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◎中国寧夏の計画が難航「黄河を飲む」大移民
中国西北部の砂漠に囲まれた寧夏回族自治区で、極貧の山地住民
を救おうと、１００万人を黄河流域に移住させる大プロジェクトが
始まった。だが、下流域からは大量移民で「黄河の水が飲まれてし
まう」と反発が出ており、計画は難航している。
計画は、寧夏中部の計１３万ヘクタールの荒れ地に６年間で３０
億元（約４５０億円）を投入、低地にある黄河からポンプで取水し
て農地に変え、山間部から住民を移住させるという壮大な内容。ク
ウェート政府が計６６００万ドル（約８１億円）の融資に踏み切る
など、国際的な支援も取り付けている。
昨年８月に移住が始まり、８３００人が新天地で小麦やトウモロ
コシの栽培を始めた。来年までにさらに５万人が入植する予定だ。
移民家族を出した南部高原の固原県開城郷にあるイスラム教徒、
回族約６００人が住む集落を訪ねた。楊栄慶さん（６０）は「雨は
少なく、耕地も限られ、農業を営んでも自給にも足りない。わたし
は学校に２年通ったが、貧しさのため４人の子供は、ほとんど字も
読めない」と語る。
住民のほとんどが、世帯年収５００元（約７５００円）未満だが、
移民受け入れの重点は年収３００元（約４５００円）未満の人々。
自治区当局者は「楊さんの集落には電気と水道がある。最優先で移
住させるのは、学校も何もない山地の人々だ」と説明した。
プロジェクト総指揮部の馬賛林・移民処長は「９３歳の老人まで
移住したがっている。早く移住させれば、山地に残る住民も耕地を
拡大できる」と、移住促進の必要を訴える。
だが、当初計画の１００万人移民は難しくなっている。中央政府
の黄河水利委員会が、寧夏の取水上限を年４０億トンなどと定めた
ためだ。「寧夏が今、利用しているのが３２億トン。残る８億トン
を移住地に回して養えるのは約７０万人しかない」と、馬処長。
中国の研究者の論文などによると、黄河は流域の砂漠化などで、
年間の推計流水量が１９５０年代の８３０億トンから現在４７０億
トンに激減。下流の山東、河南両省の下流では９７年に２００日以
上も川が干上がる「断流」現象が起きた。２０２０年には全長約５
５００キロ、中国第２の大河が、海に注がない「内水河」に変わる
との悲観的な観測も出ている。
流域の１億人以上が利用可能な水は年３６０億トン。寧夏省当局
者は「河南省などは、寧夏が水を浪費していると露骨に不平を示し
ている」と語る。限られた水資源をめぐる争いが、極貧解消のため
の移住計画にも影を落としている。（中国寧夏回族自治区銀川、共
同） （了）
［共同 ６月 ９日］ ( 1999-06-09-14:54 )
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