「人種差別撤廃条約」の制定経緯・全文・Q&A

 
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投稿者 外務省HPから転載 日時 2000 年 4 月 15 日 23:51:39:

●石原東京都知事の口舌脱糞騒動が「人種差別撤廃条約」に抵触する疑いが出てきた。そこでこの条約がどんなものか知るためネットサーフィンして、外務省WEBページから「人種差別撤廃条約」の資料集を見つけたので、関連部分を抜粋して紹介しておく。
●昨今のシオニスト勢力の“ショア・ビジネス”に見られるように、この条約を悪用すれば真摯な歴史研究を封殺することも可能なので、使い方を誤れば“核爆弾なみ”に危険かも知れない。肝心なのは、こういう条約の適用が問題になるような軽率な言動を公権力は厳に慎むべきだということだ。その意味で石原は明らかに落第である。「右翼小児病」と呼んでもいい。アングロアメリカン・エスタブリッシュメントのマスコミ機関にまで軽率な発言をするとは……。IT時代とは戦略的にみれば「情報戦」の時代である。石原のスカトロ的発言を契機に、日本は政治的にキンタマを握られることになろう。米国国務省は“人権カード”を重要な外交戦略兵器に用いてきたが、10年以上前『NOと言える日本』で外交戦略的弱点を作り出した石原は、あの悪夢を呼び起こしたのだから政治家失格の痴呆老人というほかない。
●以下に紹介するのは、外務省WEBページ「人種差別撤廃条約」資料集から抜粋である――

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●● 目 次 ●●

はじめに
条約の作成経緯
条文の見出し一覧
条約の全文
English Japanese
Q&A

〈参考資料〉
あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する
国際連合宣言全文(参考資料1)
English Japanese
条約の締約国一覧表(参考資料2)



●●● はじめに
 我が国は、1995年12月15日、「あらゆる形態の人種差別に関する国際条約」に加入しました(1996年1月14日に我が国について効力が発生)。
 この条約は、当時ネオ・ナチズムの活動がヨーロッパを中心に続発したこと、南アフリカにおいてアパルトヘイト政策がとられていたこと等を背景に、1963年の第18回国連総会において、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国連宣言」が採択され、その後、優先的にこの条約の起草のための審議が行われた結果、1965年の第20回国連総会において、全会一致で採択されたものです。
 この条約は、締約国が人権及び基本的自由の平等を確保するため、あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策等を、すべての適当な方法により遅滞なくとること等を主な内容とするものです。既に日本を含め148ヶ国(1996年6月現在)により締結されており、国際的に見て普遍性を有するものとなっています。
 差別の撤廃については、法制度面のみならず、意識面、実態面においても不断の努力によって向上させることが大変重要です。この条約の前文にも謳われているように、すべての人間は自由、平等であり、いかなる差別もあってはならないことです。
 この冊子が、多くの方々の「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」の正しい理解の一助となり、また、一人一人が日常の生活の中で人権の尊重に対する意識を高め、いかなる差別もない社会の実現に向け努力してゆかれることを願っております。

外務省国際社会協力部長
朝海 和夫


●●● 条約作成の経緯 ●●●
 人権の尊重は、国連が最も大きな関心を払ってきたことの1つです。例えば、国連憲章第1条は、国連の目的の1つとして、「人種、性、言語又は宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成すること」と規定しています。また、1948年に採択された世界人権宣言は、「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」と宣言しています。
 しかし、現実には、1959年〜60年にかけて、ゲルマン民族の優越性を主張して、反ユダヤ主義思想を扇動したりするネオ・ナチズムの活動が、ヨーロッパを中心に続発したほか、当時南アフリカ共和国では、アパルトヘイト政策による人種差別が行われていました。このような人種、民族に対する差別は、国連憲章や世界人権宣言に謳われている人間の尊厳や権利についての平等を否定するものであり、また、一国のみならず、諸国間の平和及び安全をも害するものです。
 こうした憂慮すべき事態が起きていたことを背景に、1960年の第15回国連総会において、社会生活における人種的、宗教的及び民族的憎悪のあらゆる表現と慣行は、国連憲章及び世界人権宣言に違反することを確認し、すべての政府がそのような慣行等を防止するために必要な措置をとるよう要請した「人種的、民族的憎悪の諸表現」と題するナチズム非難決議が全会一致で採択されたほか、植民地主義及びこれに関連する分離及び差別のすべての慣行を終結しなければならない旨の内容を盛り込んだ「植民地及びその人民に対する独立の付与に関する宣言」が採択されました。
 しかし、人種、民族に対する差別は依然として存在し、このような差別を撤廃するためには、法的拘束力のない決議のみでは十分でなく、こうした決議に加え、各国に対し、差別を撤廃するためのより具体的な措置の履行を義務づける文書の採択が必要とされました。
 こうして、1962年の第17回国連総会において、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する宣言案及び条約案の作成」に関する決議が採択され、1963年の第18回国連総会には、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国連宣言」(注1)が採択されました。その後、既に、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」及び「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の作成作業が行われていたにもかかわらず、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」の草案の起草のための審議が優先的に行われ、その結果、宣言の採択からわずか2年後の1965年、第20回国連総会において、この条約が全会一致で採択されました。
 この条約は、1969年1月4日に効力を生じ、1996年6月6日現在、日本を含め、米国、英国、ドイツ、フランス、カナダ、イタリアなど148ヶ国が締結しています(注2)。

(注1)参考資料1参照
(注2)参考資料2参照

●● 成立の経緯一覧表 ●●

●1959年〜
●1960年 ネオ・ナチズムの活動がヨーロッパにおいて続発
●1960年 第15回国連総会において「人種的、民族的憎悪の諸表現」と題するナチズム非難決議が全会一致で採択される。また、 同総会において「植民地及びその人民に対する独立の付与に関する宣言」が採択される。
●1962年 第17回国連総会において「人種的偏見並びに民族的及び宗教的不寛容の諸表現」と題する決議案及び あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する宣言案及び条約案の作成」に関する決議案が採択される。
●1963年 第18回国連総会において「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国連宣言」が全会一致で採択される。
同年、国連人権委員会において、その下部機関である差別防止・少数者保護小委員会の意見を考慮しつつ、条約案を優先的に審議することを要請する旨の決議が採択される。
●1964年 国連人権委員会に、差別防止・少数者保護小委員会より条約案が提出される。
●1965年 12月21日、第20回国連総会において「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」が全会一致で採択される。
●1969年 1月4日、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」が発効する。
●1995年 12月15日、日本が「条約」に加入し、146番目の締約国となる。
●1996年 1月14日、日本について「条約」の効力が生じる。

●●●●●● 条約本文 ●●●●●●
International Convention on the Elimination of All Forms of Racial Discrimination

  ●● 条文の見出し一覧 ●●

前文
第1部
 第1条(人種差別の定義)
 第2条(締約国の基本的義務)
 第3条(アパルトヘイトの禁止等)
 第4条(人種的優越又は憎悪に基づく思想の流布、
     人種差別の扇動等の処罰義務)
 第5条(市民的、経済的権利等に関する人種差別の撤廃
     及び法律の前の平等)
 第6条(人種差別行為に対する保護、救済)
 第7条(条約の目的、原則等の普及)
第2部
 第8条(人種差別撤廃委員会の設置)
 第9条(報告の提出義務)
 第10条(人種差別撤廃委員会の運営)
 第11条(締約国の義務不履行)
 第12条(特別調停委員会の設置)
 第13条(特別調停委員会の任務)
 第14条(個人及び集団からの委員会への通報)
 第15条(信託統治地域等の住民からの請願)
 第16条(他の国際文書による紛争又は苦情の解決)
第3部
 第17条(署名、批准)
 第18条(加入)
 第19条(効力発生)
 第20条(留保)
 第21条(廃棄)
 第22条(紛争の国際司法裁判所への付託)
 第23条(改正)
 第24条(国際連合事務総長による通報)
 第25条(正文)
(日本語訳の見出しは、条約の理解と検索の便に供するために、参考として付したものです。)

●●● あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約 ●●●

この条約の締約国は、
 国際連合憲章がすべての人間に固有の尊厳及び平等の原則に基礎を置いていること並びにすべての加盟国が、人種、性、言語又は宗教による差別のないすべての者のための人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守を助長し及び奨励するという国際連合の目的の一を達成するために、国際連合と協力して共同及び個別の行動をとることを誓約したことを考慮し、

 世界人権宣言が、すべての人間は生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳及び権利について平等であること並びにすべての人がいかなる差別をも、特に人種、皮膚の色又は国民的出身による差別を受けることなく同宣言に掲げるすべての権利及び自由を享有することができることを宣明していることを考慮し、

 すべての人間が法律の前に平等であり、いかなる差別に対しても、また、いかなる差別の扇動に対しても法律による平等の保護を受ける権利を有することを考慮し、

 国際連合が植民地主義並びにこれに伴う隔離及び差別のあらゆる慣行(いかなる形態であるかいかなる場所に存在するかを問わない。)を非難してきたこと並びに1960年12月14日の植民地及びその人民に対する独立の付与に関する宣言(国際連合総会決議第1514号(第15回会期))がこれらを速やかにかつ無条件に終了させる必要性を確認し及び厳粛に宣明したことを考慮し、

 1963年11月20日のあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際連合宣言(国際連合総会決議第1904号(第18回会期))が、あらゆる形態及び表現による人種差別を全世界から速やかに撤廃し並びに人間の尊厳に対する理解及び尊重を確保する必要性を厳粛に確認していることを考慮し、

 人種的相違に基づく優越性のいかなる理論も科学的に誤りであり、道徳的に非難されるべきであり及び社会的に不正かつ危険であること並びに理論上又は実際上、いかなる場所においても、人種差別を正当化することはできないことを確信し、

 人種、皮膚の色又は種族的出身を理由とする人間の差別が諸国間の友好的かつ平和的な関係に対する障害となること並びに諸国民の間の平和及び安全並びに同一の国家内に共存している人々の調和をも害するおそれがあることを再確認し、

 人種に基づく障壁の存在がいかなる人間社会の理想にも反することを確信し、
 世界のいくつかの地域において人種差別が依然として存在していること及び人種的優越又は憎悪に基づく政府の政策(アパルトヘイト、隔離又は分離の政策等)がとられていることを危険な事態として受けとめ、

 あらゆる形態及び表現による人種差別を速やかに撤廃するために必要なすべての措置をとること並びに人種間の理解を促進し、いかなる形態の人種隔離及び人種差別もない国際社会を建設するため、人種主義に基づく理論及び慣行を防止し並びにこれらと戦うことを決意し、

 1958年に国際労働機関が採択した雇用及び職業についての差別に関する条約及び1960年に国際連合教育科学文化機関が採択した教育における差別の防止に関する条約に留意し、

 あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際連合宣言に具現された原則を実現すること及びこのた めの実際的な措置を最も早い時期にとることを確保することを希望して、

 次のとおり協定した。


第1部
第1条
1 この条約において、「人種差別」とは、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するものをいう。

2 この条約は、締約国が市民と市民でない者との間に設ける区別、排除、制限又は優先については、適用しない。
3 この条約のいかなる規定も、国籍、市民権又は帰化に関する締約国の法規に何ら影響を及ぼすものと解してはならない。ただし、これらに関する法規は、いかなる特定の民族に対しても差別を設けていないことを条件とする。

4 人権及び基本的自由の平等な享有又は行使を確保するため、保護を必要としている特定の人種若しくは種族の集団又は個人の適切な進歩を確保することのみを目的として、必要に応じてとられる特別措置は、人種差別とみなさない。ただし、この特別措置は、その結果として、異なる人種の集団に対して別個の権利を維持することとなってはならず、また、その目的が達成された後は継続してはならない。

第2条
1 締約国は、人種差別を非難し、また、あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策及びあらゆる人種間の理解を促進する政策をすべての適当な方法により遅滞なくとることを約束する。このため、

(a)各締約国は、個人、集団又は団体に対する人権差別の行為又は慣行に従事しないこと並びに国及び地方のすべての公の当局及び機関がこの義務に従って行動するよう確保することを約束する。

(b)各締約国は、いかなる個人又は団体による人種差別も後援せず、擁護せず又は支持しないことを約束する。
(c)各締約国は、政府(国及び地方)の政策を再検討し及び人種差別を生じさせ又は永続化させる効果を有するいかなる法令も改正し、廃止し又は無効にするために効果的な措置をとる。

(d)各締約国は、すべての適当な方法(状況により必要とされるときは、立法を含む。)により、いかなる個人、集団又は団体による人種差別も禁止し、終了させる。

(e)各締約国は、適当なときは、人種間の融和を目的とし、かつ、複数の人種で構成される団体及び運動を支援し並びに人種間の障壁を撤廃する他の方法を奨励すること並びに人種間の分断を強化するようないかなる動きも抑制することを約束する。

2 締約国は、状況により正当とされる場合には、特定の人種の集団又はこれに属する個人に対し人権及び基本的自由の十分かつ平等な享有を保障するため、社会的、経済的、文化的その他の分野において、当該人種の集団又は個人の適切な発展及び保護を確保するための特別かつ具体的な措置をとる。この措置は、いかなる場合においても、その目的が達成された後、その結果として、異なる人種の集団に対して不平等な又は別個の権利を維持することとなってはならない。

第3条
 締約国は、特に、人種隔離及びアパルトヘイトを非難し、また、自国の管轄の下にある領域におけるこの種のすべての慣行を防止し、禁止し及び根絶することを約束する。

第4条
 締約国は、一の人種の優越性若しくは一の皮膚の色若しくは種族的出身の人の集団の優越性の思想若しくは理論に基づくあらゆる宣伝及び団体又は人種的憎悪及び人種差別(形態のいかんを問わない。)を正当化し若しくは助長することを企てるあらゆる宣伝及び団体を非難し、また、このような差別のあらゆる扇動又は行為を根絶することを目的とする迅速かつ積極的な措置をとることを約束する。このため、締約国は、世界人権宣言に具現された原則及び次条に明示的に定める権利に十分な考慮を払って、特に次のことを行う。

(a)人種的優越又は憎悪に基づく思想のあらゆる流布、人種差別の扇動、いかなる人種若しくは皮膚の色若しくは種族的出身を異にする人の集団に対するものであるかを問わずすべての暴力行為又はその行為の扇動及び人種主義に基づく活動に対する資金援助を含むいかなる援助の提供も、法律で処罰すべき犯罪であることを宣言すること。

(b)人種差別を助長し及び扇動する団体及び組織的宣伝活動その他のすべての宣伝活動を違法であるとして禁止するものとし、このような団体又は活動への参加が法律で処罰すべき犯罪であることを認めること。

(c)国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長し又は扇動することを認めないこと。
第5条
 第2条に定める基本的義務に従い、締約国は、特に次の権利の享有に当たり、あらゆる形態の人種差別を禁止し及び撤廃すること並びに人種、皮膚の色又は民族的若しくは種族的出身による差別なしに、すべての者が法律の前に平等であるという権利を保障することを約束する。

(a)裁判所その他のすべての裁判及び審判を行う機関の前での平等な取扱いについての権利
(b)暴力又は傷害(公務員によって加えられるものであるかいかなる個人、集団又は団体によって加えられるものであるかを問わない。)に対する身体の安全及び国家による保護についての権利

(c)政治的権利、特に普通かつ平等の選挙権に基づく選挙に投票及び立候補によって参加し、国政及びすべての段階における政治に参与し並びに公務に平等に携わる権利

(d)他の市民的権利、特に、
(i)国境内における移動及び居住の自由についての権利
(ii)いずれの国(自国を含む。)からも離れ及び自国に戻る権利
(iii)国籍についての権利
(iv)婚姻及び配偶者の選択についての権利
(v)単独で及び他の者と共同して財産を所有する権利
(vi)相続する権利
(vii)思想、良心及び宗教の自由についての権利
(viii)意見及び表現の自由についての権利
(ix)平和的な集会及び結社の自由についての権利
(e)経済的、社会的及び文化的権利、特に、
(i)労働、職業の自由な選択、公正かつ良好な労働条件、
   失業に対する保護、同一の労働についての同一報酬
   及び公正かつ良好な報酬についての権利
(ii)労働組合を結成し及びこれに加入する権利
(iii)住居についての権利
(iv)公衆の健康、医療、社会保障及び社会的サービスについての権利
(v)教育及び訓練についての権利
(vi)文化的な活動への平等な参加についての権利
(f)輸送機関、ホテル、飲食店、喫茶店、劇場、公園等一般公衆の使用を目的とするあらゆる場所又はサービスを利用する権利
第6条
 締約国は、自国の管轄の下にあるすべての者に対し、権限のある自国の裁判所及び他の国家機関を通じて、この条約に反して人権及び基本的自由を侵害するあらゆる人種差別の行為に対する効果的な保護及び救済措置を確保し、並びにその差別の結果として被ったあらゆる損害に対し、公正かつ適正な賠償又は救済を当該裁判所に求める権利を確保する。

第7条
 締約国は、人種差別につながる偏見と戦い、諸国民の間及び人種又は種族の集団の間の理解、寛容及び友好を促進し並びに国際連合憲章、世界人権宣言、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際連合宣言及びこの条約の目的及び原則を普及させるため、特に教授、教育、文化及び情報の分野において、迅速かつ効果的な措置をとることを約束する。


第2部
第8条
1 締約国により締約国の国民の中から選出される徳望が高く、かつ、公平と認められる18人の専門家で構成する人種差別の撤廃に関する委員会(以下「委員会」という。)を設置する。委員会の委員は、個人の資格で職務を遂行する。その選出に当たっては、委員の配分が地理的に衡平に行われること並びに異なる文明形態及び主要な法体系が代表されることを考慮に入れる。

2 委員会の委員は、締約国により指名された者の名簿の中から秘密投票により選出される。各締約国は、自国民の中から一人を指名することができる。
3 委員会の委員の最初の選挙は、この条約の効力発生の日の後6箇月を経過した時に行う。国際連合事務総長は、委員会の委員の選挙の日の遅くとも3箇月前までに、締約国に対し、自国が指名する者の氏名を2箇月以内に提出するよう書簡で要請する。同事務総長は、指名された者のアルファベット順による名簿(これらの者を指名した締約国名を表示した名簿とする。)を作成し、締約国に送付する。

4 委員会の委員の選挙は、国際連合事務総長により国際連合本部に招集される締約国の会合において行う。この会合は、締約国の3分の2をもって定足数とする。この会合においては、出席しかつ投票する締約国の代表によって投じられた票の最多数で、かつ、過半数の票を得た指名された者をもって委員会に選出された委員とする。

5(a)委員会の委員は、4年の任期で選出される。ただし、最初の選挙において選出された委員のうち9人の委員の任期は、2年で終了するものとし、これらの9人の委員は、最初の選挙の後直ちに、委員会の委員長によりくじ引きで選ばれる。

 (b)締約国は、自国の専門家が委員会の委員としての職務を遂行することができなくなった場合には、その空席を補充するため、委員会の承認を条件として自国民の中から他の専門家を任命する。

6 締約国は、委員会の委員が委員会の任務を遂行している間、当該委員に係る経費について責任を負う。
第9条
1 締約国は、次の場合に、この条約の諸規定の実現のためにとった立法上、司法上、行政上その他の措置に関する報告を、委員会による検討のため、国際連合事務総長に提出することを約束する。

(a)当該締約国についてこの条約が効力を生ずる時から1年以内
(b)その後は2年ごとに、更には委員会が要請するとき。
 委員会は、追加の情報を締約国に要請することができる。
2 委員会は、その活動につき国際連合事務総長を通じて毎年国際連合総会に報告するものとし、また、締約国から得た報告及び情報の検討に基づく提案及び一般的な性格を有する勧告を行うことができる。これらの提案及び一般的な性格を有する勧告は、締約国から意見がある場合にはその意見と共に、総会に報告する。

第10条
1 委員会は、手続規則を採択する。
2 委員会は、役員を2年の任期で選出する。
3 委員会の事務局は、国際連合事務総長が提供する。
4 委員会の会合は、原則として、国際連合本部において開催する。
第11条
1 締約国は、他の締約国がこの条約の諸規定を実現していないと認める場合には、その事案につき委員会の注意を喚起することができる。委員会は、その通知を関係締約国に送付する。当該通知を受領する国は、3箇月以内に、当該事案について及び、当該国がとった救済措置がある場合には、当該救済措置についての書面による説明又は声明を委員会に提出する。

2 最初の通知の受領の後6箇月以内に当該事案が二国間交渉又は当事国にとって可能な他のいかなる手続によっても当事国の双方の満足するように調整されない場合には、いずれの一方の締約国も、委員会及び他方の締約国に通告することにより当該事案を再び委員会に付託する権利を有する。

3 委員会は、2の規定により委員会に付託された事案について利用し得るすべての国内的な救済措置がとられかつ尽くされたことを確認した後に、一般的に認められた国際法の原則に従って、当該事案を取り扱う。ただし、救済措置の実施が不当に遅延する場合は、この限りでない。

4 委員会は、付託されたいずれの事案についても、関係締約国に対し、他のあらゆる関連情報を提供するよう要請することができる。
5 この条の規定から生ずるいずれかの事案が委員会により検討されている場合には、関係締約国は、当該事案が検討されている間、投票権なしで委員会の議事に参加する代表を派遣する権利を有する。

第12条
1(a)委員長は、委員会が必要と認めるすべての情報を入手し、かつ、取りまとめた後、5人の者(委員会の委員であるか否かを問わない。)から成る特別調停委員会(以下「調停委員会」という。)を設置する。調停委員会の委員は、すべての紛争当事国の同意を得て任命するものとし、調停委員会は、この条約の尊重を基礎として事案を友好的に解決するため、関係国に対してあっせんを行う。

 (b)調停委員会の構成について3箇月以内に紛争当事国が合意に達しない場合には、合意が得られない調停委員会の委員については、委員会の秘密 投票により、3分の2以上の多数による議決で、委員会の委員の中から選出する。

2 調停委員会の委員は、個人の資格で、職務を遂行する。委員は、紛争当事国の国民又はこの条約の締約国でない国の国民であってはならない。
3 調停委員会は、委員長を選出し、及び手続規則を採択する。
4 調停委員会の会合は、原則として、国際連合本部又は調停委員会が決定する他の適当な場所において開催する。
5 第10条3の規定により提供される事務局は、締約国間の紛争のために調停委員会が設けられた場合には、調停委員会に対しても役務を提供する。
6 紛争当事国は、国際連合事務総長が作成する見積りに従って、調停委員会の委員に係るすべての経費を平等に分担する。
7 国際連合事務総長は、必要なときは、6の規定による紛争当事国の経費の分担に先立って調停委員会の委員の経費を支払う権限を有する。
8 委員会が入手し、かつ、取りまとめる情報は、調停委員会の利用に供しなければならず、また、調停委員会は、関係国に対し、他のあらゆる関連情報を提供するよう要請することができる。

第13条
1 調停委員会は、事案を十分に検討した後、当事国間の係争問題に係るすべての事実関係についての調査結果を記載し、かつ、紛争の友好的な解決のために適当と認める勧告を付した報告を作成し、委員会の委員長に提出する。

2 委員会の委員長は、調停委員会の報告を各紛争当事国に通知する。これらの紛争当事国は、3箇月以内に、委員会の委員長に対し、調停委員会の報告に付されている勧告を受諾するか否かを通知する。

3 委員会の委員長は、2に定める期間の後、調停委員会の報告及び関係締約国の意図の表明を、他の締約国に通知する。
第14条
1 締約国は、この条約に定めるいずれかの権利の当該締約国による侵害の被害者であると主張する当該締約国の管轄の下にある個人又は集団からの通報を、委員会が受理しかつ検討する権限を有することを認める旨を、いつでも宣言することができる。委員会は、宣言を行っていない締約国についての通報を受理してはならない。

2 1に規定する宣言を行う締約国は、その管轄の下にある個人又は集団であって、この条約に定めるいずれかの権利の侵害の被害者であると主張し、かつ、他の利用し得る国内的な救済措置を尽くしたものからの請願を受理しかつ検討する権限を有する機関を、国内の法制度の枠内に設置し又は指定することができる。

3 1の規定に基づいて行われた宣言及び2の規定に基づいて設置され又は指定される機関の名称は、関係締約国が国際連合事務総長に寄託するものとし、同事務総長は、その写しを他の締約国に送付する。宣言は、同事務総長に対する通告によりいつでも撤回することができる。ただし、その撤回は、委員会で検討中の通報に影響を及ぼすものではない。

4 2の規定に基づいて設置され又は指定される機関は、請願の登録簿を保管するものとし、登録簿の証明された謄本は、その内容が公開されないとの了解の下に、適当な経路を通じて毎年国際連合事務総長に提出する。

5 請願者は、2の規定に基づいて設置され又は指定される機関から満足な結果が得られない場合には、その事案を6箇月以内に委員会に通報する権利を有する。
6(a)委員会は、付託されたいずれの通報についても、この条約のいずれかの規定に違反していると申し立てられている締約国の注意を内密に喚起する。ただし、関係のある個人又は集団の身元関係事項は、当該個人又は集団の明示の同意なしに明らかにしてはならない。委員会は、匿名の通報を受領してはならない。

 (b)注意を喚起された国は、3箇月以内に、当該事案について及び、当該国がとった救済措置がある場合には、当該救済措置についての書面による説明又は声明を委員会に提出する。

7(a)委員会は、関係締約国及び請願者により委員会の利用に供されたすべての情報に照らして通報を検討する。委員会は、請願者が利用し得るすべての国内的な救済措置を尽くしたことを確認しない限り、請願者からのいかなる通報も検討してはならない。ただし、救済措置の実施が不当に遅延する場合は、この限りでない。

 (b)委員会は、提案及び勧告をする場合には、これらを関係締約国及び請願者に送付する。
8 委員会は、通報の概要並びに、適当なときは、関係締約国の書面による説明及び声明の概要並びに当該委員会の提案及び勧告の概要を、その年次報告に記載する。

9 委員会は、少なくとも10の締約国が1の規定に基づいて行った宣言に拘束される場合にのみ、この条に規定する任務を遂行する権限を有する。
第15条
1 この条約の規定は、1960年12月14日の植民地及びその人民に対する独立の付与に関する宣言(国際連合総会決議第1514号(第15回会期))の目的が達成されるまでの間、他の国際文書又は国際連合及びその専門機関により当該人民に付与された請願の権利を何ら制限するものではない。

2(a)国際連合の諸機関が、信託統治地域及び非自治地域並びに国際連合総会決議第1514号(第15回会期)が適用される他のすべての地域の住民からの請願であって、この条約の対象とする事項に関連するものを検討するに当たって、この条約の原則及び目的に直接関連する事項を取り扱っている場合には、第8条1の規定に基づいて設置される委員会は、当該請願の写しを受領し、これらの機関に対し、当該請願に関する意見の表明及び勧告を提出する。

 (b)委員会は、(a)に規定する地域内において施政国により適用されるこの条約の原則及び目的に直接関連する立法上、司法上、行政上その他の措置についての報告の写しを国際連合の権限のある機関から受領し、これらの機関に対し、意見を表明し及び勧告を行う。

3 委員会は、国際連合の諸機関から受領した請願及び報告の概要並びに当該請願及び報告に関連する委員会の意見の表明及び勧告を、国際連合総会に対する報告に記載する。

4 委員会は、国際連合事務総長に対し、2(a)に規定する地域について、この条約の目的に関連しかつ同事務総長が入手し得るすべての情報を要求する。
第16条
 紛争又は苦情の解決に関するこの条約の規定は、国際連合及びその専門機関の基本文書又は国際連合及びその専門機関により採択された条約に定める差別の分野における紛争又は苦情の解決のための他の手続を妨げることなく適用するものとし、締約国の間で効力を有する一般的な又狽ヘ特別の国際取極による紛争の解 決のため、締約国が他の手続を利用することを妨げるものではない。


第3部
第17条
1 この条約は、国際連合又はいずれかの専門機関の加盟国、国際司法裁判所規程の当事国及びこの条約の締約国となるよう国際連合総会が招請するその他の国による署名のために開放しておく。

2 この条約は、批准されなければならない。批准書は、国際連合事務総長に寄託する。
第18条
1 この条約は、前条1に規定する国による加入のために開放しておく。
2 加入は、加入書を国際連合事務総長に寄託することによって行う。
第19条
1 この条約は、27番目の批准書又は加入書が国際連合事務総長に寄託された日の後30日目の日に効力を生ずる。
2 27番目の批准書又は加入書が寄託された後にこの条約を批准し又はこれに加入する国については、この条約は、その批准書又は加入書の寄託の日の後30日目の日に効力を生ずる。

第20条
1 国際連合事務総長は、批准又は加入の際に行われた留保を受領し、かつ、この条約の締約国であるか又は将来締約国となる可能性のあるすべての国に当該留保を送付する。留保に異議を有する国は、その送付の日から90日の期間内に、その留保を承認しない旨を同事務総長に通告する。

2 この条約の趣旨及び目的と両立しない留保は、認められない。また、この条約により設置する機関の活動を抑制するような効果を有する留保は、認められない。留保は、締約国の少なくとも3分の2が異議を申し立てる場合には、両立しないもの又は抑制的なものとみなされる。

3 留保は、国際連合事務総長にあてた通告によりいつでも撤回することができる。通告は、その受領の日に効力を生ずる。
第21条
 締約国は、国際連合事務総長に対して書面による通告を行うことにより、この条約を廃棄することができる。廃棄は、同事務総長がその通告を受領した日の後1年で効力を生ずる。

第22条
 この条約の解釈又は適用に関する2以上の締約国の間の紛争であって、交渉又はこの条約に明示的に定められている手続によって解決されないものは、紛争当事国が他の解決方法について合意しない限り、いずれかの紛争当事国の要請により、決定のため国際司法裁判所に付託される。

第23条
1 いずれの締約国も、国際連合事務総長にあてた書面による通告により、いつでもこの条約の改正を要請することができる。
2 国際連合総会は、1の要請についてとるべき措置があるときは、その措置を決定する。
第24条
 国際連合事務総長は、第17条1に規定するすべての国に対し、次の事項を通報する。
(a)第17条及び第18条の規定による署名、批准及び加入
(b)第19条の規定によりこの条約が効力を生ずる日
(c)第14条、第20条及び前条の規定により受領した通告及び宣言
(d)第21条の規定による廃棄
第25条
1 この条約は、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とし、国際連合に寄託される。
2 国際連合事務総長は、この条約の認証謄本を第17条1に定める種類のいずれかに属するすべての国に送付する。
 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けて、1966年3月7日にニュー・ヨークで署名のために開放されたこの条約に署名した。
INDEX


●●●●●● 人種差別撤廃条約Q&A ●●●●●●
Q&A

この条約についてより理解を深めていただくために、
一問一答で条約の規定の内容について説明します。
Q1 この条約の対象となる人種差別とは何ですか。
A1 この条約の対象とする人種差別については、この条約の第1条1において、「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するもの」と定義されています。

 この規定において差別事由とされている「人種」、「皮膚の色」、「世系」及び「民族的若しくは種族的出身」については、この条約の適用上、必ずしも相互に排他的なものではありません。この条約の適用上、「人種」とは、社会通念上、皮膚の色、髪の形状等身体の生物学的諸特徴を共有するとされている人々の集団を指し、「皮膚の色」とは、このような生物学的諸特徴のうち、最も代表的なものを掲げたものと考えられます。また、「民族的若しくは種族的出身」とは、この条約の適用上、いずれも社会通念上、言語、宗教、慣習等文化的諸特徴を共有するとされている人々の集団の出身であることを指すものと考えられます。更に、「世系」とは、この条約の適用上、人種、民族からみた系統を表す言葉であり、例えば、日系、黒人系といったように、過去の世代における人種又は皮膚の色及び過去の世代における民族的又は種族的出身に着目
した概念であり、生物学的・文化的諸特徴に係る範疇を超えないものであると解されます。
Q2 アイヌの人々や在日韓国・朝鮮人は、この条約の対象に含まれるのですか。
A2 アイヌの人々については、現在、様々な議論がなされているところですが、独自の宗教及び言語を有し、また、文化の独自性を有していること等より、社会通念上、文化的諸特徴を共有するとされている人々の出身者であると考えられますので、この条約にいう「民族的若しくは種族的出身」の範疇に含まれるといって差し支えないと認識しています。また、この条約は、社会通念上、生物学的若しくは文化的な諸特徴を共有していることに基づく差別を遍く禁止するものであるので、Q4の答で述べるような「国籍」の有無という法的地位に基づく異なる取扱いに当たらない限り、在日韓国・朝鮮人を始めとする我が国に在留する外国人についても、これらの事由に基づく差別が行われる場合には、この条約の対象となります。

Q3 第1条の人種差別の定義にいう「公的生活」とは、どういう意味ですか。
A3 「公的生活(public
life)」の意味とは、国や地方公共団体の活動に限らず、企業の活動等も含む人間の社会の一員としての活動全般を指すものと解されます。つまり、人間の活動分野のうち、特定少数の者を対象とする純粋に私的な個 人の自由に属する活動を除いた、不特定多数の者を対象とするあらゆる活動を含むものと解されます。
Q4 「国籍」による区別は、この条約の対象となるのですか。
A4 この条約上、「人種差別」とは、「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づく」差別と定義されていることより、「国籍」による区別は対象としていないと解されます。この点については、第1条2において、締約国が市民としての法的地位に基づいて行う区別等については、本条約の適用外であるとの趣旨の規定が置かれたことにより、締約国が行う「国籍」の有無という法的地位に基づく異なる取扱いはこの条約の対象とはならないことが明確にされています。
 ただし、「国籍」の有無による異なる取扱いが認められるかは、例えば、参政権が公権力の行使又は国家の意思の形成に参画する行為という合理的な根拠を持っているように、このような取扱いに合理的な根拠のある場合に限られ、例えば、賃貸住宅における入居差別のように、むしろ人種、民族的、種族的出身等に基づく差別とみなすべきものは、この条約の対象となると考えられます。


Q5 この条約の第2条1(d)は、いかなる個人、集団又は団体による人種差別も禁止する旨規定しています。これは、私人間における人種差別の禁止を意味するものなのですか。

A5 第2条1(d)の規定は、締約国があらゆる形態の人種差別を撤廃する政策及びあらゆる人種間の理解を促進する政策をすべての適当な方法により遅滞なくとることを目的として、私人間の人種差別を禁止し、終了させるべきことを定めたものです。
 私人間の人種差別の禁止、撤廃については、第5条において具体的な権利が明示的に規定されていますが、この条項は、一般的な形で締約国の基本的義務を定めたものです。また、この条項は、「すべての適当な方法(状況により必要とされるときは、立法を含む)により」と規定されていますが、これは、立法が状況によって必要とされ、かつ、立法することが適当な場合に立法措置をとることも含め、締約国が適当と判断する方法により、私人間の差別を撤廃する義務を定めたものであると解されます。

Q6 日本はこの条約の締結に当たって第4条(a)及び(b)に留保を付してますが、その理由はなぜですか。
A6 第4条(a)及び(b)は、「人種的優越又は憎悪に基づくあらゆる思想の流布」、「人種差別の扇動」等につき、処罰立法措置をとることを義務づけるものです。
 これらは、様々な場面における様々な態様の行為を含む非常に広い概念ですので、そのすべてを刑罰法規をもって規制することについては、憲法の保障する集会、結社、表現の自由等を不当に制約することにならないか、文明評論、政治評論等の正当な言論を不当に萎縮させることにならないか、また、これらの概念を刑罰法規の構成要件として用いることについては、刑罰の対象となる行為とそうでないものとの境界がはっきりせず、罪刑法定主義に反することにならないかなどについて極めて慎重に検討する必要があります。我が国では、現行法上、名誉毀損や侮諮J等具体的な法益侵害又はその侵害の危険性のある行為は、処罰の対象になっていますが、この条約第4条の定める処罰立法義務を不足なく履行することは以上の諸点等に照らし、憲法上の問題を生じるおそれがあります。このため、我が国としては憲法と抵触しない限度において、第4条の義務を履行する旨留保を付することにしたものです。
 なお、この規定に関しては、1996年6月現在、日本のほか、米国及びスイスが留保を付しており、英国、フランス等が解釈宣言を行っています。
Q7 第5条の冒頭の第1文は、どのような趣旨ですか。特に、第2条及び第5条(a)〜(f)とは、どのような関係にあるのでしょうか。
A7 第5条は、既にQ5の答で述べたとおり、第2条が一般的な形で締約国の基本的義務を定めているのを受けて、締約国が様々な人権を保障するに当たって、あらゆる形態の人種差別を禁止し撤廃すべきことを定めるにとどまらず、法律の前の平等を保障すべきことを定め、第2条の義務の履行をより具体的な形で確保しようとしたものです。また、この条では、人種差別が特に生じやすいと考えられる権利について、(a)から(f)に例示的に列挙しています。

Q8 第8条において、人種差別の撤廃に関する委員会の設置が規定されていますが、どのようなことをする委員会なのですか。
A8 人種差別の撤廃に関する委員会(以下「委員会」)は、(1)締約国から得た報告及び情報の検討に基づく提案及び勧告を行うこと(2)他の締約国がこの条約の諸規定を実現していないと認める場合の締約国の注意喚起を受理し検討することなどのために設置されたものです。委員会の委員数は18人、任期は4年で、個人の資格で任務を遂行することとなっています。
 なお、各締約国は、この条約の第9条により、委員会による検討のため、当該締約国についてこの条約の効力が生ずる時から1年以内に、また、その後は2年ごとに、更には、委員会が要請する時に、この条約の諸規定の実現のためにとった立法上、司法上、行政上その他の措置に関する報告を国連事務総長に提出する義務を負っています。

Q9 この条約によって、具体的に何が変わるのですか。
A9 この条約上の義務は、我が国の憲法をはじめとする現行国内法制で既に担保されています。しかし、人権擁護に関しては、法制度面のみならず、意識面、実態面において不断の努力によって更に向上させることが必要かつ重要です。この条約の締結を契機に、行政府内のみならず、国民の間に人種差別も含めあらゆる差別を撤廃すべきとの意識が高まり、一層の人権擁護が図られていくことが重要であると考えています。





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