日にC君(18)とほぼ一週間おきに、少年三人が首をつって死んだ。
 四月と五月には一学年下の少年二人がシンナー吸引中に中毒死している。三人の
自殺後も、六月二十五日に公務員(22)が首をつり、七月二日にも女子大生(1
9)がナイフで胸を刺して自殺。地元・泉佐野署は三人との結びつきを否定してい
るが、計七人もの死は、町民の間に波紋を広げている。
 少年三人の自殺のうち動機らしくみえるものは、A君が「借金(十数万円)を返
して欲しい」と記したメモを残しているだけ。
 B君の母親(43)は今も「自殺したとは信じられない」と言う。B君は死の
前々日の夜、仕事先に持っていく保温式のランチボックスを買うことなどを頼んで
いるからだ。
 A、B両君は中学卒業後、同じバイクグループに入り、結びつきを深めた。しか
し、「A君の後を追ったとは考えられない」と母親。A君の葬儀に参列した後も
「悩みを相談しあおう。Aの分まで頑張ろう」と仲間を励ましていたという。
 C君は十二日、B君の葬儀に出るため、勤め先に休暇をもらい、熊取町に来た。
B君の父親の土建会社で働いていたことがあり、バイク仲間でもあった。
 バイクのほかに共通点らしいものはシンナー。A、B両君については、同署が家
族や仲間から事情を聞いたところ、シンナー遊びをしていたことを認めている。久
しぶりに熊取町で仲間と再会したC君も、その時シンナー遊びをしていたという友
人の証言がある。
 C君は、十七日未明、半年ぶりに会ったかつての恋人に「近く結婚する」と聞か
され、その直後から「ロープはないか」と自殺する素振りをみせた。
 果たして、A君は借金を、C君は元恋人の結婚宣言を苦に自殺したのだろうか。
 国立精神・神経センター精神保健研究所の町沢静夫・成人精神保健研究室長は
「受験の失敗や家庭の不和など、従来の若者の自殺にはそれなりの理由があった。
現代は動機が見当たらないケースが珍しくない。今回も借金などが自殺の原因にな
ったとは思えないが、シンナーによる幻覚が死への恐怖感を弱めたことは考えられ
る」と指摘する。
 タレントの岡田有希子さんが六年前に自殺し、後追いとみられる自殺が相次いだ
ことがある。その翌年、北海道白老町でシンナー仲間五人が、仙台市でも今春、同
じ中学を卒業した高校生三人が続けて自殺した。
 白老、仙台、そして熊取。不思議なことに、連鎖自殺したのはいずれも少年。し
かも、同じ首つり。熊取の少年三人の自殺現場は半径六百メートルの範囲だ。
 町沢さんは「仲間の死に接し、現実逃避の手段として『そんな手もあるのか』
と、死を誘発されたと考えられる」と説明する。
 警察庁の調べでは、昨年の自殺者は二万千八十四人で、首つりは全体の五三%。
が、未成年者は三六%で、成人と比べると少ない。
 稲村博・筑波大助教授(精神衛生学)は「若者は死後の格好を気にして、首つり
を避ける傾向があるが、仲間の死の暗示効果で同じ手段をとったのだろう」とみ
る。
 熊取町では今月六日、青少年問題協議会を開き、シンナー、暴走族一掃のため、
少年たちのたまり場を中心にパトロール強化を決めた。もっとも、「動機が分から
ず対応のしようがない」(町教育委員会)というのが正直なところだ。
 A君とB君が自殺した小屋と納屋はすでに取り壊された。近くの田んぼでは、
青々とした稲がもう三十センチほどに育っている。(相馬幸司)
 ◇熊取町の少年連続自殺の表=省略


パンフ全戸配布 シンナー防止に町ぐるみ 大阪・熊取町92.10.20 朝日朝刊 大
阪版 写図無 (全501字)
 泉南郡熊取町で今年6月、少年の自殺が相次いだことから同町教育委員会は、シ
ンナーなどの薬物乱用の怖さや対策を説いたまんが読本や小冊子を、町内の全中学
生に配ることにした。シンナーが少年の自殺の背景にあったためで、シンナーを吸
わないよう訴える。
 配布するのは、財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターが発行したまんが薬物
乱用防止読本「Yes to life No to Drugs―シンナー乱用
をなくそう」と、小冊子「薬物乱用と家族」。それぞれ約3500部を用意し、今
月末、町内の中学生と小学校5、6年生全員に配る。
 また、先生には小冊子「薬物乱用の事例に学ぶ」を、約1万2000戸の全世帯
には府警が作製したパンフレットをそれぞれ配布する。
 いずれも、シンナーなど薬物乱用の怖さや実態の事例をあげ、どうしたら防ぐこ
とができるかを解説してある。
 これまで以上に、学校と家庭、地域が一体となり、シンナー追放に取り組むこと
にしている。


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□□□□□参考:白老町連続自殺事件□□□□□
□□□□□   1987年9月5日   □□□□□
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北海道・白老町で少年3人が首つり自殺 シンナー吸った後87.09.07 朝日新聞朝
刊 27頁 1社 写図無
 5日午後10時半ごろ、北海道胆振支庁白老町高砂町4丁目の海岸にある小型漁
船用巻き上げ小屋の中で、同町内に住む漁業手伝いA君(16)と弟の白老町立白
老中3年B君(14)、同中3年C君(14)の3人が、小屋のはりにロープを架
け、首をつって死んでいるのを、捜していたC君の母親(43)が見つけ、苫小牧
署に届けた。同署では、3人が一緒に死んでいることから、ふざけていて誤って死
んだ可能性は少なく、小屋の中でシンナーを吸った後、誘い合って自殺を図ったと
みて、動機を調べている。
 調べによると、小屋の広さは10平方メートルほど。3人はそれぞれはりから漁
網用のロープをつるし、首をつっていた。検視の結果、死亡推定時間は午後7時か
ら同9時。小屋の中にはシンナーのにおいのするビニール袋が残されていた。ま
た、争った形跡などはなかった。
 3人は幼友達で、パンチパーマをかけたり、登校を怠るなど、学校内では突っ張
りグループの一員とみられていた。同町内では8月末、3人の遊び仲間だった青年
2人(ともに23歳)が、相次いで首つり自殺しており、同署で関連を調べてい
る。
 3人はこの日、正午すぎから午後5時ごろまで小屋のそばで遊んでいるのを、近
くで釣りをしていた千歳市北斗1丁目、自衛隊員今井和夫さん(43)が目撃して
いる。今井さんは「3人はシンナーのにおいがした。話しかけて来た1人は、ろれ
つが回らない様子だった」と話しており、夕方になってから小屋に入ったらしい。
 白老中の井川校長は「2人とも陽性で、クラスにもなじんでいたし、いじめられ
るタイプではなかった」と話している。
 現場は太平洋に面した砂浜。何隻もの小舟が並び、水辺から20メートルほどの
所には、舟を巻き上げる小屋が点々と建っている。


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■■■■■忍野村七人ガス中毒死事件■■■■■
■■■■■   1993年5月6日   ■■■■■
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ガス漏れで宿泊中の2家族7人が死亡 山梨のリゾートマンション93.05.07 朝日
朝刊 1頁 1総 写図有 (全973字)

 六日午後五時二十分ごろ、山梨県南都留郡忍野村忍草のリゾートマンション「ロ
イヤル山中湖ハイム」の四階四〇七、四〇八号室の二つの部屋で男女七人が倒れて
いる、と同マンションの管理人岩下文弘さん(四〇)から山梨県警富士吉田署に届
け出があった。
 同署によると、倒れていたのは大人の男性一人と女性二人、子どもの男女各二人
で全員が死亡しており、死亡推定時刻は二日から三日にかけて。岩下管理人が部屋
のドアを開けたとき、強いガスのにおいがしたという。また、同署員がかけつけた
時には四〇七号室のふろと暖房用の給湯ボイラーのガス栓が開いた状態で火は消え
ていたという。
 同署は七人に外傷がないことなどから、プロパンガスによる酸欠死とみている。
二つの部屋にプロパンガスを供給している配管から何らかの原因でガスが漏れた
か、不完全燃焼した可能性もあるとみて七日朝から現場検証をすることにしてい
る。
 二つの部屋は出版社「日本ヴォーグ社」(東京都新宿区、瀬戸忠信社長)が社員
の厚生施設として買い上げた施設だ。埼玉県東松山市岩殿、同社員堀江徳行さん
(四六)が二日から四日まで使う、と予約していたといい、知人が堀江さんと妻の
麻里子さん(四二)の死亡を確認した。
 宿泊予約によると、他の五人は堀江さんの長女で同県立坂戸西高校二年の藍子さ
ん(一六)▽長男で東松山市立桜山小四年の央晃君(一〇)▽次女で同小三年の珠
実ちゃん(八つ)と、麻里子さんの友人で千葉県四街道市四街道の染色業三浦尚子
さん(四二)▽三浦さんの三男で四街道市立四街道小六年の篤史君(一一)。同署
は亡くなったのはこの五人ではないかとみて、確認を急いでいる。
 警察庁に入った連絡によると、大人三人は四〇七号室で、子供四人は四〇八号室
で死んでいた。堀江さんは浴室で倒れ、水が出たままの状態だった。
 忍野村などの自治体でつくる富士五湖消防本部によると、同マンションのガスは
共同のプロパンガスタンクから各部屋に供給する集中供給方式になっている。
 ガスを供給している同郡山中湖村山中の甲陽商事の役員は「最近、東京の業者が
来て、湯沸かし器を新しいものに替えたばかりと聞いている」といっている。
 六日夕、連休が明けても堀江さんが出社しないため、日本ヴォーグ社が、同マン
ションの岩下管理人に問い合わせの電話を入れたところ、事故がわかった。


仲良し2家族、行楽暗転 山中湖で酸欠死93.05.07 朝日朝刊 31頁 1社 写
図有 (全1513字)
 「五日に戻って来る」。こう言って出かけた二つの家族は六日になっても帰ら
ず、泊まっていた部屋から七人の遺体が見つかった。場所は富士山のすそ野に広が
る木立の中。山中湖にも近いリゾートマンションの、隣り合う二部屋だった。小学
生から高校生までの三人を含む一家五人、もう一組は母親と小学生の男子と見られ
ている。日ごろから付き合いのある両家族が、会社の施設を利用して一緒に過ごし
ていて、プロパンガスが漏れたために酸欠死したらしい。楽しいはずの大型連休
に、また悲報が重なった。

 現場は国道138号沿いにある樹林を切り開いて約五十メートルほど入った平
地。ロイヤル山中湖ハイムは、約二十年ほど前に建てられた鉄筋コンクリート造り
の四階建て。南側正面に富士山を望み、裏手・北側は自衛隊の北富士駐屯地があ
る。
 現場の部屋に入った捜査員によると、大人三人がいた四〇七号室では、堀江徳行
さん(四六)がふろ場の浴槽の中で死んでおり、女性二人は、ベッドの上とわきに
倒れていた。また子供が集まっていた四〇八号室は、男の子二人は中二階のベッ
ド、女の子二人は階下の浴室近くとベッドの上で死亡していたという。
 地元の人たちの話によると、ゴールデンウイーク中は五日まで、国道でのろのろ
運転が続くほど混雑が続いた。しかしこの日は合計七十六戸ある同ハイムには一つ
の明かりもなく、静まり返ったままだった。
 ニュースを聞いて駆けつけた管理人夫妻の友人、忍野村内野、建設会社経営渡辺
雄機さん(五一)は「ここ二、三日、朝は三、四度まで冷え込んで暖房をつけてい
た。もしかすると、それが原因なのかもしれない」と話していた。
   ◇
 忍野村のロイヤル山中湖ハイムで一家が死亡したと見られている埼玉県東松山市
岩殿の堀江さんの自宅には、テレビで悲報を知った友人や近所の人が駆けつけ、電
灯が消えたままの玄関先に立ち尽くした。
 一家が三、四年前まで住んでいた同県狭山市から来た妻の麻里子さん(四二)の
友達という主婦は、玄関をガンガンとたたいて、「珠ちゃん、中にいるの」と子供
の名前を叫んだが、応答はなかった。
 この主婦宅には、広島の麻里子さんの実家から「電話をしても出ない」と心配す
る電話があったという。
 堀江さん宅は東松山市郊外の新興住宅地にある。雨戸は閉められていた。
 親しくつきあっていた近所の人の話だと、堀江さんは「五日に戻ってくる」と話
していた。子供たちは「連休は山中湖に旅行に行くんだ」と楽しみにしていたとい
う。
 長男央晃君(一〇)、次女珠実ちゃん(八つ)が通っていた東松山市立桜山小の
教諭は「自宅に電話したけど留守だったので心配していた」という。
   ◇
 事故に巻き込まれたと見られる三浦さん親子は、千葉県四街道市の市営住宅で暮
らしている。自宅は雨戸がしまったままで、夜になって知らせを聞いた近所の人
が、不安そうに見守った。
 三男の篤史君(一一)が通う四街道市立四街道小学校の阿部猛校長は「一日には
学級担任に『お母さんの友だちの家族と一緒に旅行するんだ』と、うれしそうに話
していたと聞きました」と話す。
 篤史君は明るい性格で、四街道市の陸上大会の学校代表の選手の一人で、毎日練
習にはげんでいた。六日は始業時間になっても登校しないので、担任が三浦さん宅
に電話したが連絡がつかなかったという。
 関係者によると、三浦尚子さん(四二)は、染め物の下絵を描く仕事を自宅でし
ていた。
 近所の会社員平野貴子さん(三三)は「一日に埼玉の友人宅に泊まると、車で出
かけて行った。二日から四日にかけては友人の夫の会社の保養所に泊まり五日には
帰ると聞きました。とにかくびっくりしています」と話していた。


仲のよい一家が信じられぬ… 山梨のガス漏れ事故で友人ら /埼玉93.05.07 朝
刊 朝日埼玉版 写図有 (全692字)
 山梨県南都留郡忍野村のリゾートマンションで六日夕、男女七人が死亡している
のが見つかった事件で、二日から部屋を借りていたとみられている東松山市岩殿、
会社員堀江徳行さん(四六)宅の周辺などでは、不確かな情報に戸惑う知人や学校
関係者が不安の声を上げていた。

 央晃君と珠実ちゃんが通っていた市立桜山小では、芝塚久夫校長や二人の担任な
ど数人の教職員が駆けつけ、今後の対応策などを話し合った。
 学校では二人がこの日、無断欠席したため、日中、自宅に電話を入れるなどして
いたが通じなかったという。芝塚校長は「二人が亡くなったとかは、まだ確認でき
ない」と、力無く語った。
 央晃君の担任の服部隆宏教諭は「ゴールデンウイークで旅行に行くと話していた
が……」と、不安げな様子。
 珠実ちゃんの担任の石井芳枝教諭は「珠実ちゃんは屈託がなく、明るい子。ゴー
ルデンウイークに旅行に行くと話していた。央晃君と仲がよく、二人でよく遊んで
いた」と、話していた。
 藍子さんの担任の坂戸西高・小野秀子教諭は「明るくてまじめな生徒。まだ確認
されたわけではないので、何かの間違いだと信じている」。
 堀江さん宅は、関越自動車道東松山インタに近い新興住宅街の一角。狭山市内か
ら数年前に引っ越して来た。午後十時ごろから、ニュースを聞いた関係者らが自宅
に駆けつけたが、玄関も雨戸も閉まったまま。
 妻の麻里子さんの友人の主婦らが玄関の戸をたたいて「たまちゃんいるの」と呼
び掛けたが、部屋は真っ暗のまま。堀江さん宅で飼っていたという犬もいなくなっ
ていた。主婦らは逆に報道陣らに「身元は確認されているのでしょうか」などと涙
声で聞き返していた。


ガス漏れ7人死亡 山中湖近くのマンション 連休観光の2家族/山梨93.05.07
東京読売朝刊1頁 一面(全684字)
 六日午後五時二十分ごろ、山梨県忍野村忍草のリゾートマンション「ロイヤル山
中湖ハイム」(四階建て)の隣り合わせの二部屋で、七人が倒れていると同マンシ
ョンの管理人から富士吉田署に通報があった。
 同署で調べたところ、同マンション四〇七号室で、大人の男性一人が水が出っぱ
なしのふろ場で、女性二人がベッドの上で死んでおり、四〇八号室でも、男女二人
ずつの子供四人がベッドや居間に倒れていた。室内にはプロパンガスが充満してい
たことと、室内の状況などから、同署は、プロパンガスの不完全燃焼による一酸化
炭素中毒死の可能性もあると見て調べている。
 部屋は埼玉県東松山市岩殿五〇の四、「日本編物文化協会」事務局長堀江徳行さ
ん(46)の名前で、二日から四日まで使用を申し込まれていた。堀江さんは今月
二日、近所の人に「子供を連れて山中湖に行ってくる」と話し、六日朝になっても
帰宅していない。同署は同夜、堀江さんと妻麻里子さん(42)の身元を確認、他
の五人は長女藍子さん(16)(坂戸西高二年)、長男央晃(てるあき)君(1
0)(市立桜山小四年)、二女珠実ちゃん(8つ)(同小三年)の一家と、麻里子
さんの友人で千葉県四街道市四街道一一五二の三、染色業三浦尚子さん(42)、
三男篤史君(11)(市立四街道小六年)母子の二家族とみて、確認を急いでい
る。
 同マンションは、プロパンガスを一か所で集中管理し、各部屋に配管するシステ
ムになっているという。
 同マンションは堀江さんの勤務先の親会社で、東京都新宿区の図書出版会社「日
本ヴォーグ社」が二十年前に二部屋を買い取って保養所として使っていた。
  (関連記事社会面に)


山梨・リゾートマンション7人死亡 充満LPガス、GW暗転 発生は2日か3日9
3.05.07 東京読売朝刊31頁 社会面 写有(全928字)
 山梨県忍野村のリゾートマンションで六日、観光客七人が死亡した事故は、ゴー
ルデンウイークの楽しい家族旅行を一転、悲報に変えた。
 プロパンガスの充満する室内のあちこちで倒れていた親子。連休のにぎわいも終
わり、閑静な松林に囲まれたマンションは物々しい雰囲気に包まれ、ガス事故の恐
ろしさを見せつけた。
 ひっそりと静まり返るマンションで、七人の遺体が発見されたのは、同日夕方、
死亡した一人で埼玉県東松山市岩殿五〇の四、堀江徳行さん(46)の勤務先から
同マンションの管理人、岩下文弘さん(40)に入った電話がきっかけだった。
 「堀江さんが出勤していないのでチェックアウトを確認して欲しい」。この電話
を受けた岩下さんはすぐ同マンション最上階に向かったが、ガスの強いにおいに気
付き、四〇七号室で大人三人が、隣の四〇八号室に子供四人がそれぞれふろ場やベ
ッドの上などで倒れているのを発見した。室内にはガスが充満しており、中に入れ
ない状態だった。
 死亡推定は二日から三日にかけて。大人三人が死んでいた四〇七号室のふろのガ
ス栓とボイラーの元栓は開いた状態になっており、室内の電灯、テレビが付けっぱ
なしになっていた。また、四〇八号室にはガスもれなどの形跡がないことから、富
士吉田署は、事故は両日のいずれかの夜に発生し、四〇七号室でもれたガスが隣室
に流れ込んだものと見て、詳しい原因を調べている。
 同マンションにプロパンガスを納めているガス会社の関係者によると、同マンシ
ョンにはボンベ室があり、五十キロボンベ三十四本が置かれ、各部屋に供給してい
る。同社では週一回程度、ボンベ室でガス漏れなどのチェックをしており、最近で
は四日に圧力などを調べたという。
 同マンションは昭和四十八、九年ごろに建てられたもので、最近、別の業者が湯
沸かし器を交換したという。このため、関係者は現場の状況などからガスの異常燃
焼による一酸化炭素中毒死の可能性もあると指摘している。
 同マンションの部屋数は七十四室。ゴールデンウイーク中は大勢の宿泊客でにぎ
わったが、五日から客は減って二家族の両サイドも空き部屋になっていたという。
 現地は富士北麓(ろく)のリゾート地にあり、国道一三八号線から北に約百メー
トル入った閑静な松林の中。


ガス漏れか、7人死ぬ−−山梨のリゾートマンション93.05.07 毎日東京本紙朝刊
 27頁 社会 写図有 (全1297字)
 六日午後五時二十分ごろ、山梨県南都留郡忍野村忍草のリゾートマンション、ロ
イヤル山中湖ハイムの管理人から「四階の四〇七号室と四〇八号室でガスの強いに
おいがして、七人の男女が死んでいる」と一一〇番通報があった。富士吉田署員が
室内に入ったところ四〇七号室で大人三人、四〇八号室で子供四人が死亡してい
た。同署で身元を調べた結果、このうち二人は埼玉県東松山市岩殿、日本ヴォーグ
社団体部事務局長、堀江徳行さん(46)と妻麻里子さん(42)とわかった。両
室にはプロパンガスが充満しており、同署はガス漏れによる事故死の疑いが強いと
みて、死因と、残る五人は堀江さんの子供らとみて身元を調べている。
 ◇日本ヴォーグ社保養所
 同署の調べによると、四〇七号室では堀江さんが浴室で、成人女性一人がベッド
の上で、一人がベッド横の床で倒れ、四〇八号室では男児二人がベッドで、女児一
人が別のベッド上、一人がテーブル横の床で死亡していた。浴室の水は出しっ放し
だった。子供は全員パジャマ姿だった。死亡したのは二日から三日にかけてとみら
れる。
 同ハイムは東京都新宿区市谷本村町の出版社・日本ヴォーグ社が会社の保養所と
して使用している。五月二―四日の予定で堀江さんが使用を申し込んでいた。管理
人は会社から「堀江さんが出勤していない」と電話があり、確認をしようとして遺
体を見つけた。
 堀江さんが申し込んだ名簿には、堀江さん▽妻麻里子さん▽長女藍子さん(1
6)▽長男央晃君(10)▽二女珠実ちゃん(8つ)と、麻里子さんの友人の千葉
県四街道市四街道、染色業、三浦尚子さん(42)▽三浦さんの三男篤史君(1
1)の計七人が記入されていた。
 ◇連休に家族で?
 七人に大きな外傷はなく部屋にプロパンガスが充満していた。このため、同署は
配管の亀裂などが原因のプロパンガス漏れによる酸欠死か、入浴中の男性が使用し
ていたボイラーの不完全燃焼による一酸化炭素中毒死ではないかとみて、七日朝か
ら七人の遺体を司法解剖して死因を詳しく調べる。また、両室に同時にプロパンガ
スが充満した原因についても、設計図を取り寄せるなどして調べる。
 日本ヴォーグ社によると、同社は四月二十九日から五日まで休み。堀江さんは連
休を利用して同ハイムを使っていたらしい。留守番の社員は「連絡を受けて関係者
が現地へ向かっているが、詳しいことは分からない」と話している。同ハイムはコ
ンクリート四階建てで、両室は壁を隔てて隣り合っている。
 現場は国道138号から約五百メートル北側へ入ったところ。林の中に数軒のホ
テルやペンションなどが散在する保養地。
 ◆過去のガス事故
 多数の死者が出たガス事故は、主に一酸化炭素中毒によるもの。プロパンガスの
場合はほとんどが爆発事故につながっている。これまでの爆発以外の事故は、川崎
市の社宅でプロパンガスぶろを消し忘れて五人が死亡(一九七四年一月)▽東京都
葛飾区の住宅で湯沸かし器の消し忘れで一家五人が死亡(七五年一月)▽神戸市の
住宅で湯沸かし器が不完全燃焼し五人が中毒死(八一年七月)▽福島県・羽鳥湖で
二家族五人が釣りテント内で使った練炭で中毒死(八四年一月)――などがある。


湯沸かし器の不完全燃焼か 火消えガス栓開放 山梨のガス事故93.05.07 朝日夕
刊 11頁 1社 写図有 (全817字)
 山梨県南都留郡忍野村のリゾートマンション「ロイヤル山中湖ハイム」で六日
夕、男女七人が死亡していた事件で山梨県警は七日、七人が死亡していた四〇七、
四〇八号室の現場検証を行った。四〇七号室の湯沸かし器のガス栓が開いた状態で
火が消えていたことから、県警ではガス漏れによる酸欠か、湯沸かし器の不完全燃
焼による一酸化炭素(CO)中毒で死亡したのではないかとみている。同マンショ
ンでは最近、湯沸かし設備の改良工事をしたとの情報もあり、県警ではこの工事と
事件とのかかわりについても調べている。
 死亡していたのは埼玉県東松山市岩殿、日本編物文化協会事務局長堀江徳行さん
(四六)と妻、麻里子さん(四二)のほか、堀江さんの長女藍子さん(一六)=埼
玉県立坂戸西高校二年=、長男央晃(てるあき)君(一〇)=東松山市立桜山小四
年=、次女珠実ちゃん(八つ)=同小三年=と、友人の千葉県四街道市四街道、染
色業三浦なお子さん(四二)、三男の篤史君(一一)=四街道市立四街道小六年=
の母子と確認された。

 調べでは同マンションでは各部屋にボイラー室があり、中に暖房や浴室用の湯沸
かし器がとりつけられていた。
 発見された時、大人三人が死亡していた四〇七号室は照明やテレビがつき、堀江
さんが倒れていた浴室は水が出っぱなしの状態だった。ボイラー室の湯沸かし器は
ガス栓が開いたままで、火は消えていた。子供四人が死亡していた四〇八号室は照
明は消え、湯沸かし器のガス栓も閉まっていた。
 県警では、四〇七号室の湯沸かし器が使用中に何らかの原因で火が消え、ガスが
漏れ出したか、不完全燃焼を起こしてCOが発生したのではないかとみている。
 四〇八号室と四〇七号室は壁で仕切られており、天井裏の空間か換気用のダクト
を通じて四〇八号室にガスやCOが流れ込んだとみられる。
 堀江さんは二つの部屋を所有している「日本ヴォーグ社」(東京都新宿区)から
同社の関連団体の日本編物文化協会に出向していた。


山梨・リゾートマンションの7人死亡事故 死因はCO中毒93.05.07 東京読売夕
刊15頁 社会面(全311字)
 山梨県忍野村忍草のリゾートマンション「ロイヤル山中湖ハイム」で六日、二家
族七人が遺体で見つかった事故で、富士吉田署の捜査本部は七日、七人の死因を一
酸化炭素中毒とほぼ断定、同日朝から同マンションの現場検証を始めた。
 同署では、三人が死亡していた四〇七号室内にある給湯用ボイラーの排気口が何
らかの原因でつまってボイラーが不完全燃焼を起こし、一酸化炭素ガスが室内に充
満、四人が倒れていた隣の四〇八号室にも天井裏などを伝って同ガスが流れ込んだ
可能性が強いと見ている。
 また、同署は同日朝までに、死亡したのは、同部屋を予約していた「日本ヴォー
グ社」団体部事務局長堀江徳行さん(46)(埼玉県東松山市岩殿五〇の四)ら二
家族七人と確認した。


残る5人の身元判明 7人死亡のマンション、検証行う−−山梨93.05.07 毎日東
京本紙夕刊 15頁 社会 写図有 (全444字)
 山梨県南都留郡忍野村忍草のリゾートマンション・ロイヤル山中湖ハイムで六
日、七人が遺体で発見された事件で、富士吉田署の捜査本部は七日朝までに、七人
全員の身元を確認した。捜査本部はプロパンガス漏れによる事故死の可能性が高い
とみて、現場検証とともに、山梨医科大で司法解剖する。
 すでに確認されていた埼玉県東松山市岩殿、日本ヴォーグ団体部事務局長、堀江
徳行さん(46)と妻麻里子さん(42)のほか、堀江さんの長女藍子さん(1
6)=県立坂戸西高二年▽長男央晃君(10)=東松山市立桜山小四年▽二女珠実
ちゃん(8つ)=同小三年=と、麻里子さんの友人で千葉県四街道市四街道、染色
業、三浦なお子さん(42)▽三男篤史君(11)=市立四街道小六年。
 調べによると、遺体が発見された二室は最上階の四階の両隣。四〇七号室では堀
江さんが浴槽、麻里子さんがベッド横の床、三浦さんがベッドの上で倒れ、四〇八
号室では篤史君と央晃君が中二階のベッドの上で、また、珠実ちゃんがベッドで、
藍子さんがテーブル横の床で死亡していた。


吸排気口に鳥の巣 不完全燃焼の引き金? 山梨のガス事故93.05.08 朝日朝刊
31頁 1社 写図無 (全644字)
 山梨県南都留郡忍野村のリゾートマンション「ロイヤル山中湖ハイム」で埼玉県
東松山市岩殿、日本編物文化協会事務局長堀江徳行さん(四六)ら二家族七人が死
亡していた事件で山梨県警の捜査本部は七日、遺体の解剖結果から死因は一酸化炭
素中毒(CO中毒)と断定した。現場検証で四〇七号室の湯沸かし器につながる吸
排気口(直径十五センチ)から、鳥の巣が見つかったことから、同本部は吸排気が
十分に行われず不完全燃焼を起こし、COが両室内に充満したとの見方を強めてい
る。
 調べでは、鳥の巣は比較的新しいコケでできていた。野鳥の専門家はシジュウカ
ラの巣ではないか、とみている。吸排気口は、湯沸かし器から天井裏を通り、外壁
に突き出している。巣は消防署のはしご車で調べて見つかった。
 同本部は八日、メーカーの担当者を呼び、吸排気の詳しい構造を調べるととも
に、漏れたCOが壁を隔てた四〇八号室にまでなぜ流れ込んだのかについてさらに
解明を進めることにしている。
 七人のうち遺体のあった場所が違う三人を解剖した結果、死因は一人がCO中毒
によるおう吐物が原因の窒息死、あとの二人はCO中毒死だった。死後四、五日経
過しており、事故が起きたのは二日夜か三日夜と見ている。
 富士五湖周辺は自然林が多く残された鳥の宝庫。忍野村のホテル経営者による
と、新緑の季節には、排気口などにシジュウカラがよく巣を作るので、排気口から
黒煙が出て、取り除くことがあるという。野鳥の専門家は「都会の団地のように排
気口に網を張るべきだ」と指摘している。


涙こらえる級友ら 小学校で全校集会 山梨のガス漏れ事故 /埼玉93.05.08 朝
日朝刊 埼玉版 写図有 (全1048字)
 山梨県南都留郡忍野村のリゾートマンション室内で、二家族七人が亡くなったガ
ス事故。東松山市岩殿、日本編物文化協会事務局長堀江徳行さん(四六)の一家五
人全員も犠牲になった。同市立桜山小学校(芝塚久夫校長)に通う長男で四年の長
男央晃君(一〇)と、三年で次女の珠実ちゃん(八つ)は、クラスメートたちに
「旅行に行くんだ」と、楽しそうに話していたという。しかし、ゴールデンウイー
クが明けて、友人たちは二人の元気な笑顔を、再び見ることはできなかった。七日
午前、級友たちは臨時の全校集会で二人に別れを告げ、めい福を祈って教室の机に
花を飾った。

 芝塚校長らは、朝から山梨県警富士吉田署との電話連絡に追われた。二人の身元
が確認されたとの連絡があったのは、午前十時半。すぐに体育館で全校集会が開か
れた。
 「悲しみに胸が張り裂けそうです。明るく元気で、やんちゃな央晃君、素直で優
しい珠実ちゃんの笑顔には、もう二度と会えません」。芝塚校長は言葉を詰まらせ
ながら報告した。「遠い世界に行っても、私たちを見守ってください」と、二人に
呼びかけ、さらに「二人の分まで頑張って明るい学校にしましょう」と、集まった
児童たちを励ました。その後、全員で一分間の黙とう。涙をそっと服でぬぐう児
童、両手を胸の前に合わせる児童の姿もあった。
 それぞれの教室の机に飾られた花は、この日朝、出勤途中に担任教諭が持ち寄っ
た黄色い菊や、校庭に植えられていたコデマリの白い花。クラスメートが学校に来
てから折り紙で折ったツルや飛行機も、添えられた。
 二人の席は、ともに窓寄りの後ろ側。「転校でいなくなったのなら、電話をした
り手紙を書けるのに」と、涙をこらえる担任と、静かに話を聞く児童たちを、明る
い日差しを受けた花が見守った。
 すでに事故を新聞やテレビのニュースで知っていた子も多かった。央晃君と同じ
クラスの男子児童は「もっと一緒にサッカーやドッジボールをしたかった」。珠実
ちゃんと同級生の女の子は「本を読むのが好きで、作文を書くのが上手だった。
『連休は旅行に行く』って楽しそうだったのに、かわいそう」と、ぽつりと話し
た。

 ○長女が通う県立高校でも集会
 二人の姉で、高校二年の長女藍子さん(一六)が通う県立坂戸西高でも、全校集
会で、藍子さんの死が報告された。
 一方、堀江さん宅の玄関先には、この日朝、近所の人が持ってきたのだろうか、
花が供えられた。事故が伝えられた六日夜は、大勢の報道陣でごった返した。一夜
明けて、一家五人の帰りを、ひっそりと待ち続けた。


「篤史君の分まで生きて」 山梨のガス事故死を説明 四街道小/千葉93.05.08
朝日朝刊 千葉版 写図有 (全397字)
 山梨県・忍野村のリゾートマンションで六日夕、二家族七人がガス事故で死亡し
てみつかったが、被害者の一人、三浦篤史君(一一)=四街道市四街道=の通う市
立四街道小は、七日朝、体育館で全校集会を開き、事故のことを説明した。

 六年生の三浦君は、母親のなお子さん(四二)に連れられて、連休を過ごすため
マンションを訪れ、二人とも事故に遭った。
 約千人の児童が集まった全校集会で阿部猛校長は「万が一にも違っていてくれれ
ばと思っていました。三浦君は元気で明るい少年でした。三浦君の分まで明るく仲
良く生きてください」と話した。立ったまま聞いていた児童や教員らの間から、す
すり泣く声が聞こえた。
 六年四組の前の廊下には、「夢」と書かれた三浦君の習字が張ってある。全校集
会の後、同級生たちは、白い花束が置かれた三浦君の机を囲んで黙とう。担任の佐
藤恵子教諭が「みんなの心の中に、三浦君はしっかり生きています」と話した。


山梨の7人死亡 ボイラー通気口に鳥の巣 換気妨げ、不完全燃焼?93.05.08 東
京読売朝刊31頁 社会面 写有(全618字)
 山梨県忍野村のリゾートマンション「ロイヤル山中湖ハイム」で、埼玉県東松山
市岩殿五〇の四、「日本ヴォーグ社」団体部事務局長堀江徳行さん(46)ら七人
が死亡した事故で、富士吉田署捜査本部が七日に現場検証した結果、三人が死亡し
ていた四〇七号室の給湯用ボイラー吸排気口(直径約二十センチ)に、鳥の巣がか
かっていたことが分かった。同本部では、この巣が換気を妨げてボイラーが不完全
燃焼、発生した一酸化炭素で全員が中毒を起こしたとみて、さらに調べを進めてい
る。
 これまでの調べで、四〇七号室のボイラーはスイッチが入っていたが、子供ら四
人が倒れていた四〇八号室のボイラーはスイッチが切れていたことが分かってい
る。隣の四〇八号室へは、天井裏などを伝って一酸化炭素が流れ込んだらしい。
 また、この日の司法解剖などの結果、七人中六人の死因は一酸化炭素中毒で、堀
江さんだけは同中毒による吐しゃ物がのどに詰まったことによる窒息死と判明し
た。
    ◇
 山梨県内のガス工事関係者によると、リゾートマンションなど使用しない期間が
長い建物では、吸排気口に鳥が巣を作るケースが時おり見られるという。この場
合、一度巣を作ると、取り除いただけでは、再び同じ場所に巣作りされてしまうた
め、吸排気口に金網を張って防いでいるという。
 昨年二月には、同県上野原町で、プロパンガスのふろがまの煙突にスズメが巣を
作ったため、通気が悪くなって不完全燃焼を起こし、入浴中の中学教諭が中毒死し
たケースもある。


排気口に鳥の巣 不完全燃焼の原因か−−山梨・忍野村のマンション7人中毒死93.
05.08 毎日東京本紙朝刊 23頁 社会 写図無 (全336字)
 山梨県南都留郡忍野村のリゾートマンション・ロイヤル山中湖ハイムの二部屋
で、大人と子供七人が遺体で発見された事件で、富士吉田署捜査本部は七日、大人
三人が死亡していた四〇七号室の北側外壁に通じる排気口内で鳥の巣を発見した。
この巣が原因でボイラーのプロパンガスが不完全燃焼を起こした可能性があるとみ
て、八日に専門家を呼んで現場検証を行う。
 捜査関係者によると、七日の現場検証で、ボイラーに点火する実験を数回繰り返
したところ、着火はするもののすぐに火は消えることが分かった。このため、排気
口の中を調べた結果、鳥の巣を発見した。
 また、七日に山梨医大で三人の司法解剖を行った結果、死因は一酸化炭素中毒死
と断定した。七遺体はすべて、一酸化炭素中毒特有の体がピンク色になる症状を呈
していた。


3日に隣室の2人も吐き気 CO中毒で7人死亡の山中湖のマンション93.05.08
朝日夕刊 8頁 2社 写図無 (全413字)
 山梨県南都留郡忍野村のリゾートマンション「ロイヤル山中湖ハイム」の四〇
七、四〇八号室で、埼玉県東松山市岩殿、日本編物文化協会事務局長堀江徳行さん
(四六)ら二家族七人が一酸化炭素(CO)中毒死した事故で、山梨県警富士吉田
署の捜査本部は八日、前日に引き続き現場検証をして、原因を調べている。
 一方、この日、四〇七号室の隣室の四〇六号室を利用していた母娘二人が、三日
正午ごろに立ちくらみ、吐き気などを訴え、救急車で病院に運ばれていたことがわ
かった。
 四〇七号室の湯沸かし器につながる、外壁に突き出た吸排気口(直径十五セン
チ)の中に、鳥の巣が見つかっており、検証では、巣の位置の確認や、巣がある状
態での吸排気の状況などを調べる。
 司法解剖の結果明らかになった七人の死亡推定時間と、四〇六号室の母子を病院
に運んだ時刻がほぼ一致することから同本部は、四〇七号室で発生したCOが天井
裏を通り他の部屋にも流出していた可能性が強いと見ている。


山梨の一酸化炭素中毒7人死亡事故 破損管から隣室へガス93.05.09 東京読売朝
刊31頁 社会面(全173字)
 山梨県忍野村忍草のリゾートマンション「ロイヤル山中湖ハイム」で起きた一酸
化炭素中毒事故の原因を調べている富士吉田署捜査本部は八日、事故のあった四〇
七号室のボイラーの排気管の天井裏部分の一部が破損していることを突き止めた。
同本部では、不完全燃焼で出た多量の一酸化炭素ガスがこの破損部分から漏れ、天
井裏から隣室の四〇八号室に流れ込んだものとみている。


居住者不在の盲点 山梨の7人中毒死(ニュース三面鏡)93.05.11 朝日夕刊 6
頁 2社 写図無 (全948字)
 山梨県南都留郡忍野村のリゾートマンション「ロイヤル山中湖ハイム」で起きた
二家族七人の一酸化炭素(CO)中毒死は、いつも人がいるとは限らないリゾート
マンションの盲点を突いた事故だった。
 山梨県警捜査本部の調べでは、プロパンガス湯沸かし器が、吸排気口(直径約十
五センチ)にあった鳥の巣のために不完全燃焼を起こし、大量発生したCOが天井
裏の配管から漏れたらしい。
 ○盲点(1) この二室を所有している日本ヴォーグ社(東京都新宿区)による
と、事故が起きたとみられる二日までの二週間、二室はだれも使っていない。巣の
材料のコケが新しいことから、巣はこの二週間ほどの間にできたらしい。吸排気口
は窓のすぐ上にある。普通のマンションや家屋なら、巣を作る鳥の気配を見逃すは
ずはない。
 ○盲点(2) 鳥の巣が原因のCO中毒はときどきある。このため日本ガス機器
検査協会は一九八七年、吸排気口に細かい網目の防鳥網を取り付けよとの「指針」
を出した。問題の吸排気口にも金網はあったが、腐食で幅三、四センチ長さ十セン
チの穴があいていた。
 ガス事業法はプロパン供給業者に、三年に一度の供給先の設備点検を義務づけて
いるが、吸排気口の場合、外壁から出ていることを確認するだけで、網の点検は含
まれていない。ヴォーグ社は「部屋の点検は昨年十一月にした」というが、四階の
外壁に突き出している吸排気口の金網までは目が届かなかったようだ。
 ○盲点(3) 分譲マンションの占有部分の保安管理は、一般的に個々の所有者
の責任だ。このマンションには、所有者でつくる管理組合が雇用している管理人夫
婦が住み込んでいるが、主な仕事はロビーなどの共有部分や付設のテニスコートの
掃除、管理など。頼まれて占有部分の掃除をすることはあるが、管理の責任はな
い。
   ◇
 リゾートマンションは、別荘よりも手軽なことや、将来の住宅用、あるいは財テ
ク、節税策として人気を呼んだ。忍野村の隣の山中湖村には三十五棟、約二千五百
室もある。
 リゾート問題に詳しい東京弁護士会消費者問題特別委員長の村千鶴子弁護士は
「安全管理を安易に考えている所有者が多い。今後施設が老朽化してきた場合、こ
の種のトラブルが続出する恐れもあり、法律の整備を含めた総合的な対策が必要だ
ろう」と話している。


鳥の巣が原因と断定−−山梨・7人CO中毒死事件93.05.15 毎日東京本紙朝刊
30頁 社会 写図無 (全127字)
 山梨県南都留郡忍野村のリゾートマンション「ロイヤル山中湖ハイム」で七人が
一酸化炭素(CO)中毒死した事件で、富士吉田署捜査本部は十四日、鳥の巣が排
気口をふさいだためボイラーが不完全燃焼を起こし、COが排気管のヒビ割れ部分
から漏れ部屋に広がったと断定した。


山梨・忍野村のマンションガス中毒 エネルギー庁調査委が初会合93.05.21 東京
読売朝刊30頁 社会面(全199字)
 山梨県忍野村のリゾートマンションで今月六日、七人がガス中毒死して見つかっ
た事故で、通産省資源エネルギー庁の「ガス事故調査委員会」(委員長・秋田一雄
東大名誉教授)は二十日、第一回会合を開き、事故原因や今後の対策について検討
した。
 同庁公益事業部ガス保安課は事故原因について、ボイラーの通気口にかかってい
た鳥の巣と、空気を外から取り入れ、屋外に燃焼排ガスを排出するパイプの異状な
どが考えられるとしている。


山梨の7人死亡ガス事故 「FFは安全」覆した野鳥の巣(解説)93.05.22 東京
読売朝刊17頁 解説面 写有(全1384字)
 山梨県忍野村のリゾートマンションで七人が死亡した一酸化炭素(CO)中毒事
故で、通産省は事故調査委員会を発足させ、抜本的な再発防止対策に乗り出した。
                      (甲府支局 池辺 英俊)
 ◆季節型施設の死角 利用者の心構え大切
 通産省が今回の事故に衝撃を受けたのは、一度に二家族七人が死亡したという結
果の重大さも当然ながら、プロパンガスを七十戸以上に集中供給する簡易ガス事業
で、強制給排気式(FF方式)の給湯器では全国初の事故だった点にある。ガス燃
焼と同時にファンが回り出し、部屋の空気を汚すことなく強制的に換気するのがF
F方式である。
 ところが、山梨県警が事故の起きたリゾートマンション「ロイヤル山中湖ハイ
ム」四〇七号室の給湯器を使って燃焼実験を行った結果、吸排気口に詰まった鳥の
巣が、給湯器の排気を妨げて不完全燃焼を引き起こし大量のCOが発生。天井裏の
排気管から漏れ出し、室内に流れ込んだことが分かった。
 通産省資源エネルギー庁の薦田康久・ガス保安課長は、「FF方式は、不完全燃
焼が起こらない、最も安全で理想的な方式として普及を図ってきただけに、ショッ
クだ」と語り、鳥の巣という思いがけない“敵”によってもろくも安全神話が崩れ
たことを深刻に受け止めている。
 今回の事故は〈1〉日常的な異変に気付きにくい季節利用のリゾート施設である
こと〈2〉給湯器や排気管などは原則として消費者側に維持管理責任がある〈3〉
ガス事業法ではガス供給者側に三年に一度の点検を義務付けてはいるが、その点検
内容が目視の範囲にとどまっている――などの問題点を露呈したが、全国的にリ
ゾートマンションやペンションが増えている現状を考えれば放置できない緊急の課
題といえよう。
 通産省が個別の事故について調査委員会を設置したのは、昭和五十八年十一月、
静岡県掛川市のスポーツレクリエーション施設で起きたプロパンガス爆発事故(死
者十四人、負傷者二十七人)以来二度目。
 今回は、秋田一雄・東大名誉教授(燃焼工学)を委員長に、学識経験者や日本簡
易ガス協会幹部ら計十三人で構成。ガス供給者に対する点検内容を定めたガス事業
法施行規則など関係法令の抜本的見直し作業を中心に進め、来月中には報告書をま
とめる方針だ。
 さらに同省では当面の緊急対策として、全国のLPガス関係団体などに、リゾー
トマンションなどの排気管先端部を一斉調査するよう指示(十七日)するなど、
「鳥の巣が原因」は大きな波紋を広げている。
 事故のあった部屋の吸排気口には外からの侵入物を防ぐための金網があったが、
腐食して約三センチ大の穴が開いており、そこから野鳥が入り込んで巣作りしたと
見られている。
 部屋は会社の保養所で、事故が起きる前の利用は四月十七日。この時は異状がな
かったことから、鳥の巣は事故までのわずか約二週間の間に作られた可能性が強
い。
 日本高層住宅協会の調べでは、平成元年から三年にかけて供給されたリゾートマ
ンションだけでも約一万三千二百戸に達している。所有者は別の場所に住んでいる
ことが多く、連絡が取りにくいなどの問題もあり、行政側の対策がどこまで浸透す
るか疑問も残る。
 事故があったリゾートマンションがある富士山北ろく一帯は、約二百種の野鳥が
生息する野鳥の宝庫。
 そこで起きた今回の事故はリゾートブームが広がる中で、自然を利用する側の心
構えについて考えるきっかけを与えたとも言える。


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■■■■■海南七山保育園児水死事件■■■■■
■■■■■   1993年8月29日   ■■■■■
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幼い夏休み、暗転 和歌山で園児4人が水死 【大阪】93.08.29 朝日朝刊 24
頁 2社 写図有 (全531字)
 和歌山県海南市七山の貴志川で二十八日午後、近くの保育所園児四人が水死し
た。河原には小石などが積まれ靴や自転車が残っていた。残り少ない夏休みを幼い
友人同士で楽しんでいたらしい。小さな遺体を迎えた三家族は深い悲しみに包まれ
た。
 兄とナマズ釣りにきていた小学六年生(一一)が、川の岩に引っ掛かっていた小
谷友一朗ちゃん(六つ)をみつけたのが発端だった。「びっくりして自転車で家へ
帰り、お父さんに知らせた」
 午後一時半ごろ、現場近くの公園にいた小学生が、川で遊んでいる子どもたちの
声を聞いている。右岸の堤防には四台の自転車が残っていた。約二十メートル先の
中洲には小石などで囲んだ跡。そばに二足の靴とサンダルがあり、サンダルのはな
おには「ゆういちろう」の文字があった。
 小谷さん方へ知らせが届き、消防団員ら五十人の捜索が始まった。
 約三時間の間に、友一朗ちゃんが発見された岩場から約四百メートル下流の間で
三人の園児が次々と遺体でみつかった。
 一度に孫二人を亡くした祖父の小谷啓進さん(六五)は「団地の方へ行ってくる
といって子どもたちだけで元気に出て行った。まさか危ない川へ遊びに行ったとは
思わなかった。来年春、上の子が小学生になるのが楽しみだったのに」と力を落と
していた。


川で子ども4人水死 和歌山県海南市93.08.29 朝日朝刊 27頁 1社 写図無
 (全344字)
 二十八日午後四時二十五分ごろ、和歌山県海南市七山の貴志川に魚釣りに来てい
た近くの小学六年生(一一)が、水深約四〇センチの岸辺の岩場に子どもがうつぶ
せで引っ掛かっているのを見つけた。一一〇番通報で駆けつけた海南署員らがさら
に川底に沈んでいた二人を見つけ、海南市内の病院に運んだが、三人とも死亡。も
う一人が午後七時半過ぎ、水死体で見つかった。
 調べでは、死亡したのは、近くの会社員小谷幸生さん(三四)の長男友一朗ちゃ
ん(六つ)と次男成志朗ちゃん(四つ)。近くの会社員田渕真延さん(三〇)の次
男慎太朗ちゃん(五つ)と、無職井上由紀子さん(三二)の長男隆司ちゃん(六
つ)。四人とも市立ななさと保育所に通っていた。
 四人は自転車で近くの貴志川の河原に行き、中州に渡って石積み遊びをしていた
らしい。


幼児4人が水死 和歌山で川遊び中93.08.29 東京読売朝刊31頁 社会面 写有
(全417字)
 二十八日午後四時三十分ごろ、和歌山県海南市七山の貴志川の岩場で、近くの会
社員小谷幸生さん(34)の長男友一朗ちゃん(6つ)(保育園児)がおぼれてい
るのを、アユ釣りをしていた中学生が見つけ救出、病院に運んだが、すでに水死し
ていた。
 海南署の調べで、友一朗ちゃんは近所の同園児ら三人と現場近くで水遊びをして
いたことがわかり、市消防本部の救急隊員約五十人が出て捜索したところ、二時間
後に現場から約百メートル下流で、会社員田淵真延さん(30)の二男慎太朗ちゃ
ん(5つ)と無職井上由紀子さん(32)の長男隆司ちゃん(6つ)が川底に沈ん
でいた。さらに一時間後に四百メートル下流で友一朗ちゃんの弟成志朗ちゃん(4
つ)も見つかったが、三人とも水死していた。
 四人は同じ団地に住む仲良しで、貴志川の中州で水遊びをしていた。同署では、
だれかが足を滑らせ、助けようとして次々と深みにのみ込まれ、おぼれたとみてい
る。貴志川は深いところで約五メートルの水深だった。


川遊びの園児4人水死 深みに1人…捜したら次々と−−和歌山93.08.29 毎日東
京本紙朝刊 23頁 社会 写図無 (全671字)
 ◇岸には自転車4台
 二十八日午後四時四十分ごろ、和歌山県海南市七山の貴志川(幅約三十メート
ル)の深みで、釣りをしていた近くの中学生が川底に沈んでいる同所、会社員、小
谷幸生さん(34)の長男で同市立ななさと保育所園児、友一朗ちゃん(6つ)を
見つけた。通報で駆け付けた海南署員が付近を捜索。近くの川の中で小谷さんの二
男成志朗ちゃん(4つ)▽同所、会社員、田淵真延さん(30)の長男慎太朗ちゃ
ん(5つ)▽同所、無職、井上由紀子さん(32)の長男隆司ちゃん(6つ)の三
人がおぼれているのを見つけ、四人とも病院に運んだが、いずれも間もなく死亡し
た。四人は同保育所に通う友達同士で、この日午後、河原で遊んでいるうち、川の
深みに入っておぼれたらしい。
 海南署の調べで、この日午後一時ごろ、慎太朗ちゃんと隆司ちゃんの二人が小谷
さん方に遊びに来て、小谷さん兄弟と四人そろって自転車で遊びに出ていったとい
う。
 現場は小谷さん方から約百メートル北西。河原のそばには深さ約三メートルの深
みがあり、同署は四人が水遊びしているうちにこの深みにはまり、おぼれたとみて
いる。
 海南市消防本部によると、友一朗ちゃんが岸近くの川底でおぼれているところを
発見された後、自転車が四台放置されていたことから、同本部の職員や近所の人た
ちが捜索していた。隆司ちゃんと慎太朗ちゃんの二人は、友一朗ちゃんが発見され
たすぐ近くの水深三メートルの深みで発見。成志朗ちゃんは、友一朗ちゃんの発見
場所から約五百メートル下流で午後七時三十二分、発見された。四人はいずれも大
量の水を飲んで意識がなかった、という。


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■■■■■七ヶ宿町収入役水死体事件■■■■■
■■■■■   1993年9月24日   ■■■■■
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砂利採取汚職事件 地検で聴取後不明 宮城・七ヶ宿町収入役、湖畔に車乗り捨て9
3.09.26 東京読売朝刊27頁 社会面(全409字)
 宮城県七ヶ宿町で砂利採取をめぐる贈収賄事件があり、同県警と仙台地検から参
考人聴取を受けていた同町の鈴木貞雄収入役(57)(七ヶ宿町瀬見原)が二十四
日仙台地検での聴取を受けた後行方不明になっていることが、二十五日わかった。
同日午後、同町長崎平、七ヶ宿ダム湖畔で、乗っていた乗用車が見つかり、車内か
らそろえて置かれた鈴木収入役の靴のほか、背広、ワイシャツが見つかった。白石
署などで捜索を続けている。
 贈収賄事件では、安藤昭一町長(66)が十六日、収賄容疑で逮捕され、鈴木収
入役は、県警捜査二課から四日間、仙台地検から二日間にわたり参考人聴取を受け
た。同課では、安藤町長がわいろを受け取ったとされる平成三年三月当時、鈴木収
入役が総務課長だったことから、押収資料などの確認のため聴取したとしている。
 塩野健彦・仙台地検次席の話「二十一、二十四日の二回聴取し、(二十四日は)
午後六時半ごろに帰した。捜査に行き過ぎはないと考えている」


汚職で聴取後、収入役不明に−−宮城・七ケ宿町93.09.26 毎日東京本紙朝刊 2
6頁 社会 写図無 (全315字)
 宮城県刈田郡七ケ宿町の砂利採取をめぐる贈収賄事件で、県警と仙台地検から参
考人聴取を受けていた同町の鈴木貞雄収入役(57)が、地検での事情聴取を受け
た二十四日夕から行方不明になっていることが二十五日、家族から白石署への届け
出で分かった。鈴木収入役の乗用車は同日午後、同町長崎平の七ケ宿ダム湖畔で見
つかったが、無人で車内に背広や靴が残されていた。同署は自殺の恐れもあるとみ
て、周辺一帯を捜索している。
 贈収賄事件では、安藤昭一町長(66)が十六日、収賄容疑で逮捕され、鈴木収
入役は県警捜査二課と仙台地検から計六回、参考人として事情聴取されていた。
 行方不明になった二十四日は、地検で聴取を受け、午後六時半すぎに自分の乗用
車で帰ったという。


収入役が自殺? 町長の収賄容疑で事情聴取 宮城・七ケ宿町93.09.27 朝日朝刊
 27頁 1社 写図無 (全309字)
 二十六日午前八時ごろ、宮城県刈田郡七ケ宿町長崎平、七ケ宿ダム湖の橋付近
で、七ケ宿町収入役の鈴木貞雄さん(五七)=同町瀬見原=が水死体で発見され
た。鈴木さんは、同町の安藤昭一町長(六六)が収賄容疑で逮捕された事件で、二
十四日午後六時ごろまで仙台地検に任意で事情を聴かれた後、行方が分からなくな
っていた。
 捜索していた白石署の調べによると、現場近くで鈴木さんの車が見つかり、運転
席に靴がそろえて置いてあった。同署は、鈴木さんに外傷がないことなどから、入
水自殺を図ったとみている。
 安藤町長は一九九一年三月、県有林と町有林の交換や採石認可などをめぐり、採
石業者から現金百万円を受け取ったとして十六日、収賄容疑で逮捕された。


不明の収入役を水死体で発見 取り調べ苦に自殺?/宮城・七ヶ宿93.09.27 東京
読売朝刊31頁 社会面(全323字)
 宮城県七ヶ宿町の砂利採取をめぐる贈収賄事件で、同県警、仙台地検から参考人
として事情聴取を受けた後、行方不明になっていた同町の鈴木貞雄収入役(57)
(同町瀬見原)は二十六日午前八時ごろ、前日に湖畔で乗っていた車が見つかった
同町長崎平の七ヶ宿ダムで、水死体で発見された。
 遺書は見つかっていないが、白石署では、目立った外傷がないことなどから自殺
とみている。家族は自殺の動機は思い当たらないと話しており、同署では、地検や
県警の取り調べを苦にした可能性もあるとみて調べている。
 鈴木収入役は、今回の事件で逮捕された同町町長の安藤昭一容疑者(66)がわ
いろを受け取ったとされる平成三年三月当時、同町総務課長で、町長の職務権限な
どについて参考人聴取を受けていた。


不明の収入役、遺体で発見−−宮城・七ケ宿町93.09.27 毎日東京本紙朝刊 27
頁 社会 写図無 (全335字)
 宮城県刈田郡七ケ宿町の砂利採取をめぐり町長が逮捕された贈収賄事件に絡み、
県警と仙台地検から参考人聴取を受けた後、二十四日夕から行方不明になっていた
同町の鈴木貞雄収入役(57)=同町瀬見原=が、二十六日朝、同町内の七ケ宿ダ
ム湖上流の湖中で水死体で発見された。白石署は、外傷もなく、近くに上着や靴を
入れたままの同収入役の乗用車があったことなどから、自殺とみて詳しい動機を調
べている。
 鈴木収入役は汚職事件があった一九九一年当時、総務課長を務め町長の職務権限
などについて詳しいことから、これまでに県警、仙台地検で合わせて六回、参考人
として事情聴取されていた。
 同県警捜査二課は「容疑者ではなく参考人として、町長の職務権限に関して事情
聴取をしており、捜査は適正だった」と話している。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■愛媛母子四人無理心中事件■■■■■
■■■■■   1993年9月27日   ■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

母子4人が排ガス死、無理心中か 愛媛 【大阪】
93.09.27 朝日朝刊 23頁 1社 写図無 (全365字)
 二十六日午前九時五十分ごろ、愛媛県伊予郡砥部町川登の銚子ダムの外周道路で、
エンジンがかかったまま止まっている軽乗用車の中に、女性と子ども三人がぐったり
しているのを通りかかった人が見つけ、伊予署に連絡した。
 調べによると、松山市福音寺町、主婦中井美春さん(二九)と、長男で私立愛媛星
岡幼稚園児の智哉ちゃん(四つ)、長女彩乃ちゃん(三つ)、次男翔太ちゃん(七カ
月)の四人。中井さんが次男を抱いて運転席に、長男と長女は後部座席で折り重なる
ように倒れ、四人ともすでに死亡していた。
 同署が夫に聞いた話では、四カ月ほど前に、中井さんが家事で目を離したすきに、
次男が布団で窒息しそうになり、病院に運ばれた。このころから中井さんは体が弱い
次男を気にかけ、悩んでいたという。
 同署は、中井さんが子どもを道連れに無理心中を図ったとみて調べている。


母子4人が排ガス心中−−愛媛
93.09.27 毎日大阪本紙朝刊 23頁 社会 写図無 (全401字)
 二十六日午前十時ごろ、愛媛県伊予郡砥部町千里の林道に停車した軽乗用車の中で、
母子四人がゴムホースで排ガスを車内に引き込み、一酸化炭素中毒で死んでいるのを
通行人が見つけた。県警伊予署は、育児を苦にした無理心中とみて調べている。
 調べでは、母子は松山市福音寺町、主婦、中井美春さん(29)▽長男智哉ちゃん
(4つ)=私立愛媛幼稚園児▽長女彩乃ちゃん(3つ)▽二男翔太ちゃん(生後七カ
月)。 発見時はエンジンがかかった状態。ホースを引き込んだ運転席の内側からビ
ニールテープで目張りがしてあった。遺書はなかった。
 同署が、会社員の夫(29)から事情を聴いたところ、美春さんは二十五日夕、夫
に「子供と実家(同県温泉郡川内町)に行く」と言って外出。しかし、実家には寄っ
ていなかった。
 夫は「四カ月前、二男が寝ていた時に、誤って布団をかぶり窒息状態になって以来、
二男の体調が思わしくなく、妻が悩んでいた」と話している、という。


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■■■■■富里七栄小一2名水死事件■■■■■
■■■■■   1995年7月2日   ■■■■■
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深さ2メートル、雨で水たまり ごみ処分場で2学童落ちて死ぬ/千葉・富里
95.07.03 東京読売朝刊30頁 社会面(全757字)
 二日午前七時五十五分ごろ、千葉県富里町七栄の町立ごみ処理場「富里クリーン
センター」内にある屋外最終処分場で、同所、食品製造業須郷豊さん(46)の三
女で町立富里小一年、美穂ちゃん(6つ)と、同所、飲食業伊藤公一さん(45)
の長男の同、和也君(6つ)の二人が、ごみの灰の上に雨水がたまってできた水た
まり(直径約二十メートル、深さ約二メートル)に落ちて死んでいるのを、捜して
いた同県警成田署員が見つけた。
 同署の調べによると、死因は二人とも水死。外傷がないことなどから、同署で
は、二人が誤って落ちたとみている。
 現場の最終処分場は、伊藤さん方から約三百メートル離れた場所にあり、周囲約
三百メートル、深さ約三メートルのすり鉢形。焼却されたごみの灰の上に、ここ数
日の雨で雨水が数か所たまっていた。二人は処分場の周囲を走るごみ搬入道路のわ
きからすべり落ちたか、灰の上に下りて遊んでいるうち、足を取られて水たまりに
落ちたらしい。
 同センターと伊藤さん方の間は有刺鉄線で仕切られているだけで、鉄線をくぐれ
ば自由に出入りできる。また、処分場は高さ約二メートルのフェンスで囲まれてい
るが、出入り口の門扉は付近で盛り土工事を行ったため、一昨年五月以来閉まらな
いまま。このため、伊藤さん方から現場の処分場までは自由に出入りできる状態に
なっていた。
 こうしたことから、同町議会は二日、全員協議会を開催、管理体制に問題がなか
ったかどうかなどについて、相川義雄町長に説明を求めた。
 死亡した二人は、自宅が二十メートルほどの距離にあり、クラスも同じ。一日午
後四時三十分ごろ、美穂ちゃんが伊藤さん方に遊びにきて、和也君と二人で出て行
ったのを和也君の母親の秀子さん(26)が確認しているが、同日午後八時を過ぎ
ても帰宅しないため、家族が同署に捜索願を出していた。


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■■■■■   久間三千年関係   ■■■■■
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■93年■

警官に乱暴容疑で無職男を逮捕/福岡・飯塚署
93.09.29 西部読売夕刊9頁(全369字)
 福岡県警飯塚署は二十九日午前、同県飯塚市潤野一四五、無職久間三千年容疑者
(55)を傷害と暴力行為の疑いで緊急逮捕した。
 調べによると、久間容疑者は同八時十五分ごろ、同市明星寺の公園横で通学路の安
全確保を兼ねて私服で警戒していた、誘拐殺人事件捜査班の県警本部捜査一課、金子
正志巡査長(31)、同署の山岡健二巡査長(48)の二人に「おまえらはどこのだ
れか」などと言って、持っていた植木刈り込み用のハサミ(長さ六十五・五センチ、
刃渡り十五・一センチ)で切りつけた。金子巡査長は左手に五日間、山岡巡査長は右
手のひらに十日間のけがをした。
 近所の人が一一〇番通報、駆けつけた同署員が久間容疑者を逮捕した。
 現場近くには、潤野小学校があり、四年二月、登校中に行方不明となった一年生の
女児二人(当時)が、同県甘木市の山中で、他殺体で見つかる事件が起きている。


警官傷害容疑者を処分保留で釈放/福岡地検飯塚支部
93.10.11 西部読売朝刊31頁(全175字)
 福岡地検飯塚支部は十日、警察官二人に対する傷害と銃刀法違反の疑いで調べてい
た福岡県飯塚市潤野、無職久間三千年容疑者(55)を処分保留で釈放した。
 調べによると、久間容疑者は九月二十九日朝、飯塚市明星寺の路上で、私服で捜査
中の警察官二人に植木刈り込み用ハサミでそれぞれ五日から十日のけがをさせた疑い。
同日、飯塚署に逮捕され、十日間の拘置が認められていた。

■94年■

6年前の飯塚の女児行方不明事件 きょう再度山林を捜索/福岡県警
94.11.11 西部読売朝刊29頁(全571字)
 昭和六十三年末から、福岡県飯塚市潤野、市営明星寺団地の女児(当時、潤野小一
年)が行方不明になっている事件で、県警捜査一課と飯塚署は十一日朝から、同団地
近くのヒノキ林を捜索する。県警では事件発生以来、大量の捜査員を投入、足取りを
追ってきたが、約六年たった現在も行方がつかめず、何らかの事件に巻き込まれた可
能性もあるとみている。
 捜索は午前九時から、地元の消防分団員らの協力を得、下草を払いながら、遺留品
など手がかりがないか調べる。県警では「当時、山林の捜索が十分にできなかったこ
ともあり、念のため」としている。
 この女児は、平成四年二月二十日に殺害された市内の二人の女児と同じ市立潤野小
に通っていた。昭和六十三年十二月四日午前九時半ごろ、弟と二人で友だちの家に寄
り、その後、一人で遊びに出かけた。同十時ごろ、団地内の住宅新築工事現場でブロ
ック塀に乗っているところを目撃されたのを最後に、行方が分からなくなっている。
 県警では当時、地元住民らの協力を得て、周辺山間部の峠道や雑木林、草むらなど
を捜すとともに、団地周辺にある大小十五の農業用ため池の水を抜くなど大がかりな
捜索を行った。
 平成四年に二女児が殺害された事件では、団地近くに住む無職久間三千年被告(5
6)が今月五日、殺人罪などで起訴されており、県警ではこの女児との関連について
も事情を聞いている。


不明女児の上着?近くの山林から発見 飯塚市で88年失跡 【西部】
94.11.11 朝日夕刊 9頁 1社 写図有 (全728字)
 一九八八年十二月に、福岡県飯塚市明星寺、松野愛子ちゃん(当時七つ、潤野小一
年)が行方不明になった事件で、福岡県警捜査一課と飯塚署は十一日朝から捜査員ら
約百二十人を動員し、自宅近くの山林を捜索、子ども用の赤い上着一着を発見した。
特徴などから、同県警は、愛子ちゃんのものである可能性が高いと見て、確認を急い
でいる。

 愛子ちゃんは、八八年十二月四日午前九時半ごろ、弟と一緒に自宅から約百メート
ル離れた弟の友人宅に遊びに行った後、行方が分からなくなった。愛子ちゃんは赤地
に白色の横じまのトレーナーに赤いジャンパーを着ていた。
 当時、県警は愛子ちゃんが何らかの事件に巻き込まれた可能性が高いとみて、飯塚
署員や学校の教師らがため池や山林など付近一帯を捜索。立て看板やポスター、チラ
シを使って市民に情報提供を呼び掛けるなどしたが手掛かりは得られず、行方はつか
めなかった。
 県警は、当時は気象条件などから十分に捜索できなかった場所があったことから、
この日、地元消防団員にも応援を求め、下草を刈るなどして徹底した再捜索を行って
いた。
 飯塚市潤野地区では、九二年二月にも、愛子ちゃんと同じ小学校に通う女児二人
(いずれも当時七つ)が殺害され、死体でみつかった。この事件では、団地の近くに
住む無職久間三千年被告(五六)が逮捕され、今月五日、容疑否認のまま殺人などの
罪で起訴された。
 県警は、上着の発見場所や特徴などから、愛子ちゃんのものである可能性が高いと
みて、確認を急ぐとともに、起訴拘置中の久間被告から事情を聴いている。同被告は、
愛子ちゃん事件との関連についても、強く否定しているという。

 【写真説明】
 山林を捜索する捜査員たち=11日午前10時45分、福岡県飯塚市明星寺で


行方不明の愛子ちゃんの衣服と確認 飯塚の山林で発見 【西部】
94.11.12 朝日朝刊 27頁 1社 写図有 (全1770字)
 一九八八年十二月、福岡県飯塚市明星寺の松野愛子ちゃん(当時七つ、潤野小一年)
が行方不明になった事件で、福岡県警捜査一課と飯塚署が十一日午前、愛子ちゃんの
自宅近くの山林の捜索で見つけた赤い衣服について、愛子ちゃんの母親幸子さん(四
七)は同日夕、失跡当時の愛子ちゃんが着ていたジャンパーと赤いしま模様のトレー
ナーであることを確認した。県警は、愛子ちゃんが何らかの事件に巻き込まれた可能
性が極めて高くなったとみている。

 県警などによると、愛子ちゃんの衣服は自宅から南西に約一キロ離れた雑木林の林
道わきの斜面で、地元の消防団員が見つけた。ごみの投棄場所のそばで、林道から約
十メートル入った雑草の間から、赤い色がのぞいていたという。
 ジャンパーとトレーナーは数メートル離れて見つかり、あまり傷んでいなかったと
いう。県警では両方について詳細に鑑定する。
 林道は車が一台やっと通るくらいの道幅。あまり人が通らず、小学一年生の女児が
足を踏み入れるような場所ではない。
 これまでの調べによると、愛子ちゃんは八八年十二月四日午前九時半ごろ、弟と一
緒に自宅から約百メートル離れた弟の友人宅に遊びに行き、明星寺団地内の公園で遊
んでいるのを目撃されたのを最後に、行方が分からなくなっていた。
 当時、飯塚署員や学校の教師らがため池や山林など付近一帯を捜索。立て看板やポ
スター、チラシを使い市民に情報提供を呼びかけるなどしたが、手がかりは得られな
かった。
 県警によると、愛子ちゃん行方不明事件につながる新たな目撃情報が得られたこと
や、当時は気象条件などで十分捜索できなかった場所があったため、六年ぶりに再捜
索したという。
 愛子ちゃんが通っていた潤野小学校では、九二年二月、女児二人(いずれも当時七
つ)が殺害され、死体で見つかった。この事件で、同地区に住む無職久間三千年被告
(五六)が逮捕され、今月五日、容疑否認のまま殺人などの罪で起訴されており、県
警は愛子ちゃんの行方不明事件との関連についても調べている。
 弁護人などによると、久間被告は愛子ちゃん事件との関連についても「全く関係な
い」と強く否定しているという。

 ○「なぜ、今になって」 「生きてて」なお望み
 遊びに出かけたまま行方不明になった福岡県飯塚市の松野愛子ちゃん(当時七つ)
のジャンパーとトレーナーが自宅に近い山中で見つかった十一日、関係者らは「なぜ、
六年もたって」と驚きの表情をみせた。失跡から六年目に迎えた事件の展開に、関係
者は「事件に巻き込まれたと考えたくない」と表情を曇らせた。
 愛子ちゃんの衣服は市道建設の工事現場から山中に林道を約百メートル入った雑木
林の斜面の雑草やごみの中から見つかった。捜索を始めてわずか二十五分後の午前十
時半ごろ。消防団員が目立つ色の赤い物に気づき、ジャンパーと分かった。
 一帯は、車でごみを捨てにくる人が時々おり、「ここにごみを捨てるべからず」と
書かれた板が木にくくりつけられている。近くにいた測量作業員は「なぜ、今までこ
こを捜してないのか」と不思議がった。
 周辺の山林では愛子ちゃんが行方不明になった時に何度も大がかりな捜索が続けら
れた。当時、同小PTA会長で、捜索活動にも加わった酒店経営佐々木和彦さん(四
八)は「当時としてはできるだけのことはした。早めに見つかればよかった」と残念
がった。
 午後五時五十分過ぎ、飯塚署で記者会見した永留慶造署長は「当時は事件に巻き込
まれたのかどうか分からなかった。自宅周辺のため池や側溝などは徹底的に調べたが、
少し捜索が足りなかったかもしれない」と語った。
 愛子ちゃんの母の幸子さん(四七)は衣類発見の知らせに、「赤いジャンパーは女
の子物には多い。娘のではないことを信じたい」と気丈に話していた。その後、衣類
をみせられ、愛子ちゃんの衣服と確認したという。
 愛子ちゃんが行方不明になった翌年四月から二年間、同小校長を務めた稲築町山野
の松熊鶴松さん(六一)は「生きていてくれたらという期待はまだ捨てない。今後の
捜査を見守りたい」と語った。

 【写真説明】
 (上)行方不明になった当時、愛子ちゃんについての情報提供を求めるチラシ(一
部)(下)チラシを示しながら、愛子ちゃんの衣服発見を発表する永留慶造・飯塚署
長=11日、福岡県飯塚市の飯塚署で


失跡6年、衣服発見 福岡の女児行方不明事件
94.11.12 朝日朝刊 31頁 1社 写図無 (全189字)
 一九八八年十二月、福岡県飯塚市明星寺の松野愛子ちゃん(当時七つ、潤野小一年)
が行方不明になった事件で、福岡県警捜査一課と飯塚署は十一日、捜査員ら約百十人
を動員し、自宅近くの山林を捜索、同日午前、赤いジャンパーとトレーナーを発見し
た。同日午後、母親の幸子さん(四七)が愛子ちゃんのものと確認した。県警は、愛
子ちゃんが何らかの事件に巻き込まれた可能性が極めて高くなったとしている。


不明女児の服発見 6年ぶり、犯罪被害の可能性/福岡・飯塚
94.11.12 東京読売朝刊31頁 社会面 写有(全386字)
 福岡県飯塚市明星寺、松野愛子ちゃん(失跡当時七歳)が、昭和六十三年十二月か
ら行方不明になっている事件で、同県警は十一日、団地近くの雑木林を捜索し、当時
愛子ちゃんが着ていた、ともに赤色のジャンパーとトレーナーを発見した。県警は何
らかの犯罪に巻き込まれた可能性が強まったとみて、残りの遺留品の発見に全力を挙
げる。同市内では平成四年二月、同じ潤野小の女児二人を殺害したとして、同市潤野、
無職久間三千年被告(56)が殺人罪などで起訴されているが、愛子ちゃんが不明直
前に被告宅に立ち寄ったとの証言があることなどから、県警は失跡との関連を追及す
る。
 久間被告は二女児殺害と同様、愛子ちゃんの失跡についても「関係ない」と否認し
ている。
 調べによると、ジャンパーとトレーナーは、団地から西へ約一キロの雑木林の山道
から約十メートル下った斜面の草むらに一、二メートル離れて無造作に捨てられてい
た。


不明6年、愛子ちゃんどこ 福岡・飯塚で着衣発見 「元気でいて」と校長
94.11.12 西部読売朝刊27頁 写有(全1371字)
 約六年の空白を経て見つかった赤いジャンパーとトレーナー。消息が途絶えて以来、
有力な手掛かりがなかった福岡県飯塚市明星寺の松野愛子ちゃん(失跡当時七歳、潤
野小一年)行方不明事件は十一日、失跡当時の愛子ちゃんの着衣の発見で、事件性が
強まった。先に同市潤野、小学教諭(36)の長女A子ちゃんと、同所、会社員(3
4)の長女B子ちゃん(いずれも当時潤野小一年、七歳)が殺害された事件で起訴さ
れた久間三千年被告(56)と失跡事件との関連を追及するという福岡県警。急な展
開に、二女児殺害事件のショックも冷めやらない地元は、新たな驚きと不安に包まれ
た。
 ――自宅周辺
 「今でも夜中に目が覚めて涙が出る。無事でいてほしい」
 飯塚市潤野に住む愛子ちゃんの祖父、田中金作さん(70)は、行方不明の孫の着
衣発見の知らせに不安を募らせながらも、いちるの望みに期待をつないだ。
 田中さんは、昼ごろ、友人宅にいて衣類が見つかったことを知った。
 「失跡した当時、警察があれほど捜したのに見つからず、今ごろ発見されるとは。
捜索後に(だれかによって)捨てられたのだろうか。人懐こい子だった。出来れば代
わってやりたいが……」と祈るような表情で安否を気遣った。
 愛子ちゃんの自宅は夜になっても、ひっそりと静まり返ったまま。近所の主婦は
「六年前に地域総出で行方を捜し回ったことを覚えています。何とか事件解決の手掛
かりになってほしい」と語った。
 ――学 校
 潤野小の校長室で、島田流水校長(59)は「警察からの連絡はありません」と驚
いた様子。「愛子ちゃんはどこかで元気にしているという願望を持ち続けている。そ
うあって欲しい」と言葉を詰まらせた。
 同小は約三年前に二女児が殺害される事件が発生して以来、集団登下校を実施。再
発防止に努めており、この日も児童たちは各地区ごとに下校した。
 二女児殺害事件発生当時の同小校長で、今年三月に退職した細川清司さん(58)
は「二女児殺害事件が起きた時には愛子ちゃんのことが心配だったが、どこかで生き
ていると信じ続けてきた。衣類の発見は心配でならないが、ここまで来れば一気に真
相を解明して欲しい」と、沈痛な表情で語った。
 細川さんの在職当時は毎年、愛子ちゃんが失跡した十二月四日を「愛子ちゃんの安
全を願う日」として、学年集会を開催。安全教育のビデオを見て、愛子ちゃんが早く
帰って来るよう、みんなで祈ったという。
 ◆事件の可能性大 署長、言葉選び会見
 「愛子ちゃんの着衣を確認したので発表します」。午後五時五十分から飯塚署であ
った記者会見。永留慶造署長が用意した発表文を読み上げる形で始まった。
 捜索態勢や発見の日時、愛子ちゃんが行方不明になった当時の状況を、時折、顔を
上げながら淡々と説明。見つかった衣類の特徴については、同署が情報提供を呼びか
けるため作成したチラシの絵を示した。
 「なぜこれまで発見出来なかったのか」「この時期に捜索した理由は」などの質問
に、署長は「当時の捜索範囲を検討した結果、団地周辺の山林がやや不十分だったと
いうことです」「(捜索開始後、発見が早かったのは)若干の情報もあったからです」
と言葉を選びながら答えた。
 最後に、「愛子ちゃんは何らかの事件に巻き込まれた可能性が強いということか」
との質問に対しては「そういうことです」と述べ、二十分足らずで会見を打ち切った。


行方不明の愛子ちゃんの衣類発見場所、「事件」現場とは別?【西部】
94.11.12 朝日夕刊 11頁 1社 写図無 (全755字)
 福岡県飯塚市明星寺の松野愛子ちゃん(失跡当時七つ、潤野小一年)の行方不明事
件で、同県警捜査一課と飯塚署は、愛子ちゃんのジャンパーとトレーナーがみつかっ
た山中の斜面は衣服を捨てただけの場所で、愛子ちゃんが巻き込まれた「事件」現場
は別のところとの見方を強めている。県警によると、ジャンパーなどには風雨にさら
された跡もあるといい、微細に鑑定して捨てられた時期の特定を急いでいる。

 県警が、山中の斜面を衣服が捨てられただけの場所と見ているのは、(1)現場一
帯からはほかに愛子ちゃんの所持品が見つかっていない(2)現場は山道わきののり
面で、その場でジャンパーなどが脱ぎ捨てられたとは考えにくい――などからという。
 また、ジャンパーとトレーナーには、風雨にさらされた跡があることなどから「最
近捨てられたとは考えられない」(捜査幹部)としている。だが、衣服が捨てられた
のが、愛子ちゃんが行方不明になった当時かそれ以後なのかは、繊維などの汚れ具合
などを詳しく鑑定してみないとわからないという。
 一方、県警は、一九九二年二月に、愛子ちゃんと同じ小学校に通っていた女児二人
が殺害された事件で逮捕され、今月五日、殺人罪などで起訴された無職久間三千年被
告(五六)の自宅に、愛子ちゃんが行方不明になった当日の午前中、遊びに行ってい
た事実を把握。久間被告から愛子ちゃんの行方不明事件に関しても事情を聴いている。
 久間被告は昨年十月、朝日新聞社の取材に対し、当日午前九時ごろ、愛子ちゃんが
ほかの子供と一緒に自宅に来たので、チョコレートをあげたと話したが、「それから
三十分位後に再び子供たちがチョコレートをもらいに来た時には、愛子ちゃんはいな
かった」と述べ、愛子ちゃんの事件との関係を否定。弁護人に対しても「全く無関係」
と話しているという。


飯塚の愛子ちゃん失跡本格捜査 衣類発見現場から靴?も/福岡県警
94.11.12 西部読売夕刊1頁 写有(全635字)
 福岡県飯塚市明星寺、松野愛子ちゃん(失跡当時七歳、潤野小一年)の行方不明事
件で、県警捜査一課と飯塚署は愛子ちゃんの衣類が事件発生以来、約六年ぶりに発見
されたことから、犯罪に巻き込まれた疑いが強まったとして、十二日から本格的に捜
査を再開した。衣類発見現場などの再捜索は行われなかった。
 県警では十二日朝から、衣類発見現場や愛子ちゃんの自宅周辺などに捜査員を投入、
聞き込みを重点にした捜査を始めた。
 調べによると、発見されたジャンパーとトレーナーは、雑木林の急斜面の草むらに
捨てられていた。県警では何者かが山道から投げ捨てたとみており、平成四年二月に
市内の女児二人が殺害された事件で殺人罪などで起訴されている同市潤野、無職久間
三千年被告(56)や、以前、久間被告が乗っていた後輪がダブルタイヤのワゴン車
が、愛子ちゃんが行方不明になる前後にこの現場を通っていたとの目撃証言を重視し
ている。久間被告は一貫して関与を否定している。
 ジャンパーなどが発見された際、周囲にあった靴など多数を参考のために持ち帰っ
た。靴の中には、愛子ちゃんが当時、はいていたものと同じピンク色のものもあった
が、家族は「愛子ちゃんのものかどうかはっきりしない」と言っている、という。
 また、衣類発見現場の捜索は十一日午前十時から午後二時まで行われただけ。十二
日に捜索しなかった理由について県警は「警察がすべて見つけるより、(犯人が逮捕
されたとき供述に基づく)秘密の暴露で出た方がいい」としている。(9面に関連記
事)


行方不明の愛子ちゃんの着衣発見 数日前から現場絞る 警察に情報/福岡・飯塚
94.11.12 西部読売夕刊9頁(全575字)
 福岡県飯塚市明星寺の松野愛子ちゃん行方不明事件で、約六年前の失跡当時の着衣
発見から一夜明けた十二日、捜索に参加した消防分団員の一人は、有力な手掛かりの
突然の発見に「(警察に)事前の情報があったようだ」と語った。捜査関係者も、目
撃情報をもとに数日前から発見現場付近に絞って遺留品を捜していたことを明らかに
した。
 愛子ちゃんの赤いジャンパーとトレーナーが見つかった場所は、自宅の市営明星寺
団地から西へ約一キロ離れた雑木林の中。捜索に参加した消防分団員によると、車一
台が乗り入れられる山道から約十メートル下の斜面で、一般の家庭ごみなども捨てら
れていたという。
 捜索に当たっては、あらかじめ警察から地図で範囲を指示され、一帯を草刈りカマ
で払っていた分団員の一人が開始から三十分足らずで見つけた。二点の衣類はそれぞ
れ丸められ、一、二メートル離れて草むらから一部がのぞいていた。
 現場に居合わせた分団員は「六年前の捜索にも加わったが、当時は手をつけていな
かった場所だと思う。衣類はやや色あせて見えたが、長い間、風雨にさらされたもの
かどうかはわからない。事前の情報があったから、すぐ見つかったのだろう」と話し
ていた。
 発見現場について、捜査関係者も「失跡当時、一帯は雪があって十分調べることが
できなかった。(現場付近で不審な車を見たなどの)目撃情報もあった」と語ってい
る。


愛子ちゃん衣服発見 飯塚の行方不明事件(NEWS三面鏡)【西部】
94.11.13 朝日朝刊 30頁 2社 写図有 (全1063字)
 福岡県警捜査一課と飯塚署が十一日に行った行方不明となっている同県飯塚市明星
寺の松野愛子ちゃん(当時七つ、潤野小一年)の捜索は、開始から二十五分後に愛子
ちゃんのジャンパーとトレーナーが見つかった。姿を消してから六年。愛子ちゃんの
自宅近くの山林から、ごく短時間での発見に「うまく行き当たった」と県警。しかし、
あまりの手際よさに、捜索に加わった消防団員からはいぶかる声も出たほどだ。
 県警の発表によると、飯塚署員と地元の消防団員ら計約百十人が捜索を始めたのは
十一日午前十時。二十五分後に、消防団員が林道わきで衣服を見つけたという。午後
からの捜索に備えて弁当を用意していた捜査幹部が「正直言って驚いた」というほど
だった。
 しかし、ある消防分団員は「大規模な捜索に消防団が出たのは行方不明になった日
と翌日だけ。六年たって警察から要請を受けた時は、正直、何で今と思った。さらに
開始直後に衣類が見つかったと聞いてまた驚いた」という。
 県警は、二女児殺害事件の容疑者として逮捕した同市潤野の久間三千年被告(五六)
=殺人罪などで起訴=の捜査の中で、(1)愛子ちゃんは久間被告の家に遊びに行っ
た日に失跡した(2)愛子ちゃんが最後に目撃された団地の公園付近に、久間被告が
いたとの目撃情報がある(3)行方不明になったころ、久間被告が衣服のあった現場
付近の山中にいたのを見た人がいる――などから、愛子ちゃん失跡事件についても久
間被告から事情を聴いていた。
 愛子ちゃんが行方不明になった一九八八年十二月にも、県警は大掛かりな捜索を実
施したが、当時「事件」と「事故」の両面があると判断。「愛子ちゃんが歩いていて
道に迷ったのだとしたら、自宅からそんなに近い場所ではない」と推定し、地区に二
十カ所以上あるため池や側溝を中心に捜索した。今回、衣服が見つかった山中も捜し
たが、当時は降雪など気象条件が悪く、十分な捜索ができなかった面もあるという。
 十一日の捜索はまず、当時不十分だった捜索個所を地図上に線引きし、さらに久間
被告が目撃されたとされる場所を重ね合わせて範囲をかなり限定。草刈り機の扱いに
慣れた農家の消防団員らの助力もあり、極めて短時間で衣服が発見できた、と説明す
る。
 愛子ちゃんが失跡当時身に着けていたもののうち、黒色のズボンなどはまだ見つか
っていない。県警は「今のところ次の捜索は未定で、当面は発見された衣服をもとに、
久間被告との関係などを調べる」(捜査幹部)としている。久間被告は、愛子ちゃん
事件についても、「全く関係ない」と話しているとされる。


愛子ちゃんの着衣なぜ今 久間被告を本格聴取 失跡前接触に関心/福岡県警
94.11.13 西部読売朝刊31頁(全1179字)
 福岡県飯塚市明星寺、松野愛子ちゃん(失跡当時七歳、潤野小一年)の行方不明事
件で、県警捜査一課と飯塚署は十二日、平成四年二月に市内の女児二人が殺害された
事件で殺人罪などで起訴されている同市潤野、無職久間三千年被告(56)が関与し
ていないかどうか確認するため本格的に事情聴取を始めた。
 十一日に愛子ちゃんの衣類が発見されたことで、県警は犯罪に巻き込まれた疑いが
強いとみており、失跡直前に愛子ちゃんと接触している久間被告に大きな関心を寄せ
ている。久間被告は失跡への関与を認めてはいないが、強硬に否定するわけでもない
という。
 県警によると、発見されたジャンパーとトレーナーは県警科学捜査研究所で鑑定を
急いでいるが、長い間放置されていたことを裏付けるように古くなっており、失跡直
後に捨てたとみている。県警では別の場所で犯罪に巻き込まれたとみている。
 発見現場には家庭用品や靴などの不用品が多数捨てられていた。県警は衣類の周辺
にあった下着類や子供用の靴などを多数採集。この中には愛子ちゃんが当時はいてい
たピンク色と同じ色の運動靴も含まれていたが、家族は「(愛子ちゃんのものか)は
っきりしない」と言っており、他の採集品とともに分析している。

 ◆2女児事件の進展きっかけ 確度高い情報入手
 愛子ちゃんの行方不明から約六年を経て発見されたジャンパーとトレーナー。突然、
姿が消え、広範囲な大捜索でもまったく足取りさえつかめなかったのに、なぜ今ごろ
になって、自宅からほど遠くない雑木林で有力な遺留品が見つかったのか――。
 今回の発見は「二女児殺害事件が解決したことで、愛子ちゃんに関する捜査情報が
得られた」(捜査幹部)ことが大きい。情報はかなり確度が高かったと言われ、事実、
十一日の捜索場所も衣類が見つかった雑木林の斜面に限定でき、綿密な捜索が可能だ
った。六年前の捜索にも加わった消防団員は「この雑木林も捜索したが、その時は発
見現場の斜面だけは調べなかった」と話している。
 愛子ちゃんが行方不明になったのは、昭和六十三年十二月四日午前九時半ごろ。こ
の日は日曜で自宅近くの公園で弟と遊んだ後、足取りが途絶えている。
 福岡県警と飯塚署は、失跡直後から事件、事故の両面で捜査員や消防団などを大動
員して捜索。団地周辺にある大小十五のため池の水抜きまでして調べた。翌年末まで
四度にわたる広域捜索では、福岡、北九州、行橋、宗像市方面にまで拡大したが、足
取りはまったくつかめなかった。
 愛子ちゃん失跡の三年二か月後の平成四年二月、同じ潤野小の一年生女児二人の殺
害事件が発生、県警は、失跡事件も並行して捜査を続けた。対象者が同じ地域の同年
齢の女児で、同じ小学校だったからだ。
 女児二人殺害事件については今月五日、同地域に住む久間被告が容疑否認のまま殺
人罪などで起訴されたことで、捜査の焦点は愛子ちゃん失跡に移っていた。


松野愛子ちゃん不明7年目 服発見後も捜査難航/福岡・飯塚
94.12.03 西部読売夕刊8頁 写有(全513字)
 福岡県飯塚市明星寺の松野愛子ちゃん(失跡当時七歳、潤野小一年)が行方不明に
なって、四日で七年目を迎える。県警捜査一課と飯塚署は今年十一月十一日、自宅近
くの山林を捜索、愛子ちゃんが着ていたジャンパーとトレーナーを発見、犯罪に巻き
込まれた可能性が高くなっているが、その後の捜査は難航している。
 愛子ちゃんは昭和六十三年十二月四日午前、自宅近くの公園で弟と遊んだあと、足
取りが途絶え、行方が分からなくなった。
 県警は、平成四年二月に、愛子ちゃんと同じ潤野小一年(当時)の女児二人が殺害
された事件で殺人罪などで起訴された同市潤野、無職久間三千年被告(56)が失跡
直前に愛子ちゃんと接触していたことなどから関連を調べている。久間被告がポリグ
ラフ(うそ発見器)で、同市明星寺の山林付近に強い反応を示したこともあり、捜索
したところ、愛子ちゃんの着衣を発見した。
 県警は、久間被告が愛子ちゃんの失跡にかかわっているとみて、起訴後も事情を聞
いているが、久間被告は失跡への関与を否定している。
 着衣の発見を契機に愛子ちゃんに結び付く新たな情報を求めて、自宅周辺や現場周
辺の聞き込みを現在も続けているが、長い月日の経過もあって有力な情報は寄せられ
ていない。

■95年■

福岡県警が「愛子ちゃん」事件で聴取再開へ 久間被告は関与否認
95.01.03 西部読売朝刊31頁(全571字)
 福岡県飯塚市明星寺、松野愛子ちゃん(失跡当時七歳)が六年前から行方不明にな
っている事件で、県警捜査一課と飯塚署は近く、市内の別の女児二人を殺害したとし
て殺人罪などで起訴されている同市潤野、無職久間三千年被告(56)に対する取り
調べを再開する。昨年十一月、ポリグラフ(うそ発見器)検査で被告が反応した山林
から愛子ちゃんの衣服が発見されたことなどから、県警では失跡に関与した疑いが強
いとみている。被告は認めてはいないが、微妙な言い回しをしているという。
 調べによると、愛子ちゃんは一九八八年十二月四日午前九時半ごろ、弟と二人で自
宅近くの被告宅に寄った後、足取りが途絶えている。被告も報道機関に寄せた書面の
中で、「あめを与えた」などと接触したことは認めている。
 県警では、この接触のほかに〈1〉愛子ちゃんが当時、被告に殺害されたとされる
二人の女児と同じ潤野小一年だった〈2〉被告が、愛子ちゃんの衣服が見つかった現
場近くの山道を通っていたとの目撃情報がある――ことなどから、失跡と何らかの関
連があるとみて調べていた。昨年十一月末に県警本部から福岡拘置支所に身柄を移監
した後も取り調べをしていたが、有力な供述は得られず中断していた。
 被告が別の女児二人を殺害したとされる事件は、二月二十日に福岡地裁で初公判が
開かれるが、被告はこの事件についても否認している。

愛子ちゃん失跡 久間被告の調べ断念 関与、一貫して否定/福岡県警
95.02.05 西部読売朝刊23頁(全698字)
 福岡県飯塚市明星寺、松野愛子ちゃん(失跡当時七歳、潤野小一年)が六年余前か
ら行方不明になっている事件で、県警捜査一課と飯塚署は四日までに、市内の別の女
児二人を殺害したとして殺人罪などで起訴されている同市潤野、無職久間三千年被告
(57)に対する取り調べを打ち切った。ポリグラフ(うそ発見器)検査で被告が強
く反応した山林から愛子ちゃんの衣類が発見され、県警では失跡に関与したとみてい
たが、被告は一貫して否定。これで、昨年九月二十三日、久間被告が死体遺棄容疑で
最初に逮捕されて以来、四か月余りにわたって断続的に続いていた調べを終えた。
 県警によると、被告が起訴された昨年十一月五日以降、継続して愛子ちゃん失跡事
件との関連を追及。十二月にいったん中断した後、年明け早々から取り調べを再開し
たが、一月いっぱいで打ち切った。
 十一月十一日には、被告がポリグラフで反応した同市内の山林を捜索。愛子ちゃん
が失跡当時に着ていたジャンパーとトレーナーが見つかった。被告が失跡前後に、こ
の山林を通っていたとの目撃証言もあることから、県警は関与している、とみていた。
 愛子ちゃんは一九八八年十二月四日午前九時半ごろ、弟と二人で自宅近くの被告宅
に寄った後、足取りが途絶えている。被告は捜査当局の調べに、一貫して事件への関
与を強く否定していた。
 被告は九三年二月二十日午前、同市潤野の潤野小付近の通学路で、当時同小一年の
女児二人をワゴン車に乗せて誘拐。首を絞めて殺害した後、同県甘木市の山中に遺体
を捨てたとして、殺人罪と略取誘拐罪などで福岡地裁に起訴された。二月二十日に初
公判が開かれるが、この事件についても起訴事実を否認している。

女児不明事件、きょう再捜索 飯塚で福岡県警 【西部】
95.02.09 朝日朝刊 27頁 1社 写図無 (全370字)
 一九八八年十二月に、福岡県飯塚市明星寺の松野愛子ちゃん(当時七つ、潤野小一
年)が行方不明になった事件で、福岡県警捜査一課と飯塚署は九日朝から捜査員約八
十人を動員し、自宅近くの山林を再捜索する。この山林では、昨年十一月の捜索で、
愛子ちゃんが当時着ていた赤いジャンパーとトレーナーが見つかっている。
 同市潤野地区では、九二年二月に、愛子ちゃんと同じ小学校に通う女児二人(いず
れも当時七つ)が殺害された。この事件では、昨年九月、近くに住む無職久間三千年
被告(五七)が逮捕され、容疑否認のまま殺人などの罪で起訴された。今月二十日、
福岡地裁で初公判が開かれる。
 県警は久間被告から、愛子ちゃん不明事件についても事情を聴いてきたが、同被告
は関連を強く否定。捜索は有力な情報にもとづくものではなく、初公判が近いことか
ら一つの区切りをつけたいとしている。


愛子ちゃん不明事件 山林再捜索へ/福岡県警
95.02.09 西部読売朝刊23頁(全158字)
 福岡県飯塚市明星寺、松野愛子ちゃん(失跡当時七歳、潤野小一年)が六年余前か
ら行方不明になっている事件で、県警捜査一課と飯塚署は九、十日、愛子ちゃんの衣
服が見つかった同市明星寺周辺の山林を再度捜索する。
 県警は昨年十一月十一日、明星寺の雑木林を捜索し、愛子ちゃんが失跡当時に着て
いた赤いジャンパーとトレーナーを発見した。


愛子ちゃん再捜索始まる 飯塚市の自宅近辺 福岡県警 【西部】
95.02.09 朝日夕刊 11頁 1社 写図無 (全267字)
 福岡県飯塚市明星寺の松野愛子ちゃん(当時七つ、潤野小一年)が一九八八年十二
月に行方不明になった事件で、福岡県警捜査一課と飯塚署は九日午前十時すぎから、
捜査員約八十人を動員して、自宅近くの山林の再捜索を始めた。昨年十一月の捜索で、
この近くで愛子ちゃんが当時着ていた赤いジャンパーとトレーナーが見つかっており、
二日間かけて一帯を詳しく調べる。
 捜索現場は、愛子ちゃんが住んでいた市営明星寺団地から南西に数百メートル離れ
た山あい。「未発見の着衣などの捜索」が目的で、捜査員は分散して山中に入り、落
ち葉などをかき分けながら調べを進めている。


福岡の女児行方不明事件で山林を再捜索 県警と飯塚署
95.02.09 朝日夕刊 15頁 1社 写図無 (全242字)
 福岡県飯塚市明星寺の松野愛子ちゃん(当時七つ、潤野小一年)が一九八八年十二
月に行方不明になった事件で、福岡県警捜査一課と飯塚署は九日午前十時すぎから、
捜査員約八十人を動員して、自宅近くの山林の再捜索を始めた。県警は九四年九月、
愛子ちゃんが通っていた潤野小の女児二人を殺害したとして、同市潤野の無職久間三
千年被告(五七)を逮捕。愛子ちゃんの失跡当時、久間被告が近くの山林にいたとす
る目撃情報などから、同年十一月十一日に山林一帯を捜索、愛子ちゃんの赤いジャン
パーとトレーナーを見つけた。


愛子ちゃん不明事件 飯塚の山林を再捜索/福岡県警
95.02.09 西部読売夕刊11頁 写有(全864字)
 福岡県飯塚市明星寺、松野愛子ちゃん(失跡当時七歳、潤野小一年)が行方不明に
なっている事件で、県警捜査一課と飯塚署は九日午前十時から、同市明星寺の山林を
中心に捜索を始めた。昨年十一月には近くから、愛子ちゃんが身に着けていた赤いジ
ャンパーとトレーナーが見つかっており、今回は残る着衣の発見に重点を置いている。
 現場は、同市西部の竜王山(六一六メートル)北東の山ろく。前回の場所から西へ
約一キロの林道下の山林で、樹木がうっそうと茂り、昼間も人通りはほとんどない。
 捜索は捜査員約八十人で行われた。前回の捜索後に「愛子ちゃん失跡当時、動物の
死体のようなにおいがした」との情報が寄せられた所で、下草を刈りながら、林の中
を念入りに調べた。
 十日は、地元消防団員の協力も求め、前回の現場周辺を再度、捜索する。
 愛子ちゃんは八八年十二月四日、自宅近くで行方不明となった。県警では、同市内
の別の女児二人を殺害したとして殺人罪などで起訴されている同市潤野、無職久間三
千年被告(57)が、愛子ちゃん失跡事件に関与していたのではないかとみて、最近
まで取り調べたが、久間被告は一貫して否定、このほど取り調べを打ち切っている。
    ◇
 失跡して満六年が過ぎた愛子ちゃんに直接つながる手掛かりを、と捜査陣は林へ。
近藤光信福岡県警刑事部長も姿を見せ、発見にかける意欲を感じさせた。
 比較的温かい雨上がりの杉林。飯塚市の竜王山ふもとの現場には午前十時過ぎ、福
岡県警の出動車二台に分乗した警官約八十人が到着。警杖(けいじょう)にスコップ
などを持ち、幅約三メートルの林道を下って行った。高さ一メートル前後のササが生
い茂る中、捜索を始めた。
 近藤刑事部長も十五分後に、追いかけるように永留慶造・飯塚署長が到着、林の中
に入った。
 午後一時半過ぎまでに、何も発見できなかったが、永留署長は「愛子ちゃんの失跡
原因に関して、久間被告から自供が得られず、これをはっきりさせる意味と、久間被
告の初公判(今月二十日)が近いこと、愛子ちゃんの遺族の心情を考慮して(捜索を)
行った。十日も行う方針」と語った。


新たな手がかりなし 愛子ちゃん行方不明事件再捜索 飯塚 【西部】
95.02.10 朝日朝刊 31頁 1社 写図無 (全152字)
 福岡県飯塚市明星寺の松野愛子ちゃん(当時七つ、潤野小一年)が行方不明になっ
ている事件で、福岡県警捜査一課と飯塚署は九日、昨年十一月に愛子ちゃんの赤いジ
ャンパーなどがみつかった自宅近くの山林を再捜索したが、事件に関連する物はみつ
からなかった。十日も捜査員約百人と地元消防団員約四十人で付近一帯を捜索する。


再捜索を継続 福岡・飯塚の愛子ちゃん不明事件 【西部】
95.02.10 朝日夕刊 12頁 2社 写図無 (全86字)
 福岡県飯塚市明星寺の松野愛子ちゃん(当時七つ、潤野小一年)の行方不明事件で、
再捜索をしている福岡県警捜査一課と飯塚署は十日も午前十時すぎから自宅近くの山
林で捜索を始めた。


飯塚の山中、骨片発見 愛子ちゃん事件で捜索/福岡県警
95.02.10 西部読売夕刊11頁(全385字)
 福岡県飯塚市明星寺、松野愛子ちゃん(失跡当時七歳、潤野小一年)が六年余前、
行方不明になっている事件で、県警捜査一課と飯塚署は、前日に続き十日午前十時す
ぎから、昨年十一月に愛子ちゃんが失跡当時着ていた衣服が見つかった同市明星寺の
雑木林周辺の再捜索を行い、衣服のあった付近から骨を発見した。県警などで人の骨
が動物の骨かなどの確認を急いでいる。九日の捜索場所では何も発見できなかったが、
この日は地元消防団員の応援を得て詳細に捜索した。
 捜索場所は、愛子ちゃんの自宅から西へ約一キロの小高い丘になった雑木林やその
周辺の山林。
 この一帯は、別の女児二人殺害事件で起訴されている久間三千年被告(57)(同
市潤野)が、ポリグラフに強く反応を示したのをもとに昨年十一月に捜索、愛子ちゃ
んが着ていた赤いジャンパーやトレーナーが見つかった。だが遺体やはいていた黒い
ズボンなどが発見されていない。


飯塚の山林に人の?骨 愛子ちゃんとの関連探る 福岡県警 【西部】
95.02.11 朝日朝刊 31頁 1社 写図有 (全1661字)
 一九八八年十二月に、福岡県飯塚市明星寺、松野愛子ちゃん(当時七つ、潤野小一
年)が行方不明になった事件で、福岡県警捜査一課と飯塚署は十日朝から捜査員ら約
百四十人を動員し、自宅近くの山林を捜索、午後一時十五分ごろ、土中から人骨とみ
られる骨三本をみつけた。このすぐ近くでは、昨年十一月の捜索で、愛子ちゃんが当
時着ていたジャンパーとトレーナーがみつかっており、同県警は愛子ちゃんの骨であ
る可能性があるとみて、九大医学部に人骨かどうかの鑑定を依頼した。

 県警によると、骨がみつかったのは、衣類の発見場所から約三メートル離れた所。
土を深さ二、三十センチ掘ったところにあり、半径約一メートル内に点在していたと
いう。
 骨は長いもので約十センチ、太さは直径一センチくらい。人骨とすれば、子供の上
腕骨の可能性が高い。折れたものもあった。かなり古いものとみられ、埋めたという
よりも、上に土などが積もったという様子だった。
 愛子ちゃんは、八八年十二月四日朝から行方が分からなくなった。当時、県警は愛
子ちゃんが何らかの事件に巻き込まれた可能性が高いとみて、池や山林など付近一帯
を捜索したが、手掛かりはなく、行方はつかめなかった。
 飯塚市潤野地区では、九二年二月にも、愛子ちゃんと同じ小学校に通う女児二人
(いずれも当時七つ)が殺害され、死体でみつかった。この事件では、近くに住む無
職久間三千年被告(五七)が逮捕され、容疑否認のまま殺人などの罪で起訴された。
今月二十日には福岡地裁で初公判が予定されている。
 県警は、愛子ちゃんは、自宅から約百メートル離れた久間被告宅に遊びに行ったの
を最後に足取りが途絶えていることから、久間被告から愛子ちゃん行方不明事件につ
いても任意で事情聴取。さらに、同被告が当時、自宅近くの山林に出入りしていたと
の目撃情報があったことや、任意でポリグラフ(うそ発見器)にかけたところ、自宅
近くの山林に反応を示したことなどから、捜索し、ジャンパーなどを発見していた。
 このため起訴拘置後も事情聴取を続けたが、同被告は愛子ちゃん事件との関連を否
定している。

 ○久間被告との雑談が端緒 再捜索に踏み切る
 松野愛子ちゃん(当時七つ)の可能性がある人骨と見られる骨が発見されたのは、
昨年十一月、愛子ちゃんのジャンパーなどがみつかった場所のすぐ近くだった。福岡
県警はなぜ前回の捜索で土中を掘り起こさなかったのか。今回、再捜索した理由は。
もし愛子ちゃんの骨と分かった場合には、容疑者につながる新たな証拠や、供述を得
られるかどうかが捜査のポイントとなる。
 県警捜査幹部によると、再捜索の端緒になったのは、別の二女児殺害事件で起訴さ
れた久間三千年被告(五七)の話からだったという。ジャンパーなどをみつけた翌日、
捜査員が、久間被告に衣類を見せたところ、同被告は動揺した様子をみせ、雑談で
「骨も一緒にみつかったのか」などと捜査員に質問。さらに、衣類と遺体は別の場所
にはないことをほのめかすような話もした、とされる。
 しかし、再捜索が行われたのはそれから約三カ月後だった。これについて県警捜査
幹部は「供述で遺体の遺棄場所を特定し、発見した方が、逮捕、起訴にもってゆける
と判断していたからだ」と説明している。
 県警は、衣類発見後も、愛子ちゃん行方不明事件について、一月末まで久間被告か
ら任意で事情聴取を進めた。しかし、同被告は関連を否定。このため「供述は期待で
きなくなったが、家族の強い要望もあって再捜索することにした」(同幹部)と説明
している。
 飯塚署幹部によると、みつかった骨は、「埋めているという感じではなく、長い間
に骨の上にゴミや土が積もったようだった」といい、「愛子ちゃんの骨とは断定でき
ないが、もしそうだとすれば骨が一部しかなく、しかも散らばっていることから野犬
などがくわえていったことも考えられる」としている。

 【写真説明】
 人のものらしい骨が見つかった山林(矢印)。後方は明星寺住宅団地=10日午後
4時、福岡県飯塚市明星寺で、本社ヘリから


自宅近くの山林で人骨?発見 福岡の不明女児捜索で県警
95.02.11 朝日朝刊 31頁 1社 写図無 (全220字)
 一九八八年十二月に、福岡県飯塚市明星寺、松野愛子ちゃん(当時七つ、潤野小一
年)が行方不明になった事件で、福岡県警捜査一課と飯塚署は十日朝から捜査員ら約
百四十人を動員し、自宅近くの山林を捜索、午後一時十五分ごろ、土中から人骨とみ
られる骨三本をみつけた。すぐ近くでは、昨年十一月の捜索で、愛子ちゃんが当時着
ていたジャンパーとトレーナーがみつかっており、同県警は愛子ちゃんの骨である可
能性があるとみて、九大医学部に人骨かどうかの鑑定を依頼した。


失跡愛子ちゃんか 地中に子供の骨/福岡・飯塚
95.02.11 東京読売朝刊31頁 社会面(全190字)
 福岡県飯塚市の松野愛子ちゃん(当時七歳、潤野小一年)が六年余り前に失跡した
事件を捜査中の県警捜査一課と飯塚署は十日、愛子ちゃん宅から約一キロの雑木林を
再捜索、地中から子供のものと思われる骨三点を見つけた。九州大法医学教室で鑑定、
特定を急ぐとともに、十一日以降も、捜索を続ける。
 骨の発見場所のそばでは昨年十一月、愛子ちゃんが失跡当時に着ていたジャンパー
やトレーナーが見つかっている。


愛子ちゃん事件 「間違い…信じたい」 古い人骨、鑑定難航か/福岡
95.02.11 西部読売朝刊27頁 写有(全1118字)
 衣類発見とほぼ同じ場所から掘り出された子供のものらしい人骨――。福岡県飯塚
市明星寺の松野愛子ちゃん(当時七歳、潤野小一年)失跡事件は十日、県警捜査一課
と飯塚署の再捜索で新たな展開を見せた。県警では、この骨が愛子ちゃんのものであ
る可能性があり、二女児殺害事件の久間三千年被告(57)(殺人罪などで起訴済み)
が関与した疑いを捨てきれないとして、いったん打ち切った事情聴取をいずれ再開す
る見通しだ。だが、今のところ骨と愛子ちゃんを結び付ける確証はなく、捜査は難航
しそう。
 県警によると、見つかった骨は古く、九州大法医学教室の鑑定で人骨と判明しても、
「髄液が残っていなければ、DNA鑑定はおろか、血液型もわからない」(県警)と
いう。このため、人物の特定につながる鑑定結果が出るかは不透明で、慎重な見方を
崩していない。
 さらに、人物が特定できても、事件に巻き込まれた結果なのか、事故だったのかの
見極めは難しく、失跡事件の全容解明には多くのハードルが残されている。
 県警幹部によると、昨年十一月の愛子ちゃんの衣類発見後、衣類を見せられた被告
が「骨も一緒に出たんでしょう」などと、微妙なニュアンスで答えたという。このた
め、同じ場所の表土を取り除くなど念入りに再捜索することにした、としている。
 この日、愛子ちゃんの自宅はひっそりした雰囲気に包まれていた。骨が発見された
ことを知った愛子ちゃんの祖父、飯塚市潤野の田中金作さん(71)は「愛子のもの
ではないと信じたい。女子中学生を見ると愛子を思い出し、涙が出てくる。死んだと
は思いたくない」と言葉を詰まらせた。
 愛子ちゃんが通っていた飯塚市立潤野小の島田流水校長は「愛子ちゃんかどうか、
正式な鑑定結果が出なければ……」と慎重な口調。潤野小で上級生だった女子中学生
(14)は「どこかで元気に生きていてほしい」と願っていた。
 ◆愛子ちゃん失跡 二女児事件経過
 88年12月4日 松野愛子ちゃんが久間三千年被告宅に立ち寄った後、失跡。
 92年2月20日 愛子ちゃんと同じ小学校の一年生の女児二人(ともに当時七歳)
が行方不明に。
 21日 福岡県甘木市の国道わきの雑木林で二人の遺体を発見。
 94年9月23日 飯塚、甘木署の捜査本部が久間被告を死体遺棄容疑で逮捕。
 10月14日 福岡地検が久間被告を死体遺棄罪で福岡地裁に起訴。捜査本部が殺
人容疑で再逮捕。
 11月5日 福岡地検が久間被告を否認のまま殺人罪、略取誘拐罪で起訴。
 11日 飯塚市明星寺の山林を捜索し、愛子ちゃんの衣類を発見。久間被告を愛子
ちゃん失跡事件との関連で追及。
 95年1月末 久間被告に対する取り調べ打ち切り。
 2月10日 愛子ちゃんの衣類発見現場周辺再捜索で、子供のものとみられる骨を
発見。


新たな手掛かりなし 飯塚の愛子ちゃん不明事件 【西部】
95.02.12 朝日朝刊 30頁 2社 写図無 (全143字)
 福岡県飯塚市明星寺の松野愛子ちゃん(当時七つ、潤野小一年)が行方不明になっ
ている事件で、福岡県警捜査一課と飯塚署は十一日も捜査員約三十人を動員し、十日
の捜索で人骨とみられる骨三本が見つかった山林を中心に調べたが、新たな手掛かり
はなかった。十二日以降も捜査員約三十人態勢で捜索を続ける。


福岡・飯塚の愛子ちゃん事件捜索 遺留品見つからず
95.02.12 西部読売朝刊27頁 写有(全261字)
 六年余前、自宅近くで失跡した福岡県飯塚市明星寺、松野愛子ちゃん(当時七歳、
潤野小一年)の行方を捜索している福岡県警捜査一課と飯塚署は十一日も午前十時か
ら、子供のものと思われる骨が発見された同市明星寺の雑木林を捜索した。残る人骨
や遺留品は見つからなかった。十二日以降も捜索する。
 十一日の捜索は、県警鑑識課員や同署の捜査員約三十人で行った。骨が見つかった
所は急斜面のため、残りの骨が雨などで下の方に流されている可能性が高いことから、
谷底の平地やその先の水が枯れた小池を中心に表土をスコップではぎ、ふるいにかけ
るなどして調べた。


愛子ちゃん不明事件 飯塚の山林捜索続く/福岡
95.02.13 西部読売夕刊9頁(全115字)
 福岡県飯塚市明星寺、松野愛子ちゃん失跡事件を捜査している飯塚署は、再捜索五
日目の十三日も午前九時半すぎから、子供のものらしい骨が発見された同市明星寺の
雑木林周辺を捜索している。十二日の捜索では手掛かりになるものは見つかっていな
い。


愛子ちゃん失跡事件 捜索、新たな発見なし/福岡・飯塚
95.02.14 西部読売朝刊29頁(全131字)
 福岡県飯塚市明星寺、松野愛子ちゃん(当時七歳、潤野小一年)失跡事件を捜査し
ている飯塚署は再捜索五日目の十三日も午前九時半から、子供のものらしい骨が発見
された同市明星寺の雑木林周辺を捜索したが手掛かりになるものは発見できなかった。
十四日以降も少人数で捜索を続ける。


愛子ちゃんの捜索打ち切り 福岡県警と飯塚署 【西部】
95.02.19 朝日朝刊 27頁 1社 写図無 (全471字)
 一九八八年十二月に福岡県飯塚市明星寺の松野愛子ちゃん(当時七つ、潤野小一年)
が行方不明になった事件で、福岡県警捜査一課と飯塚署は十八日も愛子ちゃんの着衣
が見つかった自宅近くの山林一帯を再捜索したが、新たな手掛かりはなかった。九日
から続けてきた再捜索はこの日でいったん打ち切った。
 永留慶造・飯塚署長は「やるべきことは十分手を尽くしたが、手掛かりは見つから
なかった。新たな情報がない限り、捜索再開はない」と話している。
 県警によると、再捜索範囲は昨年十一月に愛子ちゃんのジャンパーなどが見つかっ
た雑木林を中心にした半径約三キロの山林。十日の捜索で、ジャンパーなどが見つか
った「ごみ捨て場」の土の中から、人間の上腕部の骨とみられる骨三本が出てきたほ
かは、事件に結び付くような手がかりは見つからなかったという。
 人骨とみられる骨については、九州大医学部で鑑定が続いているが、骨片が小さく、
古いことなどから、永留署長は「詳しく調べるにはかなりの時間がかかると聞いてい
る。人骨と分かったとしても、愛子ちゃんのものと断定するのは困難」との見方を示
した。


愛子ちゃん失跡事件 山林の再捜索終わる/福岡・飯塚
95.02.19 西部読売朝刊28頁(全161字)
 福岡県飯塚市明星寺、松野愛子ちゃん(当時七歳、潤野小一年)失跡事件で県警捜
査一課と飯塚署は十八日で、明星寺の雑木林周辺の再捜索を終えた。九日からの再捜
索では、子供のものらしい骨三点を発見したが、そのほかの手掛かりは発見できなか
った。
 県警と飯塚署では失跡事件に結び付く新たな情報があった場合は、捜索を再開する
ことにしている。


愛子ちゃん事件 発見の骨3点、人と断定できず/福岡県警
95.03.08 西部読売夕刊7頁(全182字)
 福岡県飯塚市明星寺、松野愛子ちゃん(当時七歳、潤野小一年)が六年余り前に失
跡した事件で、県警捜査一課と飯塚署が二月に同市明星寺南谷で発見した子供のもの
と見られる骨三点は人骨と断定できないことが、八日までの調べで分かった。
 県警は九州大法医学教室に非公式に鑑定を依頼していたが、長期間放置されていた
ことから骨髄液を検出できず、骨自体も小さいため断定できなかったという。


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佐賀新聞記事データベース
http://www.saga-s.co.jp/pubt/ShinDB/search.html

 


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