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投稿者 付箋 日時 2001 年 9 月 27 日 20:56:45:

回答先: アメリカの巨大軍需産業」広瀬隆著(2001・4・22刊)の[序章・・・・不思議の国アメリカ]より抜粋。 投稿者 付箋 日時 2001 年 9 月 26 日 21:43:23:

 今回のテロを世界の分水嶺にしてはいけない  2001・9・26
 「私は長じてからのほとんどをテロリズムとの戦いに費やしてきた」という元イスラエル首相のビンヤミン・ネタニヤフ氏はまたその作業の中で、ブラック・セプテンバー・グループによる1976年6月27日のウガンダのエンテベ空港のエール・フランス機ハイジャック事件で、イスラエル特殊部隊の指揮をとっていたヨナタン・ネタニヤフ氏という実兄を失われたかたでもある。
 彼は『テロリズムとはこう戦え』のなかで「テロリズムの矛盾」と題してテロリズムについてこう書いている。

 皮肉なことに、テロリズムのこの無差別な性格そのものが、民主主義社会でテロリズムを崩壊させる原因ともなる。社会に恐怖を生んでも、それと同じ程度に、あるいはそれ以上に一般市民の嫌悪や怒りを招くために、効果がなくなってしまうからだ。
 テロリストが目的達成のためにとる非人間的な手段は、まさにその非人間的な性質によって、目的そのものを道義的に支持できないものにしている。彼らの言う目的には、かならず自由とか人権を獲得する戦いという言葉が含まれているが、そのような主張と、それを獲得するための手段とは、はなから矛盾しているのである。
 実際、彼らのとる手段は全体主義者の血筋を示すものであって、その血はあらゆるテロリスト集団のなかを流れている。爆弾をしかけて幼い子供たちを吹き飛ばす者は、自由など何とも思っていないし、人権を踏みにじる者は人権を守ることには無関心だ。テロリストたちの目的が、彼らのとる手段を正当化しないだけではない。彼らの選ぶ手段そのものが、彼らの目的は実は何なのかをはっきりと物語っている。テロリストは自由の戦士どころか、専制政治の露払いなのである。
 たとえば、第二次世界大戦中のフランスのレジスタンスは、ドイツの女性や子供たちを組織的に殺すことはしなかった。占領下のフランスでは、そういうことは容易にできたにもかかわらずである。だがカンボジアのクメール・ルージュは、アメリカに支援された占領軍であると彼らがみなすものとの戦いのなかで、そのような自制は見せなかった。だからこそフランスは現在は民主国であり、カンボジアは、テロリストが実権を握って第二次大戦以降、人間に対するもっとも残虐な犯罪をおこなった数多くの独裁政体の一つというにすぎなかったのである。テロリストは暴力による強制的な政体を獲得するために、暴力による強制という手法を使う。彼らは根本的に非民主的であり、自由社会が保証する社会的多元性と自由を利用して、まさにその社会的多元性と自由を破壊しようとする。

 このテロリズムとの戦いには、見逃してはならない重要な問題がある。それは個人の自由とプライバシーを「安全」とひきかえに規制する、という問題である。
 9月11日にWTCとペンタゴンの凄惨なテロ事件が起きたアメリカは、世界の中では相対的に、個人の自由とプライバシーを重要なものと考えている国であった。しかしそのアメリカが今回のテロで今後「安全」とひきかえに、それらを----個人の自由とプライバシーを規制してもやむを得ない、ということにする国に変質するおそれがあると観測する識者もいる。
 アメリカばかりではない。既にイギリスでは以下のような対策を取り始めようともしている。もっとも、これは「渡りに船」的な便乗気味のものとの謗りを免れないものでもあるが。というのはイギリスは次のような問題を最近起こしている国でもあるからだ。

 「あなたのパソコンが危ない〜常時接続時代に個人情報を守る法」

 ともあれ、イギリスの対策の一つというのはこうである。・・・

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【ロンドン24日共同】
ブランケット英内相は23日、テロ対策のため全英国民にIDカード(身分証明書)所持を義務付けることなどを定めた新しいテロ防止法案を国会に提出する方針を明らかにした。24日付英各紙によると、法案にはこのほか(1)警察の逮捕権を拡大し、テロ情報を知る疑いのある人物を尋問のためだけに身柄拘束できるようにする(2)電子メール監視権(3)テロ容疑者らの銀行口座記録の強制開示(4)秘密情報機関による電話盗聴記録を公判で証拠採用できるようにする―などが盛り込まれる見通し。
逮捕権拡大などは、昨年、英国内法として発効した欧州人権規約と抵触する恐れがあるため、人権法規の改正も視野に置いているという。「市民の自由を害しないように」との慎重論もあるが、内相は「警察国家にならないためにも、人権とテロ対策の新しい調和を見いだす必要がある」と主張している。ブレア首相も法案への支持獲得のため議会対策を展開中。伝統的に当局による規制を嫌う英国でも、最新の世論調査で86%が何らかのIDカード所持に賛成している。
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 日本の場合は、もうどうしようもない腐臭が漂っている。主に第9条の憲法改正をもくろむ連中が、今とばかりに完全に「渡りに船」的に今回のアメリカで起きたテロ事件を利用している。まさにハイエナのような者達だ。
 その日本は ”全体主義者が自由を旗じるしにしていることで、辛うじて自由が残存する、実に皮肉に満ちたソフトなファシスト国家になっていると言っていい。”[無謀な挑戦・藤原肇著] 国なのだが、テロリズムの対策は一国を警察国家化する危険を持っている。同じくその[無謀な挑戦・藤原肇著]から。

”歴史の教訓は、警察が情報を握ることによって、支配権力にとって鉄壁といえる堅固な立場を確立していくし、警察が国家権力を握ったときに強烈な全体主義国家が成立することを教えている。”

 再びネタニヤフ氏の言葉を引用してみよう。

  二種類の対テロ戦略

 前章で述べたように、現代の民主国で国内テロを実行する機会が理論的にはごく限られたものだとしても、そこには一つの落とし穴がある。主要な民主国には、テロと有効に戦える優れた能力を持っているにもかかわらず、そうすることへのためらいがあるということだ。その理由を理解するためには、国内テロと戦うための戦略には二種類あることを知らなければならない。
 一つは消極的保安体制で、攻撃意図を抑止し、実際の攻撃の効果を弱めるために、テロリストの攻撃目標となりそうなものの「守りを堅める」方法だ。この対策には、警備員や公安部門の秘密捜査員の増員、政府施設や公共輸送機関など、攻撃目標になりやすい場所に出入りする個人の入念な監視、現場の警備装置の強化、安全に対する市民の意識の向上などがある。イスラエルでは成人国民の多くが陸軍戦闘部隊の予備兵になっているので、小型の武器を所持している者も多く、それがテロ攻撃をより実行しにくいものにしている。このような方法は比較的目立たないし、一般市民の市民的自由にほとんど影響を与えないという利点がある。彼らは、攻撃される場合に備えて少し用心を強くしているにすぎないからだ。
 だが消極的なテロ対策は、イスラエルのような小さな国にはある程度有効かもしれないが、アメリカのような広大な国には限られた効果しかない。なにしろ、五十州全土に数千カ所の空港と、何万という連邦政府の建物が散らばっているところだ。国家権力の象徴は膨大な規模で拡散されていて、人目を引く華々しい被害を与えうる場所は無限に近い。
 ところが、独裁体制の国とちがって保安当局の人員は非常に数が限られていて、FBIの職員はせいぜい一万一〇〇〇人くらいだ。オクラホマシティの連邦政府ビル爆破でわかったように、テロリストは無数の攻撃目標のうちどれでも襲うことができるわけで、政府がそのような場所をすべて守れるという希望はまったくないのである。このような広大で複雑な社会をテロリズムから守るためには------このことは、イギリス、フランス、ドイツなど、ほかの主要な民主国についても言えることだが-----テロに対して積極的な姿勢をとる以外に、ほとんど道はない。法執行機関が持っている圧倒的な技術力、兵坊力の強みを、積極的に利用することだ。つまり、テロ活動が生まれそうな「水たまり」を積極的に特定し、暴力を容認する組織や個人の活動を監視し、彼らの性格、目標、攻撃能力を分析して情報をプールし、テロ計画の存在が明らかになったら、それを未然に防ぐための監視、捜索、逮捕、尋問、拘留、起訴に踏み切ることだ。
 こういう積極的な対テロ行動にあえば、秘密活動技術の専門的な訓練を受けていないアマチュアの国内テロリストなら、まったく勝ち目はない。だがこのような積極的対テロ行動の問題点は、消極的な対策とちがって、監視される個人の生活にかなり侵入してしまう点だ。西欧の民主国は、個人のプライバシーを道徳的にも法的にも尊重しなければならないという意識が身に染みついているために、当然ながら、自らが嫌悪する専制国家のやり口を思わせるような行動に出ることをためらうのである。
 事実、国内テロリストに対して民主国がとりうる積極的対策のどれをとっても、誰かが自分の思ったことを発言し、集会を開き、宗教行為をする自由をある程度、制限することになる。国内テロ組織の普段の活動を考えてみればいい。このような集団はかならず自分たちの目的のために煽動やアジビラの発行、洗脳に従事し、集まって計画を練り、実行のために準備をすることがわかる。アメリカ各地の中絶手術をおこなう診療所の爆破や、イスラム教徒の聖戦「ジハド」の場合でもわかるように、煽動は宗教的、あるいは準宗教的な性格を帯びている場合もある。適切に監視していれば、まさしくこのような種類の言論、集会、宗教的発言こそが、惨事を未然に防ぐ手がかりを法執行機関に与えてくれるものなのだ。

  市民の自由とのジレンマ

 こうして、高まるテロリズムの波と戦わなければならない自由社会の政府は、民主主義のジレンマに直面することになる。もし利用できる手段を利用してテロリズムと戦わなければ、国民を危険にさらすことになる。だがもしそういうものを利用すれば、彼らが守るべき責務のある自由そのものを危うくするようにも思われる。アメリカは、そのような自由が世界のどこよりも律儀に守られている国だ。言論や信教の自由は、何ものも侵すことのできない「絶対的な」権利とみなされるべきだと主張する人々さえいる。
 最高裁判所判事オリヴァー・ウエンデル・ホームズのような市民的自由のもっとも熱心な擁護者でさえ、「混雑した劇場内で『火事だ』と叫ぶ」ような種類の言論の自由は制限されなければならないことは認めているが、アメリカの法はそれほどまで、そういった例外規定を設けることに頑なに抵抗してきた。言論の自由への関心がどれだけ強いかを痛感させられたのは、最近ある公安関係の専門家と話したおり、監視活動を管轄する司法長官のガイドラインによってFBIがどんな足かせをはめられているかを聞いたときだった。法執行機関の職員は、たとえテロ活動の恐れがあるかどうかを調べるためでも、武装組織の機関紙を公金で買うこともできない。自費で買った場合でも、その切り抜きを役所の建物内に置いておくことは禁じられている。なぜなら、そのような原始的な情報収集でさえ、対象となる組織の自由を「侵害」するとみなされるからだ。
 ヴェトナム戦争時代の連邦政府の行動に対する反省として設けられたこのガイドラインは、FBIが過去におこなわれた犯罪もしくは現在計画中の犯罪の「捜査」をすることは許可している。だが長期的に見れば、個々の犯罪捜査で明らかになるものは、アメリカ国内の過激派組織と政治的暴力のごく一部でしかない。総合しても、せいぜいが断片的な図の寄せ集めといったところだ。現在のFBIは、政治思想、煽動行為、下部構造、準軍事組織のジグソーパズルを組みあわせるのに必要な、もっとも基本的な情報活動をすることさえ許されていない。そのような情報を一つに集めれば、最悪のテロを起こす可能性のある源を突き止められるかもしれないのにである。


 アメリカのブッシュ政権が出来てから、アメリカは世界の中で孤立する「グローバル政策」をとり続けた。MD、ICBT、京都議定書等々における「ユニラテラリズム」といわれている諸政策である。実はこの「ユニラテラリズム」は、内実はアメリカの巨大私企業の企業戦略に過ぎないのだが、それはともあれ、欧州諸国からも批判が相次ぐような事態に至っていた。また、ユーゴ空爆のことでもNATO加盟諸国から「空爆は必要なかった」という反省が出始めていたり、何か世界が変わる、そんな淡い期待を抱かせもする状況があった。
 それを9月11日のテロが吹き飛ばしてしまった。

 今回のテロを-----如何なる大戦にも向かわせないようにすることは当然として----世界の国々の警察国家化、あるいは軍事政策国家化の分水嶺にしてはいけない。人類の叡智で何とか良い方へ乗り越えなければならない。


 最後に、[アメリカの巨大軍需産業・広瀬隆著]からの一文を抜粋しておきたい。
 僕は今回のアメリカで起きた凄惨なテロを肯定するために、この本から抜粋をするのではない。(それはこの著者にしろ同じことだろう)。
 また、僕は今回のテロの首謀者についての報道なども、鵜呑みにできない者である。

 ともあれ僕はあらゆるテロに対して、次の元赤軍派の死刑囚の坂口氏の自省の言を思う。

「手段が悪いのは目的が悪いからだ、という言葉もあります」
 ここにまたブッシュ大統領への一通の手紙-----WTCのテロで死亡した一人の被害者の家族の手紙がある。

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 Copy of letter to White House:

 Dear President Bush:

Our son is one of the victims of Tuesday's attack on the World Trade Center.
We read about your response in the last few days and about the resolutions
from both Houses, giving you undefined power to respond to the terror
attacks. Your response to this attach does not make us feel better about our
son's death. It makes us feel worse. It makes us feel that our government is
using our son's memory as a justification to cause suffering for other sons
and parents in other lands. It is not the first time that a person in your
position has been given unlimited power and came to regret it. This is not
the time for empty gestures to make us feel better. It is not the time to
act like bullies. We urge you to think about how our government can develop
peaceful, rational solutions to terrorism, solutions that do not sink us to
the inhuman level of terrorists. Sincerely,

Phyllis and Orlando Rodriguez

親愛なるブッシュ大統領

 私たちは、火曜日のワールドトレードセンターへの攻撃で息子を失いました。この数日間、あなたの事件への対応や、上下院がテロ攻撃に対処するため無制限の権力をあなたに与えるという決議について、紙面で読んでいます。

 大統領のこの事件に対する対応は、息子の死に対する私たちの気持ちを和らげてくれません。それどころか、ますます気分が重く暗くなっています。

 我が政府は、他国の息子たちやその親たちを苦しめる理由として、私たちの息子の思い出を使っているように感じられます。あなたの立場にいる人が、無制限の権力を与えられ、それを後に後悔するというのは、今回が初めではないことでしょう。

 私たちの気を和らげようと、からっぽのジェスチャーをしている時ではありません。いじめっ子のように振る舞っている場合ではないのです。

 我が国の政府が、テロリズムに対する平和的で理性的な解決策をどうやったら作り出すことができるのか、大統領にぜひ考えていただきたいと思います。テロリストの非人間的なレベルに私たちを落とす解決策ではなく−−−。

                                  敬具

  和訳=前北美弥子(コピーライター/エコリレーション)
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 この手紙の最後の方、
 >テロリストの非人間的なレベルに私たちを落とす解決策ではなく−−−。
 これはパレスチナの普通の人々の気持ちでもあると考える。


 ■「アメリカの巨大軍需産業」広瀬隆著(2001・4・22刊)の[序章・・・・不思議の国アメリカ]より抜粋。

 新時代・二一世紀の扉を開くまでに、アメリカ合衆国の技術はあらゆる分野で世界をリードし、地球上の富の多くが北米大陸に集中した。一方で、アメリカの軍隊は世界中に展開し、アメリカの軍需産業は世界中に兵器を輸出してきた。ところが一九八九年一一月にベルリンの壁が崩され、東西対立という地球規模のとてつもなく巨大な障害が取り除かれると、雪崩のように軍需産業が崩壊しはじめた。
 その反動によって、世界の主だった軍需産業が大統合に向かいながら、その意味はほとんど専門家から提示されず、体系的な分析資料も出されないまま二〇世紀を終えてしまった。
 軍事専門家と紛争現地に入ったジャーナリストたちは、これら軍需産業の兵器と武器にはほとんど触れず、「憎悪の犯罪(ヘイト・クライム)が世界中に氾濫して、民族の対立意識が燃えあがり、各地に紛争が起こっている」という論調の言葉をひたすら流布し続けた。そのため、それが本当の原因と錯覚した人間が、今まで自分が抱いてもいなかったほかの民族に対する憎しみをつのらせ、武器を執って次々と紛争に走った。
 紛争とは、ボクシングやレスリングのような素手による殴り合いではない。アメリカ・イギリス・フランスの部隊がイラク全土を攻撃した九一年の湾岸戦争では、戦闘機と爆撃機が住民を襲い、あらゆる兵器が見本市の様相を呈して、砲弾とミサイルが飛び交った。
 ユーゴスラビアで起こった殺し合いは、初めは拳銃とライフルからはじまったのだが、ついには九九年三月に、NATO(北大西洋条約機構)軍による一方的な爆撃開始という凄惨な戦争へと導かれ、大量の巡航ミサイルが夜空を焼き焦がした。
 二〇〇〇年九月二八日には、イスラエルで右派リクードのアリエル・シャロン党首が東エルサレム旧市街のイスラム聖地「神殿の丘」を強行訪問して挑発し、パレスチナ人の怒りが爆発した。イスラエル治安部隊がこのパレスチナ人に発砲して激しい対立が再燃し、中東和平が崩壊した。以後一ヶ月で死者一二六人を出し、そこに数々のアメリカ製の兵器が使用された。翌二〇〇一年三月に首相となったシャロンは元国防大臣で、兵器商マーカス・カッツをスポンサーとする国際武器取引きの黒幕であった。八二年にはホワイトハウスのイラン・コントラ武器密輸事件の裏で糸を引き、世界最大の兵器商アドナン・カショーギの一派として立ち働いた。
 シャロンの聖地訪問は、パレスチナ人にとっては侮辱以上に、生活の終りを意味した。エルサレム旧市街は、『アリババと四〇人の盗賊』を連想させる愉快な町で、アラブ人の活気あるバザールがにぎわい、一帯は人びとの住宅地である。昔の城壁の内部が迷路のように入り組み、真夏でも冷たい空気に包まれ、心地よい石造りの居住地だ。子供たちが遊び、旅行客を楽しませてきた。そのエルサレムにイスラエルが侵入し、大昔の「嘆きの壁」をユダヤ人の聖地と主張して、アラブ人を次々と暴力で追い出した。それに追い打ちをかけるシャロンの行為は、「パレスチナ人はここには住んではならない」という宣言であった。国連の人権高等弁務官メアリー・ロビンソンが、「イスラエル占領地で深刻な人権侵害がおこなわれ、イスラエルが入植地を拡大している。これは理解できない。パレスチナ人は毎日のように辱められ、もはや我慢できない状態になっている」と、記者会見でイスラエルを激しく非難したが、その通りであった。彼女は、民間人に多数の死傷者を出したNATOのユーゴ攻撃も批判してきた。
 エルサレム問題の本質は、宗教ではない。はるか昔から、エルサレムはイスラム教徒とキリスト教徒とユダヤ教徒が混在した町である。第二次世界大戦後のヨーロッパ人とアメリカ人が、自分たちの犯した非道なユダヤ人迫害という罪の代償として、無責任にもアラブ人の居住区を新しいユダヤ人の国と決めたため、アラブ人が道理もなく追い出されたことが紛争の発端であった。
 シャロンによる紛争からほぼ一ヶ月後の一一月六日、現地エルサレムの新聞は、アメリカのロッキード・マーティンがイスラエルの軍需産業数社と二億ドルの取引きに署名したと報じた。イスラエル空軍がロッキード・マーティンのF16ジェット戦闘機を購入した見返りの投資であった。「ロッキードのジェットにイスラエルの技術が組み込まれることは、全世界にとって価値あることだ。イスラエル空軍がF16の購入機数を増やせば、投資額は一五億ドルに増える可能性がある。わが社は、多年にわたって、イスラエル防衛産業の主要な戦略パートナーとしてやってきた」との談話を、ロッキード・マーティンは発表した。
 中東の紛争は泥沼に引き戻され、イスラエル人は無防備のパレスチナ人に向かって銃を発射し続けた。紛争の渦中に、"世界最大の軍需産業"ロッキード・マーティンは、なぜイスラエルの軍需産業数社に対して、莫大な資金援助の契約に署名したのか。ピストルやライフル、マシーンガン、カービン銃、肩にかついで発射できるミサイルなど、こうした殺傷能力のある武器は、どこから紛争の現地に供給されてきたのか。
 コルト・インダストリーズという会社は、「コルト45」という六連発の拳銃が活躍した大昔のハリウッド西部劇の世界で、人びとの記憶に懐かしく思い出される。ウィンチェスター銃やアンドレミントン銃も同様である。スミス&ウェッソンは、ハードボイルド小説にしばしば登場するので、かなりの人に知られている。ところがアメリカのアライアント・テクシステムズという会社は、ほとんど名前を知られていない。
 これら小火器メーカーが拳銃とライフルを製造し、危険物を戦場に送り込んできた。それを裏で仲介していると批判を受けた全米ライフル協会は、銃砲の規制で苦しい立場に追い込まれると、「銃は他人を殺傷するためのものではない。銃は暴力から身を守るためにある」という正義のための護身論を前面に打ち出し、4Hクラブ(農村青少年の活動組織)やボーイスカウトを利用しながら、日常的な射撃訓練やコンテストを若者に対しておこない、一方では銃砲と弾薬を全世界の紛争地に広めたのだ。
 しかし一体誰がそのビジネスを、具体的に実行したのか。闇の男たちを想像すると、テロリストやガンマニアや麻薬の売人連中だと憶測するのが、普通である。とんでもないことだ。
(中略)
 しかし彼は、聡明で一徹な軍人であっただけなのか。銃器を氾濫させるコルト・インダストリーズの重役名簿に残っている、元将軍マシュー・リッジウェイの名前を歴史から消すことはできない。GHQ総司令官退任後の五一年から五五年まで、レミントン銃を製造するレミントン・ランド会長であったダグラス・マッカーサーの名前を消すことができないように。
 ペンタゴンは、銃砲からミサイル、軍艦、戦闘機に至るまで、武器と兵器の国内製造を推進しながら、同時にそれを紛争地に送りこむマシーンとして機能する巨大組織である。その資金を受けるのが、全米の上院議員と下院議員とホワイトハウス要人たちである。
 世界には難民があふれている。原因は地域紛争にある。そこには、洪水のように銃砲と弾丸が供給されてきた。どこからか。アメリカとヨーロッパの先進国からである。うちひしがれた難民に対する人道支援をおこなう輸送機も、同じ軍需メーカーの製品だ。おそろしいメカニズムと言わなければならない。アフリカなどの紛争国には、弾薬を量産する能力はない。民族問題を論ずる前に、なぜ、紛争の現地で使われた兵器と武器のブランド名を、先に見ないのか。国連はなぜ一度もそれを議論しないのか。以下は、戦争の道具が、アメリカの軍需産業によってどのように巧みに普及されてきたかを、世界的な事実に基づいて解析した報告である。



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