内なるプログラム修正


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投稿者 たけしくん 日時 1999 年 4 月 13 日 09:31:34:

2000年問題MLより無断引用です。


経営者向け雑誌「住友マネジメントレビュー」99年3月号に稲田芳弘氏が
「もうひとつのプログラム修正」というエッセイを書かれましたが、稲田氏
と住友マネジメントレビューのご好意によって、そのエッセイを私のサイト
に転載させていただきました。
http://www.mediawars.ne.jp/~jesus777/

また、雑誌には文字数の制限があるので、もう少し言い足りなかったことを
私のサイトのために寄稿してくださいました。
とても良い内容ですので、みなさんにも読んでいただきたく、稲田氏の許可
も得て、以下に掲載いたします。(これもサイトにすでに掲載しています。)

稲田氏は1946年新潟県生まれで札幌在住のジャーナリストです。
このエッセイの最後でも言っておられますが、4月21日頃に三五館から出
版される越智洋之氏への緊急インタビューと、足立晋氏からのメッセージで
構成されている『Y2K・最新最終事情』の企画監修者です。

……………………………………………………………………………………
 谷口さんのご厚意により、ぼくの駄文がこのサイトに紹介されることにな
った。しかしこれは経営者向けに書いたエッセイであり、かつ文字数も限ら
れていたために、言いたかったことが十分に表現できなかった悔いも残って
いる。そこで谷口さんにお願いして、改めてこのサイトに「内なるプログラ
ム修正」の補足をさせていただくことにした。

 コンピュータ西暦2000年問題に対する日本社会の反応を見ていると、
「クサイものにはフタ」という言葉が浮かんでくる。そう、Y2Kの問題は
とにかくクサイものであり、だから強引にフタをして封じ込めてしまえとい
うわけだ。またそこには日本特有の言霊信仰のような心理も微妙に作用して
おり、「大問題だなどと言葉に出して言おうものなら本当に大変なことが起
こる恐れがあるから、できるだけ言葉には出さず、問題化しないようにしよ
う」という自己規制力が働いてきたように思われてならない。
 その結果、この問題は長い間マスコミから無視され続け、たとえ話題に上
ったとしても「大丈夫、問題ない」という言葉が繰り返し強調されてきた。
「大丈夫」と言うためにはその根拠を具体的に示さなければならないが、そ
んな証明など全くなされないままに「大丈夫」という言葉だけが日本列島を
覆ってきたのである。
 そうした日本社会の様子を眺めながら、ぼくは「またか!」と思わざるを
えなかった。というのも「事実」は全く無視され、「安全、安心」という
「空気」だけがどんどんふくらんでいったからである。
 しかもこうした「空気支配」の怖ろしさは、「大丈夫」と言った以上それ
に少しでも疑念を抱くようなことはしてはならないということで、真の意味
での危機管理対策がほとんどないがしろにされてきた。実際、つい先日政府
から危機管理計画が発表されたとは言っても、それは決して電力の完全ブラ
ックアウトを想定した次元からのものではない。
 それどころか政府がようやく発表した一〇八ページにものぼるその危機管
理計画では、「電気、ガス、水道、通信、公共交通機関などの重要な社会イ
ンフラについては各事業社が業界を上げて早くから対応を進めており、現在
のところ2000年問題が原因で企業活動や一般生活に重大な支障を来すことは
ない」とされており、この時点に至ってもなお「問題ない」ことが大前提に
なっている。これではとうてい危機管理計画とは言い難い。これではいざ大
停電に襲われたとき、社会は一気にパニックに陥ってしまうにちがいない。


 今年一月に開催された顧問会議で公文俊平国際大学教授は、提言に際して
まずY2K問題の認識プロセスについて触れている。すなわち、エリザベス
・キュプラー・ロスの「悲しみの五段階」、つまり患者が、例えばガンなど
の告知を受けたときに示す「否認→ 怒り→ 取引→ 落ち込み→ 運命の受
容」という五つの心理的なプロセスを説明することから話を始めているの
だ。
 それもたぶん、顧問会議自体がいまだに問題認識の初期段階の「否認=問
題ない、大丈夫」に留まっており、そういった認識レベルからでは効果的な
対策など生まれようがないと考えたからであろう。その際に公文教授自身
が、「私も2000年問題を強く認識するようになってから、半年近く経っ
てやっと五段階目に達したような気がする」と告白しているが、その言葉の
裏には「いつまでも否認や落ち込みの段階でうろついていてはいけない。事
実を事実として、現実を現実として、真っ正面からY2Kの深刻さを受け止
める勇気が重要なんだ」という強い主張が秘められている。
 ぼくがエッセイで言いたかったことは、まさにこのことであった。つま
り、事実を事実として受容することの大切さである。実際、コンピュータの
プログラム修正が間に合うとすれば「内なるプログラム修正」など全く必要
ないわけで、自分の生き方(プログラム)や考え方(OS=オペレーティン
グ・システム)を修正しようと呼びかけたということは、「もはや間に合わ
ないのではないか」とぼく自身が最悪の事態の襲撃を受容しているからであ
る。

 もちろん、果たして2000年にどうなるかは、そのときが来てみなけれ
ば分からない。ぼくはY2K問題の専門家でもなければ、預言者でもない。
しかしこの問題の専門家やY2K先進国アメリカがあれだけ深刻視している
というのに、日本だけがその危機から免れるとは思えない。にもかかわら
ず、日本では「日本にだけは必ず神風が吹く」と信じ切っているかのよう
だ。日本の社会は事ここに至ってなお「安全信仰」に呪縛されているのであ
る。
 そう、これはもはや一種の信仰ではなかろうか。「安全安全安全……」と
みんなが繰り返し唱え続け、全国民が心の片隅にも不安を感じなければ、間
違いなく神風が日本を守ってくれる。そう信じ切っているとしかぼくには思
えない。その姿は、「日本は戦争に負ける」などと口に出すことが御法度だ
った、かつての戦時体制下社会にも酷似している。安全信仰の空気が完全に
日本中を金縛りにしているのである。

 ついつい過激な書き方になってしまったが、ぼくの目には日本におけるY
2K問題がそのように見えていた。しかし大本営発表を信じた行く末が原爆
と敗戦の悲劇であったことを思い起こすとき、再び同じ愚を繰り返してはな
らないと思う。大本営発表を信じるのではなく、危機が目の前に横たわって
いるその事実をまず認め、 そのうえで自らの生き方、考え方を柔軟にしてい
かなければならないのではなかろうか。そしてそれが「内なるプログラム修
正」ということだったのである。

 「主よ、変えられないものを受け容れる心の静けさと、変えられるものを
変える勇気と、その両方を見分ける英知を、我に示したまえ」
 
 ぼく自身はいわゆるクリスチャンではないが、ラインホルト・ニーバのこ
のメッセージが、いま深く心に響いてくる。
 人間は受け容れがたい悲劇に遭遇したとき、誰もがその事実を拒否した
い、拒絶したいと思うだろう。どうかウソであってほしい。夢であってほし
い。これを受け容れることは私には耐え難いと…。しかしそれが変えられな
いものである限り、受け容れるしかない。そのとき、人はその心の静けさの
中に、あるいは神を見るのかもしれない。
 コンピュータ2000年問題は、ぼくにとっては「変えられないもの・避
けられないもの」として映っている。だとしたらこれは20世紀末の人類の
運命として受容するしかないだろう。そしてその目で社会を見つめるとき、
そこには「変えられるもの」もまたあることが分かってくる。「変えられる
もの」とは自らの生き方、考え方であり、そのことが発見できたときにはじ
めて「心の静けさ」へと誘われるような気がする。
 1999年も春になってしまったいまとしては、「見分ける英知」が何よ
りも必要だと思う。もちろんその見分け方はいろいろあっていいだろう。し
かし両者をはっきりと見分けるには、やはりまず事実を知ることが必要なの
ではなかろうか。
 そんなふうに考えたこともあって、このたび『Y2K・最新最終事情』
(1400円)を三五館から出版することになった(たぶん4月21日には店頭
に)。それは越智洋之氏への緊急インタビューと、足立晋氏からのメッセー
ジで構成されている。もしそれがみなさんの賢い判断に役だったとしたら、
これ以上の幸いはない。
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