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第1611号（2000年3月20日）
警察権力の腐敗と抗争を暴く (4)
露呈した京都府警の権力犯罪 -- 京都小学生惨殺事件
証拠もないまま「任意同行」
昨九九年十二月二十一日、新幹線関連施設の爆破テロ事件や大阪摂
津市の女児誘拐事件と同時に発生した京都の小学生惨殺事件。この事
件は、白昼の校庭で小学生が首をナイフでメッタ刺しにされ殺害され
たという衝撃性、事件の捜査の撹乱をねらうかのように「てるくはの
る」を名乗る「犯行声明」が現場に残されていたことから、かの神戸
小学生惨殺事件（九七年）を想起させるものであった。
この事件から一ヵ月半後の二月五日に、京都府警は、突如として次
のようなことを発表した。この日に京都府警の捜査員が、現場から四
キロ離れたところに住んでいる二十一歳の男性を「重要参考人」とし
て「任意同行」をもとめた。ところがこの男性が、「任意同行」を拒
否して逃げだし、近くの高層団地の「十三階」から「飛び降り自殺」
してしまった。遺留品の中に「犯行を認めるメモ」があり、この男性
を容疑者として書類送検する、と。
「飛び降り自殺」という警察発表のデタラメ性については後述する
が、まずもって「任意同行」それ自体が、まったくデタラメなのだ。
すなわち、京都府警は、事件発生から四十日もすぎてなお「犯人」
を絞り込むこともできず事件は迷宮入り≠ｷるのではないかと噂さ
れていた。ところが京都府警は二月五日に、突如として二十一歳の男
性に「任意同行」を求めたのである。この男性が犯行におよんだ物証
も、動機も確定できないなかで、いやそれゆえに、警察権力は男性に
事件を「自白」させ、これを唯一の証拠として、小学生惨殺事件の
「犯人」としてデッチあげようとしたのだ。京都府警は、「自白」に
もとづいて、小学生を惨殺した「証拠」をデッチあげようとしたに違
いない。まさにこれは、神戸事件のＡ少年にたいする「任意同行」―
偽計による「自白」の強要―自白にもとづく逮捕と、さらなる「自
白」に見合う「証拠物の発見」―「犯人」と断定したうえでの「処分
決定」という経過を彷彿とさせるものではないか。
この後の展開＝Aすなわち、「任意同行」された男性の「自殺
死」発表をめぐる疑惑。また、「自殺」とされている経緯そのものに
はらまれている謎。そして、「被疑者死亡」としての書類送検と、こ
れを正当化するための犯行を裏づける＜＜ｂﾌ発見というサモサモ
らしい発表。――これらは、警察権力が「任意同行」―「自白」―逮
捕―「証拠物の発見」というストーリーをあらかじめつくっていたこ
とをうかがわせるに十分である。と同時に、捜査員のミス≠烽ｩら
んでこのストーリーが崩れ、つじつま合わせと隠蔽に汲々としている
彼らの姿が、露わになってもいるのだ。
「容疑者飛び降り自殺」?!――疑惑に満ちた警察発表
次は、京都府警のいう「飛び降り自殺」なるものについて。二月五
日の発表では、この男性は、自宅近くの公園で捜査員が「任意同行」
を「説得中」に突然逃げ出し、二〇〇メートル先の高層団地の「十三
階」から飛び降り自殺し、団地の敷地内で遺体が発見された、とされ
ていた。そして、府警の警察官は、逃げ出した男性を追尾したが、公
園の近くの国道下の地下道で男性を見失い、団地の中庭に遺体がある
という通報で、現場に行き、この遺体が、「説得」していた男性であ
ったことを確認した、ということであった。
ところが、おりからの神奈川県警などの警察の不祥事に注目してい
たマスコミは、住民の目撃証言などにもとづいて、府警の「自殺」発
表についての疑問≠ﾆ疑惑≠暴露しはじめたのである。マスコ
ミなどによって明らかにされている事実は、以下のとおり。
@府警は、「容疑者」とされていた男性の遺体が発見されてから六
時間以上もたってからようやく、男性が「自殺」したことを記者会見
で発表した。また、男性の母親には、遺体発見後、三時間にわたって
男性が死亡したことすら隠蔽し続けていた。
A男性が「飛び降りた」場所は当初「十三階」とされていたが、な
んと、男性の着衣とクツをビニール袋に入れて持った捜査員が外階段
を昇って十三階に上がってきたのを十三階の住民が目撃している。こ
のことが暴露されるや、府警はあわてて飛び降り≠ｽ場所を「屋
上」へと訂正した。
B住民の通報でかけつけた警察官が遺体を確認したと発表してはい
るが、一一〇番通報でかけつけた伏見署員が現場に到着した時には、
すでに府警本部の捜査員が遺体につきそっていた。しかも、伏見署員
が捜査本部の捜査員に遺体の身元を問うたにもかかわらず、本部の捜
査員は、五時間にわたって隠蔽し続けた。
C捜査員が男性を「見失った」とされているが、じつは、死亡した
男性と階段付近で激しく言い争っている声を聞いているという住民の
証言がある。また、「ドスン」という音がしたあと、二人の男があわ
てて一階に下りていったという目撃証言もある。目撃者は、この二人
の男を刑事だと断定している。
――およそ、これらの事実からして、刑事どもが、この男性を「見
失った」どころか、団地の階段付近で男性の上着をはぎとるほどの激
しいもみあいをしたあげく、このもみあいの過程で彼を転落させたの
ではないか、ということが容易に推測できる。そして、この自己の犯
罪行為に驚きあわてた下手人≠ﾇもが、あわ
ててその現場から逃走
したであろうことは想像に難くない。
明らかにこの事態は、マスコミが報道しているような京都府警の
「不祥事」とか「大失態」とかではない。警察権力が一人の男性を京
都事件の「犯人」としてデッチあげようとして、故意にか過失でか殺
してしまったという事態を隠蔽し、とりつくろうためにおこなったウ
ソ八百にほかならない。
「死人に口なし」――「犯人自殺」として終結を策す
「任意同行」で公園につれだされた男性が、「おれ、してないやん
か」と、必死になって「犯行」を否定していたにもかかわらず、この
二十一歳の男性が「死亡」するやいなや、ただちに「被疑者死亡のま
ま書類送検」を口にした京都府警。この府警の対応そのものに、なん
としてもこの男性を京都事件の「犯人」に仕立てあげて「解決」する
という思惑が露わになっている。
だがそもそも、府警が犯人捜査の手がかりとして当初発表した事柄
は、かの二十一歳の男性の犯行とするにはあまりにも矛盾だらけでは
ないか。
@犯人が現場に残したとされる塗料缶に付着していた指紋と、この
男性の指紋がまったく一致していない。
A現場に残された「犯行声明」の筆跡とこの男性の筆跡が、そもそ
も「同一人物とは断定できない」とか、「似ていない」などと報道さ
れているにもかかわらず、このことに完全に沈黙している。
B当初、犯人の特徴を、「身長一五〇―一六〇センチの小柄な十四
―十五歳の少年」と発表してきたが、この男性の身長は一六〇センチ
あり、また、二十一歳である。
まさに、こうした矛盾をつきつけられるにおよんで、京都府警は、
「死人に口なし」とばかりに、遺留品のリュックの中から、「犯行を
ほのめかす手紙」がでてきたとか、男性の姿はビデオの姿と一致した
とかというリークを、マスコミにおこなっているのだ。神戸事件にお
いてやったのと同様の手口で。
神戸事件においては、権力は、事件の「犯人」としてデッチあげて
逮捕したＡ少年を、少年事件の審判が非公開であり事実審理もほとん
どなされないことを逆用≠ｵて「犯人」と断じ、関東医療少年院に
送致して社会的にも隔離し、もって真相の隠蔽をはかったのであっ
た。今回の京都事件においては、「被疑者死亡」のまま送検すること
によって、事件そのものをウヤムヤのまま終息≠ｳせようとしてい
るのが警察権力なのである。
警察発表をうのみにしてきたマスコミも同罪
ところで、この京都事件においてもまた、神戸事件と同様に、警察
権力のリーク情報をそのままブルジョア・マスコミが報道するという
かたちで情報操作がなされた。マスコミは、二十一歳の男性を「任意
同行」しようとしたが「飛び降り自殺」してしまった、などという京
都府警の矛盾だらけの発表を鵜呑みにして、そのまま報道したのであ
った。
しかも、今日次のようなことも暴露されている。京都府警は、当初
男性が「十三階から飛び降りた」と発表した際に、マスコミに「現場
撮影」をやらせたのであるが、なんと、十三階ではなく十一階の廊下
にクツを並べて撮らせたとのことである。これをマスコミは「現場写
真」と称して平然と報道していたのだ。
このように、権力犯罪は、権力発表やデタラメなリーク情報を鵜呑
みにして報道することを常とするマスコミによって補完されている。
このことが、新潟県警の腐敗においても、また京都事件における京都
府警の対応においても満天下に露呈したのだ。
たとえ各マスコミが、わが同盟の警察権力の腐敗の暴露の後塵を拝
して、警察の「不祥事」隠しなどをいまさらながら暴露しはじめたと
しても、権力犯罪を補完してきたことの反省などもちろんやっていな
い以上は、より狡猾な情報操作に踊らされているだけのことなのだ。
このかん、警察権力が、マスコミにたいしても平然と大ウソ・デタ
ラメを発表するということが次つぎと明らかになってきているのであ
るが、今回の件でブルジョア・マスコミもまたその片棒をかついでい
るということをはしなくも自己暴露したのである。
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。