ホルモン剤で育つ牛   (文責 加藤不二男)


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投稿者 ★阿修羅♪ 日時 1999 年 8 月 03 日 00:44:37:

回答先: 誰も何にもやってないのか? 投稿者 ★阿修羅♪ 日時 1999 年 8 月 02 日 16:48:07:

ホルモン剤で育つ牛   (文責 加藤不二男)

●効率優先主義の弊害
 最近の畜産や魚介類の養殖は、大規模な施設による生
産効率優先の生産体制が主流になっています。より多
く、より早く大きくしようとしますから、病気にもなり
やすくなります。もし1頭(匹)でも病気になるとたち
まちと全体に広がり、壊滅的な打撃を受けますから、い
きおい予防のために抗生物質や合成抗菌剤が多投される
ことになります。 

 動物用医薬品は、食肉や魚介類に残留すると人の健康
に影響する危険性があり、食品衛生法で「含有してはな
らない」とされてきました。ところが九五年の食品衛生
法改定を前にして厚生省は、「近年、科学的な評価が国
内外で確立し、これら動物用医薬品を含む食品を摂取し
ても人への影響がない安全基準を設定することが可能と
なった」とし、また「ホルモン剤は残留基準が設けられ
ていないので、その整備をおこなうことが必要だ」とし
て九四年一月、食品衛生調査会にホルモン剤を含む動物
用医薬品七品目の残留基準を諮問しました。

 95年11月、食品衛生法調査会は、発ガン性が問題
になり結論の出なかった合成抗菌剤(カルバドックス)
を除く六つの動物用医薬品、抗生物質(オキシテトラサ
イクリン)、寄生虫駆除剤(イベルメクチン、クロサン
テール、フルベンダゾール)、ホルモン剤(ゼラノー
ル、トレンボロンアセテート)の残留基準値の設定を答
申し、96年7月1日から施行されました。

 わが国では牛肥育用ホルモンのうち、「天然型は自然
界に存在する分子構造で、特段の問題はない」(農水
省)として認められていましたが、合成型は禁止されて
いました。アメリカやオーストラリアなど牛肉の生産国
では、早くからホルモン剤の使用が認められていました
が、EU(欧州連合)では天然型、合成型とも使用が禁
止されています。

 肥育用ホルモンを使用すると、@性質が温和になり、
集団飼育が容易になる。A成長が早くなるので飼料が節
約できる。B肉質が柔らかく改善される。C肉の量が増
える。このように生産者にとってはいいことづくめで、
肥育ホルモンは「生産性向上薬」とも呼ばれています。

 95年11月に出された食品衛生調査会の答申では、
「マウスの毒性試験で下垂体前葉腫瘍の増加(ゼラノー
ル)、同肝腫瘍の増加(トレンボロンアセテート)、ラ
ットのすい臓の腫瘍性病変(同)がみられたが、これは
ホルモンバランスに影響を与えたからで、低用量であれ
ば問題がない」とされ、牛肥育用ホルモンの使用に基準
値を決定したとされています。しかし、このことは天然
であれ合成であれ、体内のホルモンバランスを崩し、腫
瘍などが発生する危険性を示しているのです。

 プエルトリコでは84年にホルモン剤が残留した牛肉
で、幼児ら3000人が被害にあったという報道があ
り、フランスでも事故があったといわれています。EU
が天然、合成の両剤とも使用を禁止したのは、当然でし
ょう。
 
 85年12月、当時のECは、「ホルモン剤が残留し
た食肉の人体への影響について知見が不十分だから、使
用を認めるべきではない」としてホルモン剤の使用を禁
止し、それを使った牛肉の輸入も禁止しました。

 それに対してアメリカは、「ECの措置は、科学的根
拠に疑問がある。輸入禁止は非関税障壁だ」とし、報復
としてECからの輸入品に2億ドルもの課徴金を課しま
した。これが「牛肉ホルモン戦争」と呼ばれたもので
す。

 89年、ECがアメリカへ係官を派遣し、ホルモン剤
を使用していないことを確認した牛肉については、輸入
を認めることで一応両者は合意しました。

 ところが、96年5月、WTOが設立されるや、アメ
リカは再びこの問題を蒸し返し、SPS協定を盾にし
て、WTOに提訴しました。EUはホルモン剤の危険性
を科学的に証明できなければ、輸入禁止の措置を撤回し
なければならなくなります。どう決着が着くかが注目さ
れています。

 それにしても、ECとアメリカが「牛肉ホルモン戦
争」をしている間、わが国はどうしていたのでしょう
か。

 91年4月に牛肉の輸入が自由化されるまで、わが国
は牛肉の輸入を制限していました。しかし、学校給食用
などとして輸入されていて、残留ホルモンについての規
制がなかったため、ホルモン剤を使用した牛肉がフリー
パスで入っていました。行政監察報告書(91年1月)
は、このことについて「わが国に合成ホルモンが残留し
た牛肉がどれだけ輸入されているか、その危険性はどの
程度か、明らかでない」と指摘しています。

 残留基準値が設定されたことを高く評価したり、一歩
前進という人がいます。しかし、もともと残留が好まし
くない化学物質に「残留してもよい量」を決めることを
評価できるでしょうか。
 肉牛ばかりではありません。アメリカでは、乳牛の泌
乳量を25%も増やす遺伝子組み換えホルモンが販売許
可されています。また、豚肉の脂肪の蓄積を抑制し、赤
肉部分を増加させる、アドレナリン系の作動薬も開発さ
れています。

 今回の牛肥育ホルモンの残留基準値の設定は、より一
層動物用医薬品の多用を促進させる一里塚になる危険が
あります。
(合同出版 「これでわかる食の安全読本」から)




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