僕のほうはまるで能がないのですが・・・

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投稿者 付箋 日時 2001 年 11 月 05 日 22:01:02:

回答先: ぷしゅ〜(以下は駄目返事です) 投稿者 kkou 日時 2001 年 11 月 05 日 12:28:01:

 僕のほうは引用ばかりでまるで能が無いのですが・・・

 ぷしゅうさんの「国家は1種の形而上的な寄生体のようなもの」で次の『なだいなだ』氏の文を思い出したので紹介します。ちなみに、氏は文学者ですが、精神科医(氏は「こころ医者」と言っていますが)でもある人です。

「民族という名の宗教」なだいなだ著より。

 国家と国民

 「なるほど。中心が地方から大都市に移る」
 「そして、新しく興った産業は、それまでと比較にならない高い生産性を持っている。革命という表現にふさわしいほどの生産の増加だった。これまでのままでは、市場の規模が小さすぎる。大きい市場が欲しい。いくつもの藩が集まった規模の」
 「産業からそういう要請があったんですね」
 「そうだよ。量産するから、市場をなんとか拡大したい。そのためにはエスニックな単位の境界はじゃまになる。労働者を集めるにも国境が障害だ。言葉の違いも障害だ」
 「そこで、今の国単位の大きさの市場が欲しくなるというわけですね」
 「そうだよ。しかもそこに留まっていないのだよ。繁栄した企業は、国だけで留まらず、更に市場を拡大しようとする。外国にまで売りつけようとする。当然、市場をめぐり国と国との葛藤が起きる。戦争になる。その時も、国単位のまとまりができていた方が、大きな兵力を備えやすい」
 「だから、ぜひ国としてまとまろうという運動になったのですね。その運動が、ほぼ同時に世界的に起こった」
 「そうなんだ。それが国家(ネイション)統一運動なんだ。イタリア、ドイツ、日本なども、こうして一九世紀の後半に統一を達成する、その話はしたね」
 「ええ、そのエネルギーになったのが民族というフィクションに基づくナショナリズムというイデオロギー。このイデオロギーが人を集め、まとめ、そのエネルギーが統一を完成させたのですね」
 それから一息ついてA君はいった。
 「なるほど、国という考えが先にあり、それにふさわしい国民のイメージとして民族が作られたんだということが良く分かります」
 「だから、民族はフィクションだといったのだよ。民族自決とか、民族独立とかの言葉はあいまいに国家と重ねられて考えられたものだった。国家はステイトともネイションとも訳される。国民の訳もネイションだ。ところが民族主義の訳もナショナリズムなのだね。内容は国家主義の場合でも」
 「なるほど、その混乱が問題なんですね」
 「ここで復習だ。後発の国の政治家たちは、一七世紀から国として統一されていたイギリスやフランスと同じような規模の国に、自分たちの国をまとめたいと思うようになる。対抗するためには、当然な考えだ」
 「そこでばたばたと、国家の統一が続くというわけでしたね」
 「そういうこと。その当時のイギリスやフランスは、工業の先進国だったものね。二つの国は百年前に、国内を統一し、市場としての植民地を求めて、世界のあちこちで張り合っていた。いわゆる帝国主義の時代だった。しかもそれらの国は、強大な軍備を持ち、すぐに武力に訴える傾向があった。口実をつくって戦争をしかけ、植民地を拡大し続ける。彼らと競争関係にある小王侯国、あるいは植民地としてねらわれている地方はより大きい国家としての統一を焦った。なにしろ食うか食われるかだものね」
 「先の見えるものほど焦った。維新前夜の志士たちですね」
 「この侵略的な強国の存在が、国民意識を固めさせ、エスニックなまとまりを捨てさせたのだよ。それを古いものとして乗り越えさせたわけだ。なにが幸いするか分からない。日本の統一を目指すナショナリズムは、攘夷思想とペアで不思議な二人三脚を組んでいたように見えるけど、それで当然だったのだよ。外に向けられた攘夷の攻撃性が、内部の団結を強める働きをした。攘夷なんて国民のネイションとしての統一ができればどうだっていいこと。ところが融通のきかない連中は攘夷から抜けられないで、切り捨てられていく。そんなドラマが、明治維新だった」
 そういうぼくにA君がつけ加えた。
 「しかし、それからがいけませんね。攘夷の勢力を利用して、外国への侵略戦争始めるんですから」
 「それも考えて見れば必然だったのだ。戦争によって、一気に国民意識は強められるんだから。日清日露の戦争体験で、日本に住む人間ははじめて日本人意識を持った。攻撃性を外に向けさせ、エスニック・グループ同士あるいは階級間の反目を乗り越えさせてしまうには、戦争が一番だからだ」

 国家のイメージ

 「話をもとに戻しますが、じゃあ、国という概念も、国民という意識も、たとえば明治維新の前にはなかったんですね」
 「もちろんなかった。なかったから、一部のものが作ろうとした。藩の殿様に尽くしていた忠誠を、国家に尽くさせようとした。国の指導者たちは、これまでの藩の殿様も、殿様に属していた農業奴隷に近かった農民も、一人の国民だという国家のイメージを作ったのだから革命的だね。国家は下のものには、なかなか魅力のあるものに映った。藩意識は、階級差別の意識でもあったから、下のものにとっては、国家の方が藩よりいい。自分たちの解放につながる。これまでは殿様の恩を手厚く受けたものほど藩に忠誠を誓うが、貧しく苦しい生活を強いられて来たものにとっては、藩などに忠誠を誓っても得るものはなにもない。むしろ自分たちは、国民になれば藩に縛られなくなり、もっと自由になり、生活も楽になり、出世をする機会も増えるだろうと考える。いや考えるように、イデオローグたちはあおりたてたのだよ」
 「そうでしたね」
 「もちろん、農民の中にも、武士の中にも、これまでの生活に慣れていて、変わりたがらないものもいるさ。その連中は「古い」「頑迷な」「愚かな」連中と切り捨てて、進歩のため、近代化のために統一したのだ。時には血を流しながらの統一だった」
 「そうですね」
 「民族主義による国の独立や統一には、こうした内部での対立を清算するために、戦争が必要だったところも多いんだ。日本も例外ではなかったけど、イタリアだって、ドイツだってそうだった。こうして危機感から作られた国だから、国を分裂させようとするものたちには、ねらっている外国を利する裏切り者のように、憎しみが向けられる。アメリカだって例外ではないよ。南北戦争は国の統一を守るための、国民主義と部族主義との戦いだったといってもいい」
 「表向きはデモクラシーのための戦いでしたけど」
 「デモクラシーは後悔から発したといってもいいのじゃないかな。ユーゴの連邦とクロアチアとの戦いは、南北戦争のユーゴ版だといってもいい。不成功を運命づけられているように見えるけれどね」
 「クロアチア人は、全員が独立派ではないんですね。クロアチア人意識を捨て、ユーゴスラビア人になろうとしたり、混血してユーゴスラビア人意識を自然に持つようになったものもいるんで、彼らは実に複雑な気持ちでしょう。日本ではどうだったんですか。このナショナリズムは」
 「大成功をおさめたといってもいいだろう。二つの対外戦争でエスニック・グループはあっという間に消えてしまい、人々はあっという間に、文明開化の日本国民になりきってしまったからね。エスニックなものを古いものとして放りだし、近代国家をつくろうとする努力が、これほどまで成功した例はあまりないだろう」
 A君は身を乗り出した。
 「その成功した理由はどこにあるでしょう」
 「一つは国のイメージかな。歴史的に日本は一つの国だったことがある。もともと日本は一つの国だったという点を強調すると、日本人としてのイメージを描きやすい。そのころからずっと日本人なるものがあったような錯覚を持つ。なぜ、それから、藩という何百もの小王国に分かれたかを説明しないですむからだ。そういうわけで、建国の神話などが引っ張り出されて来たのだよ。神話と混同された歴史のお陰で、お互いが昨日までいがみ合い、殺しあいしてきたことを忘れ、おれたちはあの時から一つにまとまっており、一つの民族だった、と信じることができた。そういう民族のフィクションが作りやすかったのだろうね」
 「なるほど。フィクションを信じるという点で宗教ですね。文学のロマン主義と、政治の民族主義が歴史のなかでしばしば重なり合っていたわけが分かって来ましたよ」
 「ドイツも昔を持ちだしたのだね。おれたちは昔ゲルマンだったというわけだ。そこでゲルマンの神話を称揚する。ワグナーのような音楽家が出てくる。イタリアはかつての栄光のローマを持ちだして来た。そしてそこに現代のイタリアを重ねあわせた。二千年前を直接現代に接ぎ木してしまった。こうして民族というフィクションが、エスニックなグループの人間の体重を減らし、意識の壁を越えさせたのだよ」
 「そういえば、確かに近代国家は、神話を好みますね。エスニックの方には神話はなかったのですか」
 「こちらは神話じゃない。民話だよ」



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