第三部:戦争を望んでた「白い」悪魔

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投稿者 転載 日時 2001 年 4 月 05 日 15:31:17:

(その31)第三部のはしがき

 「日本人は教育程度が極めて高いと聞いていたんですがね。アメリカが国際紛争に介入する時は、必ず背後に大企業
の利益がからんでいるという史実を、日本人は知らないのですか」(『週刊ポスト』91・5・24)

 すでに紹介ずみの人物だが、元米司法長官で弁護士のラムゼイ・クラーク博士は、インタヴュアー松原久子の「日本
には米政府の唱えた“正義の戦争論”を真面目に信じている人も多い」という実状を踏まえた質問に対して、このよう
に答えている。

 だが、「大企業」の具体的な動きについて、どれほどの報道がなされただろうか。 「石油マフィア」「軍需産業」
「軍産複合体」……言葉は時々現われたが、およそ具体的ではなかった。『大統領の戦争』とか『司令官たち』などと
いう題名の内容も、やはり非常に表面的だ。これらの著名な政治記者たちが書いた本には、なぜか、人前に出るのが商
売の政治家や軍人だけしか登場してこない。スポンサーの財界人は、一体、どこに消えたのであろうか。

 たとえば、ラルフ・ネーダーが序文をよせ、一九七〇年代のアメリカでベストセラーともなった 『アメリカ株式会
社』(『AMERICA,INC』)という大著の副題は、「合衆国を所有し操縦するもの」( WHO OWNS AND OPERATES
THE UNITED STATES)であった。アメリカは日本より複雑に発達した資本主義国である。『アメリカ現代史』では、
その現状を「『安全保障国家』体制」と名づけてデータを挙げ、国防予算がGNPの七%(日本は一%)という異常な
突出ぶりを示すことと、多国籍企業の強大化傾向とを、最近の特徴として指摘している。端的にいえばアメリカ国民
は、国家予算の六割を超えるという古今東西に例を絶する軍事予算によって、多国籍化した超巨大企業の世界支配を支
えてきたのだ。

 背後の財界、特に政権党主流の金脈の思惑を抜きにして、国際的なアメリカ政治・軍事を描き切ろうとするのは、い
ささか無理なような気がする。政治家という目先の役者の演技に目を奪われるの愚を犯し、意図的リークに操られ、結
局は大衆を欺瞞する役割を果たしてしまうのではないだろうか。ニクソンを辞任に追い込んだウォーターゲート事件で
は、確かに、カール・バーンスタインとボブ・ウッドワードのコンビが決定的な暴露による言論の力を発揮した。だ
が、あの事件の関係者は少数だったし、事件内容も湾岸戦争に較べれば桁違いに小さい。湾岸戦争は、従来のリーク取
材だけでは描き切れない巨大なブラックホールをはらんでいるのだ。

 湾岸戦争中とその直後の時期、私は、すでに紹介したCIA密約文書が、大手マスコミ企業の報道にまったく登場し
ないのに呆れ果てていた。ところが、その問題を追及するために「積ん読」状態だったCIA関係書を引っ張り出し、
パラパラめくっているうちに、奇妙な題名の本があるのに気づいた。『ベクテルの秘密ファイル』なのだが、副題が
「CIA・原子力・ホワイトハウス」となっている。私は、ここ数年、いわゆる秘密情報機関に関心を抱いている。と
りあえず目につく資料を集めていたので、広告を見た瞬間に「CIA」のキーワードだけで買うことを決め、注文した
のであろう。再び「ベクテル」という文字を見た途端、「ウヌッ」と脳裏にひらめくものがあった。どこかで最近見か
けた名前なのだ。急いでページをめくると、「全世界の石油精製プラントのほとんどを建設したのがベクテル社」とい
う一行が目に飛び込んできた。

「これだっ」と「石油関係」新聞記事の手製ファイルをめくると、やはり、クウェイト復興特需の記事中にベクテルの
名前があった。湾岸戦争と見事に関係がある。しかも、レーガン政権の金脈であり、三人も閣僚を送り込んでいた巨大
企業だとされている。同じ共和党のブッシュとはどういう関係なのだろうか。これは大変な発見だ。それから丸々四ヵ
月ほど、私はつかれたようにベクテルに関する資料を集め、分析し、組み立て続けた。

 ベクテルがすべてを操っている黒幕だとまで断言するつもりはない。だが、巨大な黒幕の重要な一員であることは間
違いないだろう。以下は、ベクテルを足掛りとする一つのアメリカ研究、ケース・スタディと考えていただきたい。現
代の「アメリカ帝国主義」という怪物は、この第三部で描いた実例を数倍、数十倍したような暗闇の巨大企業、国際コ
ンツェルンの不気味な集合体なのではないだろうか、というのが私の実感である。

 第九章は、そんな怪物が握る「鬼に金棒」のような軍隊の位置づけである。  次の第六章は、文中にも記したが、
『噂の真相』(91・6)で「取り急ぎ情報ギャップへの恐怖を訴え」たものであり、それに若干筆を加えた。





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