Re: 「私の超能力はE.T.Iによって得られたパワーだ」(『UFOS & SPACE』83年7月号)

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投稿者 SP' 日時 2001 年 1 月 13 日 08:57:30:

回答先: 「私の超能力はE.T.Iによって得られたパワーだ」(『UFOS & SPACE』83年7月号) 投稿者 SP' 日時 2000 年 12 月 21 日 12:54:26:

『エイリアンの夜明け』(コリン・ウィルソン著、南山宏訳、角川春樹事務所)「第一章 多すぎる解」より抜粋。


 拙著『オカルト』の最後のほうで、完璧を期すためという理由からではあったものの、一章を空飛ぶ円盤に割かなくてはならないと思った。私はケネス・アーノルドの目撃談とトーマス・マンテル機長のUFO追跡墜落事件について触れた。そのあとで触れた事例は、今にして思えば、当時思っていたよりはるかに重要な事例だったのである。
 以下はカリフォルニア在住の知人、リチャード・ロバーツから聞いた話だが、オランダのヨガ行者ジャック・シュワルツは、長く尖った針のベッドに寝て、さらに自分の上に体重の重い人間を乗せるという荒技ができた。針が身体に深く食いこんでいるにもかかわらず、傷口からは出血もせず、シュワルツは苦痛などどこ吹く風だったという。
 一九五八年、このシュワルツがオランダ海軍の厚生士官として乗船していた船舶がスエズ運河を通過中のことだった。ちょうど将兵慰安の演目として奇術師が出演していた。そのとき突然、長身痩躯のアラブ人がシュワルツに近づき、「あなたはわが師です」と言いながら、シュワルツの足に接吻すると歩みさった。シュワルツはあとを追おうとしたが、その姿はどこにもなく、舷門の当直兵もその姿を見てはいなかった。
 その一年後、ロサンゼルスでのある講演を抜け出したシュワルツに小柄な男が近づき、話がしたいと告げた。妻が心配するのもかまわず男の車に乗り込むと、男はシュワルツの手に接吻して、以前シュワルツの足に接吻し、師と呼んだことを思い出させた。シュワルツは困惑した。この小柄な男は、あのひょろっとしたアラブ人とは似ても似つかなかったからだ。ところが、男はシュワルツの心の内を読んだらしく、「われわれは好きな姿になることができるのだ」と告げた。そして「われわれは何千年も前にロケットで地球に不時着した人々の子孫だ」と説明した。次に男は、ネパールにいるシュワルツの師からのメッセージを携えてきたと言った。そのメッセージとは、「霊感によって与えられる霊的真実をみなに広める時期だ。お前は、実現することになっている真実を告げるため、神のつかわした運び手なのだ」というものだった。また会うことになると約束すると、男はシュワルツを車から降ろした。
 数年後、シュワルツは自分の“使命”に関するテレパシーのメッセージを受け取りはじめた。ある女性患者は金属的な声でシュワルツに話しかけ、お前は冥王星の出身で、自分──声の主──は金星人だと告げた。この金星人はリヌスと名乗り、金星に棲息する“ガス状”生物について専門的な話を並べたてたが、それはこの女性患者の知的能力をはるかに超える事柄だった(のちに面接中のテープを聞かされた本人が驚いている)。その二か月後、また別の患者の口を借りてリヌスはシュワルツに話しかけた。さらにヴァンクーヴァーの心霊少女が、前夜アストラル体となって金星へおもむき、そこでリヌスと会ったとシュワルツに語ったりもした。
 さてここまでが、私が『オカルト』を執筆した当時のこの一件の進展状況である。
 当時はたんにバカげた話だとしか思われなかったが、いまではそこにおなじみのパターンが見てとれる。一風変わった能力を有する人物が、超自然的とおぼしき手段でメッセージを受けとり、救世主となる運命、おそらくは地球を救う運命を背負っていると告げられる、というパターンだ。なんらかの“徴し”が与えられることも多い。たとえばメッセージの主から未来に関する予言があり、それが的中するといったような。しかし、メッセージを受けとった人間が無邪気にも完全にこれを信じきってしまうと、待ち受けているのは混沌と狼狽である。たとえば大惨事、いやそれどころか世界の終末の予言がけっきょく実現せず、この“神の恩寵を受けし者”をひどく情けない気持にさせてしまったりする。
 この不可解で曖昧模糊としたUFOの世界に私が再会したのは、その二、三年後、一九七〇年代中ごろのことだ。『オカルト』が好評を博すと、超常現象にかかわりのある企画に加わってほしいという誘いがどんどん来るようになった。たとえば、BBCテレビの連続番組への出演であり、『未解明現象』シリーズ本の編集スタッフへの参加である。スプーンを軽くこすって曲げることで一夜にして名声を築いたあのユリ・ゲラーと出会うことになったのは、そうした立場からだった。
 ゲラーなどたんなる腕のいい手品師にすぎないという懐疑派の言葉につられ、私もほとんどその気になっていたのだが、背を向けたままで私の心を読み、私がメニューの裏面に描いた絵──子供たちを喜ばせようと私がでっちあげた不細工な怪物の絵を再現して見せられ、これは本物だとすぐさま納得させられてしまった。私が絵を下にして片手でおおうとゲラーは振り向き、自分の目を見つめて画像を送ってほしいと言った。するとだしぬけに、ゲラーは自分のメニューに、多少正確さには欠けるものの、まちがいなく同じものだとわかる大きなぺらぺらの耳と大目玉の生き物の漫画を再現してみせたのである。
 この時点で、アンドリア・プハリックの『ユリ──ユリ・ゲラーの謎の日記』を読んで以来私を悩ませつづけていた疑問を本人にぶつけてみた。多くの人々と同じく私も、あの本は読み終えるのが極端に難しいと思っていたのだ。問題はじつに単純で、まるで信じられなかったからである。プハリックがとほうもない嘘つきだと思っているわけではない──たんにどうがんばっても私には内容を本気にできなかったのだ。
 私は、あの本に書かれていることがすべて本当にあったのかどうか知りたかった。そのときゲラーがすでにプハリックと袂を分かっており、しかもゲラーがなんらかの反感を抱いていることも知っていたので、本当のことを答えてくれない理由もないはずだった。
 ところがゲラーはじつにきっぱりと、「何から何までアンドリアの書いたとおりだった」と答えたのだ。
「ということは、君のパワーの源はどこか地球の外から来ていると信じているのかね?」
「わからない。どこから来ているのかは、わからない」
「しかし、自分自身の無意識の表出──というか、一種のポルターガイスト現象だとは思っていない?」
 ゲラーはかぶりを振った。「そうとは思えない。このパワーの背後にあるのがなんであれ、知的なものだという印象を持っている。こちらをからかったりすることもあるんだ。ぼくは自分の本(ユリ・ゲラー著『私記』一九七五年)の中で、それを“宇宙の道化師”と呼んでいる」
 私が疑問を抱いた理由は、プハリックの本の第三章を読めばわかる。そこには、ある日テルアビブのホテルの一室で軽い催眠下にあったゲラーの様子が記されている。自分はいま、子供のころよく勉強に没頭したキプロス島の暗い洞窟にいると言った。「なにを勉強しているのかな?」とプハリックがたずねると、ゲラーはこう答えた。「宇宙からやってきた人々について。でもまだそのことを話しちゃいけないんだ」
 ゲラーは次に、一九四九年、三歳の誕生日の すぐあとで、テルアビブの庭でお椀型の光が空に見えたときの様子を話した。そして目の前に光る人影が現れた。頭の上にあげた両手には、なにか太陽のように輝く物体を頭の上に捧げもっていた。
 プハリックの本がおよそ信じられなくなりだしたのは、この部分からだった。というのも、それにつづけてプハリックは、催眠面接の途中でゲラーが口をつぐむと、空中から奇妙な、金属的な声が聞こえはじめたと書いているからだ。声は「三歳のとき庭でユリを見つけたのはわれわれだ」と言った。“彼ら”は目的遂行のためにユリをプログラムしたが、接触時の記憶は消しておいたという。目的とは世界戦争を回避することで、エジプトとイスラエルのあいだに起きることになっている。ゲラーはその目的のための、なんらかの道具となるはずなのだという。
“彼ら”とは、のちに明らかになるのだが、“ナイン”と呼ばれる超人グループだった。プハリックがはじめて“ナイン”を知ったのは、ヴィノド博士というヒンドゥー教の超能力者を研究中のことだった。ヴィノドはだしぬけにまったく別人のような声で、しかも訛りのない完璧な英語を話しはじめた。その存在は言語明瞭にして高度の知性をそなえ、自分は“九つの原理と力”のメンバーであり、人類進化の一助となることがその使命だと説明した。
 その四年後の一九五六年、プハリックは知り合いになったチャールズ・ラフェッド博士夫妻というアメリカ人から、“九つの原理と力”からの長文のメッセージを受けとったが、そこにはヴィノド博士を介して伝えたメッセージの内容が言及されていた。二番目のメッセージがなんらかのトリックでもないかぎり、“ナイン”、あるいは少なくともその代弁者とは一種の肉体をもたない知性であるようだった(しかし、のちにラフェッド博士自身が、“チャネリング”によるメッセージに惑わされる危険を、身をもって示すことになる。ある特定の日に世界の終末がくると公言したものの当日なにも起こらず、けっきょくミシガン州立大を辞職する憂き目にあったのだ)。
 こうした出来事すべてが、テルアビブで金属的な声を聞いたプハリックがまたもや“ナイン”が現れたと早合点した説明になる。
 催眠から覚めたゲラーは、何が起きたかまったくおぼえていなかった。プハリックが庭での出来事を描写したテープを再生すると、ゲラーは「ぜんぜん憶えていない」と呟いている。
 金属的な声のくだりになるとゲラーはだしぬけにテープを引き抜いて脱兎のごとく部屋から出ていってしまう。ゲラーがつかんだときテープが消えるのを見たとプハリックは証言する。三〇分後にゲラー(まだショック状態だったようだ)を見つけたが、テープはもう影も形もなかった。
 この逸話を手はじめに、つづく一連のあまりに常軌を逸した出来事は、読む者の驚きさえ麻痺させてしまう。ゲラーが木箱に入れた指輪を消したり出したりする。するとプハリックは、この物体を消したり出したりする能力を研究すれば知りたいことがわかるかもしれないと決めこむ。「物体を消すというこの能力がユリ自身のものであると断言できれば、話は簡単だ。しかし、この能力が地球外知性によってコントロールされているとすれば、非常に重大な発見を目の当たりにしていることになるのだ」
 そこでプハリックははっきりさせようとした。パーカー万年筆の部品三つに数字のコードを刻みつけ、木箱に入れたのである。ゲラーはその上に九分間手をかざしていた。箱を開けると、万年筆にはどこにもおかしなところはなかった。だが、子細に調べてみると、真鍮のカートリッジが消えていたのである。
 その日、のちほどゲラーが催眠状態にあったとき、ふたたび金属的な声が話しかけてきて、いま「スペクトラ」という宇宙船で「五万三〇六九光年の彼方にいる」と説明した。そしてプハリックは、ゲラーの面倒をよく見るようにと言いわたされた。ゲラーには達成せねばならない大切な使命があるというのだ。声はつづけて、万年筆のなくなった部品を持っており、やがてプハリックの手元にもどされることになると告げた。
 その夜、二人がテルアビブ市内を車で走行中、道路の突き当たりの上空に「翼のついた、発光する円形の宇宙船」が出現した。
 二日後、プハリックはゲラーがUFOを目撃した別の場所を見ておきたいと思った。彼を迎えにガールフレンドのアイリスのアパートへ行くと、ゲラーはまだ食事をすませていなかった。アイリスが冷蔵庫から卵を三つ出し、深鍋に水を満たした。卵を取りにいったアイリスは悲鳴を上げた。卵は熱く、すでに堅ゆでになっていたのだ。
 そののち、ゲラーの運転で三人がテルアビブのはずれにいくと、コオロギの鳴き声のような音が聞こえ、やがて空中に脈動する青い光が見えた。ゲラーはプハリックとアイリスに待っているように言うと、チーチーという音と青い光のほうへ行った。しばらくしてもどってきたゲラーの様子は、まるでトランス状態のようだった。のちにゲラーが語ったところでは、明滅する青い光に近づくと、頭が真っ白になったという。次にわれに返ると、万年筆のカートリッジを持ってもどってくるところだった。
 無理もないことだが、こうした出来事のおかげでプハリックは自分が相手にしているのは地球外の知的生命体にまちがいなく、町ほどの大きさの宇宙船で地球を八〇〇年間見守ってきたというその言葉もおそらくは本当だろうと思いこんでしまった。不可思議な出来事をたてつづけに目のあたりにして、ゲラーのトリックではないかという疑念はすべて吹き飛んでしまったのだ。テープレコーダーが勝手に回りだし、やがて止まると金属的な声のメッセージが録音されている。録音テープが目の前で消失する。ニューヨークに置いてきた革のカメラケースがテルアビブで見つかる。腕時計がだしぬけに狂ってしまう。一度など、テーブルに置いた腕時計を見ていたところ、ゲラーが叫び声をあげた。手首にその時計が出現したのだ。ゲラーがアメリカから取り寄せようと思ったものの、高価すぎると思いとどまったはずのマッサージ機が突然ゲラーの部屋に梱包されて出現した。ある日、テープレコーダーが録音を始めると、そのコンセントがソケットから引っこ抜けてしまった。何度かもどそうとしたが、そのたびに飛び出してきてしまうのだ。
 ここでプハリックの立場に自分を置いてみるのはたやすいだろう。ゲラーに出会ってからというもの、奇跡は日常茶飯事になっている。空中からは謎の声が聞こえ、自分とゲラーには重大な任務があると、世界の未来の平和はその任務にかかっていると告げられるのだ。プハリックは、超自然的な力とじかに交信していた古代ヘブライの預言者と同じ立場に自分たちはいるのだと感じはじめる。プハリックは、族長に神の声が話しかけたという聖書の記述は修辞的なスタイルだと解釈してきた。ところがそれは文字どおりの真実だったのだと思うようになったのである。
 誰しも納得するところだろうが、こうした状況下では大半の人々が、この“超自然的”(あるいは地球外の)力は本物であり、幻覚やトリックなどではないと思うことだろう。日ごとに自然法則が否 定され、目前でさまざまな現象を“声”の能力を証明されては、どんな頑固な懐疑論者も信じこんでしまうはずだ。
 目撃できるのは当事者にかぎられている場合が多い。砂漠を走行中にゲラー、プハリックともう一人が巨大な宇宙船を目撃するが、フロントシートにいた三人の軍人には見えなかった。宇宙の知性は明らかに、人心を操る不思議な能力を有しているのだ。
 しかし、目的は何なのだろうか? ゲラーがとてつもなく重大な任務を果たすために選ばれたのだとしたら、それは何なのか? 声は、まもなく自分も参加する惑星地球への大規模な着陸がある予定で、超自然の力が現実に存在するのだと人類もとうとう知ることになると言う。だが、プハリックが「われわれの務めがなんであるか明らかにしてもらわなくては」と異議を唱えると、声はこう答えるのだ。「忍耐だ。忍耐強くあらねばならない。二四時間をわれわれに捧げているあなたたちでさえ、まったく理解できないのだから」
 ここに至ってようやく、宇宙知性体にも自分たちの目的が何なのか明確ではないのではと、読んでいるほうも疑いはじめる。「ユリの映画を作れ」とプハリックは命じられる。だが、その映画は失敗に終わる(やがて私もロバート・スティグウッドという興行主に雇われてユリの映画にかかわるのだが、これも失敗に終わる)。ユリにドイツ行きを命じた宇宙知性体は、ユリの力を見せつければ誰もが霊的な力が現実に存在すると認めるだろうと自信ありげだった。だが、エスカレーターやケーブルカーを止めてみせたにもかかわらず、ユリの大業にドイツ人はたちまち興味を失ってしまった。
 宇宙知性体は、これにつづくゲラーのアメリカ・ツアーについてもしくじったようだ。どういうわけか、科学的テストを拒むようにとゲラーに指示したのである。ともあれゲラーは承諾し、スタンフォード大学のハル・パソフとラッセル・ターグとともにテストをおこなった。結果ではテレパシーの存在を示す明らかな証拠があり、コンパスの針を左右に振ったり金属製の小さな道具類を曲げたり壊したりする能力を実演している。
 しかし、〈タイム〉誌に後押しされたアメリカ人奇術師のグループはすでにインチキだと決めこんでおり、スタンフォード大の科学者よりも、〈タイム〉のほうが声が大きかった。ゲラーの憤りはつのるばかりで、やがてプハリックと意見が衝突するようになる。ゲラーは“声”に疑念をいだきはじめ、「ただのお調子者にからかわれているだけ」なのではないかと思うようになっていく。
 こうした事情などどこ吹く風で、宇宙生命体はその力を誇示しつづける。ある日にはプハリックの飼犬が二人の目の前で消えたかと思うと庭に現れる。ゲラーと口論している途中でプハリックが宇宙知性体などうんざりだと言うと、大音響の雷鳴がとどろき、大型振子時計が玄関の反対側へすごい勢いで飛んでいき、粉々に砕けてしまった。
 それでもなお、宇宙知性体がゲラーとプハリックに何をやらせたいのか自分でもよくわからない様子だった。
 ついには、沈黙の誓いをやぶってすべての出来事を本に書くようにとの指示がプハリックに出た。その結果が、もちろん『ユリ──ユリ・ゲラーの謎の日記』(一九七四年)である。だが、ここでも「スペクトラ」の乗員たちには誤算があったようだ。本が出版されてどうなったかといえば、ただ真摯な研究者というプハリックの評判が地に墜ちただけだったのである。プハリックの良心的な誠実さが勝利をおさめ、“何かが”あったことは示せたはずだった。だが、五〇ページも読みすすむと記されている出来事は信憑性の範疇を飛びこえてしまい、その後は妙に一本調子な奇跡のごった煮と化してしまう。この本のおかげでゲラーとプハリックは有名にはなったが、そのなり方は、ならなかったほうがよかったと思わせるような種類の名声だった。
 ユリ・ゲラーとの出会いは私にとって、UFO問題になんら光明をもたらしてはくれなかった。ゲラーという人物をかなり知るようになり、『ゲラー現象』なる本も著した。バルセロナでゲラーと過ごした数日のあいだに、いくつか小さな“奇跡”が起きたりもしたが、どれをとっても懐疑論者を納得させるようなものではない。物品が宙から降ってきたりもしたが、私の目の前に落ちてくることは一度もなかった。そうであればゲラーが投げたのではないと断言はできたのだが。実際にゲラーがやったと思ってはいない。名声を楽しむゲラーに一抹の疑念がないではないが、本人はどこまでも誠実な男だと感じるようになっている。

 私自身の当時の感触としては、ゲラーの能力にはプハリックがなんらかのかたちで関与していると確信していた。プハリック自身、テルアビブでゲラーの母親と無二の親友シピ・ストラングを交えた夕食におもむいたおり、ふいにユリからのテレパシーのメッセージを受信できることに気づいたと述べている。「私たちは数を……色を、そして英語、ヘブライ語、ギリシャ語の単語を試してみた。私のテレパシー能力はじつに桁はずれだった」。ユリは、シピの存在で自分の能力が増大したと信じている。そうかもしれない。だが私の感触では、プハリック自身にも、そして本書で明らかになるように、万人に強い超能力があるという印象を持っている。そしてユリといっしょになったとき、二人のコンビネーションがどっとばかりに不可思議な現象をたてつづけに起こしたのだ。そして、プハリックがそれ以前から“ナイン”の存在を信じていたために、当然のごとくトランス状態のゲラーのメッセージは、“ナイン”からのものということになったのだ。
 その翌年の一九七六年、私はプハリックに会い、その友人のジョイス・ペトシェクと三人で夕ベのひとときを過ごした。プハリックは白髪まじりに濃い口ひげの小男で、人柄は気さくで控え目だった。私が持論のプハリックとゲラーの“超能力相互作用”説を披露すると、しばらく考えこんでから、「ないとは言えない。私はないと思うが」と答えた。
 そのきわめて興味深い夕ベのひとときを過ごすうちに、不可思議な体験があまりにも多すぎて、プハリックはほとんど不感症に近くなってきていることがわかった。他界した超能力者ピーター・ハーコスを対象におこなったテレパシーのメカニズムに関する徹底的な実験について論ずるあいだにも、じつに奇怪なエピソードが幾度も話題にのぼってはすぐに消えるのだ。
 プハリックの書いた『ユリ』の影響力が低かったのは、信じがたい出来事の紹介があまりにも多すぎたためではないか、と私は批評してみた。ところがプハリックは、じつはあれでも、あまりに信じがたいエピソードはいくつか削ってあるのだと力説した。読者に負担をかけすぎて、信じてもらえなくなる危険性に気づいていたからだという。
 プハリックは一例を挙げてみせた。プハリックの自宅のあるニューヨーク州オシニングから二〇〇マイルも離れた建物の寝室で、男女が性交中のことだった。ノックがあったので男がドアを開けると、ユリ・ゲラーが立っていて、手に持った大きな石塊を差し出したというのだ。男が石を取るとゲラーは一言も口をきかずに立ち去 ってしまい、男は面食らってしまったという。
 じつはその石はプハリックのもので、貴重な考古学標本だった。だが、ゲラーはそのときオシニングにおり、二〇〇マイルかなたでドアを叩き、石を手渡したのは彼のドッペルゲンガー(分身)だった。
 さらに一九七三年一一月には、ゲラーはニューヨークの路上からオシニングのプハリック宅まで実際に“テレポート”したという。
 プハリックがこうした逸話を本に載せずにおいたのも、むべなるかなと思わざるをえなかった。
 私の著書『ミステリーズ』には、こう記してある。「プハリックはどうやら私の唱えた“ポルターガイスト無意識活動現象”説は不必要だと考えていたらしい。“九つの原理と力”が現実のもので、わが地球は何千年も宇宙人に観察されてきたという結論をはるか昔に出していたからだ。“九つの原理と力”がもう少し介入が必要だと感ずる時期に地球は達したと彼は信じている」。そして、プハリックとジョイス・ペトシェクの見解を引用したのちに、こう続けている。「私はこれがある点までは説得力を持つと思った。プハリックとペトシェク夫人が語った一部始終は完全な真実だという事実は歴然としている。だからといって、私は“九つの原理と力”が存在すると納得するだろうか。どう考えても、そんなことはありえない」
 私が彼に会ったころプハリックはすでに、“宇宙人”とのもうひとつの驚異的体験にかかわっていた。その一部始終はステュアート・ハルロイドの『地球上陸への序曲』という本に詳細に記されている。
『ユリ』に書かれたゲラーとの決別のあとまもなく、プハリックがフィリス・シュレマーという心霊能力者を通じて受けとる“ナイン”からのメッセージは、一段と多くなる。今度は“奇跡”はまったく抜きだった。少なくとも、フィリス・シュレマーのイヤリングが消え、数時間後に再出現するという出来事以上に派手なエピソードはなかった。プハリック、ジョン・ホイットモア卿なる英国人、そしてフィリス・シュレマーを加えた三人は、すでに“ナイン”のエネルギー・チャンネルなのだというご託宣を賜った。その任務は、エジプト、レバノンとシリアがイスラエルに侵攻するさい発生するはずの中東戦争を回避することだった。
 今回の“ナイン”のメッセンジャーは憑依状態のフィリス・シュレマーを通じてトム(アトムの略)と名乗った。三人は世界中を飛び回り、さまざまなホテルの部屋で世界の破滅回避を願って祈り、瞑想した。たとえばモスクワでの瞑想では、キューバの記者会見場でのヤセル・アラファト議長暗殺を回避したらしい。
 だが、“ナイン”の真の目的は大規模なUFO地球着陸を宣言するためだった。これは九日間つづき、宇宙人が存在するという真実をついに地球人類に知らしめることになるはずだった。
 トムによれば、“ナイン”の目的は「惑星地球」に意識変容をもたらすことだった。人類の意識が宇宙の障害となってしまっているというのである。「この惑星は本来(人類における)霊的世界と物理的世界のバランスを教えるために創造された。だが、この物理的世界で人類は物質界にとらわれてしまったため、この惑星の束縛をのがれ、それ以上進化できなくなってしまった……この惑星における意識のレベルを高めることこそが重要なのだ」
 もちろんプハリックを、おそらくは心霊能力者の無意識を根源とする“霊のメッセージ”に惑わされて道を誤った、だまされやすい夢想家として片づけてしまうのは簡単だろう。しかし、彼の体験の全体像を視野に入れると、そう乙に構えてもいられなくなる。“ナイン”からの最初のメッセージはヴィノド博士を通じ、一九五二年にやってきた。一九五六年にチャールズ・ラフェッド博士に出会ったおりには、それを裏書きするように“ナイン”からのさらなるメッセージが手渡されている。これはつまり、“ナイン”がヴィノド博士の無意識の産物ではないことを示していると見てまちがいないのではないか。
 だとすれば、テルアビブのホテルの一室でゲラーがトランス状態に陥っていたさい“ナイン”がふたたび話しだしたとき、プハリックが本物だと信じたのも理の当然ではないだろうか。その時点では疑念があったとしても、それにつづく“奇跡”で雲散霧消したのはまちがいない。街路の果てに浮かぶUFO、手も触れずに録音をはじめるテープレコーダー、眼前から消えるカセットテープ──こうした現象を目のあたりにすれば、誰でも現実に存在する力に直面していると思いこむのもむりはない。
 ここで、一九七四年に『ユリ』を読み、その一年後に拙著『ゲラー現象』を書いた時点とは、私自身の姿勢に変化が起きていることを認めておかなくてはならない。当時の私は、“ポルターガイスト”現象とは十代の少年少女による一種の無意識的“サイコキネシス”(念力による物体移動)にまちがいないと思いこんでいた。精神は、みずからがコントロール不可能な、無意識レベルの驚異的な力に溢れていると信じて疑わなかった。ゲラーとプハリックが同席しているさいに起きた物質化現象は、私には説明困難だった。二人ともティーンエイジャーではない。だがそれでも、論理的な説明はそれしかないと思えたのだ。
 五年後の一九八〇年代はじめ、私はポルターガイストに関する執筆の依頼を受けて調査を始めたのだが、手はじめとして、長期間にわたって激しいポルターガイスト現象がつづくポンテクラフトのある人家を訪れた。われながら困ったことに、まもなく私は、ポルターガイストとは姿なき霊が精神的に不安定な人々のエネルギーを利用して起きる現象だと信じるしかなくなっていた。
 また、“霊憑依”を一種の中世的な迷信だという説明では片づけられないと思いはじめてもいた。グロフがフローラの例を話したとき、“集合無意識の元型”による憑依の例ではありえないと思ったのもそのためだ。フローラに憑いた“霊”がサタンだとも、悪鬼の一つだとさえ思えないが、極端に不快な肉体のない姿なき存在であるのはまちがいない。
 その結果、本書のための調査の途中で『ユリ──ユリ・ゲラーの謎の日記』を再読する段になって、自分の姿勢に変化が起きているのに気づいたのである。その時点ではすでにジョン・マックの『アブダクション』、またバッド・ホプキンズの『失われた時間』や『イントゥルーダー』、それにデヴィッド・ジェイコブズの『シークレット・ライフ』を読み終えており、これが最初思ったよりはるかに異様で複雑な問題だとわかっていた。ポルターガイスト現象の源はゲラーやプハリックたち自身だとする私の説に二人が同意しなかったわけが、いまでは理解できる。ひどく不見識な人物と思いはしたが、そう口に出すには教養がありすぎたのだ。二人はテープが消え、コンセントがはじけ飛び、車のエンジンが停止してしまうのを目のあたりにした。自分たちの念力などではなく、なんらかの超自然的な力に直面していることが、二人にはわかっていたのだ。ユリがひったくった最初のテープがその手の中から消えたとき、ユリがこうした力の道具として──ちょうどジョン・マックのキャサリンが夜半すぎにボストン郊外 周辺をドライブしたいという妙な欲求を感じたときのように──使われているのだと二人ともわかっていたのだ。明らかに、見えざる存在が穏やかならざる力を有している兆候である……。
 だが、この存在とは何者なのだろうか? プハリックが信じるような宇宙から飛来した知的生命体であり、われわれの惑星を何千年間も見守り、一度ならず人類の歴史に干渉してきたのだろうか? それとも大半のポルターガイストのように、霊界の非行少年少女の時間つぶしでしかないのだろうか?




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