私が出会ったもうひとりの「カリスマ」2原田実 1995年


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投稿者 倉田佳典 日時 1998 年 10 月 12 日 18:31:46:

回答先: 私が出会ったもうひとりの「カリスマ」1原田実 1995年 投稿者 倉田佳典 日時 1998 年 10 月 12 日 17:10:25:

『ムー』が蒔いた危険なタネ

 ところが、その頃から八幡書店の出版戦略を批判する文章があちこちで見られるように
なったのである。
「一九八三年において、既にすべての危険因子の種は蒔かれていた。と、言うのも、木村鷹太郎の『世界的研究に基づける日本太古史』や、酒井勝軍の『神秘之日本』といった狂気の書が、中高生を対象とした雑誌に堂々と広告されていたのだ。日本民族は超古代において世界の根源的人種であり、日本は世界の中心であった……上のような妄言を大真面日に論じ、その論証に一生を費やした狂人達の書物を復刻、あまつさえ水で割って口当たりをよくした記事を発表するのは如何なものだろう?現在の中高校生は、我々がそうであった頃と較べて、脅威的なまでに活字に無抵抗であり、また〃信じられる何か〃を求めているのだ」(朝松健「魔都物語―オカルト界で今何が起きているか−」『ホルスの槍』四号、l.O.S、一九八八年一月刊)
 「八幡書店を主宰する武田崇元は〃神国日本の復活〃というスローガンを掲げる。……かかる選民思想を内包する国家社会生義が西武セゾンをはじめとする文化装置を通して単なる差別ネタ大好き少年少女のたぐいをファシスト予備軍へと感化しつつある現実は看過できない。六本木西武(ウェィヴ)が昨年末から昭和末日あたりにかけてそのフロアで八幡書店の出版物等全商品のフェアを開いたことなど、事態の深刻さを物語る恰好な出来事といえるかもしれない」(久山信「霊的国家論とポップ・オカルティズム」『クリティーク15』青弓社、一九八九年四月刊)
 すでに偽史運動としての八幡書店の影響は見える八には見えるという程度にはなっていた。そして、その危険なタネを育てた責任の一部は私にもあったのだ。しかし、幸か不幸か、その危険性はいまだ世間の注目を集めるところにはならなかった。おそらくマスコミやアカデミズムの大勢は、偽史やオカルトなど子供のオモチャにすぎないとタカをくくっていたか、そうしたものの存在にさえ気づいていなかったのだろう。
 だが実際には、当時の偽史・オカルト業界で武田氏が直接関与した媒体はきわめて強烈な時代錯誤的イデオロギーを内包していた。一九八〇年代の「ムー」では、八幡書店のチョウチン記事以外にも「魔術師ヒトラーの目的はアトランチスの再建だった」「ヒトラーは生きている」「神霊の力を宿し、神秘に満ちた祭儀を司る天皇家の聖なる力」「悪魔の王・反キリストの秘密」「世界の支配者・秘密結社の陰謀を暴く」といった見出しが躍り、読者の心性を危険な万向に導く情報を垂れ流していたのである。
 一九八三年には新右翼団体・一水会の機関誌「レコンキスタ」に、「ムー」のプロパガンダとしての機能を賞賛した記事が掲載されたこともある(ちなみに同誌には武田氏と一水会幹部・常弘成氏との対談も搭載され、北一輝思想の継承の必要性が語られている)。

麻原彰晃とヒヒイロカネの予言

 さて、私が八幡書店を辞職して二年後、ある教団が次第に世の注目を集めるようになっていた。一九八九年、坂本堤弁護士一家失踪事件で話題になったオウム真理教である。私は教祖・麻原彰晃氏(本名・松本智津夫)と面識こそなかったが、その八物に心当たりはあった。彼は八幡書店の常連の顧客であり、しかも「ムー」のライターでもあったのだ。
 麻原氏は一九八五年、オウムの会代表を名乗り、「ムー」誌上に「実践ヨガ」を連載。また、同誌の同年十一月号(第六〇号)には、やはり麻原彰晃の名で記事「幻の超古代金属ヒヒイロカネは実在した!?」を発表した。
 この直後から、麻原氏は有名な空中浮遊写真を用いた信者勧誘や、イベント予告の広告をさかんに『ムー』およびライバル誌の「トワイライトゾーン』に掲載し、組織の基盤を固めていった。当時の『ムー』を見ると、一冊ごとにオウムの広告が二、三点は掲載されている。ちなみにこの頃、八幡書店も『ムー』一冊に二、三点の広告を掲載しているから、『ムー』はさながらオウムと八幡の広報誌の様相を呈していた。オウム幹部にかつての「ムー」読者が多いのも当然だろう。
 さて、「幻の超古代金属ヒヒイロカネは実在した!?」とは何如なる内容であろうか。
 それはまず、「かつて本誌でも取り上げた謎の古文書『竹内文献』」に基づき、太古の地球上に日本を中心として高度な文化があったことを説明する。そして、その文化は超能力によって支えられたものだとし、その超能力の源泉こそ、かつて『竹内文献』の研究家・酒井勝軍が発見したという謎の金属ヒヒイロカネであったと強弁するのである。
 かくして麻原氏は酒井の足跡をたどり、ついに岩手県釜石市は五葉山の一角でヒヒイロカネの現物を見出した。また麻原氏はそこで、酒井の隠された予言をも知る。その内容は次の通りである。
 「●第二次世界大戦が勃発し、日本は負ける。しかし、戦後の経済回復は早く、高度成長期がくる。日本は、世界一の工業国となる。
 ●ユダヤは絶えない民族で、いつかは自分たちの国を持つだろう。
 ●今世紀末、ハルマゲドンが起こる。生き残るのは、慈悲深い神仙民族(修行の結果、超能力を得た人)だ。指導者は日本から出現するが、今の天皇と違う」
 麻原氏は、さらにヒヒイロカネによる超能力増幅でハルマゲドン後の光景まで霊視することができた。この記事にはご丁寧にも、ヒヒイロカネ・プレゼントの応募方法まで明記されている。
 ちなみに武田氏はこの記事のゲラを『ムー』編集部から見せられるや、内容に八幡書店の出版戦略に抵触する個所があるとみなし、編集部に一部書き直しを要求する一方、同号の広告に急遽、酒井勝軍編著『神秘之日本』を加えるよう私に命じたのだった。
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ヒトラーは生きている

 麻原氏による「ムー」誌上での前述の記事を見る限り、開教当初のオウムは八幡書店(新しい日本のナチズム」)の亜流としての偽史運動だったと考えざるを得ない。この記事に現れた「酒井勝軍の予言」は麻原氏の著書滅亡の日」(オウム出版)でも取り上げられているが、実際には麻原氏のデッチ上げの可能性が高い。第一、「神仙民族」などという語彙は酒井勝軍の著作にはまったく見られない麻原氏独自の用語である(ちなみに、この記事が「ムー」に掲載された翌年の一九八六年、「オウムの会」は「オウム神仙の会」と名を改めている)。
 さらにこの記事には、著作権侵害の疑惑もある。一九八五年、「ムー」が企画した「第2回ムー・ミステリー大賞」に応募し、惜しくも最終審査で落ちた斎藤龍一氏の論文「ヒヒイロカネの研究」が、斎藤氏には無断でデータとして流用された形跡があるのだ。ちなみに斎藤氏によると、この論文は全体の文脈としてはオカルトを否定する内容であったため、審査委員の心証を悪くしたらしいという。なお、この「ムー・ミステリー大賞」の審査委員にはかの武田崇元氏も名を連ねている。
 このように、「幻の超古代金属ヒヒイロカネは実在した!?」は欺瞞に満ちた内容であり、すでに後年の麻原氏の言動を彷彿とさせるものが現れている 。ちなみに、酒井の実際の業績についでは拙著『幻想の超百代史』『幻想の津軽王国』(ともに批評社)を参照されたい。
 何はともあれ、この時期にかつては八幡書店のひさしを借りていた麻原氏が社会問題になるほど勢力を持つカルトのリーダーとしてその姿を現し、武田氏が展開していた偽史運動の母屋を乗っ取る形になってしまったのである。
 久山信氏は一九八九年という年を次のように評した。
 「オカルティズム・シーンにとって一九八〇年代最後の一年は……武田崇元の大本閨閥入りを最大のニュースに、学研−八幡ラインのバックアップで教団組織をかためたともいい得るオウム真理教の麻原彰晃にやたらスポットが当たるなど、相変わらず見えざるファシスト・ペースで推移した感が強い。オウムに関して付け加えれば、かつて麻原が『ムー』誌上でやったのと同様の〃日本にもピラミッドがありましたキャンペーン〃を大々的に張ったはずの『サンデー毎日』をはじめとする週刊誌テレビの集中砲火が彼らブーフーウーの象軍団に浴びせかけられたわけだが、結論としてそれは麻原の選挙PRに活用されただけだった。いみじくも坂本弁護士のお母さんは『テレビはあたかもオウム真理教の宣伝をしているかのよう』といっている」(「シーン左転回の諸動向」『インパクション』六二号、インパクト出版会、一九九〇年二月刊。武田氏はこの頃、出口王仁三郎の曾孫娘と結婚している)
 ここで大山氏がオウムの偽史運動としての側面をすでに指摘しているのは鋭い。五年前どころか今もなおマスコミ大のほとんどはそれに気づいていないのである。そこに従来のオウム報道が薄っぺらになりがちな原因の一っがあった。
 その後、周知の如く五年余の歳月を経て、オウム真理教は自壊への道をたどっていく。
しかし麻原氏とオウムを世に送り出した『ムー』は今のところ反省の要を認めていないようである。麻原氏逮捕後に出た『ムー』一九九五年七月号(一七六号)にも、れっきとした反国家的武装カルトの一ページ広告が堂々と掲載されているのだ。
 余談だが、麻原氏の逮捕が近づいた頃、マスコミではしばしば、ヒトラー・ファンの麻原氏はベルリン陥落にならって自決するのではないかという予想が報じられていた。それを見聞きするたびに私は苦笑を禁じえなかった。私はすでにあるルートから、麻原氏が、ヒトラーが世界史を操る「影の組織」によってベルリンの地下壕から救出され、南極の秘密基地に逃れたとする精神科医・川尻徹(一九三一〜一九九三)の説の信本者であったことを聞いていたからである(また川尻仮説と武田氏の『予言書黙示録の大破局』の内容の類似も、はやくから八幡書店内で話題となっていた)。
 オウム施設内の子供たちは、周囲の大大から、「ヒトラーは今も生きている」と教えこまれていた。世の識者は彼らの無知をあざわらうが、ヒトラー生存説は「無知」というより
も、むしろ「超知」に属するものである。オウムが偽史運動の一種である以上、教団内部と一般世間との歴史観に乖離が生じるのは当然だろう。あの一九九五年五月十六日上九一色村第六サテイアンの隠し部屋で、麻原氏は九百六十万円の現金を抱え、震えながら「影の組織」の救いの手を待っていたのだろうか。

オウムを生み出した者

 以上、ムーブメントの渦中にいた一大として、現代日本の偽史運動の歩みを回想したわけだが、あらためて思うのは、武田洋一という大物が残した足跡がいかに大きかったか、そしてそのことがいかにマスコミ・論壇・学界から無視されているかということである。
 現代日本のオカルト業界の基盤はほとんど
武田氏が作りあげたといっても過言ではないと私は思っている。それは最終的には、武田氏自身を売り込むための広告媒体としてであった(その点、ヒトラーの広告の才がヒトラー自身の売り込みのために活用されたのと好一対である)。
 たとえば、『予言書黙示録の大破局』では、その書籍刊行から十五年後、日本から出口王仁三郎二世ともいうべき超人が現れ、日本・中国・ユダヤ同祖論を説いてイスラエルまで進軍していくだろうと説かれている。当時、武田氏がその超人として自分自身を想定していたことは間違いない。
 ところが、武田氏が活動の拠点を八幡書店に求めてから、その運動に限界が見え始めた。不特定多数を相手にする雑誌戦術と違い、数百の固定顧客に高価な書物やオカルトグッズを売る八幡書店の営業形態では、大衆運動ヘの展開は難しい。こうして、一九八〇年代に入り武田氏主導の偽史運動が行き詰まったとたんに、八幡書店顧客のなかから武田氏が準備したムーブメントを自らのために利用する大物が現れたのである。それが麻原彰晃氏であった。
 『予言書黙示録の大破局』刊行から十五年といえば一九九五年である。まさにその年に出た『亡国日本の悲しみ』(オウム出版)で麻原氏は自らを出口王仁三郎に擬していた。出口王仁三郎二世と麻原氏、この符合は偶然だろう「幻の超古代分属ヒヒイロカネは実在した!?」
で、『竹内文献』が「かつて本誌でも取り上げた謎の古文書」とされているのは興味深い。『竹内文献』が『ムー』で取り上げられるのは、必ずといっていいほど、八幡書店のチョウチン記事としてだったからだ。その記事を武田氏の監督下で書いたのは、かくいう私自身なのだから間違いはない。麻原氏が八幡書店の戦略に便乗したことは、この表現にも暗示されているのである。
 オウムの教義の反社会的性格の起源について、それを最近では金剛乗(バジュラヤーナ)に求める議論がさかんだが、そのことはオウムの特殊性をかえって覆いかくすものとなるだろう。「幻の超古代金属ヒヒイロカネは実在した!?」には終末論と進化思想を基調とするオウムの教義がすでに体系化されているが、そこには金剛乗の用語はまったく使われていない。オウムの反社会性は、かって武田洋一氏が準備し、『ムー』などを通してオカルト業界に埋伏した革命プロパガンダから受け継いだものとみなすのが妥当である。麻原氏は武田氏から受け継いだ革命への熱狂と野心を、左翼イデオロギー用語抜きで説明するため、金剛乗の用語を借りたにすざない。
 かつては政界進出さえ口にしていた武田洋一氏も一九九○年代に入ってから政治的、イデオロギー的発言を控え、八幡書店の経営に専念するようになった。
 最近、武田氏と会ったという人から、武田氏がオウムのことを「あいつら何であんなことしたんや」と嘆いているという話を聞いた。また、別のオカルト関係者の話では、武田氏はいまだに革命の野心を捨ててはおらず、オウムの正体は実は麻原氏をダミーとする武田氏の私兵集団なのだという、突拍子スもない噂が流れているという。
 もちろん、後者の方は、とてもありそうな話とは私には思えない。今や武田氏は一介の通販屋のオヤジに過ぎず、とても日本国家相手に内戦をしかけるような大それたことができる大物ではない。
 おそらく現在の武田氏は、自らの戯れの結果が怪物を生んでしまったフランケンシュタインの心境にあるのではないだろうか。
武田氏の思想がいかにオウムに 影響を与えたか詳しく考証するには、さらに紙数を費やさなければならないであろう。
はらだ・みのる▼’61年広島生まれ。元昭和薬科大学助手。バシフイックウエスタン大学博士号取得(史学)。著書に『幻想の超古代史』『黄金伝説と仏陀伝』『怪獣のいる晴神史』なとがある。




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