木村愛二マルコ・ポーロ廃刊報道批判:『創』1995年5月号


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投稿者 一刀斎 日時 1999 年 2 月 04 日 17:40:28:

木村愛二『マルコ・ポーロ廃刊報道への大疑問』
『創』1995年5月号

●はじめに
『マルコポーロ』廃刊事件については先月号で大きく扱ったのだが、今回、西岡昌紀氏
とともに「ホロコースト見直し論」を展開してきた木村愛二氏の原稿を掲載する。木村
氏はこの問、『正論』や産経新間で、西岡氏のバックにいる怪しげな人物として猛烈な
バッシングを受けてきた。画一的なマスコミ総がかり報道の中では少数意見側に言論の
機会は与えられず、彼らの実態が歪められていくのはよくあることである。
先月号でも書いた通り、本諸は決して「見直し論」を支持する立場ではない。しかし、
現在のようなマスコミ状況の中では、敢えて少数者側の意見に誌面を提供するのが本誌
のようなメディアの1つの役割ではないかと考える。この問題は、議論を封殺してし
まったとしか思えない文藝春秋に代わって、本誌や『宝島30』など多くの雑誌が先月
号で大きく取り上げた。雑誌ジャーナリズムがこうした問題で活発に議論を展開すると
いうこの風潮は、マスコミタブーをなくすために必要なことだと思う。(本誌編集長・
篠田博之)

冷静かつ綿密な長期的論争を
『マルコポーロ』(以下『マルコ』)廃刊報道(同「マルコ報道」)でマスメディア
は、「一時的・表面的」特徴を遺憾なく発揮した。「ナチ『ガス室』はなかった」とい
う問題の記事の筆者、西岡昌紀は昨年春、拙著『湾岸報道に偽りあり』(汐支社)を読
み、わたしに電話を掛けてきた。以後わたしは大量の英文資料の提供を受け、『マル
コ』より5ヵ月前の『噂の真相』(94・9)に「映画『シンドラーのリスト』が訴え
た”ホロコースト神話”への重大疑惑」(題は編集部)を発表した。『マルコ』とは雑
誌の性格が違うせいか、それとも、後述のような決定的に違う視点に立つので“ナチ.
ハンター”ことサイモン・ウィゼンタール.センター(同SWC)が、さわらぬ神に崇
りなしと決めこんだものか、こちらには何らの抗議もなかった。その後は、単行本『ア
ウシュヴィッツの争点』(リベルタ出版)の完成に集中していたが、最終校正の段階で
事件が起きたため、こちらも動きが取れないような状態に陥った。そこでやむなく準当
事者の立場で文藝春秋とSWCの共同記者会見に出たり、3度も自費で記者会見兼市民
集会を開いたりした。わたしの立場や主張が、西岡と「まったく同じ」(『宝島30』
95・4)であるかのような早トチリの誤解を受けるのは覚悟の上だったが、決して同
じではない。政治的スタンスの違いが大きい。この問題の構造は単純ではない。本当に
理解するためには冷静かつ綿密な長期的論争が不可欠である。
「タカ派」の文書で発表した誤算
「マルコ報道」の歪みの根本原因ほ、文藝春秋という出版社の世間周知のタカ派体質に
ある。その意味では、西岡は発表場所を間違えている。文藝春秋と「天敵」の仲の朝日
新聞の取材の仕方や報道内容などは「マルコ報道」の歪み方の典型である。報道内容の
偏向状況については、のちにその一部を指摘するが、「敵」の主張の弱点を発見して徹
底的にたたく、揚げ足とりのネタを探すという単細胞の思考しか働かなくなっている。
わたしは朝日の若手記者に「“坊主情けりゃ袈裟まで憎い”という報道の仕方はないだ
ろう。西岡は文藝春秋の被害者でもある」と忠告したのだが、その効果はまだ現われて
いない。
ジャーナリストと.歴史家は恥じよ
俳優兼マルチ作家の中村敦夫が、個人メディアの『月刊中村敦夫新聞』で“廃刊の謎”
を特集している。中村は「(西岡)氏に対する日本のマスコミの集中攻撃はすさまじ
い」としながら、「その姿勢の中身は、氏がジャーナリストでも歴史学者でもないの
に、という反感に基づいている。(中略)一介のお医者さんにこれだけの大問題を提起
されてしまったことを、むしろジャーナリズムは恥とすべきである」と喝破している。
わたしは準当事者だから、ここまではさすがに遠慮していえなかった。これを読んでス
カッとしたが、カッとくるジャーナリストや歴史家も大勢いるだろう。怒るだけの気力
があるのなら、おおいに論争しようではないか。それだけの歴史的題材なのだ。さらに
警告しておくが、このままでは日本のジャーナリズムと歴史学界は世界中の笑い者にな
る。
肝心なのは、だれしもが中心的争点を調べず、避けたり、曲げたりしていることだ。わ
たしが文藝春秋とSWCの共同記者会見で特に回答を迫ったのは西岡の記事の中心をな
す「チクロン(英語読みはサイクロン)B」と「ガス室」に関する調査の有無である。
わたしはまずフランスの名門週刊誌『レタスプレス』の記事を紹介した。続いて『マル
コ』記事にある『ロイヒター報告』以外にもドイツとオーストリアの専門家による「ガ
ス室」調査の追試があり、アウシュヴィッツ博物館がポーランドのクラクフにある法医
学調査研究所に依頼して行った独自の調査があることを指摘した。それらの調査結果は
基本的に一致している。チクロンBの主成分の青酸ガスは、部屋の壁などにシアン化合
物として残留するほずなのだが、「ガス室」と称されてきた部屋からは検出されていな
い。このもっとも決定的な質疑応答の部分を報道したのは、調査報道を呼号する癬のあ
る大手紙ではなくてスポーツ紙だけだった。
「記事の執筆者・西岡昌紀さんの協力者というフリージャーナツスト木村愛二さんが
『フランスの時事週刊誌にもホロコースト見直しの論文は出ている。こういう事実を調
べた上で廃刊を決めたのか』と質問すると、『細かいことを言われても……』と田中社
長」(スポ日2・3)「原稿の著者である医師・西岡昌紀氏の関係者が『論文が間違い
だと判断する前に調査されたのか』と追い打ちをかけると『わからない(中略)』と田
中社長」(東スポ2・3)といったところである。「田中社長」(当時)の回答は、
「調査なし」を明確に認めたことに他ならない。
「反ユダヤ主義」などでは絶対ない
この件には特有の感情的問題点がある。わたしは、文藝春秋とSWCの共同記者会見で
質問に立った際、「ホロコースト見直し論者」の立場を次のように説明した。「ユダヤ
人の3000年の歴史の悲劇を一番良く知っているのは、わたしたちだ。しかし、その
悲劇の解決の過程に誤りがあったとすれば、また薪たに1000年の恨みが残り、悲劇
は終わらない。諸民族の真の和解は、事実の確認の上にしか成り立たないのではない
か」
最後の「事実の確認」の部分では記者席から拍手が沸き、「そうだ!」という賛同の声
が何人もの口から出た。わたしは、この問題の真相がユ ダヤ人自身の手で明らかにされ
ることが最良の解決法だと考えている。ユダヤ人の見直し論者はすでに何人もいるの
だ。
文藝春秋の斎藤禎社長室長は「(『マルコ』の記事が)ユダヤ人社会及ぴユダヤ人関係
者に深い悲しみと苦しみを与えたことを遺憾とし、反省しています」(産経95・1・
30夕)と語ったようである。だが、ここでいちばん重要なのは、だれが「ユダヤ人」
を代表しているのか、という素朴な問題なのである。
文藝春秋に対しても、日本政府の窓口としてのワシントンの大使館に対しても、抗議し
た団体はSWCだけである。アメリカ・ユダヤ人委員会のようなユダヤ人社会を代表す
る伝統的組織は動いていない。イスラエル大使館は文藝春秋に抗議したが、日本政府な
り外務省に対する公式の抗議をしていない。
わたしが自力でひらいた3度の記者会見兼市民集会の内・後半の2度に出席したデイ
ヴィッド・コールは、.ハリウッド在住の“ユダヤ人”の映像作家である。かれは、
SWCが日本で行った言論弾圧に憤慨して、西岡宛てのファックス通信で「飛行機代は
自費でまかなえるから何かやらせてくれ」と申し出てきたのだ。わたしはさらに、それ
を受けて日程を調整した。最初は文藝春秋とSWCの共同記者会見の前日、2月1日夕
刻に設定した当市の記者会見に駆け付けられるかと問い合わせたのだが、かれの予算で
は間に合う切符が取れなかった。
そのために、その後2度、2月15日、同18日と集会を続けて設定したのだが、大部
分の大手新聞記者がそこに出席したにもかかわらず、”ユダヤ人”のコールがSWCと
は反対の立場で来日したことを報道した大手紙は皆無だった。これはまさに、わたしが
湾岸戦争以来提唱している用語、「マスコミ・ブラックアウト」の典型的発動にほかな
らない。
動機」を無視した不気味編集
文藝春秋のタ・カ派体質に加えて、−『マルコ』編集長、花田紀凱の無責任ぶりがあ
る。批判の一部はすでに『週刊金曜日』(95・3・17)にも書いた。中心的な問題
点は、「(花田が)アマチュアの文章を無防備で・スキャンダラスに発表するなど、こ
の問題がはらんでいる重大な政治的背景を理解しているとは思えない」ところにある。
この点こそがまさに『噂の真相』(前出)のわたしの文章との決定的な違いである
(中略)
データベース取材で極右と断定
朝日新聞社発行『アエラ』(2・13)では、西岡の資料の発行元の研究所を「極右や
人種差別主義者の『学術組織』」と断定した。
署名している記者は記者会見にきていたから顔も覚えている。わたしは問題の研究所を
昨年末に訪ね、日本人で初めての訪問者だといわれた。そのことを記者会見で話したの
に、署名記者は現地取材もせず、わたしにも確かめずに記事を書いている。断定の根拠
を電話で聞くと「アメリカのデータベースで調べた」と答えた。
わたしが「アメリカのデータベースはアメリカの大手メディアの情報だから、大手メ
ディアに強い支配力を持つイスラエル支持勢力の意向を反映している。なぜウラを取る
努力をしないのか」というと、署名記者は「2年間アメリカに留学した」という経歴を
誇り、「そちらは英語で取材しているのか」と逆襲してきた。この若手記者の傲慢さに
は唖然とするほかなかった。
同記事では、やはり引用論文の筆者は、マーク・ウェーバーについても、「『ヒトラー
は今世紀最大の哲学者』と発言した人物」というワシントン・ポスト記事をそのまま
使っている。このポスト記事については署名記者自身が記者会見で質問してきた。わた
しは、その際、ポースト記事報道のニュアンスに疑問を呈し、「本人はどちらかという
と左翼(レフト・ウィング)だといっている」と答えたが、その私の回答を『アエラ』
記事は無視している。
問題のポスト記事の筆者、ジョージ・ウィルは、自他ともに認めるイスラエル支持者
で、SWCの資金集めにも協力した御用記者である。ウェーバーの方は、この問題の記
事が会見内容の歪曲だとして抗議し、IHR(歴史見直し研究所)の機関誌に「わたし
とジョージとの昼食/いかにして影響力のあるジャーナリストが事実をねじまげるか」
と題する3ページの論文を発表している。その後、この論文とウェーバーがウィルに出
した抗議の手紙のコピーまで『アエラ』の署名記者に送ったが、何のあいさつもない。
アメリカの極右には、大きく分けて2種類ある。古くからの人種主義者で黒人差別の
キュー・クラックス・クランが最も有名だ。もうーつはイスラエル建国支持のシオニス
ト過激派である。この2つは仲が悪い。
ホロコースト見直し論は、同時に、イスフエル建国に疑問を呈する意味を持つので、イ
スラエル建国支持者とは対立する。そこで、本来の極右から逆に「極右」とか「人種差
別主義者」というレッテル貼りが行われているのだ。こんな単純なデマゴギーに騙され
るようでは、データベースの入れ物が泣く。
実物を見てもいない歴史学助教授
『サンデー毎日』(2・19)も『マルコ』記事の評価を簡単な電話取材でごまかし
た。「『中吊り広告を見てすぐ買ったが、驚いた。不正確な記述としかいいようがな
い』というのは、ドイツ史が専門の石田勇治東大助教授。『タネ本はすぐに分かる。ロ
ンドンで出版された「ロイヒター報告」という本で、これはネオナチのバイブル(後
略)』」
本人に直接確かめたところ、『ロイヒター報告』そのものを読んでいるどころか、実物
を見てもいない。ドイツ語の見直し論批判本の名を2つ挙げただけだった。こんなズサ
ンな肩書きだけの談話記事で、西岡が「ネオナチのパイプル」を引き写して作文したか
のような印象が作り出されているのだ。
石田はさらに、「歴史研究の立場からすると、論争はまるでない」としているが、論理
矛盾もはなはだしい。本人が「2冊持っているドイツ語の本」そのものが、論争の存在
の立派な証明である。論争とは、権力御用、公認の公開論争だけを指すのではない。
「ガス室」ど「気化穴」のすり替え
その他、様々な揚げ足取り論評がある。準備中の単行本にも反論を盛り切れないかもし
れないので、続編まで予定している。
一応の概略だけを指摘すると、それらの揚げ足取り論評のほとんどは、西岡が引用した
資料に直接当たっていないという特徴を備えている。中心的な論点は「ガス室」の調査
をしたアメリカ入、フレッド.ロイヒターの技術者としての資格に関する疑問走が、そ
のタネ本は『DENYING THE HOLOCAUST』である。原文を一読すれぱすぐに分かるが、ロイ
ヒターの調査結果 に関する議論ではまったくない。法廷技術の1つに、証人の信憑性に関
する反対尋問がある。証言の基本を覆せない場合に、他の要素への疑問をかき立てて裁
判官や陪審員の心証をぐらつかせるのだ。ロイヒターはポストン大学卒の文学士だが、
化学の学士ではない。それをいかにも違法操業であるかのように言い立てているだけな
のだ。
もう1つ、早目に批判しておきたいのは、『宝島30』(95・4)の次の部分であ
る。「『ガス室(Vergasungskeller)は時宜に即して完成(中略)』と書かれた文書
(中略)の話を西岡氏にしたところ(中略)、彼は『知らなかった』と答えた」
第1の問題点は・ユダヤ人虐殺物語の「ガス室」の用語はGaskammerだということだ。
Vergasungskellerの方は、火葬場の燃焼湿度を上げるための「気化室」または「気化
穴」とでもいうべき構造のことだ。『宝島30』の筆者は、この単語を含む文書に関す
る報道を、いかにも新しい発見のように書いているが、見直し論者のドイツ人、シュ
テーグリッヒ判事の著書、『アウシュヴィッツ/判事の証拠調べ』(手元の英語版は
90年改訂増補)で、言葉のすり替えが論破しつくされている。最近の報道は単なる蒸
し返しにすぎない。
第2の問題点は記述のごまかしである。一読してすぐにわたしは西岡に電話した。西岡
はシュテーグリッヒの著書を読んでいる。『宝島30』の記述のように「知らない」と
答えるはずがない。するとやはり西岡は「取材でVergasungskellerという言葉は出な
かった。単に『新しい文書発見』と聞いたので、それは知らないといっただけだ」とい
うのだ。『宝島30』編集部は取材を録音している。聞き直して、西岡の言う通りであ
れぱ・訂正記事を載せ、西岡に詫ぴるべきではないだろうか。



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