ピンク.トライアングルの男たち. 1939年-1945年 序文。

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投稿者 桐島 日時 2001 年 6 月 13 日 04:41:12:

1939年の「レーム粛清」後、ナチス.ドイツ国家では同性愛取締法が強化された。現行の刑法に新たに第175a条が追加され、判決は質量ともに従来よりいちだんと厳しいものになった。数万人、いや、数十万人の同性愛者がナチ政権下の1945年までに強制収容所に送られ、ピンク.トライアングルの印をつけねばならなかった。彼らは、皆ナチ親衛隊(以下、SSと略す)の手先の恣意に無慈悲に引き渡され、拷問、虐待に身を晒し、死によってようやく解放されるという運命をたどった。今日に至るまで、さまざまなナチ強制収容所(以下、KZ/カーツェット と記す)に囚われたピンク.トライアングルの男性はどのくらいの人数にのぼったのか、確実なことはわからない。この部類の因人に関しては、どこでも正確な記録を残していなかったからだ。有名なキンゼイは、人口の4ー5%は同性愛指向であると推測した。したがって、当時のドイツには約二百万の同性愛者が存在したことになり、二、三十万人がピンクトライアングルの印をつけKZに囚われていたことは、ほぼ確実である。
この印をつけていた者のすべてが同性愛者であったわけではない。気に入らない人間を破滅させようと思ったら、たとえば結婚していないとか、子供がいないとか、なんらかの密告一つで十分だった。「第175a条」該当者らしいという疑いだけでも、保護拘禁の十分な理由となった。ピンク.トライアングルをつけてKZの悪魔の挽臼に陥った者が、生きてここを出られることはきわめてまれであった。
殉難を生き延びることができたピンク.トライアングルの男たちがどのくらいの人数にのぼるのかは、いまだに知られぬままである...........中略。
著者は本書に描かれた虐待を自ら体験した者ではないが、ピンク.トライアングルをつけた数少ない生き残りであるひとりの男が明らかにしたことがらを、そのまま文章に再現すべく力を尽くした。信じられぬほどの苛め、拷問、凶行が行われた.................中略。
あの「支配民族ドイツ人」の犠牲となったこの部類の人々に対し、いまだになにひとつ償いをしていないことにも、本来恥入らねばならないのだ。ピンク.トライアングルの男たちが受けた苦難については、現在までほとんど知られていないが、これは実に奇妙なことである。多くの書物には必ずユダヤ人や「政治因」、そしてジプシー「シンテイ.ロマ」の紛れもなく厳しい運命についての記述があるが、ピンク.トライアングルの男たちについて言及されることはなく、たとえあったにせよ、ほんの一言、付随的に記されているにすぎない。しかし、彼らもユダヤ人同様ナチ政権の残忍な暴力に身を苛まれ、忍苦しなければならなかったのだ。そしてKZに送られたその時点ですでに「くたばる」運命に定められていたのである。ヒューマニズムの観点から、そしてまた、わが民族にニ度とふたたび同様の蛮行が行われないために、著者はその情報提供者の受けたあらゆる苦難、体験、感情をそのまま書き下ろすべく試みた。すべてが包み隠さず語られ、誇張も美化もない。本書が、その率直でありのままの記述により、第三帝国の当時の官憲およびナチ.ドイツの警察組織を支配したゲシュタポおよびSSの残忍な手口に対する厳しい告発とならんことを望む。さらに、ひとつの民族、ひとつの国家、あるいはひとつの大陸のなかで、長期にわたり人間どうしが共存していくには公明正大と寛容性とが不可欠である。
このことを今もって理解していない人びと、そしてまた権威主義的支配体制の観念といまだに訣別できない人々に、本書が再考を促すものとなることを願っている。
あらゆる罪からまぬがれている者が、最初の石を投げるがよい.........。

以上序文「ピンク.トライアングルの男たち 1939-1945」
 ハインツ.ヘーガー著 より。



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