通りすがりの風景

 
★阿修羅♪

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投稿者 SP' 日時 2000 年 3 月 11 日 10:03:53:

回答先: Ultimate Journey 投稿者 SP' 日時 2000 年 3 月 11 日 10:00:06:

 それまで存在すら知らなかった、別の自分と向かいあうという事態に慣れるのは、一苦労だった。とはいえ、コミュニケーション自体はあきれるほど簡単だった。これは驚くにはあたらない。自分自身と話すときには、障害になるものなど何もないのだから! 「話す」という言葉は、正確ではない。話し言葉よりもずっと速いスピードでコミュニケーションが可能だし、そのやりとりを「会話」と呼ぶのはあまりにも貧弱な表現だ。
 以下に記すのは、二回目以降の「向こうの私」とのやりとりの数々を要約・抜粋したものだ。そっとフェーズに入り、破れた障壁をくぐり抜けさえすれば、光線のドーム、「向こうの私」の心臓部に入ることができた。

〈私たちなら、「心臓」などという言葉は使わないね。あまりにも肉体的すぎるから〉
 それじゃ、中心といおうか。
〈私たちは、「全体は部分の総和より大きい」という言葉そのものなんだよ〉
 それじゃ君たちは、これまでに存在した私の「全体」ということか。どんなふうに、どんな私が存在してきたのかは知らないけれど。
〈これは焦点−−今の君を含めた、君たちみんなの構成するピラミッドの頂点なのさ〉
 滅茶苦茶だなあ!
〈そんなことはないさ。私たちは、きちんと秩序だっているよ。入って来るとき通った「記憶の層」を覚えているだろう〉
 ああ。
〈ちゃんと順番に並べられて、しかも種類ごとに分類されている。私たちの経てきた他の人生も同じだよ。何でもすぐに調べられるようになっているんだ〉
 それはいいな。
〈君が抱え込んでいる恐怖の層のことも考えてごらん。簡単に対処できるんだよ。君が恐怖を持ち込むスピードよりも速く、私たちはそれを転換することができるんだ。三十五年くらい前の自分がどんなだったか、思い出してみるといい。君の周りにいる人たちだって、何人かはそうだよ。ああいうのを、滅茶苦茶っていうんだ!〉
 ああ、わかるよ!
〈そうかな? 目の前にないものは、すぐに忘れてしまうものだよ〉
 感情が大量に流れ込んできている層もあったね。知らないうちに私は、凄くたくさんのものを抑圧しているに違いないな。私−−いや私たちは、それにも対処できるシステムを持っているんだろうね。
〈もちろんそうだ。以前より感情の量は少なくなったけれど、質の方は飛躍的に向上しているよ。いずれにしても、君が最近、感情に駆りたてられて行動するのは、意図してそうするときだけだからね。上出来だよ〉
 教えてほしいんだけど、君たちを呼ぶのに名前か、識別になるものが何かあるのかい。どうも、呼び方は一つだけじゃないようだね。
〈私たちは、時に応じて、必要なものを与えることができるからね。顧問団とか、シンクタンクとか、兄貴分とか、状況に応じていろいろさ。君の大好きな略語を使えばいいじゃないか。ボード・オブ・アドバイザー(顧問委員会)で、BOAとか。それとも、エグゼクティブ・コミッティー(執行委員会)の略はどうだい−−そっちの方が実態に近いな〉
 それにしよう−−エクスコム(EXCOM)だ!
〈いいね! さて、君もようやく、こうして入って来て、行ないを改めたんだから(これは君たちの言い方だけど)、いよいよ本当に活動を始められるな〉
 入って来て、行ないを改めた? どういう意味だい。
〈長い年月がかかったけれど、とうとうここまで来たってことさ。私たちがいくら君を助けても、いっこうに振り向いてくれなかった−−いつかは調べる気を起こしてくれるだろうと思っていたんだよ。でも、そうはいかなかった。それで、もっと直接的な手段に訴えることにしたんだ。つまり、肉体的な苦痛や、君が救助信号と呼んだものを使ったのさ〉
 あれは、君たちの仕業だったのかい?
〈ああいう仕事は、大抵私たちが受けもっているんだよ。君が自分のことで−−人間として目覚めて生活することだけで、手一杯のときにはね。少しでも君が、自ら手を煩わせるようになれば、好奇心を起こしてくれるんじゃないかと思ったんだ。実際その通りになったね〉
 はっきりさせておきたいんだけど、私が生まれてからずっと、助けてくれてたのかい?
〈もちろんさ。君は気づいてくれたこともあったけど、気づかないこともあったね〉
 一体、いつ頃から?
〈君が生まれる前からさ〉
 教えてくれなくちゃ。覚えてないよ。
〈だろうね。君は存在しなかったんだから。私たちは、もう一度人間になる決心をしたのさ。時と場所を選び、DNAを合成した−−肉体的な要素と、私たちの要素を混ぜあわせてね。私たちの中から最適と思われる部分を選んで一つにまとめ、送りこんだんだ。それで、君が−−私たちができたというわけさ!〉
 その送りこんだものっていうのは、一体何なんだい。
〈人格、そして記憶さ。それしかないだろう〉
 うん……ある程度は、これまでにつきとめたことだけど。誰でもそういうものなのかい−−人間は誰でも?
〈私たちの知る限りではね。しかし私たちほど経験を積んでいない者もいるよ。つまり選択の余地が少ないということだがね〉
 全然、経験を持たない者もいるのかい? この世に……無垢なまま生まれてくる者も?
〈人間としての前世を持たない者はたくさんいるよ。でも、人間以外の経験は山ほど重ねているんだ−−肉体、非肉体を問わず、ね。前世に動物だった者もいるよ〉
 人間としての人生を一回きりで終わってしまう者もいるのかな?
〈という話だね。実際に会ったことはないけれど。会っても、それとわからないのかもしれない〉
 どうして、みんな繰り返して−−何度も転生するんだい?
〈今のところ、人間の人生はあまりにも行きあたりばったりで、一回だけの人生では幅広い経験を得るところまでいかないんだ。それで、必要なものが得られるまで、転生を繰り返すというわけさ。わかるかな〉
 もっといいやり方があってもよさそうなものだ。秩序だってないし、効率的でもないじゃないか。
〈君は知らなくちゃならないな〉
 どういうことだい、知らなくちゃならないっていうのは。
〈遠い未来を訪ねたことがあったろう? あそこで見たものは、何もかもしっかり秩序だって効率的だったね。あそこへ行って、望む経験を選び出し−−そして、出て行けばいいのさ!〉
 ずいぶん長く待たなくちゃならないんだな。
〈いいかい、君は時間に縛られてはいないんだよ。この人生の後、もう一度だけ地球に戻って、前に訪ねた未来の人生を生きる。それから、私たちは自由になるのさ〉
 じゃあ、私の執行委員会は、先のことまで何でもわかっているんだな……
〈もちろん〉
 委員会には、役職ってものがあるだろう。君は、どういう役なんだい。
〈私は十九世紀のフランスで宮廷道化師をしていた。話すのが得意だったんだ。それで、君の相手をする役に選ばれたのさ。君の緊張を和らげられるからね〉
 緊張なんかしてないよ……うん、それ ほどはね。じゃあ、話を戻そうか。私が子供のときから、助けてくれてたのかい?
〈生まれて何年も経たないうちは、緊密な関係があったんだ。ごく幼いときはそうなんだよ。親や他の人間に少しずつ抑圧されていくまでは、大きな影響力があるんだ。でも子供は、受け入れられないようなことは話さないように教育される。そうなると、実質的な接触は急速に消えていってしまう〉
 他にも、何か?
〈たいしたことはしていないよ。ほとんどは、ただ見守ってただけさ。何回か、溺れそうになったところを助けたことがある。それに、重い病気だったことがあったろう。君がここまでやってきてしまったものだから、連れて戻らなくちゃならなかったよ〉
 猩紅熱に罹ったときだな。でも、それから先は? 他には−−十代のとき、どこからか現れた二ドルのこととか−−あれも君たちの仕業かい?
〈タロの悪戯の一つだな〉
 タロっていうのは?
〈我々の−−君の一人さ。別のエネルギー系に生きている人格だよ〉
 じゃあ、その他には?
〈十七歳のとき、車で川沿いの裏道を飛ばしていたことがあったね。猛スピードで丘を越えたら−−突然、古いトラックが道をふさいでいた。どうやって死なずに迂回できたのか、全くわからなかったろう?〉
 覚えてる! 何が起こったんだろうと思ったよ! じゃあ、君だったんだね?
〈私じゃないが。我々の一人がしたことだよ〉
 だんだんわかってきたぞ。君たちは、私の守護天使みたいなものなんだな−−少なくとも、そう呼ぶ人はいるね。
〈とんでもない。私たちは全然、君の何かなんてものじゃないよ。私たちと君は、一つなんだ。ずっと、君は自分で自分を助けてきたんだよ。私たちは、それを思い出す手助けをしている、君の一部というだけさ。君とタロは、二人して二ドルを置いたんだ。君とキャスは、ハワイでサーフィンをしていて流されたとき、二人で正しい方向を目指したんだ。それで、漁船に拾い上げてもらえたのさ。君と私たちはずっと、過去に戻って物事のおさらいをしているけど、もっと例を挙げて欲しいかい?〉
 いや、もうたくさんだよ!
〈とんでもない、そんなことはないさ。君の集めている人生の経験は−−とてつもなく貴重なんだよ〉
 ええ? どういうことだい?
〈そういう経験が自由へと導いてくれるのさ。これは君の旅なんだ−−君が責任者なんだよ。私たちはせいぜい、発見を願いつつ、アドバイスをどなりながらワイワイいっている乗客に過ぎないのさ〉
 何を発見するんだ?
〈出口さ。脱出速度だよ。永遠の時だけでなく、無限の距離を超越するんだ〉(p176-185)

 自分の乗り物についてよく知っておくことは重要だ。サービスエリアのあまりなさそうな所に出かけようとしているなら、なおのことだ。「向こうの私(IT、I-There)」という乗り物についての知識を得て、私の自信は格段に向上した。普通では考えられないことだが、どうやって進んでいるのか確かめもせずに、ここまで旅して来てしまった。(中略)もはや私は、睡眠中の活動(覚えていようといまいと)のことで、思い悩む必要はなくなった。今では、リラックスしてフェーズを漂い出て眠りに入ると、私のエクスコムが主導権を握り、私たちは一緒に働けばいいのだった。目的は主に、肉体の死というプロセスを経た人々を手助けし、救出することだった。私たちは大抵、相手の見方に応じて、様々な者の役をした。父親や母親、他界した友人や、ときには「天使」のような存在になったりもした。私と同じ「IT集合体」に属さない者は滑り落ちて、信念体系領域へと消えて行ってしまう。何らかの理由で自分自身のITの代表にめぐり逢えなかったり、自分の属する信念体系の入口を通り過ぎてしまったりした人たちについても、私たちは一種の好意から手助けしているのだった。引っ張って行く途中で相手が消えてしまうことにも、すぐに慣れた。たとえばセックスへの執着のように、共鳴する信念体系の放射に出会うと、彼らはフェーズを離脱して行ってしまうのだ。
「向こうの私」の一番の使命は、前世の人格たちを集めることだった。地球の生命系や他の信念体系に耽溺するあまり、人格の本質が失われてしまっていた者たちを集めるのだ。そのような人間精神が、ついに信念の鎖を断ち切り、体系の裂け目を見出すとき、我々のITのメンバーが救出に行くのだった。この活動には、時間というものは関与しない。こうした「救出」が、一般に過去と呼ばれるような時に起こった、ということを別とすればだが。
 また「援助モード」というものも、ITを構成する各個人に常にそなわっている。これによってITは、着想や考えや肉体的な刺激までも、地球の生命系で肉体的に暮らしている他の人たちに与えることができるのだ。私たちが皆、気づきもせず疑問も抱かずに、どれほどの助けを受けていることか、私にもようやくわかるようになった。こうした援助もまた、時間という観念には縛られない。決して強制はせず、助けを求める叫びが上がるときに、それに応えて援助が行なわれるのだ。信念体系の多くは、そういう救助信号を「祈り」と呼んでいるのだろう。(中略)
 なかなかイメージがつかめなかったのだが、私のITというものは、スポーツカーではなく、むしろバスや宇宙船のような乗り物で、内部に独自の小宇宙を持っているのだった。一方この「私」自身は、軌道上の母船との間を往復するシャトルや、偵察船のようなものに過ぎないのだ。(p195-197)

 私が生まれてこのかた受けてきた影響は皆、自分のITからのものだったと思っていいのかい?
〈そうは言ってないよ〉
 じゃあ影響って、どういうものなんだ?
〈最大の影響の一つは、他の個体との交流さ〉
 それはつまり、人間かい? 私たちみたいに構成された人間のこと?
〈その通り〉
 じゃあ、他人も影響するってことか。肉体を持たないサイクルにいても。
〈君は知っているはずだよ。これまでの、すべての人間の思考プロセスが、まるごと存在しているんだ。もちろん私たちの思考も含まれている。君は、それをHバンド騒音と呼んでいるね。気を許せば、こちらが押しつぶされてしまうほどの騒音だよ〉
 確かに私は、あの騒音から身を守ってきた。でも他に、まだ何かあるな。私はまだ、いろいろな感情に左右され続けているんだ。自分ではどうにもならない。どういうことなんだろう?
〈地球に存在する様々な生命意識のせいさ。たとえば君は、愛による連帯を体験している。それに、仔猫とか木々のことを考えてごらん。すぐに感情が動くだろう?〉
 議論の余地はないな。それから?
〈地球自体だってそうさ。数え切れないほどの影響を君に与えている。それに、非人類の知的生命体だっているんだ。私たちは、君が彼らに出会わないように、できるだけ方向をそらしておこうとしてきたんだがね〉
 どうして。
〈我々の何人かが、昔、彼らと出会ったことがあるんだけれど、その結果が芳しくなかったん だ。彼らは人類のことを、こちらが期待するような目で見てはくれない。違ったかたちで進化をとげてきたから、我々に対して優越感を持っているのさ〉
 それじゃ、宇宙に我々の兄弟はいないってわけか。
〈我々人類が期待するようなかたちではね。問題は、ああいう知性体が、私たちにはまだ理解できないエネルギーを利用できるってことさ。私たちが背負いこんでいるような制限なしに、そういうエネルギーを使えるんだ。タロに訊くといいよ。私たちと一緒に働いているうちで、人類でないのは彼だけだから〉
 凄いな! どうしてタロは……仲間に入ったんだ?
〈私たちは、偶然だったと思っている。偶然というのは起こるものさ。偶然だとか奇跡だとか思うものも、非人類の知性体からの介入だったりする。理由はわからないがね〉
 体脱中に、そういう知性体とのコンタクトらしきものを経験したことがあるよ。
〈実際、そうだったのさ。だが、君が意識的すぎて、その出来事を忘れそうもないとわかると、彼らの方で接触に興味を失ってしまったんだよ〉
 そうか……そういう知性体はたくさんいるのかい。
〈物質界には多すぎるほどさ。恐らく一兆はいるね。それに、「他の者」もいる〉
「他の者」? 他の、非人類の知性体かい?
〈私たちの−−私たちと君たちの−−すべての歴史を通じて、私たちが出会った、時空に起源を持たない非人類の知性体は一人しかいないなんて、信じられるかい。この分類に含められそうな者は他にもあるけれど、ごく稀だし−−見つけるのも難しい。いずれにせよ、私たちはその一人にしか出会っていないんだ〉
 私たちが孤独なのも当然だな。
〈かもしれないね。ところで、次の質問には答えられないな。答えは、君の中にあるよ〉
 本当かい? 探さなくちゃならない私たちの選択肢のことだよ?
〈そうさ〉
 なぜ私でなくちゃならないのか、まだよくわからないんだ。私は哲学者でもないし、一流の研究者ってわけでもないよ。
〈君は、我々がこれまで手にしたうちで最高のチャンスなんだ。君には、自分の力がわかっていない。でも、私たちにはわかっているんだ。君がこうして、内面に向かって一歩踏み出したからには、いろいろと変化が起こってくるよ〉
 もう、いろいろと変わってきているよ。もう一つ、教えてくれるかい? 気をつけて−−意識していなくてはいけない影響は何か、ということだけど。
〈喜んで教えよう。だけど、これは注意を促すきっかけに過ぎないんだ。ロートのかたちであげておこう……〉

 後になって私は、その時もらったロートをひもといてみた。ざっと翻訳し、凝縮すると、次のようになる。

 便宜的にMフィールドと呼ばれる、大きな広がりを持つエネルギー場がある。これは、我々の現代文明では事実上ほとんど認識されていない、時空の内外に共通して働く唯一のエネルギー場であって、多かれ少なかれ、すべての物質のうちに存在している。(中略)
 地球の生命系では、無生物から微生物、人間の精神に至るまで、あらゆるものに、Mは高度に凝縮されて存在している。そこに見出されるM放射の変動とスペクトルは非常に幅広いものだが、Mフィールド全体からすればほんの一部にすぎない。
 すべての生命体はコミュニケーションのためにMフィールドを利用している。動物は、人間よりもM放射に敏感である。人間は、ごく少数の例外を除いて、この放射に全く気づかない。
 思念は、よく利用されるMの振動であって、感情は、それに隣接するMフィールドの帯域をなしている。愛もまた、思念に隣接するMの帯域である。思念の誘発する現象(意識的・無意識的なものを含めて)は、Mの側波帯といえる。思念はMの放射に影響し、これを変調させるのだ。
 人類が時空内の形式によるコミュニケーション(話すこと、書くこと、触ること)を導入したことによって、Mに基盤をおく情報伝達システムの必要性が減じ、その発達が阻害された。とはいえ人類が、それ以外の要因によるMの流入にさらされ続けているのも事実である。人類は、意識しないままにMを発信し、受信しているのだ。
「向こうの自分」はMのみでできている。「向こう」は、時空を超えているが、Mフィールドの枠内には含まれる。時空内での精神の働きが弱まり、睡眠中に無意識に(あるいは意識して)フェーズを離脱した人間は、物質界とはつながりの希薄な状態になり、Mフィールド内で機能しているのだ。しかしそのプロセスに熟達した者は別として、大抵の人間はMフィールドと格闘するのが精一杯で、覚醒時と同様、Mのエネルギー系を意識するところまでいかない。逆にMのテクニックに通じた者は、それを地球の生命系で応用してみようなどとは考えない。もっと面白いことが他にあるからだ。
 肉体としての人生で生じる絆は、まさしくMフィールドの刻印である。個々の「IT集合体」の間に存在する絆は、精神‐意識がいかなる状態になろうとも持続する。時空のフェーズを完全に離脱した、すなわち死んだ者は、まず地球の生命系との接触を取り戻そうとするかもしれない。しかし技術が伴わず、ごく初歩的なことしか成功しない。地球の基準からいうと短期間のうちに、こうした交流は重要性を失ってしまう。しかし人生での経験から得られた新しい絆は、「IT集合体」相互の関係に影響を及ぼすのだ。深い愛情のように、絆が強ければ強いほど、異なる「集合体」間で続く交流は親密なものになる。
 人間精神の発するMフィールドの思念放射は、そもそもフェーズが介在してくれていなければ、耐え難いものになっていたはずだ。意識のフェーズと同様に、個人の認識システム全体も、M放射のごく一部としかフェーズが(チューニングが)合っていない。周波数が一致しなければ、受信は起こらない。Mフィールドの影響は、時空内だけでなくMフィールド内に(一時的に、あるいは常に)存在する者にも及ぶ。望ましくない思念放射を受信しないようにする方法は、しばしば痛い思いをしながら、経験によって身につけていかねばならない。ポイントとなるのは、フェーズの調整だ。周波数が一致する思念の受信部を遮断すれば、影響は伝わってこなくなる。これは、物質界でも非物質界でも同じことだ。
 集団の思念は、それがまず感情をかきたてるものである場合には特に、放射が極度に増幅されるため、非常に伝染しやすい。また逆に、一個人の、よく統制されたMフィールド放射は、帯域が充分に広ければ、集団のものより何千倍も強くなりうる。どこから発した放射であっても、それに共鳴する受信部を持つ精神と肉体(または、そのどちらか一方)に、影響を及ぼすことになるのだ。
 影響の内的な側面も見逃してはならない。感情的な思念には、情報信号を肉体に刻み込む力があるのだが、それは普通、違った解釈をされている。感情は、物理的なDNAのフォーマットばかりか、「向こうの自分」という精神的なパターンにまで干渉することがあるのだ。この干渉は、人間精神がMフィールドを操作するときに無意識のうちに起こる。この働きによって 、免疫のおかげで健康が与えられたり、はたまた深刻な病気にかかったり、小康を保てたり、擬薬で治ったり、奇跡的に治癒したり、逆に死んでしまったりと様々な結果がもたらされるのだ。
 人類の歴史を通じて、いつの時代にも、自分のMフィールドの思念放射をある程度コントロールできる者が存在していた。これは、そうした特別な人生経験のために選ばれて生まれてきた人格の集合体が統合された結果である。さもなければ、誰かが個人的に残留思念の蓄積からそのプロセスをあみ出し、実行できるシステムに移しかえたということだろう。コントロールというのは、流入してくる思念放射を、受信部のフェーズを調整することによって、思い通りに選択したり遮断したりすることだ。この特別な者たちは、精神‐意識によって、思念放射の特性や振幅を目的に応じて制御することができたのだ。歴史に残る特に顕著な例は、政治や宗教の指導者である。しかし最も能力のある者は、あえて持続的に活動しない道を選ぶために、世に知られないまま消えてゆく。彼らは、ある思念に別の帯域の思念を結びつけて、相手の心に様々な体験をつくり出したり、物質の構造も形も、さらに時空のエネルギー場までも変化させたりできる者たちだ。(p198-205)

 Mフィールドのテクニックに熟達しているのにそれを隠している人たちは、一体どうしているのだろう。現在この時空に、六十億人近い人間が肉体的に存在している。ロートを解釈した限りでは、少なくとも六千人は、人知れず、超能力ともいうべき力を持っているらしい。この数字はもっと少なくなるかもしれないが、それでも、世に知られないまま、思いつくことを(我々の思いもつかないようなことまで)何でもできる人間は、現在六百人はいるはずだ。私はそのうちの一人くらいには会ったことがあるかもしれない。だが、わからない。どこにいるのだろう。何をしているのだろう。どんなふうに能力を使っているのだろう。こんなにうまく世間から隠れているからには、それなりの理由があるはずだ。どんな理由だろう。それに、一体どうして、人間のままでいたりするのだろう。(p207)


 私たちの全員が、ここにいるのかい?
〈信念体系のどれかに捕まったままの者もいるし、これから千年くらいの間に人間の生を経験する者たちもいるけれど、君が号令をかけるときには、全員が集合するよ。私たちと結ばれているのが見えた他の人たちも、皆同じさ〉
 私が号令を……何の号令だい?
〈出発の号令さ〉
 どこへの?
〈君の指示するところなら、どこへでも。心配することはないよ。君にはわかるようになるから〉
 どうやってわかるんだ。
〈これから行く探求の旅を終えれば、わかるようになるよ−−君のいうところの「インターステート」を走り終えればね〉
 その旅は、いつすることになるんだろう。
〈影響についての悩みが解決したらすぐにだよ。さあ、話題を変えよう。肉体的に存在する人類の数のことを考えていたね。そのうちどれくらいが、肉体から出て動きまわる、君のような、あるいはそれ以上の能力を持っているんだろうって〉
 その通りだよ。六千人くらいだったね。
〈六千人もいたら、どれほど影響力があるか考えてごらん! あっという間に世界を変えられるよ〉
 じゃあ、どうしてそうならないんだ? どうして、そういう人たちの存在が耳に入ってこないんだろう。
〈君の言った通り、人知れず隠れているのさ。君が自分のことを公表するとは、我々も予期しないことだった。でも、君の人格パターンの一部が、そうすることを求めたんだ。君は一時、本当に世界を変えられると考えていたけれど、それは、我々の意図とは違う。他の体脱能力者たちは、ただ沈黙を守ったまま−−周りに影響を及ぼしている〉
 でも、どうして? どんな目的があって、沈黙を守るんだい。
〈またまた、君の感情的な人格が喋ってるね。人類に奉仕したくてたまらない君だよ。だけど他の人たちは、システムを変えることはできないし、変えたくもないと思っているんだ。地球の生命系に満足していて、自分の体験を深めるためにだけ、影響力を用いている。自分の能力を誰かに知ってもらいたいとは思わないんだよ〉
 そういう人たちも、私と同じようにその「インターステート」の旅に出るのかい。
〈ことによると、もう旅を始めているかもしれないよ。君は、君を知る人たちに影響されたし、その要求に応えるために、遅れをとってしまった。自由の一部をなくしてしまって、取り戻すのに時間がかかったからね。さあ、もう一つ片づけておくべきテーマがあるな。非人類の知性体のことだ〉
 彼らについて、知っておくべきことは?
〈一つだけ覚えておけばいい。彼らは、君より知的に優れていると思えるかもしれないが、ただ経験が豊かなだけなんだ。Mフィールドにおける共振について、ずっといろいろなことを知っているからね。かつて人間だったことのある者たちには、気をつけた方がいい。そうでない者より、人間というものについてよく知っているから、注意しないと影響されてしまうんだ。でも君は、うまくやれると信じているよ〉
 それで、他の−−人間だったことのない者たちは?
〈彼らについては予想がつかないんだ。二種類あるけれど、その一つは、我々と同じ起源を持ち、ただ物理的に宇宙の別の場所に生きている者たちだ。時間の中での生き方について、我々よりずっとよく知っているが、大抵人類に関してはわずかな興味しか抱かない〉
 もう一つの種類は?
〈それは、君が見つけ出さなくちゃならない。うまく見つけられたら、そしてそれが正しいものなら、我々は新しい故郷を手に入れることになる。君は、非人類の知性体の中を探しまわることになるけれど、惑わされたり、道に迷ったりすることはないはずだ〉
 探すっていうけれど、一体何を探すんだか、はっきり言ってくれないか。
〈我々が、次に目指す場所さ。これまで知識と経験を蓄積してきて、ここではもう充分に学んだからね。ここにとどまる理由はないんだ〉
 そうか。それで私が、この旅に出るというわけなんだな。
〈そうだよ。一つ知っておいてほしいことがある。どんなものと遭遇しようとも、何一つ、全く何一つとして、君を滅ぼせるものなんか存在しないってことだ。君は、肉体がどうあれ、Mフィールドのエネルギー体なんだから〉
 気が楽になったよ。私たちは、旅を楽しめるかもしれないね。
〈いいや、友よ。「私たち」じゃない。君ひとりで行くんだ。私たちは、君が戻ってくるとき目印になる信号灯さ。待っているよ、行くべき所を示してくれるのを〉
 でも……もし、私が戻らなかったら? それとも、何も見つけられなかったら……?
〈そうしたら、我々の別の者が使命を担うだろう、そのうちにね〉
 そうしたら、私はどうなるんだ?
〈我々に合流して、待つのさ。だけど、そんなことは考えなくていい。我々は、君なら大丈夫だと思っているんだ〉(p210-214)


 以下に記すのが、例によって翻訳に伴う問題はあるが、起こった通りのことだ。
 一九八七年十一月二十七日、午前三時……スタートは簡単だ、横になって注意を集中すればいい……スピードが上がりそうになるけれど、ゆっくり進むんだ、今回は何も見逃さないように……リラックスして、呼吸を整え……さあ、特異なフェーズの始まりだ……フェーズの断絶が深まり、肉体の感覚が薄れて、肉体によらない感覚機能が優勢になってくる……かつて恐怖を感じたなんておかしなことだ……眠りに落ちるのと同じじゃないか、ただ意識がなくならないだけだ……さらに、さらに進んで……さあ、地球の上に来た、地表の湾曲が見える高さだ……もっと高く……巨大な球体だ、宇宙飛行士の見るような球体だ、美しい……活動に満ちあふれている……記憶がおしよせてくる……そっとおしとどめる、一つだけ残して……「そうとも、息子の息子の息子、私はいつも共にいるよ」……私が私であることを助けてくれた力は、いつも共にいてくれるのだ、喜びにあふれて……
 ……フェーズをもっと進む……ただの闇だ、深い暗闇だ……質感のある闇……また少し進むとほら……何百万もの小さな閃光が、通過儀礼のために、二方向に動いている……私の今出てきた所から、内側へ漂うもの、外側へ漂うもの……どれも過渡的な段階にある人間の精神‐意識だ……内側へ行くのは、新たに肉体の生を始めようとする者たちで……外側を目指すのは、あらかじめ定められた避難場所、信念による幻想に入って行こうとする者たちだ……
 ……ゆっくりとフェーズを変えてゆく……あの人たち、飛行の速度を落として、ついには戸惑い混乱して止まってしまう人たちを見て、深い悲しみがこみ上げる……そして外から入って来る者たちの明るい光……援助者たちだ、死のパニックで動転するのをなだめる者たちだ……わかるだろう、助けを求めて叫ぶ側も、それを慰める側も、おまえは共に経験しているのだから……
 ……そして、信念体系領域がある……どの領域も「インターステート」の一つ一つの出口ランプから通じている……ゆっくりと通り過ぎる……一つ、また一つ……ぼんやりしていて、その向こうに何があるのか、見極めることはできない……今度は、もっとなじみ深くて、わかりやすい道がある……大宗教に通じる道だ……それを必要とする者たちに開かれた道……たくさんの光が流れ込んでゆき、逆に、地球の生命系に流れ出てゆく光はほんの少しだ……
 ……フェーズの移行をさらに進める、ゆっくりと……そうだ、最終回体験者の環だ、もうそこにある……止まるべきか? いや、通り過ぎるんだ、もっと外に向かって、さらに遠く、遠く……
 ……光の群れ、人間のエネルギーの光だ、多次元にわたって敷きつめられた光が、どこまでも続く……あれはIT集合体だ……どうして、以前は見逃したりしたんだろう? 今ならわかる、流入と流出……私のもそこにあるけれど、今は先を続けなくては……流れ出てゆく援助者たち、自分の集合体の失われた一員を見出した者たちだ……そして、再び流れ込んでくる。そして、あの一定した流出は……何千も、何千も……人格の集まりが、地球の生命系で新しく生まれる人間たちに入っていくのだ……(中略)
 ……何かが近づいてくる、人間だ、人間の形をしている……手を振って挨拶してくる……こちらがフェーズを少し変えると、姿が薄れていく……さあこれで、人間の思考の影響を脱した……ここには、前にも来たことがあるけれど、こんなふうではなかった……あのときは寂しかったけれど、今は寂しさなどない……
 ……突然 何かに圧迫され、おし包まれる……力を抜くんだ、もがくな、逆らわないで……恐怖はない……あるのはただ驚異だけ……柔らかな、優しいエネルギーが私の隅々まで探ってゆく……詮索好きな、問いかける、知的な存在……訊いてもいいかい……君は誰なんだ? ……エネルギーは動きを止める……非言語コミュニケーションを使うんだ……外に向かって心の糸を伸ばして、柔軟に……
 ……糸が伸びきって、ぴんと張りつめる……映像だ−−連星の太陽、その軌道をめぐる惑星、その惑星に閃光が飛び散っている……その糸を辿って、ここまで旅してきたのか……しめつけられていて、私は何も言えない……再び、歓迎の意を表して、二本の腕が広げられる映像……
 ……質問を送る……応答を何とか読みとろうとする……
《……退屈してじっとしていられなかった。あの惑星で学ぶべきことは皆学んでしまったから、外に向かって探検を始めたんだ。故郷の惑星では、肉体を持っているんだよ−−魚のような−−いや、むしろイルカのような……イルカのような……》
 ……暖かな親愛の情が閃き、さっと消え去った。私がイルカを愛しているのを読みとって、気をひこうとしたのか……しかし、彼はどこから来たんだ……彼……?
 ……フェーズ移行を、ゆっくり続ける……もうすぐKT‐95のはずだ、でも、止まりはしない……私が初めての幼年期を送った所……

 ……突然の明るい光、青い光だ……そして、頭の中に声が響く……
〈引き返せ!〉
 それは命令か、それとも警告か?
〈両方だ。引き返せ! 戻れ!〉
 ……読みとれない……でも、向こうがこっちの心を読めるなら、コミュニケートすることは……いや、これは心を持っていない……自動的に反応しているだけだ……肉体はなく、エネルギーだけだ……ただの装置だ……危険かもしれない……情報を送ろう……引き返せないんだ、私はもっと先に属しているんだから……
〈何者だ!〉
 ……映像だ、KT‐95を思い浮かべるんだ……色とりどりの雲、音楽、ゲーム……青い光は、瞬いて消えた。行ってしまった。番犬? 誰が置いたんだ? さあ、懐かしい光景だ……私の原初の故郷が、一瞬かいま見える。KT‐95と呼んだけれど、それが真の名ではない……ひとつの記憶に過ぎない……後ろは振り向かず、ただ通り過ぎよう……(p220-225)

 頭の中に、声が響いた−−冷たい、厳しい声だ……
〈我は、汝の仕うべき、主なる神である〉
 ……強い圧迫を感じる、まるで自分が溶けてなくなってしまいそうだ……水に沈められて……肺の中まで水びたしだ……空気を吸わなくては……水を吐き出して……いや、そんなはずはない、そうじゃない……水なんかない……私にも肺なんかないんだ。そう思い込まされているだけだ……影響を受けているだけだ……実際には違うことはわかっている。圧迫が緩んだ……エネルギーの指が私の核を探るのを感じる……これは止められる……受信部を閉ざすんだ……しっかりと……やり方は覚えてる……
〈覚えていない! 覚えてなどいない!〉
 いや、確かに覚えているんだ……あのテストを、私のITのしてくれた訓練を……あれは、とてもリアルだった……大丈夫、この強く迫ってくるエネルギーにも対処できる……私を傷つけることなどできない。しかし、これは何だ? この神は一体何なんだ? 私を傷つけることも、左右することもできないんだから……落ちつけ、暖かく、友好的に……
〈我を、汝の神として受け入れぬのか?〉
 ……脅迫する神というイメージが、滑稽に思える……このイメージを放出しよう……
〈我を恐れぬのか?〉
 ……何度吹き飛ばされて、何百万もの破片に砕け散っても、必ず元通りになる自分のイメージを送ろう……
〈呪わしき者よ! 汝は、汝の主、我のエネルギーの滓に過ぎぬというのに!〉
 ……そのエネルギーは点のように小さくなり、消え去った。こういう者に、まだどれほど出会わなくてはならないのだろう……労力の無駄だ……(p228-229)

 ……夢の記憶が広がってきた、そして目覚めも……しかし、今の私は観察者だ……流れを遡ろうとしている……前に私は……KT‐95の遊びの輪に注入された、エネルギーの閃光だった……退屈……好奇心……離脱……ひとり故郷を離れて、何かを探し、探して……無限に続く、エネルギーでできた明るい太陽の列……他の者たちと一緒になって探し続ける……何を? 何とも表現できない……そして、黄色い太陽の周りを回る青い惑星の放射に出会い……進入する……入ってゆく……それになるために……何になるために? ……人間……そうとも、人間になるためだ! こうして見ているだけでも、とてもリアルだ。歪められたエネルギーでできた、肉体的存在になるということ……物質になる……制限された形態のエネルギーになるということ……その制限の重苦しさ……しかし、エネルギーを肉体の中に保ち、その機能を維持しようとする生来の欲求は……素晴らしくもあり、矛盾に満ちた設計ともいえる。次に、作用し合いながら異なる形態に転じていく必要が生じる……維持することができなくて、何度も何度も試みを繰り返し……生の過程を数知れず繰り返し……毛深い顔をした初めの小さな生き物から……何千年もの過程……人生を経て……何度も何度も、意識と知性の向上と低下を繰り返し……それらすべてを合わせたものが、「全体」に持ち帰るべき贈り物なのだ……しかし、私はそれを持っていない……やっと、部分が撒きちらされたわけがわかった……夢から、どんな贈り物をもたらせばいいのかわかった! そして私は……私は、あの無数の人生を、すべてひっくるめたものなのだ。すべてが私なのだ。私はそれを何と呼んでいたっけ……そう、私のITだ。でも、今の私はその一部に過ぎないではないか……
〈だから、おまえは小さくて不完全なのだよ。しかし、理由は他にもある〉
 そうだ……他人のIT集合体もたくさん、私を待っているのだ。私たちはみんなで、一塊になって旅立つのだ……そうとも……だから、夢の中で私は……先遣の……偵察係だったんだ……
〈全員が集まるとき、おまえは自分の贈り物を持ってくることになるだろう。もはや、小さくはなく、我々と同じような者となって。他の者が皆、おまえと共に来るのだから〉
 あなたも、同じようにして来たのか? あなたの一部分も、まず先にここに来たのかい?
〈我々の場合は違った。おまえがこうする必要があったのは、分散が非常に広範囲だったせいだ。我々の惑星では、すべての種が一体となって覚醒し、行動したのだ〉(p234-236)

 インターステートを辿って行ったあの深遠な旅から回復するまでには、何週間も、熟考に耽る必要があった。だが、「インターステートを辿る」という表現は、完全に正確とはいえない。目的地に着くまでに、途中でいったん向きを変えなくてはならなかったのだから。
「回復する」という言い方も誤りだ。私は、どう見ても回復などしていないし−−これから回復する見込みもない。起こった変化は不動のものだ。こんな経験をして、それを伝えに戻って来た人間が他にどれくらいいるのかわからない。どんな報告も、その当事者や文明や時代背景によって色づけされてしまうものだ。私の場合もそうだった。それにどんな言葉も分析も、あの経験の意味や正当性を完全にあらわすことなどできはしないだろう。
「基本」−−欠けていた「基本」は、私にとって、今や「既知」となった。それは、信念でも希望でも信仰でもない。直観や感情によるものでもない。私の精神‐意識に、確固たる位置を占めた「知識」なのだ。実は、ずっとそこにあったのだが、その本質をあらわす様々な兆候を認識できずにきてしまったのだった。受け入れていることと「知る」こととは別物だということだ。
 というわけで……「基本」は「既知」となった。全人類を含む物質界は、進行し続けている創造プロセスだ。確かに、創造主が存在する。創造主とは誰か、何者かという答えは、あの「放出口」と「孔」の彼方にあって、私もそこまでは到達していない。だから、その点に関しては答えられない、今はまだ。私が何か言えるとすれば、「放出口」の近くで光を浴びた凄まじい体験と、この世界と私自身に起こっている進化という創造的プロセスのことだけだ。(p245-246)

 以前訪ねた、何千年も前の文明のことを思い出した。百万以上の人々がいた。彼らは「信号」を受けて、一個の完全なユニットとして出発しようとしていた。さらに思い出したのは、急に瞬いて消えてしまった人々のことだ−−肉体を離れた何十万という人々の集まり、互いに結び合わされたいくつものIT集合体が、急に消えてしまったことだ。そしてもう一つ、何年か前に訪れた、千五百年ほど未来の、肉体を離れた人類の文明のこと。私自身もあの文明に属していたが、彼ら−−つまり私たちは、完全な統一体となって、まさに出発しようとしていた。(p248)

 なぜ、そんなふうに統一体となる必要があるのか。それは、私たちが真に「ひとつ」になるためだ。完全となり、数限りない経験と愛の贈り物を携えて行くためだ。そうして、統一体となった私たちは瞬いて消え去り、「孔」を抜けて行くことができるのだ。(p249)

 というわけで、話は個人的な体験というところに戻ってくる。もし境界を越えて、「無」と呼ばれる領域を訪れて帰還し、信念体系に妨げられない明確な言葉でそれをありのままに表現できるとすれば、やがて世界共通の「知識」が確立され、結果として、恐怖が取り除かれることになるだろう。しかし今のところは、どうしたらそれが実現できるのか、わかっていない。
 それでも私たちは、それを既に始めているのかもしれない−−ただ、覚えていないというだけで。
 死んだらどうなるのか、何が起こるのか、一抹の疑いもなく知ることができるなら、私は全く変わってしまうだろう。つきまとう影に−−「一歩間違えば、人生はおしまいだ!」と囁きかける影に−−おびえたりせずに、肉体の生を完全に全うできるようになるのだから。また、肉体としての人生にもはや何の光も見出せないとわかったとき、誰でもそれを捨てて旅立つ権利があることを知るなら、人生はどんなに変わることだろう! 愛の絆は、何が起ころうとも、地球の生命系も時空も超えて続くのだという保証が得られるなら−−愛する者が去るとき、どこでまた逢えるのか必ずわかると確信できるなら−−何と素晴らしい自由が与えられることだろう!(p252)




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