東海村シンドローム 臨界事故から1年 あの土下座は何だったのか! 補償をしぶるJCO

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投稿者 サンデー毎日 日時 2000 年 10 月 04 日 17:53:34:

東海村シンドローム 臨界事故から1年
あの土下座は何だったのか! 補償をしぶるJCO  

 1年前の臨界事故で、JCOの社長は住民たちに土下座し、おわびを口にした。
誰もがすべての被害は補償されるものと受けとった。が、そうはならなかった。
「被曝の村」には今、補償から取り残され、後遺症に苦しみ続ける被曝住民たちの
姿がある。 ルポライター 明石昇二郎 

「臨界事故被害者の会」代表世話人の大泉昭一さん
(72)は現在、原因不明の皮膚のかゆみと炎症に苦し
んでいる。臨界事故発生当時、JCOから120メート
ルしか離れていないところにある職場で仕事をしていた
大泉さんは、事故後、腕の皮膚に水膨れが繰り返しでき
た上にケロイド状になり、顔はいつも酒を飲んでいるか
のような赤ら顔になってしまった。また、少し体を動か
す仕事をしただけで下痢になり、ひどい時には脱水症状
に至るばかりか、40度にも及ぶ発熱を伴うこともあ
る。

 事故の前日まで元気だった妻(61)は、事故の翌日
から始まった下痢で5日間にもわたって苦しみ、食事も
満足に取れない状態となったことに加え、胃潰瘍になっ
た。事故のショックから精神的にも参ってしまい、寝た
きりの状態がしばらく続いた。今も妻は2週間に1度、
精神病院に通っている。ただ、病名は単に「鬱病」とさ
れている。事故でそうなったのは明らかだから、その旨
を診断書に書いてもらおうと大泉さんが医師に頼んだところ、「作為行為になるからでき
ない」と応じてもらえなかった。

「医者が診断書に書けるのは、その診断時の体の状況だけ。たとえ被曝していることが事
実であっても、診断書で事故との因果関係にまで言及してもらうことなど、我々被害者に
とっては至難の業。それをわかった上でJCOは『医者に診断書を書いてもらえ』などと
言う」(大泉さん)

 よって現在、体の不調を訴える被曝住民たちの声は、事故との因果関係を認めた医師の
診断書が提示されていないことを理由に、JCOはおろか国からも黙殺されている。当
然、被曝住民への医療費の補償も全く実施されていない。事故を起こして死亡した2人の
JCO職員には我が国最高レベルの手厚い医療と看護が施された一方で、事故の巻き添え
で被曝させられた住民に対してはこの仕打ちとは……。

 ひとたび原子力施設で大事故が起きれば、被災した周辺住民はこれほど過酷な目に遭わ
されるのである。大泉さんは言う。

「私たちが一体、何をしたというのですか? 
そもそもJCOの『裏マニュアル』がこうした
事故を引き起こしたわけですよ。事故直後、社
長が土下座していましたが、今は手のひらを返
したような態度。中性子線に晒された周辺住民
はただ、泣き寝入りしているわけです」

 死者2人を出した我が国の原子力史上最悪の
「東海村JCO臨界被曝事故」から1年が過ぎ
た。しかし、事故で被曝させられた住民たち の
憂鬱は今なお続いている。

 JCOは今年8月末現在、126億6000
万円もの賠償金を支払うことで、被災者との間
で合意に至っている。約7000件にものぼった損害賠償請求ではあるが、これでそのほ
とんど(98%)が解決したとされる。が、そのことは裏を返せば140件ほどが未解決の
ままということだ。

 茨城県によると、このうち約110件が5000万円以上の請求で、中には数億円にも
及ぶものも含まれるとのこと。合意が成立したケースでは補償期間を3カ月とするものが
多い中、補償期間をどこまで認めるか――などの点でもめているのだとか。

「村には被曝による被害者などいない」?

 それに加え、冒頭でも触れた「被曝住民への医療費の補償」問題も未解決のまま。住民
が訴えている「事故の後遺症」と事故との因果関係を認めていない理由を、JCO総務部
の野口周治総務グループ長はこう語る。

「経済的な被害に関しては過去の帳簿などを、風評被害に関してはなぜ発生したのかとい
う事実とメカニズムをお示し頂いている。ただ、人体への影響については私どもでは判断
できないので、医者が『これは放射線の影響だ』とした場合に具体的に検討させてもらう
ことになるだろう」

――医者の診断があれば支払うと?

「支払うというか、それがあれば具体的な話し合いができると。(国の)原子力安全委員
会の健康管理検討委員会の報告からも、具体的な健康への影響が表れることは考えにく
い。とはいえ、影響があったらいけないので、(診断書を)お示し頂いた場合には当然お
話し合いをしなければならないと考えている」

 たとえ事故との因果関係を認める診断書を医師に書いてもらえたとしても、それはあく
まで補償交渉の“スタート”でしかないらしい。JCOがここまで強気の姿勢を崩さない
背景には、JCOの野口氏も話すように「原子力安全委員会の健康管理検討委員会の報
告」なるものの存在がある。


 国の原子力安全委員会には事故後、被曝住
民の健康問題を扱う「健康管理検討委員会」
が設置された。その健康管理検討委員会がや
った仕事で特筆に値するのは、

(1)急性の影響(確定的影響)は「発生す
る線量レベルではない」
(2)がん、白血病などの晩発性の影響(確
率的影響)については「発生の可能性は極め
て小さく、影響を検出することはできないと
考えられる」
(3)遺伝的影響は心配ない

 つまり、村には被曝による被害者など誰もいない――とする「検討」結果を発表したこ
とであろう。見ての通り、この「検討」では被曝したこと自体を被害だとは考えていな
い。被曝していようが健康への不安さえ取り除けば、住民の「健康管理」はこと足りると
委員会では判断したようだ。そしてJCOはこの委員会の検討結果を逆手にとり、「『被
曝したこと自体には補償しない』とハッキリ言うんです」(大泉さん)。

 かつて国は水俣病やカネミ油症事件の際、自ら率先して被害者の「認定作業」を行い、
その結果、事実上の“被害者の数減らし”を行ってきた。その歴史がここでもまた繰り返
されていた。

「一概には言えない」調査の信頼性

「健康管理検討委員会の結論は、放射線を被曝したことによる身体的な影響についてのも
の。科学的な知見に基づく見解である」
 と胸を張るのは、科学技術庁原子力安全課の水元伸一課長補佐。被曝の問題を所管し、
事故を起こしたJCOの監督官庁でもある科技庁では、周辺住民ら(勤め人も含む)の事
故当日と翌日の行動調査を実施した上で個人の被曝線量を推定し、一人ひとりにその推定
線量値を通知していた(上の書類コピー参照)。

 では、その数値には誤差がどれくらいあるのだろうか。誤差を示すことはすなわち、そ
の調査の信頼度を示すことでもある。そこで水元課長補佐に聞いたところ……。

「それは専門家にも検討してもらったのだが、『一概に誤差という形では言えないだろ
う』と……。いろんな要素が入っているので、一概には言えない」

―科技庁の「50ミリシーベルト以下では健康への影響は考えられない」なる見解が出てい
る中、科技庁で出した推定線量の数値が今、補償交渉の場で判断材料として使われている
わけです。

「その見解は、専門家の方々が広島・長崎の原爆のデータなどをもとに、科学的にそうお
っしゃったわけです。原子力安全委員会の健康管理検討委員会は、人体への影響について
どうかという結論を科学的な見地から検討して……」

―しかしそんな専門家の先生方でさえ、誤差は「一概には言えない」と?

「だから、専門家に検討していただいたら、そういうことになったと……」

―専門家のそんな説明で、科技庁として納得したのか?

「……はい」

      *

 そんなわけで、調査の信頼性は「一概には言えない」こととなった。被害者をバカにす
るにも程があろう。しかし、それでも水元氏はがんとして「この数値を見直すつもりはな
い」と言う。

 これはJCO自身が認めていることなのだが、実測値が15ミリシーベルトだったのに、
推定値では9・5ミリシーベルトというJCO社員がいる。前出のJCO・野口氏はこう
語っていた。

「私どもの社員については、ホールボディーカウンター(体内の放射性物質を計測する機
器)で測った実測値がある者がいる。この実測値と計算式に基づく数値(推定値)を8人
について比べてみたところ、8人のうちの7人で1・5倍ないしは3倍くらい計算値の方
が高く出た。ただ、1人だけ計算値のほうが低めに出たんです」

 つまり、住民らの推定値にも誤差が入り込んでいる可能性は十二分にあるわけだ。原子
力の問題に詳しい京都大学原子炉実験所助手の小出裕章氏は語る。

「現に放射線障害にはまだよくわかっていないところがあるのだから、住民が『被害があ
る』と言うのなら、それに耳を傾けるのが科学の本来とるべき立場。しかし全然そうなっ
ていない。しかも、住民を避難させたのは村長であって、国ではない。国は臨界が継続し
ていることすらわからず、むざむざ住民を被曝させてしまった。国には大変な非があるわ
けです」

 そもそも、事故の責任を追及されるべき監督官庁である科技庁に被曝者対策などやらせ
るから、こんなことになるのである。現在、「被害者の会」では住民の推定被曝線量の再
調査を国に要求している。次回はぜひ、厚生省にやっていただきたい。




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