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デンマークの平和研究者JanOberg氏「ブッシュの戦争狂書演説」に対する厳しい批判の文章 投稿者 dembo 日時 2002 年 2 月 15 日 23:34:41:


「ブッシュ大統領の戦争教書演説」

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2002年1月30日
ヤン・エーベル (TFF所長)
TransnationalFoundationforPeaceandFutureResearch
(平和と未来学国際財団)

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 ブッシュ大統領の一般教書はひじょうに修辞的で、彼は自信過剰と幻想に陥ってい
る。大統領はアメリカ人の魂を慰めたかもしれない。国会議員たちも総立ちして、大
統領にくり返し熱烈な拍手喝采を送った。私はその演説を聞き、慎重に読み、そのう
えでこの教書を力を込めて分析してみた。では私がこの演説を心底から好戦的なもの、
他人を軽蔑するものと受けとめ、そして世界を害する予兆だと察知した理由はなんだ
ろうか?
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 けっして「反アメリカ的」ではない私たちの仲間でさえ、これまで見聞したことに
よって、自分が疎外されていると感じる人々が多くなっているという事実について、
私たち全員は今アメリカ人と対話を試みる義務を負っていると思う。私個人について
言えば、アメリカが素晴らしく賛美されるなかで育った。私の親の世代は、常に、ア
メリカがどれだけヨーロッパを助けてきたかについて、マーシャル・プランについて、
そしてアメリカの社会、芸術、文学、音楽、奇跡的な経済の躍動性について指摘した
ものであった。1950年代後半と1960年代のアメリカは、その当時、何百万の人々によっ
て賞賛された国であった。アメリカは多くの人々が見上げ、その一員となることを希
望する社会と人間性の理想像を持っていた。アメリカはわれわれの憧れであった。
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 2002年のブッシュ大統領の演説はこれとは全く対照的であり、私の心に恐怖心すら
抱かせる。私は深い不安に陥っている。彼の指導力を理想的だと見なすことなぞ到底
できない。そして、アメリカあるいは他の大国がすべてを支配したり、あるいは対等
な関係を拒絶するような世界について、私は基本的に良しとすることができない。

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 人をはばからぬ権力の拡大
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 演説には謙虚さと自省心、そして他人への思いやりが欠けている。私には俗悪だと
思えるほどに、ブッシュ大統領はひたすら自分の国だけを賞賛する。アメリカは今ほ
ど強かったことは一度もなかったし、「われわれ」は戦争に勝利しつつあり、米国旗
ははためき、米国の軍事力を行使した「われわれ」の大義は正しく、アメリカは勇気
と憐れみ、決意、冷静さ、責任を保有している−−と大統領は強調する。これらすべ
てが善なるがゆえに「われわれはさらなる善をもって邪悪にうち勝つことができる」
のだと。アメリカ人の特性の奥深くに彼は自尊心を発見し、とくに悲劇的なことには、
「神は身近にあり」と語るまでになった。アメリカは万人の自由と生命の尊厳を代表
する。
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 要するに、アメリカこそが唯一の正義であり、アメリカは正義のみをおこなうとい
うのだ。しかし、私たちのなかでも社会科学者だとか世界中の異なる国を見てきた人々
は、それぞれの社会が、そしてあらゆる社会がどこかに否定的な一面を持っているこ
とを知っている。ブッシュの一般教書には、たとえば自国内の暴力の頻発が物語るよ
うな、アメリカ社会につきまとうさまざまな問題が認められていない。9月11日の攻
撃による死亡者の10倍ものアメリカ人が自国の人間に殺されているにもかかわらず。
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 第二に、自分の国をこんな口調で語る指導者は世界のどこにもいないだろう。私た
ちのあいだでは自分で自分を自慢するには限度があると考えるのだが、ブッシュ大統
領は自分が自己満足的かつ独善的であると気づいてないように思われる。ジョージ・
ブッシュは周囲の政策決定者と演説の起草者たち同様、ますます自己の世界に閉じこ
もり、この国の歪んだ見解を持つようになったのではないかと、人々は素朴な疑問を
抱いているに違いにない。それとも彼らは自分たちの力が強大であると信じるあまり、
こうした見解を経文のように思いこむことによって、イスラム寺院の寺子屋でコーラ
ンを習って何の疑問も抱かない子どものように、国民もこれを信じるだろうと思いこ
んでいるのであろうか? 

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 ブッシュは自分以外の活動や関係機関を認めない
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 私はブッシュの演説に最小限の謙虚さも見られないことをただ惜しむのではない。
同盟関係にある諸機関もふくめて重要人物にたいして、感謝の言葉が表明されていな
いばかりか、まったく言及されていない。そのようなわけで、ジョージ・ブッシュ
はNATOやEU、OECD、WTOあるいは国連の名をあげることがない。さらに彼は人権ある
いは国際法にも言及していない。世界の貧困、エイズ、そして世界中の恵まれない人々
の保健衛生などの問題にとりくむ意思がアメリカにあるという表明もない。例えば
「基本的生活必需品」「世界的な開発」「地球環境問題」などの表現は、ただの一度
も出てこない。
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 9月11日に関連してCIAとFBIの不思議な大失態が繰り返されるのを回避するために、
ブッシュ政府がなにをしようとしているかについても聞けなかった。実際、学校につ
いて語った以外には、アメリカ社会や政治制度の改善について一言も触れなかった。
多国籍企業(MNCs)への経済力の集中とか、あるいはかつてアイゼンハワー大統領が
勇気をもって問題にとりあげた軍産複合体についても、なんの言及もなかった。あげ
くには民主主義という言葉もなかった。

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 問答無用に脅威とその解決策を決定
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 次に、アメリカの利益と世界の利益が故意に混ぜ合わされていることだ。換言すれ
ば、アメリカ的な価値観こそ普遍的であり、それを受け入れないところでは受け入れ
られるようにすべきだという信仰である。これはブッシュ大統領の演説のまぎれもな
い投影であり、使命感、あるいは帝国主義的な側面と言ってもよいだろう。彼はまた、
他の活動を含めて、とくに「世界中にアメリカの憐れみをほどこす」<自由部隊>を
新たに創設することをも宣言した。それは「イスラムの国々に発展と教育とチャンス
を促す」だろうというのである。
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 大統領はまた世界のいたるところにアメリカ的な正義の理念を広めるのだと言うが、
その世界というのは互いに連携する国際社会でも、国連のことでもない。「われわれ
の軍隊は、米国のあらゆる敵たちに今や明確なメッセージを伝達した: たとえ7000
マイルも離れ、大洋や大陸に隔てられ、山中や洞窟に潜んでいようとも、お前たちは
米国の正義から逃れることはできない」。このことの意味は、アメリカ外交の統率者
が敵を選別しさえすれば、アメリカが正義を実行する(法的にも、政治的にも、心理
的な意味でも)というものだ。それはただ、アメリカの正義が敵国の法律だけでなく
国際法をも無効する、という意味に解釈するしかない。
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 世界を脅すことはアメリカを脅すことでもある。アメリカにとって有害なことは、
世界にとって有害なことである。だから、ワシントンの指導部によれば、アメリカは
脅威にさらされる者を守る義務と特権を持っている。脅威を定義し、その対策と優先
順位を決めるのもアメリカである。ありったけの経費をかけて自国と世界を守るのだ
ろうと理解される。世界についての認識と解釈についてブッシュ大統領とは違った考
えをもつような者たちには、「もし彼らが行動で示さないなら、アメリカがやるだろ
う」と警告する。こんな警告もある。すなわち「すべての国は知るべきだ。米国は米
国と同盟国を襲撃から守るために必要なことをすべて実行するつもりだ、と」。世界
はこのことから告知されたのである; 問答無用だ、と。
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 すなわち、このことは、これまでただの一度も間違いを犯したこともなく将来も間
違いを犯さない、したがって論理の帰結として、他人のことでも何が最良なのかを知っ
ている基本的に無謬の国の判断に照らして理解されねばならないと言うことである。
こうなるともう、他の者たちと話しあう必要さえもない。

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 世界を「正義と悪の戦い」に集約
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 ジョージ・ブッシュが演説のなかで語る世界は、ほぼ原始的と言ってもいいくらい
単純なものである。なんともずる賢いペテンである。西部劇映画のように、一方に悪
者がいて、他方に善人がいて、そしてアメリカがどっちが善であり悪であるかを決め
るというのだ。ブッシュは、アメリカが「何千人ものテロリストを捕らえ、逮捕し、
世界から駆除した(殺害した−ヤン・エ−ベル)」のだと自慢する。彼はレーガン元
大統領がソビエト連邦を悪の帝国と呼んだのにちなんで、北朝鮮とイランとイラクが
「悪の枢軸」を構成していると言う。われわれは悪に勝利しなければならず、「悪は
現実に存在しており、これとは戦わなければならない」と。
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 このように絶対的な悪と絶対的な正義、つまり黒と白が存在するという。すなわち
「われわれと彼ら」である。今ではテロリズムという言葉が共産主義に置き換えられ
た。冷戦のレトリックが復活し、現実の世界のあらゆる複雑さがこの公式にあてはめ
られる。もしこの世界観が国内向けだけに提示されたのだとしたら、私のようなヨー
ロッパ人は、アメリカ人は賢く教養があるはずだから、ひじょうに複雑なこの世界を
そのように子どもじみて認識するしかできなくなっている、と考え込まざるを得ない。
もしこの演説が地上最強の政策決定者による現実に影響力を持つ世界観を提示してい
るとするなら、ブッシュ指導部はさまざまな分野から信用のある専門家の助言を受け
る必要がある。アメリカの外交政策を支えている知性的な前提は、飲み屋での喧嘩以
上のものでなければならない。

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 アメリカの非凡主義、国家主義、優等生ぶり、選民思想
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 ジョージ・W・ブッシュは、まるで裁判官か救世主であるかのように、人類の上に
聳(そび)え立つ非凡なアメリカ合衆国のイメージを提示している。アメリカは国際
社会にパートナーを持たず、また国際社会の一員でもない。私は民族国家として強い
自覚を持つ国々で仕事をしてきた。クロアチア、セルビア、ソマリアそして日本といっ
た本当に民族主義の国である。だが、この四ヵ月間に培養され、演説によって促進さ
れてきたアメリカの国家主義に比べると、これらの国の国家主義は影が薄くなる。危
機に際してともに立ち上がり、自分の祖国を愛することは素晴らしいことであり、そ
れを表現するには愛国心という言葉がふさわしい。愛国心という言葉を自分自身を至
上のものと考えて使ったり、他の誰しもを自分より低劣で存在すら無視してよいとみ
なすようになると、それはもはや超国家主義ないしは好戦的愛国主義である。
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 「アメリカはどこにいても万人にとっての正義であり、真実であり、不変であるが
ゆえに、アメリカは自由と正義を守ることによって(世界を)指導していくだろう」。
これは空疎な声明でないとしたら危険な声明である。このような価値観は、さまざま
に解釈され実践されるものだということが無視されている。この声明は、アメリカ人
以外の者がこうした権利を行使する権利を否定している。そこでブッシュは、まるで
言いすぎたことに気づいたかのように、「われわれは自分の文化を強制するつもりは
ない、だがアメリカはつねに断固として一歩も後に退かないだろう」とつけ加えてい
る。
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 アメリカの選民思想を正当化するのに二つのことが挙げられている。一つは歴史で
あり、「歴史は米国とその同盟国に行動を求めている」と言い、二つ目は神で、「神
は身近にあり」と言う。このように、ほとんど聖書を語るような気分にひたって、ブッ
シュはアメリカの国を神による選民の国と見なし、選ばれて正義をなすのはアメリカ
が歴史と神によって選ばれたからだと言うのだ。しかしこれでは、他の原理主義とた
たかうためにキリスト教的な原理主義をもちだすということにならないか?
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 演説によると、<自由部隊>はアメリカの憐れみ−-しかも極上のものをほどこし、
イスラムの国々に発展と教育とその機会をもたらすという。それではブッシュ大統領
がイスラム諸国からなんらかの<部隊>を招いて、自国内で同じようなことをさせる
と想像できる者がいるだろうか?
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 アメリカの軍国主義は国際社会の民主主義を終わらせる
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 最後に、暴力に対して残忍な傾向と圧倒的なハイテク戦力の誇示がある。彼は誇ら
しげに、アメリカは戦争に一日当たり3000万ドル費やすのだと語り、また戦争は始まっ
たばかりで、今後はもっと必要だなどと世界にむかって宣言した。この意味は、ブッ
シュがアフガニスタンの復興援助に支出するはずの金額は対テロ戦争10日分の費用と
同じということである。そんな程度の哀れみなのだ。アメリカの軍事予算は4000億ド
ルに達しようとしており、世界の軍事支出の半分(50%)を占めている。
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 アメリカ合衆国は、自分たちが敵ないしは「ならず者国家」とレッテルを貼る全勢
力の10倍もの軍事支出をしており、軍事技術力ではおそらく20倍を上回る能力を備え
ている。それほど強い者がこれほどの脅威にさいなまれるという弁明が成り立つだろ
うか? これは健全なことなのか、それともひどく病的で誇大妄想的な反応なのか?
 9月11日がそのような措置につながったというのは心理学的に正当化されるのか、
それともあの日の事件が別目的で利用されているだけなのか?
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 今日のアメリカ合衆国は、歴史上、もっとも強力な国である。他の一国であれ複数
の諸国であれ、このたった一つの国に対してその国が要求するものと異なる行動をと
るよう説得することができないし、また、この一国が要求することを抑制することも
できない。アメリカは世界を支配するかもしれない。アメリカは国際的な民主主義を
定義するあらゆる概念に反して行動している。たとえまったく慈善的であっても、他
のすべての国の意志に反する政策を指図できる国が存在するという状況は、民主主義
というよりも独裁主義に近い。
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 私が指摘したいのは、アメリカは現在および将来の世界において(少なくとも他の
国が競争力を持つまで)こうした立場をとるべきではない、ということではない。私
が指摘したいのは、たとえガンジーやマンデラあるいはマザー・テレサの導きであっ
たとしても、一つの国、一つの思想、一つの政策に他のすべてを上まわる大きな力を
付与してはいけない、ということである。

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 なぜブッシュのアメリカは危険なのか
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 他国の不作為、権力の拡大、他の国々に対する自己の価値観の投影、複雑な世界に
対する非現実的な認識、自分だけが正義だと考える非凡主義と幻想、さらに歴史と神
に選ばれたとする錯覚。こうした要素を、長期にわたる世界戦争に捧げられたほとん
ど理解しがたいほどの大きい技術力や経済力と結びつけてみよう。そうなると、必然
的にアメリカを含む全世界にとってますます有害な方向へ向かう、という定則に辿
(たど)りつくだろう。
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 もしアメリカ指導部が世界と協調しようとせずに世界に君臨しようとするならば、
アメリカは自己の最善の利益と世界の最善の利益に対立して動いて行くことになる。
そのように文明の崩壊へと転落していくと、世界大戦かあるいは完全な混沌が現実の
ものになるだろう。
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 どんなに辛くても、まさに今、アメリカの崇拝者と同盟者にむかって、人々の懸念
の声をあげる時である。私たちのあいだには、この大国を賛美したり理想化するより、
むしろ危険視する見方がいっそう強まっている、それには実際的な根拠があるのだと
アメリカ国民が理解するのを私たちは手助けしようではないか。

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ヤン・エーベル

1951年デンマークに生まれる。
社会学、平和と未来研究で博士号。
ルンド大学平和研究所・前所長、デンマーク平和基金前事務局長、デンマーク政府の
安全保障・軍縮小委員会・元委員。
客員教授として日本へ; 平和のための人民の発議国際大学(IUPIP、イタリア)科学
委員会。
1997年からTFF評議員会議長、同所長、紛争緩和チーム責任者として旧ユーゴスラ
ヴィアおよびグルジアに派遣。
公表学術論文は約3600ページ。

(原文)
Bush'sStateofWarAddress
ByJanOberg,TFFdirector
http://www.transnational.org/pressinf/2002/pf143_BushWarAddress.html

ブッシュの戦争狂書演説原文
http://www.whitehouse.gov/news/releases/2002/01/20020129-11.html
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