「万能細胞」研究にゴーサイン【読売】

 
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投稿者 gaattc 日時 2000 年 2 月 02 日 23:49:11:

 首相の諮問機関である科学技術会議の生命倫理委員会ヒト胚小委員会(岡田善雄委員長)は二日、ヒトの胚から、さまざまな人体組織になる能力を持つ「万能細胞」を作製、利用する研究などを条件付きで認める報告書をまとめた。医療など幅広い応用の可能性を重視した。ただ、胚は「生命の萌芽(ほうが)であり慎重に取り扱うべき」とし、条件として、国などによる二重審査の徹底などをあげた。報告書は近く公表、一般の意見も募ったうえで、三月末までに国の研究ガイドラインを策定する。万能細胞の研究を認めるかどうかについては、欧米でも議論が続いており、国としてゴーサインを出すのはわが国が初めて。
 報告書は、万能細胞の作製と研究を、それぞれ国が認めた少数の機関に限定。個々の機関と第三者機関による二重の審査を実施するとした。

 万能細胞のもとになる受精卵は、不妊治療のため体外受精を受けたカップルから、余った受精卵を譲り受けることを想定した。国内では、この治療で年間約一万人が生まれ、治療の際に多めに採取して凍結してある受精卵が、年間約三万個ある。

 ただ、その前提として、不妊治療機関が、カップルへのインフォームド・コンセント(十分な説明と同意)を得ることを義務付けたうえ、受精卵を万能細胞の作製機関に譲渡する際は無償とし、提供者の氏名や病歴などすべての個人情報は添付しないなどとした。

 報告書は、このほか、ヒトの胚に、クローン羊「ドリー」の作製で使われた、成人の体細胞を核移植するクローン技術を応用することについて、たとえ人間の複製が目的でなくても原則禁止とした。ただ、内容によっては個別審査して認める例外規定を設け、この分野の研究にも道を開いた。また、初期の胚を未受精卵に移植したり、人間と動物の細胞を混ぜ合わせたりする研究も、個別審査とした。

 東京農大の研究者が、文部省のガイドラインを逸脱し、ヒトの体細胞を牛の未受精卵に移植する研究をしていたことが昨年明らかになったが、こうした研究についても、ヒト以外でまず実績を重ね、将来、個別審査して検討するとした。

 クローン技術による人間の複製については、科学技術庁が今国会に、罰則付きで禁じる法案の提出を予定しており、万能細胞の研究とは別に、こうした規定を盛り込んだガイドラインを今回の報告書を元に作るとしている。

 この分野の研究は日進月歩であることから、いずれのガイドラインについても、随時見直すとした。

 ヒト胚小委員会は、欧米で万能細胞などの研究が活発化したのを受け昨年二月に発足。わが国としての対応を検討してきた。

                    ◇

 [万能細胞]正式名称は「胚(はい)性幹(ES)細胞」。マウスなどでは以前から作製が可能だったが、米ウイスコンシン大学の研究者が一昨年、人間でも成功、世界中で研究が活発化した。神経や皮膚、筋肉など体のあらゆる組織・臓器になる能力があり、各種の病気治療につながると期待されている。

 さらに、患者自身の体細胞を未受精卵に核移植してこの万能細胞を作れば、移植しても拒絶反応が起きないため、米国のベンチャー企業などを中心に研究が進んでいる。米国では、この種の研究に国家予算を充てることを法律で禁じているが、民間には規制がない。

 国立衛生研究所(NIH)は昨年、公的予算を投じるための研究指針案を策定したが、生命の始まりである胚を操作する研究には一般の拒否感も強く、結論は出ていない。英国やフランスなどでは胚研究を規制する法律があり、研究促進をめざす法の見直し作業が始まった段階にある。

                    ◇

◆「生命操作」二重の審査 研究推進と両立を図る◆

 [解説]ヒトの胚(はい)を扱う研究について、科学技術会議の生命倫理委員会のヒト胚小委員会がまとめた報告書は、生命科学の進歩がもたらした生命操作の技術にどう対処するべきか、昨年二月から続いてきた激論を反映している。

 万能細胞は将来、慢性的な臓器不足に悩む移植医療などに取って代わる可能性を秘めている。米国で、万能細胞作りに成功したことを受け、世界中で研究が活発化し、欧米諸国が、一律に禁止するのでなく、研究実施に向けて動きだしたのも、その期待が背景にある。

 他方で、胚は生命の始まりそのものといえ、たとえ貴重な研究のためとしても、その個々の細胞を取り出して培養するという操作を野放しで許していいのかという指摘もある。

 この相反する事柄をいかに両立させるかが、ヒト胚小委員会の最大の課題だった。今回の報告書が示した研究の二重審査や個人情報の保護などの規制策は、やむを得ない結論だと言える。

 実際、東京農大の研究者が文部省のガイドラインに違反して、人間の体細胞を牛の未受精卵に移植する研究を行っていたことが昨年十一月に明らかになった。さらに、中国の研究者が移植用の細胞や臓器の作製を目指し、人間の体細胞を核移植した胚を作っていたことが先月報道されたばかり。一定の歯止め策がなければ、社会の不信感が増幅するのは明らかだ。

 そうした不信を招かないよう、今回、ガイドラインの骨格を決める報告書をまとめたことは、欧米に対して出遅れたとしばしば指摘される日本の生命科学研究にとって、大きな一歩となろう。

 ただ、ヒトの胚を使う研究の可能性は、幅広い。万能細胞だけ、あるいはクローン技術の一部だけをガイドラインで規制する方式には、ヒト胚小委員会の議論の中でも、総括的な指針の体系を作ることがまず必要とする異論も出ていた。

 たとえば、産婦人科領域では、不妊治療や、その研究のために、日常からヒトの胚を扱っている。だが、今回の報告書は、「議論が進められることが求められる」と、結論を先送りした。

 胚研究は、次々と新しい技術が登場し、研究者たちはその度に、つぎはぎを当てるように規制策を作ってきた。研究を社会に受け入れてもらうためにも、全体を見据えた議論が、改めて必要になるだろう。(科学部 小川 祐二朗、本間 雅江)

(2月2日22:45)




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