ヨブ記 11-42/42

 ★阿修羅♪

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投稿者 旧約聖書 日時 2000 年 10 月 26 日 16:23:51:

回答先: ヨブ記 10/42 投稿者 旧約聖書 日時 2000 年 10 月 26 日 16:09:13:


10.

1  私は自分のいのちをいとう.私は自分の不平をぶちまけ,私のたましいの苦しみを語ろう.
2 私は神に言おう.「私を罪ある者となさらないように.なぜ私と争われるかを,知らせてください.
3 あなたが人をしいたげ,御手のわざをさげすみ,悪者のはかりごとに光を添えることは良いことでしょうか.
4 あなたは肉の目を持っておられるのですか.あるいは,人間が見るように,あなたも見られるのですか.
5 あなたの日々は人間の日々と同じですか.あるいは,あなたの年は人の年と同じですか.
6 それで,あなたは私の咎を捜し,私の罪を探られるのですか.
7 あなたは,私に罪のないことを知っておられ,だれもあなたの手から救い出せる者はいないのに,
8 あなたの御手は私を形造り,造られました.それなのにあなたは私を滅ぼそうとされます.
9 思い出してください.あなたは私を粘土で造られました.あなたは,私をちりに帰そうとされるのですか.
10 あなたは私を乳のように注ぎ出し,チーズのように固め,
11 皮と肉とを私に着せ,骨と筋とで私を編まれたではありませんか.
12 あなたはいのちと恵みとを私に与え,私を顧みて,私の霊を守られました.
13 しかし,あなたはこれらのことを御心に秘めておられました.私はこのことがあなたのうちにあるのを知っています.
14 もし,私が罪を犯すと,あなたは私を待ちもうけておられ,私の咎を見のがされません.
15 もし,私が罪ある者とされるのなら,ああ,悲しいことです.私は正しくても,自分の恥に飽き飽きし,私の悩みを見ていますから.
16 私の頭が上がると,あなたはたける獅子のように,私を駆り立て,再び私に驚くべき力をふるわれるでしょう.
17 あなたは私の前にあなたの新しい証人たちを立て,私に向かってあなたの怒りを増し,私をいよいよ苦しめられるでしょう.
18  なぜ,あなたは私を母の胎から出されたのですか.私が息絶えていたら,だれにも見られてなかってでしょうに.
19 私が生まれて来なかったかのように,母の胎から墓に運び去られていたらよかったものを.
20 私の生きる日はいくばくもないのですか.それではやめてください.私にかまわないでください.私はわずかでも明るくなりたいのです.
21 私が,再び帰らぬところ,やみと死の陰の地に行く前に.
22 そこは暗闇のように真っ暗な地,死の陰があり,秩序がなく,光も暗闇のようです.」

11.

1  ナアマ人ツォファルが答えて言った.
2 ことば数が多ければ,言い返しがないであろうか.舌の人が義とされるのだろうか.
3 あなたのおしゃべりは人を黙らせる.あなたはあざけるが,だれもあなたを恥じさせる者がない.
4 あなたは言う.「私の主張は純粋だ.あなたの目にも,きよい.」と.
5 ああ,神がもし語りかけ,あなたに向かってくちびるを開いてくださったなら,
6 神は知恵の奥義をあなたに告げ,すぐれた知性を倍にしてくださるものを.知れ,神はあなたのために,あなたの罪を忘れてくださることを.
7  あなたは神の深さを見抜くことができようか.全能者の極限を見つけることができようか.
8 それは天よりも高い.あなたに何ができよう.それはよみよりも深い.あなたが何を知りえよう.
9 それを計れば,地よりも長く,海よりも広い.
10 もし,神が通り過ぎ,あるいは閉じ込め,あるいは呼び集めるなら,だれがそれを引き止めえようか.
11 神は不信実な者どもを知っておられる.神はその悪意を見て,これに気がつかないであろうか.
12 無知な人間よりも賢くなり,野ろばの子も,人として生まれる.
13 もし,あなたが心を定め,あなたの手を神に向かって差し伸べるなら,
14 −−あなたの手に悪があれば,それを捨て,あなたの天幕に不正を住まわせるな.−−
15 そうすれば,あなたは必ず,汚れのないあなたの顔をあげることができ,堅く立って恐れることがない.
16 こうしてあなたは労苦を忘れ,流れ去った水のように,これを思い出そう.
17 あなたの一生は真昼のように輝き,暗くても,それは朝のようになる.
18 望みがあるので,あなたは安らぎ,あなたは守られて,安らかに休む.
19 あなたが横たわっても,だれもあなたを脅かさない.多くの者があなたの好意を求める.
20 しかし悪者どもの目は衰え果て,彼らは逃げ場を失う.彼らの望みは,あえぐ息に等しい.

12.

1  そこでヨブが答えて言った.
2 確かにあなたがたは人だ.あなたがたが死ぬと,知恵も共に死ぬ.
3 私にも,あなたがたと同様に,悟りがある.私はあなたがたに劣らない.だれかこれくらいのことを知らない者があろうか.
4 私は,神を呼び,神が答えてくださった者であるのに,私は自分の友の物笑いとなっている.潔白で正しい者が物笑いとなっている.
5 安らかだと思っている者は衰えている者をさげすみ,足のよろめく者を押し倒す.
6 荒らす者の天幕は栄え,神を怒らせる者は安らかである.神がご自分の手でそうさせる者は.
7  しかし,獣に尋ねてみよ.それがあなたに教えるだろう.空の鳥に尋ねてみよ.それがあなたに告げるだろう.
8 あるいは地に話しかけよ.それがあなたに教えるだろう.海の魚もあなたに語るだろう.
9 これらすべてのもののうち,主の御手がこれをなさったことを,知らないものがあろうか.
10 すべての生き物のいのちと,すべての人間の息とは,その御手のうちにある.
11 口が食物の味を知るように,耳はことばを聞き分けないだろうか.
12 老いた者に知恵があり,年のたけた者に英知があるのか.
13 知恵と力とは神とともにあり,思慮と英知も神のものだ.
14 見よ.神が打ち壊すと,それは二度と建て直せない.人を閉じ込めると,それはあけられない.
15 見よ,神が水を引き止めると,それはかれ,水を送ると,地をくつがえす.
16 力とすぐれた知性とは神とともにあり,あやまって罪を犯す者も,迷わす者も,神のものだ.
17 神は議官たちをはだしで連れて行き,さばきつかさたちを愚かにし,
18 王たちの帯を解き,その腰に腰布を巻きつけ,
19 祭司たちをはだしで連れて行き,勢力ある者を滅ぼす.
20 神は信頼されている者の弁別を取り除き,長老たちの分別を取り去り,
21 君主たちをさげすみ,力ある者たちの腰帯を解き,
22 やみの中から秘密をあらわし,暗黒を光に引き出す.
23 神は国々を富ませ,また,これを滅ぼし,国々を広げ,また,これを連れ去り,
24 この国の民のかしら たちの悟りを取り除き,彼らを道のない荒地にさまよわせる.
25 彼らは光のない所,やみに手さぐりする.神は彼らを酔いどれのように,よろけさせる.

13.

1  見よ.私の目はこれをことごとく見た.私の耳はこれを聞いて悟った.
2 あなたがたの知っていることは私も知っている.私はあなたがたに劣っていない.
3 だが,私は全能者に語りかけ,神と論じ合ってみたい.
4 しかし,あなたがたは偽りをでっちあげる者,あなたがたはみな,能なしの医者だ.
5 ああ,あなたがたが全く黙っていたら,それがあなたがたの知恵であったろうに.
6 さあ,私の論ずるところを聞き,私のくちびるの訴えに耳を貸せ.
7 あなたがたは神の代わりに,なんと,不正を言うのか.神の代わりに,欺きを語るのか.
8 神の顔を,あなたがたは立てるつもりなのか.神の代わりに言い争うのか.
9 神があなたがたを調べても,大丈夫か.あなたがたは,人が人を欺くように,神を欺こうとするのか.
10 もし,あなたがたが隠れて自分の顔を立てようとするなら,神は必ずあなたがたを責める.
11 神の威厳はあなたがたを震え上がらせないだろうか.その恐れがあなたがたをおそわないだろうか.
12 あなたがたの格言は灰のことわざだ.あなたがたの盾は粘土の盾だ.
13 黙れ.私にかかわり合うな.この私が話そう.何が私にふりかかってもかまわない.
14 それゆえ,私は自分の肉を自分の歯にのせ,私のいのちを私の手に置こう.
15 見よ.神が私を殺しても,私は神を待ち望み,なおも,私の道を神の前に主張しよう.
16 神もまた,私の救いとなってくださる.神を敬わない者は,神の前に出ることができないからだ.
17 あなたがたは私の言い分をよく聞け.私の述べることをあなたがたの耳に入れよ.
18 今,私は訴えを並べたてる.私が義とされることを私は知っている.
19 私と論争する者はいったいだれだ.もしあれば,そのとき,私は黙って息絶えよう.
20  ただ2つの事を私にしないでください.そうすれば,私は御顔を避けて隠れません.
21 あなたの手を私の上から遠ざけてください.あなたの恐ろしさで私をおびえさせないでください.
22 呼んでください.私は答えます.あるいは,私に言わせ,あなたが私に答えてください.
23 私の不義と罪とはどれほどでしょうか.私のそむきの罪と咎とを私に知らせてください.
24 なぜ,あなたは御顔を隠し,私をあなたの敵とみなされるのですか.
25 あなたは吹き散らされた木の葉をおどし,かわいたわらを追われるのですか.
26 実にあなたは私に対してひどい宣告を書きたて,私の若い時の咎を私に受け継がせようとされます.
27 あなたは私の足にかせをはめ,私の歩く小道をことごとく見張り,私の足跡にしるしをつけられます.
28 そのような者は,腐った物のように朽ち,しみが食い尽くす着物のようになります.

14.

1  女から生まれた人間は,日が短く,心がかき乱されることでいっぱいです.
2 花のように咲き出ては切り取られ,影のように飛び去ってとどまりません.
3 あなたはこのような者にさえ,あなたの目を開き,私をご自身とともに,さばきの座に連れて行かれるのですか.
4 だれが,きよい物を汚れた物から出せましょう.だれひとり,できません.
5 もし,彼の日数が限られ,その月の数もあなたが決めておられ,越えることのできない限界を,あなたが定めておられるなら,
6 彼から目をそらして,かまわないでください.そうすれば,彼は日雇人のように自分の日を楽しむでしょう.
7  木には望みがある.たとい切られても,また芽を出し,その若枝は絶えることがない.
8 たとい,その根が地中で老い,その根株が土の中で枯れても,
9 水分に出会うと芽をふき,苗木のように枝を出す.
10 しかし,人間は死ぬと,倒れたきりだ.人は,息絶えると,どこにいるか.
11 水は海から消え去り,川は干上がり,かれる.
12 人は伏して起き上がらず,天がなくなるまで目ざめず,また,その眠りから起きない.
13  ああ,あなたが私をよみに隠し,あなたの怒りが過ぎ去るまで私を潜ませ,私のために時を定め,私を覚えてくださればよいのに.
14 人が死ぬと,生き返るでしょうか.私の苦役の日の限り,私の代わりの者が来るまで待ちましょう.
15 あなたが呼んでくだされば,私は答えます.あなたはご自分の手で造られたものを慕っておられるでしょう.
16 今,あなたは私の歩みを数えておられますが,私の罪に目を留めず,
17 私のそむきの罪を袋の中に封じ込め,私の咎をおおってください.
18  しかし,山は倒れてくずれ去り,岩もその所から移される.
19 水は石をうがち,大水は地の泥を押し流す.そのようにあなたは人の望みを絶ち滅ぼされます.
20 あなたは,いつまでも人を打ち負かすので,人が過ぎ去って行きます.あなたは彼の顔を変えて,彼を追いやられます.
21 自分の子らが尊ばれても,彼にはそれがわからず,彼らが卑しめられても,彼には見分けがつきません.
22 ただ,彼は自分の肉の痛みを覚え,そのたましいは自分のために嘆くだけです.

15.

1  テマン人エリファズが答えて言った.
2 知恵のある者はむなしい知識をもって答えるだろうか.東風によってその腹を満たすだろうか.
3 彼は無益なことばを使って論じ,役に立たない論法で論じるだろうか.
4 ところが,あなたは信仰を捨て,神に祈ることをやめている.
5 それは,あなたの罪があなたの口に教え,あなたが悪賢い人の舌を選び取るからだ.
6 あなたの口があなたを罪に定める.私ではない.あなたのくちびるがあなたに不利な証言をする.
7 あなたは最初に生まれた人か.あなたは丘より先に生み出されたのか.
8 あなたは神の会議にあずかり,あなたは知恵をひとり占めにしているのか.
9 あなたが知っていることを,私たちは知らないのだろうか.あなたが悟るものは,私たちのうちに,ないのだろうか.
10 私たちの中には白髪の者も,老いた者もいる.あなたの父よりもはるかに年上なのだ.
11 神の慰めと,あなたに優しく話しかけられたことばとは,あなたにとっては取るに足りないものだろうか.
12 なぜ,あなたは理性を失ったのか.なぜ,あなたの目はぎらつくのか.
13 あなたが神に向かっていらだち,口からあのようなことばを吐くとは.
14 人がどうして,きよくありえようか.女から生まれた者が,どうして,正しくありえようか.
15 見よ.神はご 自身の聖なる者たちをも信頼しない.天も神の目にはきよくない.
16 まして忌みきらうべき汚れた者,不正を水のように飲む人間は,なおさらだ.
17  私はあなたに告げよう.私に聞け.私の見たところを述べよう.
18 それは知恵のある者たちが告げたもの,彼らの先祖が隠さなかったものだ.
19 彼らにだけ,この地は与えられ,他国人はその中を通り過ぎなかった.
20 悪者はその一生の間,もだえ苦しむ.横暴な者にも,ある年数がたくわえられている.
21 その耳には恐ろしい音が聞こえ,平和なときにも荒らす者が彼を襲う.
22 彼はやみから帰ってくることを信ぜず,彼は剣につけねらわれている.
23 彼は食物を求めて,「どこだ.」と言いながら,さまよい,やみの日がすぐそこに用意されているのを知っている.
24 苦難と苦悩とが彼をおびえさせ,戦いの備えをした王のように彼に打ち勝つ.
25 それは彼が神に手向かい,全能者に対して高慢にふるまい,
26 厚い盾の取っ手を取っておこがましくも神に向かって馳せかかるからだ.
27 また,彼は顔をあぶらでおおい,腰の回りは脂肪でふくれさせ,
28 荒らされた町,人の住まない家に,石くれの山となる所に,住んだからだ.
29 彼は富むこともなく,その財産を長く持たず,その影を地上に投げかけない.
30 彼はやみからのがれることができず,炎がその若枝を枯らし,神の御口の息によって彼は追い払われる.
31 迷わされて,むなしいことに信頼するな.その報いはむなしい.
32 彼の時が来ないうちに,それは成し遂げられ,その葉は茂らない.
33 彼は,ぶどうの木のように,その未熟の実は振り落とされ,オリーブの木のように,その花は落とされる.
34 実に,神を敬わない者の仲間には実りがない.わいろを使う者の天幕は火で焼き尽くされる.
35 彼らは害毒をはらみ,悪意を生み,その腹は欺きの備えをしている.

16.

1  ヨブは答えて言った.
2 そのようなことを,私は何度も聞いた.あなたがたはみな,煩わしい慰め手だ.
3 むなしいことばに終わりがあろうか.あなたは何に興奮して答えるのか.
4 私もまた,あなたがたのように語ることができる.もし,あなたがたが私の立場にあったなら,私はことばを連ねてあなたがたを攻撃し,あなたがたに向かって,頭を振ったことだろう.
5 私は口先だけであなたがたを強くし,私のくちびるでの慰めをやめなかったことだろう.
6  たとい,私が語っても,私の痛みは押さえられない.たとい,私が忍んでも,どれだけ私からそれが去るだろう.
7  まことに神は今,私を疲れさせた.あなたは私の仲間のものをことごとく荒らされました.
8 あなたは私を,つかみました.私のやせ衰えた姿が,証人となり,私に向かって立ち,面と向かって答をします.
9  神は怒って私を引き裂き,私を攻めたて,私に向かって歯ぎしりした.私の敵は私に向かって目をぎらつかせる.
10 彼らは私に向かって口を大きくあけ,そしって私の頬を打ち,相集まって私を攻める.
11 神は私を小僧っ子に渡し,悪者の手に投げ込まれる.
12 私は安らかな身であったが,神は私を打ち砕き,私の首をつかまえて粉々にし,私を立ててご自分の的とされた.
13 その射手たちは私を巡り囲み,神は私の内臓を容赦なく射抜き,私の胆汁を地に流した.
14 神は私を打ち破って,破れに破れを加え,勇士のように私に向かって馳せかかる.
15 私は荒布をはだに縫いつけ,私の角をちりの中に突き刺した.
16 私の顔は泣いて赤くなり,私のまぶたには死の陰がある.
17 しかし,私の手には暴虐がなく,私の祈りはきよい.
18 地よ.私の血をおおうな.私の叫びに休み場所を与えるな.
19  今でも天には,私の証人がおられます.私を保証してくださる方は高い所におられます.
20 私の友は私をあざけります.しかし,私の目は神に向かって涙を流します.
21 その方が,人のために神にとりなしをしてくださいますように.人の子がその友のために.
22 数年もたてば,私は帰らぬ旅路につくからです.

17.

1  私の霊は乱れ,私の火は尽き,私のものは墓場だけ.
2 しかも,あざける者らが,私とともにおり,私の目は彼らの敵意の中で夜を過ごす.
3 どうか,私を保証する者をあなたのそばに置いてください.ほかにだれか誓ってくれる者がありましょうか.
4 あなたが彼らの心を閉じて悟ることがないようにされたからです.それゆえ,あなたは彼らを高められないでしょう.
5  分け前を得るために友の告げ口をする者,その子らの目は衰え果てる.
6 神は私を民の笑い者とされた.私は顔につばきをかけられる者となった.
7 私の目は悲しみのためにかすみ,私のからだは影のようだ.
8 正しい者はこのことに驚き,罪のない者は神を敬わない者に向かって憤る.
9 擬人は自分の道を保ち,手のきよい人は力を増し加える.
10 だが,あなたがたはみな,帰って来るがよい.私はあなたがたの中にひとりの知恵のある者も見いだすまい.
11 私の日が過ぎ去り,私の企て,私の心に抱いたことも破れ去った.
12 「夜は昼に変えられ,やみから光が近づく.」と言うが,
13 もし私が,よみを私の住みかとして望み,やみに私の寝床をのべ,
14 その穴に向かって,「おまえは私の父だ.」と言い,うじに向かって,「私の母,私の姉妹.」と言うのなら,
15 私の望みはいったいどこにあるのか.だれが,私の望みを見つけよう.
16 よみの深みに下っても,あるいは,共にちりの上に降りて行っても.

18.

1  そこでシュアハ人ビルダデが答えて言った.
2 いつ,あなたがたはその話にけりをつけるのか.まず悟れ.それから私たちは語り合おう.
3 なぜ,私たちは獣のようにみなされるのか.なぜ,あなたがたの目には汚れて見えるのか.
4 怒って自分自身を引き裂く者よ.あなたのために地が見捨てられようか.岩がその所から移されようか.
5 悪者どもの光は消え,その火の炎も輝かない.
6 彼の天幕のうちでは,光は暗くなり,彼を照らすともしびも消える.
7 彼の力強い歩みはせばめられ,おのれのはかりごとが彼を投げ倒す.
8 彼は自分の足で網にかかる.落とし穴の上を歩むからだ.
9 わなは彼のかかとを捕え,しかけ網は彼をつかまえる.
10 地には彼のための輪縄が,その通り道には彼のためのわなが隠されている.
11 恐怖が回りから彼を脅かし,彼の足を追い立てる.
12 彼の精力は飢え ,わざわいが彼をつまずかせようとしている.
13 彼の皮膚を食らおうとしている.死の初子が彼のからだを食らおうとしている.
14 彼はその拠り頼む天幕から引き抜かれ,恐怖の王のもとへ追いやられる.
15 彼の天幕には,彼のものではない者が住み,硫黄が彼の住まいの上にまき散らされる.
16 下ではその根が枯れ,上ではその枝がしなびる.
17 彼についての記憶は地から消えうせ,彼の名はちまたから消える.
18 彼は光からやみに追いやられ,世から追い出される.
19 彼には自分の民の中に親類縁者がなくなり,その住みかにはひとりの生存者もなくなる.
20 西に住む者は彼の日について驚き,東に住む者は恐怖に取りつかれる.
21 不正をする者の住みかは,まことに,このようであり,これが神を知らない者の住まいである.

19.

1  そこでヨブは答えて言った.
2 いつまで,あなたがたは私のたましいを悩まし,そんな論法で私を砕くのか.
3 もう,10度もあなたがたは私に恥ずかしい思いをさせ,恥知らずにも私をいじめる.
4 もし,私がほんとうにあやまって罪を犯したとしても,私のあやまって犯した罪が,私にとどまっているだろうか.
5 あなたがたがほんとうに私に向かって高ぶり,私の受けてそしりのことで,私を責めるのなら,
6 いま知れ.「神が私を迷わせ,神の網で私を取り囲まれた」ことを.
7  見よ.私が,「これは暴虐だ.」と叫んでも答はなく.助けを求めて叫んでも,それは正されない.
8 神が私の道をふさがれたので,私は過ぎ行くことができない.私の通り道にやみを置いておられる.
9 神は私の栄光を私からはぎ取り,私の頭から冠を取り去られた.
10 神が四方から私を打ち倒すので,私は去って行く.神は私の望みを木のように根こぎにする.
11 神は私に向かって怒りを燃やし,私をご自分の敵のようにみなされる.
12 その軍勢は1つとなって進んで来,私に向かって彼らの道を築き上げ,私の天幕の回りに陣を敷く.
13 神は私の兄弟たちを私から遠ざけた.私の知人はまったく私から離れて行った.
14 私の親族は来なくなり,私の親しい友は私を忘れた.
15 私の家に寄宿している者も,私のはしためたちも,私を他国人のようにみなし,私は彼らの目には外国人のようになった.
16 私が自分のしもべを呼んでも,彼は返事もしない.私は私の口で彼に請わなければならない.
17 私の息は私の妻にいやがられ,私の身内の者らにきらわれる.
18 小僧っ子までが私をさげすみ,私が起き上がると,私に言い逆らう.
19 私の親しい仲間はみな,私を忌みきらい,私の愛した人々も私にそむいた.
20 私の骨は皮と肉とにくっついてしまい,私はただ歯の皮だけでのがれた.
21  あなたがた,私の友よ.私をあわれめ,私をあわれめ.神の御手が私を打ったからだ.
22 なぜ,あなたがたは神のように,私を追いつめ,私の肉で満足しないのか.
23 ああ,今,できれば,私のことばが書き留められればよいのに,ああ,書き物に刻まれればよいのに.
24 鉄の筆と鉛とによって,いつまでも岩にきざみつけられたい.
25 私は知っている.私を贖う方は生きておられ,後の日に,ちりの上に立たれることを.
26 私の皮が,このようにはぎとられて後,私は,私の肉から神を見る.
27 この方を私は自分自身で見る.私の目がこれを見る.ほかの者の目ではない.私の内なる思いは私のうちで絶え入るばかりだ.
28 もし,あなたがたが,事の原因を私のうちに見つけて,「彼をどのようにして追いつめようか.」と言うなら,
29 あなたがたは剣を恐れよ.その剣は刑罰の憤りだから.これによって,あなたがたはさばきのあることを知ろう.

20.

1  そこでナアマ人ツョファルは答えて言った.
2 それで,いらだつ思いが私に答を促し,そのため,私は心あせる.
3 私の侮辱となる訓戒を聞いて,私の悟りの霊が私に答えさせる.
4 あなたはこのことを知っているはずだ.昔から,地の上に人が置かれてから,
5 悪者の喜びは短く,神を敬わない者の楽しみはつかのまだ.
6 たとい彼の高ぶりが天まで上り,その頭が雲まで及んでも,
7 彼は自分の糞のようにとこしえに滅びる.彼を見たことのある者たちは言う.彼はどこにいるのかと.
8 彼は夢のように飛び去り,だれにも彼は見つけられない.彼は夜の幻のように追い払われ,
9 彼を見慣れていた目は再び彼を見ず,彼のいた所はもはや彼を認めない.
10 彼の子らは貧民たちにあわれみを請い,彼の手は自分の財産を取り戻さなければならない.
11 彼の骨が若さに満ちても,それも彼とともにちりに横たわる.
12 たとい悪が彼の口に甘く,彼がそれを舌の裏に隠しても,
13 あるいは,彼がこれを惜しんで,捨てず,その口の中にとどめていても,
14 彼の食べた物は,彼の腹の中で変わり,彼の中でコブラの毒となる.
15 彼は富をのみこんでも,またこれを吐き出す.神がこれを彼の腹から追い払われる.
16 彼はコブラの毒を吸い,まむしの舌が彼を殺す.
17 彼は川を見ることがない.すなわち,密と凝乳の流れる川を見ることがない.
18 彼は骨折って得たものを取り戻しても,それをのみこめない.商いで得た富みによっても楽しめない.
19 彼が寄るべのない者を踏みにじって見捨て,自分で建てなかった家をかすめたからだ.
20 彼の腹は足ることを知らないので,欲しがっている物は何一つ,彼はのがさない.
21 彼のむさぼりからのがれる物は1つもない.だから,彼の繁栄は続かない.
22 満ち足りているときに,彼は貧乏になって苦しみ,苦しむ者の手がことごとく彼に押し寄せる.
23 彼が腹を満たそうとすると,神はその燃える怒りを彼の上に送り,憤りを彼の上に降らす.
24 彼は鉄の武器を免れても,青銅の弓が彼を射通す.
25 彼がそれを引き抜くと,それは彼の背中から出る.きらめく矢じりが腹から出て,恐れが彼を襲う.
26 すべてのやみが彼の宝として隠され,人が吹きおこしたのではない火が彼を焼き尽くし,彼の天幕に生き残っているものをもそこなってしまう.
27 天は彼の罪をあらわし,地は彼に逆らって立つ.
28 彼の家の作物はさらわれ,御怒りの日に消えうせる.
29 これが悪者の,神からの分け前,神によって定められた彼の相続財産である.

21.

1  ヨブは答えて言った.
2 あなたがたは,私の言い分をよく聞け.これをあなたがたの私への慰めとしてくれ.
3 まず,私が語る のを許してくれ.私が語って後,あなたはあざけってもよい..
4 私の不平は人に向かってであろうか.なぜ,私がいらだってはならないのか.
5 私のほうを見て驚け.そして手を口に当てよ.
6 私は思い出すとおびえ,おののきながら私の肉につかみかかる.
7 なぜ悪者どもが生きながらえ,年をとっても,なお力を増すのか.
8 彼らのすえは彼らとともに堅く立ち,その子孫は彼らの前に堅く立つ.
9 彼らの家は平和で恐れがなく,神の杖は彼らの上に下されない.
10 その牛は,はらませて,失敗することがなく,その雌牛は,子を産んで,仕損じがない.
11 彼らは自分の幼子たちを羊の群れのように自由にさせ,彼らの子どもたちはとびはねる.
12 彼らはタンバリンと立琴に合わせて歌い,笛の音で楽しむ.
13 彼らはしあわせのうちに寿命を全うし,すぐによみに下る.
14 しかし,彼らは神に向かって言う.「私たちから離れよ.私たちは,あなたの道を知りたくない.
15 全能者が何者なので,私たちは彼に仕えなければならないのか.私たちが彼に祈って,どんな利益があるのか.」と.
16 見よ.彼らの繁栄はその手の中にない.悪者のはかりごとは,私と何の関係もない.
17 幾たび,悪者のともしびが消え,わざわいが彼らの上に下り,神が怒って彼らに滅びを分け与えることか.
18 彼らは,風の前のわらのようではないか.つむじ風に吹き去られるもみがらのようではないか.
19 神はそのような者の子らのために,彼のわざわいをたくわえておられるのか.彼自身が報いを受けて思い知らなければならない.
20 彼の目が自分の滅びを見,彼が全能者の憤りをのまなければならない.
21 彼の日の数が短く定められているのに,自分の後の家のことに何の望みがあろうか.
22 彼は神に知識を教えようとするのか.高い所におられる方がさばきを下すのだ.
23 ある者は元気盛りの時に,全く平穏のうちに死ぬだろう.
24 彼のからだは脂肪で満ち,その骨の髄は潤っている.
25 ある者は苦悩のうちに死に,何の幸いも味わうことがない.
26 彼らは共にちりに伏し,うじが彼らをおおう.
27  ああ,私はあなたがたの計画を知っている.私をそこなおうとするたくらみを.
28 あなたがたは言う.「権門の家はどこにあるか.悪者の住んだ天幕はどこにあるか.」と.
29 あなたがたは道行く人に尋ねなかったか.彼らのあかしをよく調べないのか.
30 「悪人はわざわいの日を免れ,激しい怒りの日から連れ出される.」という.
31 だれが彼に面と向かって彼の道を告げえようか.だれが彼のなしたことを彼に報いえようか.
32 彼は墓に運ばれ,その塚の上には見張りが立つ.
33 谷の土くれは彼に快く,すべての人が彼のあとについて行く.彼より先に行った者も数えきれない.
34 どうしてあなたがたは,私を慰めようとするのか.むだなことだ.あなたがたの答えることは,ただ不信実だ.

22.

1  テマン人エリファズが答えて言った.
2 人は神の役に立つことができようか.賢い人さえ,ただ自分自身の役に立つだけだ.
3 あなたが正しくても,それが全能者に何の喜びであろうか.あなたの道が潔白であっても,それが何の益になろう.
4 あなたとともに,さばきの座に,はいって行かれ,あなたを責められるのは,あなたが神を恐れているためか.
5 いや,それはあなたの悪が大きくて,あなたの不義が果てしないからではないか.
6 あなたは理由もないのに,あなたの兄弟から質を取り,裸の者から着物をはぎ取り,
7 疲れている者に水も飲ませず,飢えている者に食物を拒んだからだ.
8 土地を持っている有力者のように,そこに住む有名人のように,
9 あなたはやもめを素手で去らせ,みなしごの腕を折った.
10 それでわながあなたを取り巻き,恐れが,にわかにあなたを脅かす.
11 あるいは,やみがあって,あなたは見ることもできず,みなぎる水があなたをおおう.
12 神は天の高きにおられるではないか.見よ,星の頂を.それはなんと高いことか.
13 あなたは言う.「神に何がわかろうか.黒雲を通してさばくことができようか.
14 濃い雲が神をおおっているので,神は見ることができない.神は天の回りを歩き回るだけだ.」と.
15 あなたは悪人が歩いたあの昔からの道を守っていこうとするのか.
16 彼らは時がまだ来ないうちに取り去られ,彼らの土台は流れに押し流された.
17 彼らは神に向かって言った.「私たちから離れよ.全能者が私たちに何ができようか.」と.
18 しかし,神は彼らの家を良い物で満たされた.だが,悪者のはかりごとは私と何の関係もない.
19 正しい者は見て喜び,罪のない者は彼らをあざけって言う.
20 「まことに,私たちに立ち向かった者は滅ぼされ,彼らの残した物は日が焼き尽くした.」
21  さあ,あなたは神と和らぎ,平和を得よ.そうすればあなたに幸いが来よう.
22 神の御口からおしえを受け,そのみことばを心にとどめよ.
23 あなたがもし全能者に立ち返るなら,あなたは再び立ち直る.あなたは自分の天幕から不正を遠ざけ,
24 宝をちりの上に置き,オフィルの金を川の小石の間に置け.
25 そうすれば全能者はあなたの黄金となり,尊い銀があなたのものとなる.
26 そのとき,あなたは全能者をあなたの喜びとし,神に向かってあなたの顔を上げる.
27 あなたが神に祈れば,神はあなたに聞き,あなたは自分の誓願を果たせよう.
28 あなたが事を決めると,それは成り,あなたの道の上には光が輝く.
29 あなたが低くされると,あなたは高められたと言おう.神はへりくだる者を救われるからだ.
30 神は罪ある者さえ救う.その人はあなたのきよいことによって救われる.

23.

1  ヨブは答えて言った.
2 きょうもまた,私はそむく心でうめき,私の手は自分の嘆きのために重い.
3 ああ,できれば,どこで神に会えるかを知り,その御座にまで行きたい.
4 私は御前に訴えを並べたて,ことばの限り討論したい.
5 私は神が答えることばを知り,私に言われることが何であるかを悟りたい.
6 神は力強く私と争われるだろうか.いや,むしろ私に心を留めてくださろう.
7 そこでは正しい人が神と論じ合おう.そうすれば私は,とこしえにさばきを免れる.
8  ああ,私が前へ進んでも,神はおられず,うしろに行っても,神を認めることができない.
9 左に向かって行っても,私は神を見ず,右に向きを変えても,私は会うこと ができない.
10 しかし,神は,私の行く道を知っておられる.神は私を調べられる.私は金のように,出て来る.
11 私の足は神の歩みにつき従い,神の道を守って,それなかった.
12 私は神のくちびるの命令から離れず,私の定めよりも,御口のことばをたくわえた.
13 しかし,みこころは1つである.だれがそれを翻すことができようか.神は心の欲するところを行なわれる.
14 神は,私について定めたことを,成し遂げられるからだ.このような多くの定めが神のうちにある.
15 だから,私は神の前でおびえ,これを思って,神を恐れているのだ.
16 神は私の心を弱くし,全能者は私をおびえさせた.
17 私はやみによって消されず,彼が,暗黒を私の前からなくされたからだ.

24.

1  なぜ,全能者によって時が隠されていないのに,神を知る者たちがその日を見ないのか.
2 ある者は地境を動かし,群れを奪い取ってこれを飼い,
3 みなしごのろばを連れ去り,やもめの牛を質に取り,
4 貧しい者を道から押しのける.その地の哀れな人々は,ともに身を隠す.
5 見よ.荒野の野ろばを.彼らは,出て行き,荒れた地で獲物を求めて捜し回り,自分の子らのためにえさを求める.
6 飼葉を畑で刈り取り,悪者のぶどう畑をかすめる.
7 彼らは着る物もなく,裸で夜を明かし,寒さの中でも身をおおう物がない.
8 山のあらしでずぶぬれになり,避け所もなく,岩を抱く.
9 彼らはみなしごを乳房からもぎ取り,貧しい者の持ち物を質に取る.
10 彼らは着る物もなく,裸で歩き,飢えながら麦束をになう.
11 その植え込みの間で油をしぼり,酒ぶねを踏みながら,なお渇く.
12 人の住む町からうめき声が起こり,傷ついた者のたましいは助けを求めて叫ぶ.しかし,神はその愚痴に心を留められない.
13 これらの者は光に反逆する者で,光の道を認めず,また,その通り道にとどまらない.
14 人殺しは,夜明けに起き上がり,哀れな者や貧しい者を殺し,夜には盗人のようになる.
15 姦通する者の目は夕暮れを待ちもうけ,「私に気づく目はない.」と言い,その顔におおう物を当てる.
16 彼は暗くなってから,家々に侵入する.昼間は閉じ込もって光を知らない.
17 すべて彼にとっては暗黒が朝である.彼は暗黒の恐怖と親しいからだ.
18  彼は水の面をすばやく過ぎ去り,彼の割り当ての地は国の中でのろわれる.彼はぶどう畑の道のほうに向かわない.
19 ひでりと暑さは雪の水を奪い,よみは罪を犯した者を奪う.
20 母の胎は彼を忘れ,うじは彼を好んで食べ,彼はもう思い出されない.不正な者は木のように折られてしまう.
21  彼は子を産まない不妊の女を食いものにし,やもめによくしてやらない.
22 しかし,神は力をもって暴虐な者たちを生きのびるようにされる.彼はいのちがあるとは信じられないときにも立ち上がる.
23 神が彼に安全を与える.それで,彼は休むことができる.神の目は彼らの道の上に注がれる.
24 彼らはしばらくの間,高められるが,消えうせる.彼らは低くされ,ほかのすべての者と同じように刈り集められる.麦の穂先のように枯れてしまう.
25 今そうでないからといって,だれが私をまやかし者だと言えよう.だれが私のことばをたわごとにしようとするのか.

25.

1  シュアハ人ビルダデが答えて言った.
2 主権と恐れとは神のもの.神はその高来所で平和をつくる.
3 その軍勢の数ほどのものがほかにあろうか.その光に照らされないものがだれかいようか.
4 人はどうして神の前に正しくありえようか.女から生まれた者が,どうしてきよくありえようか.
5 ああ,神の目には月さえも輝きがなく,星もきよくない.
6 ましてうじである人間,虫けらの人の子はなおさらである.

26.

1  ヨブは答えて言った.
2 あなたは無力な者をどのようにして助けたのか.力のない腕をどのようにして救ったのか.
3 知恵のない者をどのようにしていさめ,豊かなすぐれた知性を示したのか.
4 あなたはだれに対してことばを告げているのか.だれの息があなたから出たのか.
5  死者の霊は,水とそこに住むものとの下にあって震える.
6 よみも神の前では裸であり,滅びの淵もおおわれない.
7 神は北を虚空に張り,地を何もない上に掛けられる.
8 神は水を濃い雲の中に包まれるが,その下の雲は裂けない.
9 神は御座の面をおおい,その上に雲を広げ,
10 水の面に円を描いて,光とやみとの境とされた.
11 神がしかると,天の柱は震い,恐れる.
12 神は御力によって海をかき立て,神の英知をもってラハブを打ち砕く.
13 その息によって天は晴れ渡り,御手は逃げる蛇を刺し通す.
14 見よ.これらはただ神の道の外側にすぎない.私たちはただ,神についてのささやきしか聞いていない.だれが,その力ある雷を聞き分けえようか.

27.

1  ヨブはまた,自分の格言を取り上げて言った.
2 私の権利を取り去った神,私のたましいを苦しめた全能者をさして誓う.
3 私の息が私のうちにあり,神の霊が私の鼻にあるかぎり,
4 私のくちびるは不正を言わず,私の舌は決して欺きを告げない.
5 あなたがたを義と認めることは,私には絶対にできない.私は息絶えるまで,自分の潔白を離さない.
6 私は自分の義を堅く保って,手放さない.私の良心は生涯私を責めはしない.
7 私の敵は不正をする者のようになれ.私に立ち向かう者はよこしまな者のようになれ.
8  神を敬わない者の望みはどうなるであろうか.神が彼を断ち切り,そのいのちを取り去るときは.
9 苦しみが彼にふりかかるとき,神は彼の叫びを聞かれるであろうか.
10 彼は全能者を彼の喜びとするだろうか.どんな時にも神を呼ぶだろうか.
11 私は神の御手についてあなたがたに教えよう.全能者のもとにあるものを私は隠すまい.
12 ああ,あなたがたはみな,それを見たのに,なぜ,あなたがたは全くむなしいことを言うのか.
13  悪者の神からの分け前,横暴な者が全能者から受け取る相続財産は次のとおりだ.
14 たとい,彼の子どもたちがふえても,剣にかかる.その子孫はパンに飽き足ることはない.
15 その生き残った者も死んで葬られ,そのやもめらは泣きもしない.
16 彼が銀をちりのように積み上げ,衣装を土のようにたくわえても,
17 彼がたくわえたものは,正しい者がこれを着,銀は,罪のない者が分け取る.
18 彼はしみ が建てるような家を建てる.それは番人が作る仮小屋のようだ.
19 富む者が寝ると,もうそれきりだ.彼が目を開くと,もうそれはない.
20 恐怖が洪水のように彼を襲い,夜にはつむじ風が彼を運び去る.
21 東風が彼を吹き上げると,彼は去り,彼をそのいる所から吹き払う.
22 神は容赦なくそれを彼に投げつけ,彼は御手から何とかしてのがれようとする.
23 人々は彼に向かって手をたたき,彼をあざけって,そのいる所から追い出す.

28.

1  まことに,銀には鉱山があり,金には精錬する所がある.
2 鉄は土から取られ,銅は石を溶かして取る.
3 人はやみを目当てとし,その隅々にまで行って,暗やみと暗黒の石を捜し出す.
4 彼は,人里離れた所に,縦坑を掘り込み,行きかう人に忘れられ,人から離れてそこにぶら下がり,揺れ動く.
5 地そのものは,そこから食物を出すが,その下は日のように沸き返っている.
6 その石はサファイヤの出るもと,そのちりには金がある.
7 その通り道は猛禽も知らず,はやぶさの目もこれをねらったことがない.
8 誇り高い獣もこれを踏まず,たける獅子もここを通ったことがない.
9 彼は堅い岩に手を加え,山々をその基からくつがえす.
10 彼は岩に坑道を切り開き,その目はすべての宝を見る.
11 彼は川をせきとめ,したたることもないようにし,隠されている物を明るみに持ち出す.
12  しかし,知恵はどこから見つけだされるのか.悟りのある所はどこか.
13 人はその評価ができない.それは生ける者の地では見つけられない.
14 深い淵は言う.「私の中にはそれはない.」海は言う.「私のところにはない.」
15 それは純金をもってしても得られない.銀を量ってもその代価とすることができない.
16 オフィルの金でもその値踏みをすることができす,高価なしまめのうや,サファイヤでもできない.
17 金も玻璃もこれと並ぶことができす,純金の器とも,これは取り替えられない.
18 さんごも水晶も言うに足りない.知恵を獲得するのは真珠にまさる.
19 クシュのトパーズもこれと並ぶことができず,純金でもその値踏みをすることができない.
20  では,知恵はどこから来るのか.悟りある所はどこか.
21 それはすべての生き物の目に隠され,空の鳥にもわからない.
22 滅びの淵も,死も言う.「私たちはそのうわさをこの耳で聞いたことがある.」
23 しかし,神はその道をわきまえておられ,神はその所を知っておられる.
24 神は地の隅々まで見渡し,天の下をことごとく見られるからだ.
25 神は風を重くし,水をはかりで量られる.
26 神は,雨のためにその降り方を決め,いなびかりのために道を決められた.
27 そのとき,神は知恵を見て,これを見積もり,これを定めて,調べ上げられた.
28 こうして,神は人に仰せられた.「見よ.主を恐れること,これが知恵である.悪から離れることは悟りである.」

29.

1  ヨブはまた,自分の格言を取り上げて言った.
2 ああ,できれば,私は,昔の月日のようであったらよいのに.神が私を守ってくださった日々のようであったらよいのに.
3 あのとき,神のともしびが私の頭を照らし,その光によって私はやみを歩いた.
4 私がまだ壮年であったころ,神は天幕の私に語りかけてくださった.
5 全能者がまだ私とともにおられたとき,私の子どもたちは,私の回りにいた.
6 あのとき,私の足跡は乳で洗われ,岩は私に油の流れを注ぎ出してくれたのに.
7 私は町の門に出て行き,私のすわる所を広場に設けた.
8 若者たちは私を見て身をひき,年老いた者も起き上がって立った.
9 つかさたちは黙ってしまい,手を口に当てていた.
10 首長たちの声もひそまり,その舌は上あごについた.
11 私について聞いた耳は,私を賞賛し,私を見た目は,それをあかしした.
12 それは私が,助けを叫び求める貧しい者を助け出し,身寄りのないみなしごを助け出したからだ.
13 死にかかっている者の祝福が私に届き,やもめの心を私は喜ばせた.
14 私は義をまとい,義は私をおおった.私の公義は上着であり,かぶり物であった.
15 私は盲人の目となり,足なえの足となった.
16 私は貧しい者の父であり,見知らぬ者の訴訟を調べてやった.
17 私はまた,不正をする者のあごを砕き,その歯の間から獲物を引き抜いた.
18 そこで私は考えた.私は私の巣とともに息絶えるが,不死鳥のように,私は日をふやそう.
19 私の根は水に向かって根を張り,夜露が私の枝に宿ろう.
20 私の栄光は私とともに新しくなり,私の弓は私の手で次々に矢を放つ.
21  人々は,私に聞き入って待ち,私の意見にも黙っていた.
22 私が言った後でも言い返さず,私の話は彼らの上に降り注いだ.
23 彼らは雨を待つように私を待ち,後の雨を待つように彼らは口を大きくあけて待った.
24 私が彼らにほほえみかけても,彼らはそれを信じることができなかった.私の顔の光はかげらなかった.
25 私は彼らの道を選んでやり,首長として座についた.また,王として軍勢とともに住まい,しかも,嘆く者を慰める者のようであった.

30.

1  しかし今は,私よりも若い者たちが,私をあざ笑う.彼らの父は,私が軽くみて,私の群れの番犬とともにいさせたものだ.
2 彼らの手の力も私に何の役に立とうか.彼らから気力が消えうせた.
3 彼らは欠乏とききんでやつれ,荒れ果てた廃虚の暗やみで砂漠をかじる.
4 彼らはやぶの中のおかひじきを摘み,えにしだの根を彼らの食物とする.
5 彼らは世間から追い出され,人々は盗人を追うように,彼らに大声で叫ぶ.
6 彼らは谷の斜面や,土や岩の穴に住み,
7 やぶの中でつぶやき,いらくさの下に群がる.
8 彼らはしれ者の子たち,つまらぬ者の子たち,国からむちでたたかれ出された者たちだ.
9  それなのに,今や,私は彼らのあざけりの歌となり,その笑いぐさとなっている.
10 彼らは私を忌みきらって,私から遠ざかり,私の顔に情け容赦もなくつばきを吐きかける.
11 神が私の綱を解いて,私を悩まれたので,彼らも手綱を私の前に投げ捨てた.
12 この悪童どもは,私の右手に立ち,私の足をもつれさせ,私に向かって滅びの道を築いた.
13 彼らは私の通り道をこわし,私の滅びを推し進める.だれも彼らを押し止める者はいない.
14 彼らは,広い破れ口からはいって来るように,あらしの中を押し寄せて来る.< br>15 恐怖が私にふりかかり,私の威厳を,あの風のように追い立てる.私の繁栄は雨雲のように過ぎ去った.
16  今,私は心を自分に注ぐ.悩みの日に私は捕えられた.
17 夜は私の骨を私からえぐりとり,私をむしばむものは,休まない.
18 それは大きな力で,私の着物に姿を変え,まるで長服のように私に巻きついている.
19 神は私を泥の中に投げ込み,私はちりや灰のようになった.
20  私はあなたに向かって叫びますが,あなたはお答えになりません.私が立っていても,あなたは私に目を留めてくださいません.
21 あなたは,私にとって,残酷な方に変わられ,御手の力で,私を攻めたてられます.
22 あなたは私を吹き上げて風に乗せ,すぐれた知性で,私をきりもみにされます.
23 私は知っています.あなたは私を死に帰らせ,すべての生き物の集まる家に帰らせることを.
24  それでも,廃虚の中で人は手を差し伸べないだろうか.その衰えているとき,助けを叫ばないだろうか.
25 私は不運な人のために泣かなかっただろうか.私のたましいは貧しい者のために悲しまなかっただろうか.
26 私が善を望んだのに,悪が来,光を待ち望んだのに,暗やみが来た.
27 私のはらわたは,休みなく煮えたぎる.悩みの日が私に立ち向かっている.
28 私は,日にも当たらず,泣き悲しんで歩き回り,つどいの中に立って助けを叫び求める.
29 私はジャッカルの兄弟となり,だちょうの仲間となった.
30 私の皮膚は黒ずんではげ落ち,骨は熱で焼けている.
31 私の立琴は喪のためとなり,私の笛は泣き悲しむ声となった.

31.

1  私は自分の目と契約を結んだ.どうしておとめに目を留めよう.
2 神が上から分けてくださる分け前は何か.全能者が高い所からくださる相続財産は何か.
3 不正をする者にはわざわいが,不法を行なう者には災難が来るのではないか.
4 神は私の道を見られないのだろうか.私の歩みをことごとく数えられないのだろうか.
5 もし私がうそとともに歩み,この足が欺きに急いだのなら,
6 正しいはかりで私を量るがよい.そうすれば神に私の潔白がわかるだろう.
7 もし,私の歩みが道からそれ,私の心が自分の目に従って歩み,私の手によごれがついていたなら,
8 私が種を蒔いて他の人が食べるがよい.私の作物は根こぎにされるがよい.
9 もしも,私の心が女に惑わされ,隣人の門で待ち伏せしたことがあったなら,
10 私の妻が他人のために粉をひいてもよい.また,他人が彼女と寝てもよい.
11 これは恥ずべき行ない,裁判にかけて罰せられる罪だ.
12 実に,それは滅びの淵まで焼き尽くす火だ.私の収穫をことごとく根こぎにする.
13 私のしもべや,はしためが,私と争ったとき,もし,私が彼らの言い分をないがしろにしたことがあるなら,
14 神が立たれるとき,私はどうすればよいか.また,神がお調べになるとき,何と答えたらよいか.
15 私を胎内で造られた方は,彼らをも造られたのではないか.私たちを母の胎内に形造られた方は,ただひとりではないか.
16  もし,私が寄るべのない者の望みを退け,やもめの目を衰え果てさせ,
17 私ひとりだけで食物を食べて,みなしごにそれを食べさせなかったのなら,
18 −−私の若いときから,彼は私を父のようにして育ち,私は,母の胎にいたときから,彼女を導いた.−−
19 もし,私が,着る物がなくて死にかかっている者や,身をおおう物を持っていない貧しい者を見たとき,
20 彼の腰が私にあいさつをせず,私の子羊の毛で,それが暖められなかったのなら,
21 あるいは,私を助ける者が門のところにいるのを見ながら,みなしごに向かって私の手を振り上げたことがあるなら,
22 私の肩の骨が肩から落ち,私の腕がつけ根から折れてもよい.
23 神からのわざわいは私をおびえさせ,その威厳のゆえに,私は何もすることができないからだ.
24 もし,私が金をおのれの頼みとし,黄金に向かって,私の拠り頼むもの,と言ったことがあるなら,
25 あるいは,私の富が多いので喜び,私の手が多くの物を得たので,喜んだことがあるなら,
26 あるいは,輝く日の光を見,照りながら動く月を見て,
27 私の心がひそかに惑わされ,手をもって口づけを投げかけたことがあるなら,
28 これもまた裁判にかけて罰せられる罪だ.私が上なる神を否んだためだ.
29  あるいは,私を憎む者の衰えているのを私が見て喜び,彼にわざわいが下ったとき,喜び勇んだことがあろうか.
30 私は自分の口に罪を犯させなかった.のろって彼のいのちを求めようともしなかった.
31 いったい,私の天幕の人々で,「だれか,彼の肉に飽き足りなかった者はいないか.」と言わなかったことがあろうか.
32 異国人は外で夜を過ごさず,私は戸口を通りに向けてあけている.
33 あるいは,私がアダムのように,自分の背きの罪をおおい隠し,自分の咎を胸の中に秘めたことがあろうか.
34 私が群衆の騒ぎにおびえ,一族のさげすみを恐れて黙り,門を出なかったことがあろうか.
35 だれか私に聞いてくれる者はないものか.見よ.私を確認してくださる方,全能者が私に答えてくださる.私を訴える者が書いた告訴状があれば,
36 私はそれを肩に負い,冠のように,それをこの身に結びつけ,
37 私の歩みの数をこの方に告げ,君主のようにして近づきたい.
38 もし,私の土地が私に向かって叫び,そのうねが共に泣くことがあるなら,
39 あるいは,私が金を払わないでその産物を食べ,その持ち主のいのちを失わせたことがあるなら,
40 小麦の代わりにいばらが生え,大麦の代わりに雑草がはびこるように. ヨブのことばは終わった.

32.

1  この3人の者はヨブに答えるのをやめた.それはヨブが自分は正しいと思っていたからである.
2 すると,ラム族のブズ人,バラクエルの子エリフが怒りを燃やした.彼がヨブに向かって怒りを燃やしたのは,ヨブが神よりもむしろ自分自身を義としたからである.
3 彼はまた,その3人の友に向かっても怒りを燃やした.彼らがヨブを罪ある者としながら,言い返すことができなかったからである.
4 エリフはヨブに語りかけようと待っていた.彼らが自分よりも年長だったからである.
5 しかし,エリフは3人の者の口に答がないのを見て,怒りを燃やした.
6 ブズ人,バラクエルの子エリフは答えて言った. 私は若く,あなたがたは年寄りだ.だから,わきに控えて,遠慮し,あなたがたに私の意見を述べなかった.
7 私は思った.「日を重ねた者が語り, 年の多い者が知恵を教える.」と.
8 しかし,人の中には確かに霊がある.全能者の息が人に悟りを与える.
9 年長者が知恵深いわけではない.老人が道理をわきまえるわけでもない.
10 だから,私は言う.「私の言うことを聞いてくれ.私も,また私の意見を述べよう.」
11 今まで私はあなたがたの言うことに期待し,あなたがたの言い分を調べ上げるまで,あなたがたの意見に耳を傾けていた.
12 私はあなたがたに注意を払っていたのに,ヨブに罪を認めさせる者はなく,あなたがたのうちで彼の言葉に答える者もいない.
13 だが,おそらくあなたがたは言おう.「私たちは知恵を見いだした.人ではなく,神が彼を吹き払った.」と.
14 彼はまだ私に向かってことばを並べたててはいない.私はあなたがたのような言い方では彼に答えまい.
15  彼はあきれて,もう答えない.彼らの言うことばもなくなった.
16 彼らが語らず,そのままじっと答えないからと言って,私は待っていなければならないのだろうか.
17 私は私で自分の言い分を言い返し,私の意見を述べてみよう.
18 私にはことばがあふれており,1つの霊が私を圧迫している.私の腹を.
19 今,私の腹は抜け口のないぶどう酒のようだ.新しいぶどう酒の皮袋のように,今にも張り裂けようとしている.
20 私は語って,気分を晴らしたい.くちびるを開いて答えたい.
21 私はだれをもひいきしない.どんな人にもへつらわない.
22 へつらうことを知らないから.そうでなければ,私を造った方は今すぐ,私を奪い去ろう.

33.

1  そこでヨブよ.どうか,私の言い分を聞いてほしい.私のすべてのことばに耳を傾けてほしい.
2 さあ,私は口を開き,私の舌はこの口の中で語ろう.
3 私の言うことは真心からだ.私のくちびるは,きよく知識を語る.
4 神の霊が私を造り,全能者の息が私に息を与える.
5 あなたにできれば,私に返事をし,ことばを並べたて,私の前に立ってみよ.
6 実に,神にとって,私はあなたと同様だ.私もまた粘土で形造られた.
7 見よ.私のおどしも,あなたをおびえさせない.私が強く圧しても,あなたには重くない.
8 確かにあなたは,この耳に言った.私はあなたの話す声を聞いた.
9 「私はきよく,そむきの罪を犯さなかった.私は純潔で,よこしまなことがない.
10 それなのに,神は私を攻める口実を見つけ,私を敵のようにみなされる.
11 神は私の足にかせをはめ,私の歩みをことごとく見張る.」
12  聞け.私はあなたに答える.このことであなたは正しくない.神は人よりも偉大だからである.
13 なぜ,あなたは神と言い争うのか.自分のことばに神がいちいち答えてくださらないといって.
14 神はある方法で語られ,また,ほかの方法で語られるが,人はそれに気づかない.
15 夜の幻と,夢の中で,または深い眠りが人々を襲うとき,あるいは寝床の上でまどろむとき,
16 そのとき,神はその人たちの耳を開き,このような恐ろしいかたちで彼らをおびえさせ,
17 人にその悪いわざを取り除かせ,人間から高ぶりを離れさせる.
18 神は人のたましいが,よみの穴に,はいらないようにし,そのいのちが槍で滅びないようにされる.
19 あるいは,人を床の上で痛みによって責め,その骨の多くをしびれさせる.
20 彼のいのちは食物をいとい,そのたましいはうまい物をいとう.
21 その肉は衰え果てて見えなくなり,見えなかった骨があらわになる.
22 そのたましいはよみの穴に近づき,そのいのちは殺す者たちに近づく.
23 もし彼のそばに,ひとりの御使い.すなわち千人にひとりの代言者がおり,それが人に代わって,その正しさを告げてくれるなら,
24 神は彼をあわれんで仰せられる.「彼を救って,よみの穴に下って行かないようにせよ.わたしは身代金を得た.」
25 彼の肉は幼子のように,まるまる太り,彼は青年のころに返る.
26 彼が神に祈ると,彼は受け入れられる.彼は喜びを持って御顔を見,神はその人に彼の義を報いてくださる.
27 彼は人々を見つめて言う.「私は罪を犯し,正しい事を曲げた.しかし,神は私のようではなかった.
28 神は私のたましいを贖ってよみの穴に下らせず,私のいのちは光を見る.」と.
29 見よ,神はこれらすべてのことを,2度も3度も人に行なわれ,
30 人のたましいをよみの穴から引き戻し,いのちの光で照らされる.
31 耳を貸せ.ヨブ.私に聞け.黙れ.私が語ろう.
32 もし,言い分があるならば,私に言い返せ.言ってみよ.あなたの正しいことを示してほしいからだ.
33 そうでなければ私に聞け.黙れ.あなたに知恵を教えよう.

34.

1  エリフは続けて言った.
2 知恵のある人々よ.私の言い分を聞け.知識のある人々よ.私に耳を傾けよ.
3 口が食物の味を知るように,耳はことばを聞き分ける.
4 さあ,私たちは1つの定めを選び取り,私たちの間で何がよいことであるかを見分けよう.
5 ヨブはかつてこう言った.「私は正しい.神が私の正義を取り去った.
6 私は自分の正義に反して,まやかしをいえようか.私はそむきの罪を犯していないが,私の矢傷は直らない.」
7 ヨブのような人がほかにあろうか.彼はあざけりを水のようにのみ,
8 不法を行なう者どもとよく交わり,悪人たちとともに歩んだ.
9 彼は言った.「神と親しんでも,それは人の役に立たない.」
10  だから,あなたがた分別のある人々よ.私に聞け.神が悪を行なうなど,全能者が不正をするなど,絶対にそういうことはない.
11 神は,人の行ないをその身に報い,人に,それぞれ自分の道を見つけるようにされる.
12 神は決して悪を行なわない.全能者は公義を曲げない.
13 だれが,この地を神にゆだねたのか.だれが,全世界を神に任せたのか.
14 もし,神がご自分だけに心を留め,その霊と息をご自分に集められたら,
15 すべての肉なるものは共に息絶え,人はちりに帰る.
16  あなたに悟りがあるなら,これを聞け.私の話す声に耳を傾けよ.
17 いったい,公義を憎む者が治めることができようか.正しく力ある方を,あなたは罪に定めることができようか.
18 人が王に向かって,「よこしまな者.」と言い,高貴な者に向かって,「悪者.」と言えるだろうか.
19 この方は首長たちを,えこひいきせず,貧民よりも上流の人を重んじることはない.なぜなら,彼らはみな,神の御手のわざだから.
20 彼らはまたたくまに,それも真夜中に死に,民は震えて過 ぎ去る.強い者たちも人の手によらないで取り去られる.
21 神の御目が人の道の上にあり,その歩みをすべて見ているからだ.
22 不法を行なう者どもが身を隠せるような,やみもなく,暗黒もない.
23 人がさばきのときに神のみもとに出るのに,神は人について,そのほか何も定めておられないからだ.
24 神は力ある者を取り調べることなく打ち滅ぼし,これに代えて他の者を立てられる.
25 神は彼らのしたことを知っておられるので,夜,彼らをくつがえされる.こうして彼らは砕かれる.
26 神は,人々の見ているところで,彼らを,悪者として打たれる.
27 それは,彼らが神にそむいて従わず,神のすべての道に心を留めなかったからである.
28 こうして彼らは寄るべのない者の叫びを神の耳に入れるようにし,神は悩める者の叫びを聞き入れられる.
29 神が黙っておられるとき,だれが神をとがめえよう.神が御顔を隠されるとき,だれが神を認めえよう.1つの国民にも,ひとりの人にも同様だ.
30 神を敬わない人間が治めないために,民をわなにかける者がいなくなるために.
31  神に向かってだれが入ったのか.「私は懲らしめを受けました.私はもう罪を犯しません.
32 私の見ないことをあなたが私に教えてください.私が不正をしたのでしたら,もういたしません.」と.
33 あなたが反対するからといって,神はあなたの願うとおりに報復なさるだろうか.私ではなく,あなたが選ぶがよい.あなたの知っていることを言うがよい.
34 分別のある人々や,私に聞く,知恵のある人は私に言う.
35 「ヨブは知識がなくて語る.彼のことばには思慮がない.」と.
36 どうか,ヨブが最後までためされるように.彼は不法者のように言い返しをするから.
37 彼は,自分の罪にそむきの罪を加え,私たちの間で手を打ち鳴らし,神に対してことば数を多くする.

35.

1  エリフはさらに続けて言った.
2 あなたはこのことを正義によると思うのか.「私の義は神からだ.」とでも言うのか.
3 あなたは言っている.「何があなたの役に立つのでしょうか.私が罪を犯さないと,どんな利益がありましょうか.」と.
4 私はあなたと,またあなたとともにいるあなたの友人たちに答えて言おう.
5 天を仰ぎ見よ.あなたより,はるかに高い雲を見よ.
6 あなたが罪を犯しても,神に対して何ができよう.あなたのそむきの罪が多くても,あなたは神に何をなし得ようか.
7 あなたが正しくても,あなたは神に何を与ええようか.神は,あなたの手から何を受けられるだろうか.
8 あなたの悪は,ただ,あなたのような人間に,あなたの正しさは,ただ,人の子に,かかわりを持つだけだ.
9  人々は,多くのしいたげのために泣き叫び,力ある者の腕のために助けを叫び求める.
10 しかし,だれも問わない.「私の造り主である神はどこにおられるか.夜には,ほめ歌を与え,
11 地の獣よりも,むしろ,私たちに教え,空の鳥よりも,むしろ,私たちに知恵を授けてくださる方は.」と.
12 そこでは,彼らが泣き叫んでも答はない.悪人がおごり高ぶっているからだ.
13 神は決してむなしい叫びを聞き入れず,全能者はこれに心を留めない.
14 しかも,あなたは神を見ることができないと言っている.訴えは神の前にある.あなたは神を待て.
15 しかし今,神は怒って罰しないだろうか.ひどい罪を知らないだろうか.
16 ヨブはいたずらに口を大きく開き,知識もなく,自分の言い分を述べたてる.

36.

1  エリフはさらに続けて言った.
2 しばらく待て.あなたに示そう.まだ,神のために言い分があるからだ.
3 私は遠くから私の意見を持って来て,私の造り主に義を返そう.
4 確かに私の言い分は偽りではない.完全な知識を持つ方があなたのそばにいるからだ.
5  見よ.神は強い.だが,だれをもさげすまない.その理解の力は強い.
6 神は悪者を生かしてはおかず,しいたげられている者には権利を与えられる.
7 神は,正しい者から目を離さず,彼らを王たちとともに王座に着け,永遠に座に着かせて,高められる.
8 もし,彼らが鎖で縛られ,悩みのなわに捕えられると,
9 そのとき,神は,彼らのしたことを彼らに告げ,彼らがおごり高ぶったそむきの罪を告げる.
10 神は彼らの耳を開いて戒め,悪から立ち返るように命じる.
11 もし彼らが聞き入れて仕えるなら,彼らはその日々をしあわせのうちに全うし,その年々を楽しく過ごす.
12 しかし,もし聞き入れなければ,彼らは槍によって滅び,知識を持たないで息絶える.
13  心で神を敬わない者は,怒りをたくわえ,神が彼らを縛るとき,彼らは助けを求めて叫ばない.
14 彼らのたましいは若くして死に,そのいのちは腐れている.
15  神は悩んでいる者をその悩みの中で助け出し,そのしいたげの中で彼らの耳を開かれる.
16 まことに,神はあなたを苦しみの中から誘い出し,束縛のない広いところに導き,あなたの食卓には,あぶらぎった食物が備えられる.
17 しかし,あなたには悪者の受けるさばきが満ちている.それでさばきと公義があなたをつかまえる.
18 だから,あなたは憤って,懲らしめに誘い込まれないようにせよ.身代金が多いからといって,あなたはそれに惑わされないようにせよ.
19 あなたの叫びが並べたてられても,力の限りが尽くされても,それが役に立つだろうか.
20 国々の民が取り去られる夜をあえぎ求めてはならない.
21 悪に向かわないように注意せよ.あなたは悩みよりも,これを選んだのだから.
22  見よ.神は力にすぐれておられる.神のような教師が,だれかいようか.
23 だれが,神にその道を指図したのか.だれが,「あなたは不正をした.」と言ったのか.
24 人々がほめ歌った神のみわざを覚えて賛美せよ.
25 すべての人がこれを見,人が遠くからこれをながめる.
26 見よ.神はいと高く,私たちには知ることができない.その年の数も測り知ることができない.
27 神は水のしずくを引き上げ,それが神の霧となって雨をしたたらせる.
28 雨雲がこれを降らせ,人の上に豊かに注ぐ.
29 いったい,だれが雲の広がりと,その幕屋のとどろきとを悟りえよう.
30 見よ.神はご自分の光をその上にまき散らし,また,海の底をおおう.
31 神はこれらによって民をさばき,食物を豊かに与える.
32 神はいなずまを両手に包み,これに命じて的を打たせる.
33 その雷鳴は,神について告げ,家畜もまた,その起こることを告げる.

37.

1  これによって私の心はおののき,そのところからとびのく.
2 しかと聞け.その御声の荒れ狂うのを.その御口から出るとどろきを.
3 神はそのいなずまを全天の下,まっすぐに進ませる.それを地の果て果てまでも.
4 そのあとでかみなりが鳴りとどろく.神はそのいかめつい声で雷鳴をとどろかせ,その声の聞えるときも,いなずまを引き止めない.
5 神は,御声で驚くほどに雷鳴をとどろかせ,私たちの知りえない大きな事をされる.
6 神は雪に向かって,地に降れ,と命じ,夕立に,激しい大雨に命じる.
7 神はすべての人の手を封じ込める.神の造った人間が知るために.
8 獣は巣にもぐり,ほら穴にうずくまる.
9 つむじ風は天の室から吹き,寒さは北から来る.
10 神の息によって氷が張り,広い水が凍りつく.
11 神は濃い雲に水気を負わせ,雲が,そのいなずまをまき散らす.
12 これは神の指図によってめぐり回り,命じられるままに世界の地の面で事を行なう.
13 神がこれを起こさせるのは,懲らしめのため,あるいは,ご自身の地のため,あるいは,恵みを施すためである.
14  これに耳を傾けよ.ヨブ.神の奇しいみわざを,じっと考えよ.
15 あなたは知っているか.神がどのようにこれらに命じ,その雲にいなずまをひらめさせるかを.
16 あなたは濃い雲のつり合いを知っているか.完全な知識を持つ方の不思議なみわざを.
17 また,南風で地がもだすとき,あなたの着物がいかに熱くなるかを.
18 あなたは,鋳た鏡のように堅い大空を神とともに張り延ばすことができるのか.
19 神に何と言うべきかを私たちに教えよ.やみのために,私たちはことばを並べることができない.
20 私が語りたいと,神にどうして伝えられようか.人が尋ねるなら,必ず彼は滅ぼされる.
21 今,雨雲の中に輝いている光を見ることはできない.しかし,風が吹き去るとこれをきよめる.
22 北から黄金の輝きが現われ,神の回りには恐るべき尊厳がある.
23 私たちが見つけることのできない全能者は,力とさばきにすぐれた方.義に富み,苦しめることをしない.
24 だから,人々は神を恐れなければならない.神は心のこざかしい者を決して顧みない.

38.

1  主はあらしの中からヨブに答えて仰せられた.
2 知識もなく言い分を述べて,摂理を暗くするこの者はだれか.
3 さあ,あなたは勇士のように腰に帯を締めよ.わたしはあなたに尋ねる.わたしに示せ.
4 わたしが地の基を定めたとき,あなたはどこにいたのか.あなたに悟ることができるなら,告げてみよ.
5 あなたは知っているか.だれがその大きさを定め,だれが測りなわをその上に張ったかを.
6 その台座は何の上にはめ込まれたか.その隅の石はだれが据えたか.
7 そのとき,明けの星々が共に喜び歌い,神の子たちはみな喜び叫んだ.
8 海がふき出て,胎内から流れ出たとき,だれが戸でこれを閉じ込めたか.
9 そのとき,わたしは雲をその着物とし,黒雲をそのむつきとした.
10 わたしは,これをくぎって境を定め,かんぬきと戸を設けて,
11 言った.「ここまでは来てもよい.しかし,これ以上はいけない.あなたの高ぶる波はここでとどまれ.」と.
12 あなたが生まれてこのかた,朝に対して命令を下し,暁に対してその所をさし示し,
13 これに地の果て果てをつかまえさせ,悪者をそこから振り落させたことがあるか.
14 地は刻印を押された粘土のように変わり,衣服のように色づけられる.
15 悪者はその光が退けられ,振りかざす腕は折られる.
16  あなたは海の源まで行ったことがあるのか.深い縁の奥底を歩き回ったことがあるのか.
17 死の門があなたに現われたことがあるのか.あなたは死の陰の門を見たことがあるのか.
18 あなたは地の広さを見きわめたことがあるのか.そのすべてを知っているなら,告げてみよ.
19 光の住む所に至る道はどこか.やみのあるその場所はどこか.
20 あなたはわたしをその国まで連れて行くというのか.また,その家に至る通り道を見分けるというのか.
21 あなたが知っている・・・・・・そのとき,あなたが生まれ,あなたの日数が多い,といって.
22  あなたは雪の倉にはいったことがあるか.雹の倉を見たことがあるか.
23 これらは苦難の時のために,いくさと戦いの日のために,わたしが押えているのだ.
24 光が分れる道はどこか.東風が地の上で散り広がる道はどこか.
25 だれが,大水のために水路を通し,いなびかりのために道を開き,
26 人のいない地にも,人間のいない荒野にも,雨を降らせ,
27 荒れ果てた廃虚の地を満ち足らせ,それに若草を生やすのか.
28 雨に父があるか.露のしずくはだれが生んだか.
29 氷はだれの胎から生まれ出たか.空の白い霜はだれが生んだか.
30 水は姿を変えて石のようになり,深い淵の面は凍る.
31  あなたはすばる座の鎖を結びつけることができるか.オリオン座の綱を解くことができるか.
32 あなたは12宮をその時々にしたがって引き出すことができるか.牡牛座をその子の星とともに導くことがてきるか.牡牛座をその子の星とともに導くことができるか.
33 あなたは天の法令を知っているか.地にその法則を立てることができるか.
34 あなたの声を雲にまであげ,みなぎる水にあなたをおおわせることができるか.
35 あなたはいなずまを向うに行かせ,「私たちはここです.」とあなたに言わせることができるか.
36 だれが心のうちに知恵を置いたか.だれが心の奥に悟りを与えたか.
37 だれが知恵をもって雨雲を数えることができるか.だれが天のかめを傾けることができるか.
38 ちりが溶け合ってかたまりとなり,土くれが堅く固まるとき.
39  あなたは雌獅子のために獲物を狩り,若い獅子の食欲を満たすことができるか.
40 それらがほら穴に伏し,茂みの中で待ち伏せしているときに.
41 烏の子が神に向かって鳴き叫び,食物がなくてさまようとき,烏にえさを備えるのはだれか.

39.

1  あなたは岩間の野やぎが子を産む時を知っているか.雌鹿が子を産むのを見守ったことがあるか.
2 あなたはこれらがはらんでいる月を数えることができるか.それらが子を産む時を知っているか.
3 それらは身をかがめて子を産み落とし,その胎児を放り出す.
4 その子らは強くなり,野原で大きくなると,出て行って,もとの所には帰らない.
5  だれが野ろばを解き放ったのか.だれが野性の ろばの綱をほどいたのか.
6 わたしは荒れた地をその住みかとした.
7 それは町の騒ぎをあざ笑い,追い立てる者の叫び声を聞かない.
8 山岳地帯はその牧場,それは青い物を何でも捜す.
9  野牛は喜んであなたに仕え,あなたの飼葉おけのそばで夜を過ごすだろうか.
10 あなたはあぜみぞで野牛に手綱をかけることができるか.それが,あなたに従って谷間を耕すだろうか.
11 その力が強いからといって,あなたはそれに拠り頼むだろうか.また,あなたの働きをこれに任せるだろうか.
12 あなたはそれがあなたの穀物を持ち帰り,あなたの打ち場で,これを集めるとでも信じているのか.
13  だちょうの翼は誇らしげにはばたく.しかし,それらはこうのとりの羽と羽毛であろうか.
14 だちょうは卵を土に置き去りにし,これを砂で暖めさせ,
15 足がそれをつぶすことも,野の獣がこれを踏みつけることも忘れている.
16 だちょうは自分の子を自分のものでないかのように荒く扱い,その産みの苦しみがむだになることも気にしない.
17 神がこれに知恵を忘れさせ,悟りをこれに授けなかったからだ.
18 それが高くとびはねるとき,馬とその乗り手をあざ笑う.
19  あなたが馬に力を与えるのか.その首にたてがみをつけるのか.
20 あなたは,これをいなごのように,とびはねさせることができるか.そのいかめしいいななきは恐ろしい.
21 馬は谷で前掻きをし,力を喜び,武器に立ち向かって出て行く.
22 それは恐れをあざ笑って,ひるまず,剣の前から退かない.
23 矢筒はその上でうなり,槍と投げ槍はきらめく.
24 それはいきりたって,地を駆け回り,角笛の音を聞いても信じない.
25 角笛が鳴るごとに,ヒヒーンといななき,遠くから戦いをかぎつけ,隊長の怒号と,ときの声を聞きつける.
26  あなたの悟りによってか.たかが舞い上がり,南にその翼を広げるのは.
27 あなたの命令によってか.わしが高く上がり,その巣を高い所に作るのは.
28 それは岩に宿って住み,近寄りがたい切り立つ岩の上にいる.
29 そこから獲物をうかがい,その目は遠くまで見通す.
30 そのひなは血を吸い,殺されたものがある所に,それにはいる.

40.

1  主はさらに,ヨブに答えて仰せられた.
2 非難する者が全能者と争おうとするのか.神を責める者は,それを言いたててみよ.
3 ヨブは主に答えて言った.
4 ああ,私はつまらない者です.あなたに何と口答えできましょう.私はただ手を口に当てるばかりです.
5 一度,私は語りましたが,もう口答えしません.二度と,私はくり返しません.
6  主はあらしの中からヨブに答えて仰せられた.
7 さあ,あなたは勇士のように腰に帯を締めよ.わたしはあなたに尋ねる.わたしに示せ.
8 あなたはわたしのさばきを無効にするつもりか.自分を義とするために,わたしを罪に定めるのか.
9 あなたには神のような腕があるのか.神のような声で雷鳴をとどろき渡らせるのか.
10 さあ,誉れ,気高さで身を装い,尊厳と威光を身につけよ.
11 あなたの激しい怒りを吐き散らし,すべて高ぶる者を見て,これを低くせよ.
12 すべて高ぶる者を見て,これを押え,悪者どもを,その場で踏みにじれ.
13 彼らを共にちりの中に隠し,その顔を隠れた所につなぎとめよ.
14 そうすれば,わたしはあなたをたたえて言おう.あなたの右の手があなたを救えると.
15  さあ,河馬を見よ.これはあなたと並べてわたしが造ったもの,牛のように草を食らう.
16 見よ.その力は腰にあり,その強さは腹の筋にある.
17 尾は杉の木のように垂れ,ももの筋はからみ合っている.
18 骨は青銅の管,肋骨は鉄の棒のようだ.
19 これは神が造られた第1の獣,これを造られた方が,ご自分の剣でこれに近づく.
20 山々は,これのために産物をもたらし,野の獣もみな,そこで戯れる.
21 彼ははすの下,あるいは,葦の茂みや沼に横たわる.
22 はすはその陰で,これをおおい,川の柳はこれを囲む.
23 たとい川があふれても,それはあわてない.その口にヨルダン川が注ぎ込んでも,動じない.
24 だれがその目をつかんでこれを捕ええようか.だれがわなにかけて,その鼻を突き通すことができようか.

41.

1  あなたは釣り針で,レビヤタンを釣り上げることができるか.輪縄でその舌を押えつけることができるか.
2 あなたは葦をその鼻に通すことができるか.鈎をそのあごに突き通すことができるか.
3 これがあなたに,しきりに哀願し,優しいことばで,あなたに語りかけるだろうか.
4 これがあなたと契約を結び,あなたはこれを捕えていつまでも奴隷とすることができようか.
5 あなたは鳥と戯れるようにこれと戯れ,あなたの娘たちのためにこれをつなぐことができるか.
6 漁師仲間はこれを売りに出し,商人たちの間でこれを分けるだろうか.
7 あなたはもりでその皮を,やすでその頭を十分に突くことができようか.
8 その上にあなたの手を置いてみよ.その戦いを思い出して,二度と手を出すな.
9 見よ.その望みは裏切られる.それを見ただけで投げ倒されるではないか.
10 これを起こすほどの狂った者はいない. だから,だれがいったい,わたしの前に立つことができよう.
11 だれがわたしにささげたのか,わたしが報いなければならないほどに.天の下にあるものはみな,わたしのものだ.
12 わたしは彼のおしゃべりと,雄弁と,美辞麗句に黙っていることはできない.
13  だれがその外套をはぎ取ることができるか.だれがその胸当ての折り目の間に,はいれるか.
14 だれがその顔の戸をあけることができるか.その歯の回りは恐ろしい.
15 その背は並んだ盾,封印したように堅く閉じている.
16 1つ1つぴったりついて,風もその間を通らない.
17 互いにくっつき合い,堅くついて離せない.
18 そのくしゃみはいなずまを放ち,その目は暁のまぶたのようだ.
19 その口からは,たいまつが燃え出し,火花を散らす.
20 その鼻からは煙が出て,煮え立つかまや,燃える葦のようだ.
21 その息は炭火をおこし,その口から炎が出る.
22 その首には力が宿り,その前には恐れが踊る.
23 その肉のひだはくっつき合い,その身にしっかりついて,動かない.
24 その心臓は石のように堅く,臼の下石のように堅い.
25 それが起き上がると,力ある者もおじけづき,ぎょっとしてとまどう.
26 それを剣で襲っても,ききめがなく,槍も投げ槍も矢じりもききめがない.
27 それは鉄をわらのように,青銅を腐った木のようにみなす.
28 矢もそれを逃げさせることができず,石投げの石も,それにはわらのようになる.
29 こん棒もわらのようにみなし,投げ槍のうなる音をあざ笑う.
30 その下腹は鋭い土器のかけら,それは打穀機のように泥の上に身を伸ばす.
31 それは深みをかまのように沸き立たせ,海を香油をかき混ぜるなべのようにする.
32 その通ったあとは輝き,深い淵は白髪のように思われる.
33 地の上には,これと似たものはなく,恐れを知らないものとして造られた.
34 それは,すべて高いものを見おろし,それは,すべての誇り高い獣の王である.

42.

1  ヨブは主に答えて言った.
2 あなたには,すべてができること,あなたは,どんな計画も成し遂げられることを,私は知りました.
3 知識もなくて,摂理をおおい隠した者は,だれでしょう.まことに,私は,自分で悟りえないことを告げました.自分でも知りえない不思議を.
4 どうか聞いてください.私が申し上げます.私はあなたにお尋ねします.私にお示しください.
5 私はあなたのうわさを耳で聞いていました.しかし,今,この目であなたを見ました.
6 それで私は自分をさげすみ,ちりと灰の中で悔い改めます.
7  さて,主がこれらのことばをヨブに語られて後,主はテマン人エリファズに仰せられた.「わたしの怒りはあなたとあなたのふたりの友に向かって燃える.それは,あなたがたがわたしについて真実を語らず,わたしのしもべヨブのようではなかったからだ.
8 今,あなたがたは雄牛7頭,雄羊7頭を取って,わたしのしもべヨブのところに行き,あなたがたのために全焼のいけにえをささげよ.わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈ろう.わたしは彼を受け入れるので,わたしはあなたがたの恥辱となることはしない.あなたがたはわたしについて真実を語らず,わたしのしもべヨブのようではなかったが.」
9  テマン人エリファズと,シュアハ人ビルダデと,ナアマ人ツォルファルが行って,主の彼らに命じたようにすると,主はヨブの祈りを受け入れられた.
10 ヨブがその友人のたちのために祈ったとき,主はヨブを元どおりにし,さらに主はヨブの所有物をすべて2倍に増された.
11 こうして彼のすべての兄弟,すべての姉妹,それに以前のすべての知人は,彼のところに来て,彼の家で彼とともに食事をした.そして彼をいたわり,主が彼の上にもたらしたすべてのわざわいについて,彼を慰めた.彼らはめいめい1ケシタと金の輪1つずつを彼に与えた.
12 主はヨブの前の半生よりあとの半生をもっと祝福された.それで彼は羊1万4千頭,らくだ6千頭,牛1千くびき,雌ろば1千頭を持つことになった.
13 また,息子7人,娘3人を持った.
14 彼はその第1の娘をエミマ,第2の娘をケツィア,第3の娘をケレン・ハプクと名づけた.
15 ヨブの娘たちほど美しい女はこの国のどこにもいなかった.彼らの父は,彼女たちにも,その兄弟たちにの間に相続地を与えた.
16 この後ヨブは140年生き,自分の子と,その子の子たちを4代目まで見た.
17 こうしてヨブは老年を迎え,長寿を全うして死んだ.





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