「1999年は、日本の憲法政治の上で歴史に残る年になるであろう」

 
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投稿者 倉田佳典 日時 1999 年 8 月 12 日 20:57:27:

回答先: 住民台帳改正案も成立へ 委員会採決を省略 投稿者 倉田佳典 日時 1999 年 8 月 12 日 20:50:52:

◎相次ぐ国家法体制の強化 山内敏弘一橋大教授

 1999年は、日本の憲法政治の上で歴史に残る年になるであろ
う。戦後平和憲法の下で築き上げてきた法体制を大幅に改編する法
律がいくつも制定されているからである。
 その最たるものは日米防衛協力のための新指針(ガイドライン)
関連法であるが、これは憲法9条の下で日本がこれまで堅持してき
た不戦の原則を大きく変更するものである。地方分権整備法が自治
事務について国の代執行の可能性を認めたのも、周辺事態法が自治
体の「協力」を規定したことと関連しているし、改正米軍用地特措
法が首相の直接代行裁決の制度を導入したのも、沖縄の基地問題な
どを念頭に置いている。さらに国旗国歌法の制定も、天皇制シンボ
ルによる国民統合の強化とナショナリズムの高揚を企図したものと
思える。そして、このたびの盗聴法(通信傍受法)の制定である。
 ▽偶然でない法制定
 政府は、麻薬取引などの組織的犯罪の取り締まりは国際的な要請
ともなっており、そのためには警察による盗聴が必要だという。し
かし、盗聴法が新指針関連法などと時を同じくして制定されたのは、
決して偶然とは思えない。
 「(盗聴法は)単に泥棒や麻薬犯を捕まえるだけの話じゃない。
国家的な危機管理という考え方が根底にあって初めて成り立つ」と
いう小沢一郎自由党党首の発言は、盗聴法の本当の狙いを示してい
る。私なりに言えば、盗聴法の制定は戦争ができる国家法体制構築
の重要な一翼を担っているように思える。
 確かに、法律の規定上は盗聴対象の犯罪を原則として薬物、銃器、
集団密航、組織的殺人等に絞り込む形を取った。
 しかし、これら犯罪の捜査のためであれ、いったん盗聴が認めら
れた場合には、それに付随して死刑、無期、1年以上の懲役・禁固
に当たる犯罪について別件盗聴が認められている。また傍受すべき
通信に該当するかどうかを判断するための盗聴や、いわゆる事前盗
聴も認められている。一般犯罪や、犯罪とは無関係な通信、会話が
盗聴されることは避けがたい。
 ▽令状主義を逸脱
 警察の盗聴に際しては通信業者等による立ち会いが規定されてい
るが、立会人には切断権も認められていない。犯罪に無関係な市民
の会話が盗聴されても、それが刑事事件にならない限り、盗聴され
た市民には通知されることもない。
 憲法の令状主義によれば、犯罪等を特定明示した令状を本人に提
示することが要請されるが、盗聴の場合には、令状記載の犯罪とは
無関係な通信や会話が盗聴されることは避けられないし、本人への
令状の提示もあり得ない。盗聴は、そのように令状主義にそぐわな
い形で公権力が市民の私的生活領域に踏み込みプライバシーを侵害
するが、それだけではない。
 市民は他者との自由なコミュニケーションを通じて自らの人間性
を高める(自己実現)とともに、民主的社会の統治に参加する(自
己統治)とすれば、コミュニケーションの自由を間違いなく委縮さ
せる盗聴は、市民の自己実現と自己統治を脅かすことにもなりかね
ない。
 ▽市民こそ権力監視を
 インターネット時代の到来とともにコミュニケーションの自由の
多様な享受ではなく、監視社会がもたらされるとすれば、歴史の皮
肉といって見過ごすわけにはいくまい。さしあたっては「憲法の番
人」たる裁判所に期待をつなげるほかないが、それも十分とはいえ
まい。
 権力が市民を監視する社会ではなく、市民が権力を監視する社会
の実現のためには、結局は市民自身の「不断の努力」(憲法12条)
が必要であることを盗聴法の制定はあらためて私たちに教えている
ようである。
 ▽やまうち・としひろ 一橋大法学部卒。独協大教授を経て94
(平成6)年4月から一橋大教授。著書に「平和憲法の理論」など。
59歳。山形県出身。                 (了)


[共同 8月12日]  ( 1999-08-12-15:08 )




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