「めぐみさん」とマスコミ

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投稿者 付箋 日時 2001 年 10 月 13 日 20:44:05:

回答先: アメリカに国を売るか、北朝鮮に国を売るか。 投稿者 比ヤング 日時 2001 年 10 月 13 日 18:24:48:


 横田めぐみさんは北朝鮮に拉致されていない?
      矢部弘(フリーライター)[2000年6月]

 警察庁が97年末作成した『日本人拉致疑惑に関する動向表』と題した内部資料がある。この「動向表」は「横田めぐみさんが北朝鮮に拉致された」と初めて報道された97年2月3日以降、めぐみさんを中心に一連の拉致問題についての報道を時系列的にまとめたものである。
 この警察内部資料が注目を浴びるようになったのは、橋本政権の”密使”として97年2月18日から22日まで北朝鮮を訪問した「日本国際交流機構代表団」が、平壌で案内員に受けたとされる説明を記載していたためである。2月18日の欄にはこう記されている。
「北朝鮮側の案内人から、『横田めぐみはあのアパート付近に住んでいる』と説明を受けた」
 この証言は、横田めぐみさんが今も北朝鮮に抑留されている重要な証拠のひとつとなっている。
 ところが、北朝鮮を10回以上訪問したことのある全国紙の外信部記者によると、証言の信憑性はゼロに等しいという。
「これは明らかに公安の作文です。日本からの訪問者には、対外文化連絡協会という部署から派遣された案内人が常に2人あてられます。彼らは平壌外大日本語科卒の国家公務員で、しかもそのうちの1人は国家保衛部という情報機関の教育を受けた情報員です。つまり訪問者を監視する案内員は、互いの言動も監視しあっているわけです。仮に、横田めぐみさんの事情を知っていてそんな説明をしたとすれば、その案内人は国家機密の漏洩で即刻銃殺でしよう。もっとも横田めぐみという名前が北朝鮮で知られているとも思えませんがね」
 証言したとされる「日本国際交流機構代表団」の団長、本多一夫氏は児玉誉士夫氏に連なる民族派組織に属していたという人物で、訪朝の翌年に病死しているため、証言が事実であったかどうかは確認できない。しかも、この代表団が平壌を訪れたのは、横田めぐみさんの拉致疑惑が報道されてからわずか2週間後だった。情報が完全に統制された北朝鮮社会で、一介の案内人が国家機密に属する彼女の存在を、しかも報道から日の経たない内に、知りえたというのはありえないことだ。

 北朝鮮拉致説の証拠に疑問

 北朝鮮の犯行とされる日本人拉致事件は、7件10人に及ぷ。なかでも77年11月15日、新潟市在住の横田めぐみさん(当時13歳)が下校途中に失踪した事件は、拉致疑惑の日本人の中でも最年少だけに、北朝鮮の犯行の酷さを象徴する存在となっている。ところが、少女の失踪と北朝鮮との関連を断定するにはあまりにも客観的証拠は少ない。
 拉致事件は主に70年代後半に集中して起きているが、その多くは、韓国の情報機関「国家安全企画部」(現、国家情報院。以下、安企部と表示)の管理のもとにある、北朝鮮からの亡命工作員の証言に依拠しており、それ以外に客観的に判断し得る物的証拠や目撃証言はほとんど残されていない。
 例えば78年7月から8月にかけ、福井、新潟、鹿児島でたて続けに起きた3組のアベック失踪事件。後に北朝鮮による拉致だと判断された最大の根拠は、同年8月に富山で発生したアベック拉致未遂事件が起きていたためだった。このとき、犯人らが海岸に残した遺留品の猿轡などが、国内にあるものとは異なる特殊なものだったことから、北朝鮮工作員による犯行説が浮上した。だが、冨山県警がこの未遂事件を北朝鮮の犯行と断定できたわけではない。3組のアベック失跨事件にいたっては、北朝鮮の犯行を裏付ける状況証拠は皆無で、未遂事件から連想された「疑惑」という位置付けしか、できていないのが現実なのである。
 ただし、7件10人の中には、明らかに北朝鮮の犯行が明白なものが2件ある。実行犯が逮捕された、原赦昆さん(当時43歳)と久米裕さん(当時52歳)の事件だ。彼らが拉致されたのは当時、北朝鮮にとって、日本人旅券を取得する必要がどうしてもあったからだ。朴正照政権末期の混乱に乗じて政変を促すため、日本人に偽装させた工作員を韓国に潜入させる目的があった。この2人が選ばれたのは、身寄りがなく、戸籍偽造の発覚の恐れが少ないためであったと思われる。
 問題は残リ6件8人の拉致情報である。先の「動向表」に記された一文は、北朝鮮犯行説の証拠不足を補うため考案された苦肉の策、国交正常化に反対する者の意向を汲んだ作文だという見方は穿ちすぎだろうか。というのも、拉致についての情報は北朝鮮との国交正常化に進展があると必ず浮上してくるからだ。折しも、「動向表」をスクープとして取り上げた写真週刊誌『フラッシュ』(2000年3月28日号)にしてからが、北京での日朝正常化交渉を間近に控えてのことであった。警察庁がそこまでして、10件すべての拉致を北朝鮮と結びつける理由はなにか。拉致疑惑の原点といえる横田めぐみさんの報道内容を、今一度振り返ってみたい。

 信憑性を欠く元工作員の証言

 拉致疑惑問題の端緒となったのは、当時大阪朝日放送の記者だった石高健次氏が『現代コリア』(96年10月号)に寄せた一文であった。安企部と接触するうち知り合った、ある亡命工作員から少女拉致についての情報を聞かされ、その内容を同誌で明らかにしたものだ。
 この記事をもとに同編集部は独自調査を始め、少女を20年前に失踪した横田めぐみさんと判断したという。同誌関係者が翌97年1月、直ちにめぐみさんの両親に面会、インターネット上で,実名を明らかにしたことから、産経新聞と週刊誌『AERA』が取材を始めた。産経新聞の報道は、なぜか『AERA』の発売日と同日の2月3日であった。その日、当時の新進党・西村真悟代議士が、10日前に提出していた質問趣意書をもとに、横田めぐみさん失踪問題を国会で問い、その日を境に拉致疑惑問題が、燎原の火のごとく広がっていったのである。
 偶然が重なったというべきか。横田めぐみさんの実名報道が始まった2月3日、石高氏と親しいある民放局の取材陣が、ソウルで亡命工作員のインタビュー許可を得ていた。拉致問題とは関係のない取材であったが、なんとこの人物が、「私が北朝鮮で目撃した女性は、横田めぐみさんに問違いない」と話し始めたのだ。
 顔にモザイクのかかったままの姿で延言(テレビ朝日『ザ・スクープ』97年2月8日放映)したのは93年9月、韓国に亡命した元北朝鮮工作員、安明進。20年前に新潟で消えた少女の写真を見ての断言だった。その後、安は日本のマスコミに実名で登場するようになり、1年後には『北朝鮮拉致工作員』(徳間書店)を出版する。安が本などで繰り返し説明してきた拉致の要点は、以下のようなものだ。
「(工作船に乗り)新潟の海上から北朝鮮へ戻ろうとした時、海岸でずっとこちらを見ている女の子がいた。目撃されてしまったのでそのまま拉致した」
 新潟の海岸から不審船に乗って引き上げようとする北朝鮮工作員3人が少女を拉致した光景を、安はリアルに語ってみせた。「海岸で目撃されてしまった」ことが原因の、いわゆる偶発的な「遭遇拉致」であった。もっとも安はその場にはいなかった。
 実際に拉致を実行した彼の上司、丁(チョン)教官(安によると仮名)から拉致の経緯を聞いたという。その教官はある会合でひとりの女性を指して、安に「彼女はおれが新潟から連れてきたんだ」と語したとされる。
 ところがである。横田めぐみさんが「海岸で遭遇拉致された事実」は成り立たない。現場の状況が、それを真っ向から否定しているからだ。
 市立寄居中学校1年生だった横田めぐみさんは、バドミントンのクラブ活動を終え、夕方6時過ぎに中学校の校門を出た。11月の新潟は、夕方4時半には陽はすっかり日本海に沈み、6時ともなれば、あたりは真っ暗になる。証言の通り、暗闇の中でも工作員が「姿を目撃された」と考え、拉致したのであれば、めぐみさんは工作員と対面するほどの距離まで接近していたと考えられる。当然、めぐみさんは自宅に向かわず家を通りすぎ、暗闇の海を目指したことになる。ところが新潟県警の捜索では、めぐみさんの足取りは海岸ではなく、彼女の自宅に通じるT字路でぱったり跡絶えているのだ。
 T字路から海岸までは約350m、鬱蒼とした森の広がる護国神社、そして防砂林を越えねばならない。街灯はほとんどなく、人影などまったくない。大人でも1人で歩くのを躊躇する場所だ。よほど思いつめていないと---例えば入水自殺---そこを通り抜け、漆黒の日本海を見つめようとは思わないだろう。まして13歳の女の子が1人でだ。
 無論、めぐみさんはバドミントン大会を楽しみにしており、毎日練習に励んでいた。自殺など考えも及ばなかったろう。それに日銀新潟支店に勤務していた父、滋さんにきちんと躾られためぐみさんは、夜遊びなどする女の子でなかったのは言うまでもない。
 実は、97年の拉致疑惑報道まで、捜索にあたった新潟県警は横田めぐみさんの失踪を変質者による誘拐、との考えを有力視していた。事件発生当時、めぐみさん宅周辺で2度ほど目撃された不審者情報があったからだ。車に乗った男が、女性に向って「おいで、おいで」と手招きしていたというのだ。

 覆った安明進の証言内容

 こうした点から安証言に少なからぬ疑問が投げかけられていたが、疑惑報道から1年半を経た98年8月、安は証言内容を修正し始める。自著の出版記念も含め、来日した安は新潟の拉致現場を検証した結果、次の結論に達したという。
「丁教官の語では『海岸から脱出しようとしていたときにめぐみさんに姿を見られたので拉致した』とのことだったが、私たちの推測、すなわちめぐみさんは路上で拉致され、車で連れ去られたというのがほぼ確定になった」(『現代コリア』98年9月号)
 そこには、安が直接語った言葉として、次のような一文もある。
「安氏の想像では『(丁教官が)子供をつかまえてきた」とは言いにくかったので、『見られたのでしかたなく拉致した』と言った可能性もあるとのことだった」
 あまり注目されてこなかったが、これは安が主張してきた拉致内容を、自らが事実上否定したという点で極めて重要である。
 だが「遭遇拉致」証言が安本人に覆されても、マスコミは安証言の信憑性を問題ないとし、めぐみさんは「寄居の海岸での拉致」から、「日本語教師養成のため、下校途中、車で拉致された」と報道し始めた。
 考えてもみて欲しい。日本語教師養成のため、なぜ少女を拉致する必要があるのか。めぐみさんが失跨した70年代後半、朝鮮総連には、そうした人材はありあまるほどいただろう。いくら無謀な北朝鮮とはいえ、そうした行為についての損得勘定は働くはずだ。
 また路上、車で拉致したのであれば、安が繰り返し主張した「海岸での遭遇拉致」はいったいどう説明すればいいのか。今にいたるも、「めぐみさんは北朝鮮に拉致された」と証言したのはこの人物ただ一人なのである。その安が、拉致現場を一目見ただけで翻してしまった。では、それまでの証言内容の整合性、ひいては証言の信憑性についてまず検証するべきではないか。
 奇怪なことに、この問題のもう一人の火付け役、石高氏が関係者に漏らした内容によると、彼に少女拉致情報を伝えた亡命工作員は安ではなかったという。ならばその情報を具体的に説明した人物に登場願い、安には虚偽証言の釈明をしてもらわなくてはならない。
 安の証言に基づく横田めぐみさんの拉致疑惑が、彼女の失踪情報を悪用した安企部のシナリオであったとしたら、97年1月下旬以来めぐみさんのご両親にかけた心労は、まさに犯罪的である。
 それにしても、この饒舌家、安明進という人物は何者なのか。「平壌郊外にある工作員養成所、金正日政治軍事大学に通った」と安は語るのだが、北朝鮮機密情報に精通する北朝鮮研究者や現地軍事情報に明るい元総連幹部などによれば、「政治軍事」とつく上記養成所は存在しないのは確実だという。
 彼は北朝鮮から亡命した翌95年、韓国の総合月刊誌に2度にわたるロングインタビューに応じた。そこで安が語ったのは、北朝鮮による韓国人一般市民の拉致についてであったが、不思議なことに、めぐみさんや日本人拉致に関しては一言も言及していない。その翌年、安は日本のテレビメディアのインタビューにも応じたものの、このときも、めぐみさんの話は一切していない。その安が突如として、横田めぐみさんの拉致疑惑問題を口にし始めたのは、実に亡命から3年後である。
 安企部員と取材で頻繁に接触してきた、あるマスコミ関係者によれば、酒の席で部員にこの矛盾点を指摘すると「俺も安明進の言うことなんか信じてないよ」と無責任な返事をし、不敵な笑みを浮かべたそうだ。

 安企部情報に踊るマスコミ

 日本のマスコミの多くは証言を検証し、事実の積み重ねから事件を解明していくのでなく、むしろ垂れ流しの情報に依拠する。それを報道だと考えていると思えてならない。安企部は情報収集と謀略活動を任務とする機関だ。記者クラブのようなブリーフィングはもちろん、客観的事実の広報に務めるものでもない。政治的背景を注視しながら彼らの情報に接しないと、いつのまにか情報操作されていることに気付くだろう。
 一連の横田めぐみさんの報道が行われた時期、北朝鮮では深刻な飢餓が続き、体制の崩壊が囁かれていた。国連主導で96年から始まった食糧支援、日本からの大量援助の実現、まして日朝国交正常化交渉が進めば北朝鮮延命につながるとの危倶があった。97年は北朝鮮崩壊の”好機”だったのである。そんな折に発覚した横田めぐみさんの拉致疑惑問題。シナリオを描いたのが日朝国交正常化を快く思わない者たち及び公安関係者であるなら、食糧支援に一定のブレーキをかけ、国交正常化交渉を頓挫させた功は大きいだろう。
 今年1月末、無職の男が誘拐した少女を9年間も監禁していた事件が語題となったが、新潟県三条市にある被害者宅近辺を取材すると、現地で驚くべき事実を知らされた。小学校4年生で誘拐された少女は、横田めぐみさんの拉致疑惑報道以来、北朝鮮に拉致されたものだと、地元で考えられていたからだ。拉致被害者を支援する組織が、三条市の被害者宅を訪ね、「北朝鮮に拉致された疑いが強い」と家族に訴えていたためだ。
 新潟の「監禁男」の捜査のありかたについては、新潟県警及び本庁監察の不祥事にまで発展したことは記憶に新しい。まして北朝鮮拉致という思い込みが、監禁された少女の救出を遅らせた、もう一つの原因になっていたとすれば、県警不祥事はさらに拡大することになる。横田めぐみさんの捜査に関しても、新潟県警の責任が問われる事態にならないことを願うばかりだ。
 金大中政権が推進する「太陽政策」は定着した。米国の対北朝鮮外交も「ぺリー報告」によれば、金正日体制の維持を前提とするものだ。そして日本。そうした米韓の東アジアの安定を目指す歩調に遅蒔きながらあわせようと、国交正常化交渉の再開を余儀なくされている。そこで最大の懸案事項となっているのが、実は矛盾だらけの拉致疑惑問題なのである。
 聞くところによると、安企部は安明進のマスコミとの接触を禁じたという。これまでの日本政府の無策のツケは大きくなりそうだ。



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