紀藤正樹『オウムの暴走に手を貸す「国と企業」』(MacFan)

 
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投稿者 一刀斎 日時 2000 年 4 月 16 日 18:01:53:

MacFan 2000年5.1号P177

『CYBER RED CARD 法律から見る電脳犯罪の世界』
オウムの暴走に手を貸す「国と企業」

2月29日に明らかとなった、オウム関連企業による防衛庁やNTTなど、6つ
の官公庁と大手企業からのソフト受注のニュース。3月10日には、警視庁の覆
面パトカーなどの情報が流出していたことも発覚した。今回の事件に関する一連
の報道では、オウムヘの恐怖ばかりが強調されて報道されたが、事件の前提に
は、地下鉄サリン事件以降も変わらない国と企業のセキュリティ感覚の欠如があ
る。

紀藤正樹Masaki Kitou

弁護士(第二東京弁護士会所属)。現在、日本弁護士連合金消費者間題対策委員
会・電子取引小委員会委員などを務める。著書に『電脳犯罪対策虎之巻』(KK
ベストセラー ズ)。ホームページ(http://homepage1.nifty.com/kito/)公開
中。


オウムソフトの侵食
今年2月29日、オウム真理教(アレフに改称)の関連会社が、防衛庁など6つ
の官公庁やNTTなどの企業約80社にソフトを納入していたことが発覚した。
防衛庁の場合、3月1日から運用するはずだった陸上自衛隊駐屯地相互を結ぶ
ネットワークのシステムの一部をオウム系企業に発注していた。このネットワ一
クには不正アクセスを防ぐファイアウォール(防護壁)が設けられているが、オ
ウム系企業は正規のアクセス方法を知っていた。また、開発者なら「バックド
ア」と呼ばれる人為的なセキュリティホールを作ることもできる。防衛庁は、事
件発覚を受け、このシステムの運用を当面中止することを決めたが、当然の措置
だろう。
今回、下請けなどを通じてオウム関連企業への発注が明らかになった企業は、
NTT、石川島播磨重工業、新日鉄、資生堂、三菱商事、松下電器産業、東芝、
三井不動産、千代田火災海上保険、共同通信、本田技研など、我が国を代表する
企業ばかりだ。文部省、郵政省、建設省、警視庁、足立区役所など国や地方自治
体も発注していた。最終的にオウム系企業に発注した企業は約190にも上るも
のと見られている。

オウムの不合理な弁明
教団側は3月14日付けで、「信者らは元請けの下請けや孫請けとして、上から
降りてくる仕事を機械的に受注し、よい製品を真面目に作っていたにすぎず、決
してデータを不正に入手するなどの意図があったわけではありません」と弁明し
ている(info.aleph.to/info/2000-03b.html)が、まったく信用できない。
1997年10月にオウム系企業にソフト開発を依頼した本田技研工業の場合、
管理職約3,000人分の人事データを記録したフロッピーディスクが、今年1
月24日に家宅捜索された教団幹部の車内から見つかった。悪意なしに教団幹部
が保存する理由がなかろう。
いつものことだが、教団はこうした事実関係を踏まえた具体的な弁明をすべきで
ある。そうしなければ国民の納得を得られるはずはない。

警視庁の不祥事
オウムソフトの発注問題が次々と報じられる中、3月10日、覆面パトカーなど
のデータの一部がオウム側に流出していたという事実が報じられた。警視庁総務
部が、日本IBMを通じてオウム系企業に発注したのは1997年10月のこ
と。
これに対し警視庁は納入前の1998年2月、公安部の「システム開発に教団関
連会社が加わっている」という情報に基づき事実関係を調査した。その後、警視
庁は使用中の115台の車両データのうち、取り締まりなどに影響かある覆面パ
トカーなど63台のナンバープレートを変更したり、廃車するなどの処理を行っ
た。日本IBMはオウム系企業が関与していた部分を廃棄し、システムを再構築
して警視庁に納入していた。
問題はこれらの処理がすべて秘密裏に行われたことだ。こうした重要な事実を、
警視庁がこの2年間隠してきたことが、その後のオウム系企業への処理を遅ら
せ、国や民間企業内の情報(個人情報も含む)が、多数、オウム側に流出したこ
とは明らかだろう。
また、この間のソフト受注で得たお金がオウムに資金力を付け、活動が活発とな
り、これに対抗する形での昨年以来の住民運動につながっていったことは明らか
だ。さらに、オウム系企業に発注した官公庁や企業が受けるダメージ、ソフト設
定のやり直しなどによる損害も甚大だろう。
これでは国民の税金を使って警察を運営していることの意味が問われかねないと
思う。この問題が、警視庁の不祥事であることは明らかだ。警視庁は、この2年
間、なぜ事実を隠してきたのかを明確に釈明すべきではないか。

セキュリティ感覚のない国と企業
オウム側に人事データが流出した本田技研は、マスコミの取材に対し「元請け会
社とはきちんとした契約をしていたが、その先がどうなっているかわからず残念
な結果になった」などとコメントしている。このコメントは、今回の事件で露呈
した国と企業のセキュリティ感覚の鈍さを象徴している。「きちんとした契約」
とは、本田技研と元請け会社との間の守秘義務契約を指すが、あまりにも能天気
な態度である。
本当にセキュリティのことを考えていたのてあれば、そもそもすべてのデータ処
理は社内で行い、しかもフロッピーディスクや下講け側のバソコンを持ち込ませ
ないなどの処理を徹底すれば済む話である,しかもこうした施工面での工夫は容
易で、今回報道されたタイプの情報流出は簡単に防げる性質のものである。
また、石川島播磨重工業から教団側に漏れたデータの中には、国内の原子力発電
所や原子力研究機関などの工事データも含まれていた。
僕は、オウムなどの破壊的カルトとコンピュータ社会は、若者文化、対抗文化、
抵抗文化という面で互いに親和性があると考えている、これに対し老人文化、定
着文化、保守側文化の代表とも言える国や大企業の対応が遅れるのは当然だろう
が、国や企業は、この変革にあまりにも無頓着ではないだろうか?




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