セルゲイ・カラガノフ氏 ロシア欧州研究所副所長

 
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投稿者 倉田佳典 日時 2000 年 4 月 18 日 20:44:45:

セルゲイ・カラガノフ氏 ロシア欧州研究所副所長
http://www.asyura.com/kj006800.htm#6970
朝日新聞で、過去記事を調べてみました。

 セルゲイ・カラガノフ氏=ソ連科学アカデミー欧州研究所副所長
 <略歴>歴史学博士、モスクワ大卒。外交政策と経済の相互関係、軍事戦略と欧州
の安全保障が専門。38歳。(1990年11月現在)
大変な人物のようですね。(^-^;


朝日新聞記事データベース/G−Search 2000年04月18日

◆000001 (T901116M06--03)
新たな節目? 米ソ英仏独の専門家に聞く(欧州の新秩序 CSCE)
1990.11.16 東京朝刊 6頁 2外 写図有 (全4485字)
 パリで19日から始まる全欧安保協力会議(CSCE)首脳会議は、米ソを含む3
4カ国が参加し、どんな新しい欧州像を描き出すか、に注目が集まっている。ソ連・
東欧の変革やドイツ統一を経た欧州の指針を探る大きな節目となる。米ソ英仏独の国
際問題の専門家がどう見ているか、を聞いた。
 ●経済格差の克服が急務
 ベルントペーター・レーベ氏=ベルリン・フンボルト大学
                平和・紛争問題研副所長
 軍事は退き、経済・社会保障(という広い意味での安全保障)が前に出てこなけれ
ばならない。ただ、欧州の新情勢を生んだソ連・東欧の変化が、まだどこまで進んで
いくのかを予測することは難しい。その中で対応を迫られる、という困難な課題に今
回の首脳会議は直面している。
 統一ドイツには、大きな期待がかけられよう。1つは、その経済力。もう1つは、
東西のかけ橋となるその地政学的な位置。とくにソ連との関係をどうつくり上げてい
くかは、新しい欧州をつくるにあたって重要なカギとなる。
 ソ連では、分権化が進んでいき、最終的には最大のロシア共和国とドイツとの間で
太いパイプができるだろう。しかし、その分権化が崩壊し、収拾がつかなくなっては、
欧州全体の安全保障も崩壊してしまう。中欧に出現した欧州最強の経済大国ドイツは、
東への政治的責任を負わざるをえない。
 ただ、「統一のコスト」が、当初の予想をはるかに上回ることがわかったため、ド
イツ経済には対外援助に振り向けられる余力があまりない。かといってこれを怠り、
(経済難民という)出国者の波が東から西へ大移動するようになっては、手遅れとな
る。東の自立を早急に図ることが、新しい欧州の基本戦略とならねばならない。
 先行きの見通しはきかず、問題はさし迫っている。だから、当面は既存の組織を有
機的に組み合わせてはどうか、と提案したい。政治同盟化したNATOを軍事的な安
全保障の柱に。CSCEは、経済・社会保障を重点に。そこでは、開かれたECが大
きな役割を果たすだろう。西欧の発展の速度を落としてでも、東側を参加させていく
べきだ。経済格差という新たな東西の分断を克服できねば、欧州の安全保障もありえ
ないはずだ。
 <略歴>今年4月に創設された平和・紛争問題研究所の副所長に選ばれ、欧州・C
SCEを担当。47歳。
 (ベルリン=亘理特派員)
 ●東西対立、正式に終止符
 スパージョン・キーニー氏=米軍備管理協会長
 パリ・サミットは、東西欧州間の軍事対決の歴史に正式な終止符を打つものだ。C
SCEの将来像はなお不明な部分が多いが、普遍的な欧州安保に関する協議を制度化
することの意義は大きい。とくに統一ドイツの建設的な役割を欧州の人々に保証し、
ソ連が何らかの形で欧州の新秩序づくりに参画するという側面に注目すべきだと思う。
 欧州通常戦力交渉(CFE)合意の最大の成果は戦力削減の内容ではなく、各種の
事情を抱えた東西22カ国が軍備削減というテーマで合意を生み出したこと自体にあ
る。CFE合意を受け、あらたな削減を目指す交渉の継続が必要だ。ワルシャワ条約
機構の実質的な崩壊を理由に同機構と北大西洋条約機構(NATO)間の交渉が時代
遅れだと指摘する声もある。だが、新秩序を模索する現段階では、継続交渉も両機構
同士でやる以外にない。欧州配備の戦術用短距離核(SNF)削減交渉もただちに始
めるべきだ。
 もう1つの課題は、CFEが対象とする大西洋からウラル山脈以西の軍備削減と並
行して、ソ連のアジア部分を組み入れた軍備削減に道を開くことである。安全保障の
枠組みに関する欧州とアジアの「非対称性」が残ることは、日本を含めた西側諸国に
とって好ましくない。
 近い将来、CSCEが集団安全保障の役割を果たすことはなく、数年間はNATO
との共存態勢が続くだろう。
 ソ連が経済を中心とする国内改革に将来、成功を収めれば、CSCEに弾みがつく
可能性はある。だが、そうなれば欧州での指導力維持を望む米国はジレンマに立たさ
れよう。積極的に参加することが米の指導力温存につながるわけだが、そのためには
軍事大国としての威信を捨てる必要が出てくるからだ。
 <略歴>ニューヨーク市生まれ。コロンビア大卒業後、米国防総省、軍備管理軍縮

局などを経て1985年から現職。66歳。
 (ワシントン=定森特派員)
 ●東側改革に調整機能を
 セルゲイ・カラガノフ氏=ソ連科学アカデミー欧州研究所副所長
 パリ会議は、創設の時代の始まりを意味する。ここで、欧州の安全保障を揺るぎな
いものにする新システムの基盤を設置する必要があるからだ。
 欧州は、冷戦の時期を捨てつつある。一方で、ソ連と東欧が民主主義的政治システ
ムと市場経済に向かう移行期にあって不安定という、これまでなかった問題が起きて
いる。対決のシステムでは、この問題を調整できない。ドイツが統一されたのに加え、
ワルシャワ条約機構が急速に弱体化し、おそらく長くは存在しないことから、われわ
れはCSCEを注視している。
 ソ連とNATOは、それぞれの軍を急激に改革する必要があり、共同で行うのが望
ましい。軍縮分野での緊急課題は、短距離核の削減だ。通常兵器の廃絶と査察も求め
られている。このほか、環境や移民問題も共同調整が必要だ。これらにCSCEが携
わる。CSCEは、現存する国際機構を補完するものであり、とって代わるものでは
ない。国際的諸機関を最大限利用し、これと共同行動をとる必要がある。ワルシャワ
条約機構、NATOなどの機能を徐々に引き受けていく。
 欧州のセンターは、欧州共同体を基盤としたものになろう。経済相互援助会議(コ
メコン)や欧州自由貿易連合 (EFTA)が地域的センターとして存続する。CSC
Eは、調整機能を持つセンターになるだろう。
 ソ連と東欧諸国が国内の不安定要因を乗り越えたあとにCSCEは、発展途上国の
安全保障上の要請にこたえる必要がある。財政的、人的、技術的援助を行う機関とし
ても活発な役割を果たさなければならない。
 私の考えるCSCEは、ゴルバチョフ大統領の欧州共通の家の概念と合致するもの
だ。
 <略歴>歴史学博士、モスクワ大卒。外交政策と経済の相互関係、軍事戦略と欧州
の安全保障が専門。38歳。
 (モスクワ=島田特派員)
 ●独ソ両国の連携に注目
 フレデリック・ボゾ氏=仏国際関係研究所研究員
 CSCEは、フランスのドゴール主義的発想を下敷きにしたものだったといえる。
欧州における2極対立の構造を超え、異なる体制間の対話で大欧州を建設するという
CSCEの目標は、フランスの伝統的外交政策と一致していた。
 ところが、パリ首脳会議に向けてフランスの対応には、必ずしも活気が見られない。
統一ドイツが自ら描く新欧州地図の中で、CSCEに与える位置付けの明瞭(めいり
ょう)さに比べ、著しく対照的だ。ドイツはいま、外交の力点を東方政策の拡充に置
いている。旧東西ブロック間の協調を図るCSCEは、その有益な道具となる。それ
にドイツ統一という事業そのものが、大欧州建設と一体を成す宿命にあった。
 それに対してフランスは、ドイツ分割を前提とする冷戦構造に安住してきたのが実
態だ。ドイツ統一に対しては、米との連携を重視する新大西洋主義に傾いたかと思え
ば、逆に対米独立をちらつかせるなど、絶えずぐらつきを見せた。冷戦後の枠組みを
考えようというCSCEに対し、腰が引けて見えるのも、無理はないかもしれない。
 その点で、ドイツとソ連の連携がこのところ、緊密さを増してきたことが注目され
る。こんど締結された独ソ善隣友好条約は、第三国から一方の国への攻撃に対し他方
が中立を維持することを規定するなど、新しい欧州安保の精神を明確に体現している。
仏は西欧の結束にこだわって、仏ソ友好条約にもこういう規定は盛り込まなかったが、
この点でドイツの方が仏より汎(はん)ヨーロッパ主義的だともいえる。CSCEを
主導していく中核があるとすれば、まず第1に独ソ両国であるといっていい、と思う。
 <略歴>パリ高等師範、米ハーバード大卒。88年から仏国際関係研で欧州安保、
軍縮問題を担当。27歳。
 (パリ=中川特派員)
 ●NATOの役割は不変
 マイケル・メイツ氏=英下院軍事委員長
 CSCEは、中長期の一般的目標は設定できても、意味ある重要な合意は期待薄だ。
今回の首脳会議で、防衛、相互不可侵、国境線の尊重、環境や汚染問題について力強
い宣言があるだろう。しかし、特定の具体的問題で全会一致の合意をみるには、参加
34カ国という数は多すぎる。実際の場面では、NATOの同盟16カ国の合意でさ
え苦労しているのに、それにワルシャワ条約機構加盟国その他の、理想も目的も異な
る国々が入ったらどうなるかは明らかだ。
 従って、CSCEがNATOの役割に取って代わるとは思わない。
 ところで問題は、東欧の安全保障をどうするかだ。共産党政権下で抑えられてきた
領土、宗教、少数民族問題が火を噴くのを、どう防止するかだ。ポーランドに住むド
イツ人、ソ連南部のイスラム教徒など紛争の火種は事欠かない。
 これに対処するのに、東欧各国は、中立指向、近隣国との同盟指向、ソ連との関係
継続指向と、求める方向が違うので、もはや1つにまとまって組織を作ることは不可
能だ。かといって、NATO加盟国に迎え入れることはできない。我々はソ連を不愉
快にさせたくない。
 できるとすれば、各国が個々にNATOやECと条約を結び、不安定状態が爆発し
ないよう歯止めをかけることだ。2、3年以内にチェコスロバキアがNATOに防衛
条約を求めてきても私は驚かない。
 CSCEにもこの面での期待はかかる。が、残念ながら「宣言」以外に何か可能と
は思わない。汎欧州防衛条約のようなものは、たとえ実現しても、ずっと遠い将来だ
ろう。
 <略歴>ケンブリッジ大卒後英陸軍に。中佐で退役して74年から英保守党下院議
員。87年軍事委員長。56歳。
 (ロンドン=吉田〈秀〉特派員)
 ●CSCE首脳会議の議事日程 (日本との時差は8時間)
 【19日】
 午前10時 エリゼ宮(仏大統領府)で欧州通常戦力交渉(CFE)条約、北大西
洋条約機構(NATO)・ワルシャワ条約機構「不戦宣言」調印
 11時 CSCE首脳会議がクレベール国際会議場で開幕。ミッテラン仏大統領、
デクエヤル国連事務総長が演説
 午後1時 エリゼ宮で首脳の昼食会。外務省で外相の昼食会
 3時 全体会議。米、ソ、チェコスロバキア、英国などの首脳が演説
 7時 パリ市内のシャイヨー宮でレセプション
 【20日】
 午前10時 全体会議。ドイツ、ポーランドなどの首脳が演説
 午後1時 各国首脳が昼食
 3時 全体会議。ルーマニア、ノルウェー、モナコなどの首脳が演説
 5時 非公開の議論
 9時 ベルサイユ宮殿でパリ・オペラ座のバレエ鑑賞
 10時 同宮殿で夕食会
 【21日】
 午前10時 最終文書に調印。ミッテラン大統領が閉幕演説
 11時 閉幕

朝日新聞社
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◆000002 (T940930M09--01)
 冷戦の後始末なお難問 核解体促進で合意したが… 米ロ首脳会談
1994.09.30 東京朝刊 9頁 1外 (全1362字)
 【ワシントン29日=西村陽一】「戦略的なパートナーシップ」をめざし二十七、
二十八の両日行われた米ロ首脳会談は、戦略核の解体促進などで合意したが、かつて
のような「高揚したドラマ」(クリントン大統領)はなく、淡々と進められた。しか
し、核の解体と核物質の管理は、個人的な親密さを強調し、笑顔を振りまいた二人の
首脳の表情とは裏腹に、深刻な問題をはらんでいる。ウクライナの動きが影を落とし
ているうえ、ロシアでも核物質の盗難や核解体の遅れが表面化しているからだ。核軍
縮の目標をうたいあげた以前のサミットと違い、冷戦の戦後処理をいかに進めるか、
という難問が二つの核大国を待ち受けて いる。
 エリツィン大統領は、「我々は決して米国と戦わない」と語り、クリントン大統領
は「互いの国民を狙っていたミサイルは解体されつつある」と述べた。だが、二人の
首脳はいま、冷戦時代とは別の危険に取り組まなくてはならない。核の後始末である。
 ペリー米国防長官がロシアの核解体の遅れに懸念を示したとき、ワシントンを訪れ
ていたロシア大統領評議会員のカラガノフ氏は「意思がないのではない。資金がない
のだ。第一次戦略兵器削減条約(START1)調印に伴う米国の資金援助があるが、
これだけでは、技術的な困難を乗り越えられない」と言った。
 同氏のいう「困難」は、解体能力だけではなく、核兵器の管理や輸送、核解体に伴
う高濃縮ウランや軍事用プルトニウムの貯蔵と警備、汚染対策など多岐にわたる費用
のねん出だ。プルトニウム生産や核弾頭の製造をしてきたロシアの核閉鎖都市では、
失業や給料未払いとともに、核物質の盗難も起きている。戦略ロケット軍の司令部で
は最近送電カット事件が起きた。各地にちらばる戦術核兵器には「モスクワの管理が
行き届かず、盗難や売買の危険が増えている」と米政府筋は心配している。
 ウクライナでは、クチマ大統領が核不拡散条約(NPT)加盟に前向きな姿勢に転
換したものの、保守派が多数を占める議会との調整は終わっていないので、STAR
T1発効の障害は克服されていない。ロシアでも、議会の一部や軍産複合体に「ST
ART2は戦略核戦力の構成に根本的な変化を迫り、ロシアは米国よりも不利だ」と
の反対の声がある。
 エリツィン大統領は、明らかにゴルバチョフ旧ソ連大統領の新思考外交を意識し、
初の国連総会演説で、新たな軍縮提案を行った。首脳会談で調印された共同声明には、
核物質管理などをめぐる盛りだくさんの合意が記された。だが、具体的な道筋を記す
のは、これからの課題だ。
      *
 〈注〉一九九三年一月に調印された米ロの戦略兵器削減条約(START2)は、
START1(九一年調印)発効後七年間で(1)戦略核弾頭総数を三千八百―四千
二百五十個に(2)二〇〇三年までに三千―三千五百個に、二段階で削減するという
もの。
 九一年末のソ連崩壊で、米国は、旧ソ連の戦略核を引き継いだロシア、ウクライナ、
カザフスタン、ベラルーシとリスボン議定書に調印(九二年)、ウクライナなどは核
不拡散条約(NPT)加盟を約束した。
 今年一月の米、ロ、ウクライナの首脳会談で、ウクライナの戦略核撤廃が合意され
たが、ウクライナはいまだにNPTに加盟していない。このため、ロシアなどは批准
書を寄託していない。

朝日新聞社
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◆000003 (T941205M03--01)
 紛争対応機能、どう強化 冷戦後の新たな火種 全欧安保首脳会議
1994.12.05 東京朝刊 3頁 1外 写図有 (全2138字)
 欧州の安全保障について話し合う全欧安保協力会議(CSCE)の首脳会議が五、
六の両日、ブダペストで開かれる。ベルリンの壁が消えて五年、冷戦終結を宣言した
歴史的なパリCSCE首脳会議から四年たつが、欧州は安定からは程遠い状況だ。ボ
スニア・ヘルツェゴビナでは、数十万人の死者を出している紛争がなお続き、カフカ
スなど旧ソ連地域でも銃声のやむ日がない。CSCEの五十三カ国(新ユーゴスラビ
アは資格停止中)は、苦闘する欧州安保にどんな回答を用意するのか。
 【ブダペスト4日=林修平】「ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が冷戦の燃え殻の中
から姿を現した時、国際社会は十分に準備ができていなかった」。クリストファー米
国務長官は一日、北大西洋条約機構(NATO)外相会議で、冷戦後の地域紛争に対
処する態勢の不十分さを率直に認めた。
 NATO外相会議の最終声明も、「紛争の解決と防止のために国連憲章に基づく地
域機関としての役割を果たすべきだ」とし、CSCEの機能強化への支持を表明した。
今回の首脳会議の結論を先取りするかのような内容だった。
 信頼醸成措置や人権などについて東西対話を進めることで緊張緩和を図るため一九
七五年に正式発足したCSCEは、東西冷戦時代はともすれば「おしゃべり会議」と
呼ばれた。それがいま、紛争の防止と解決で、欧州安保の一つの柱としての方向づけ
を与えられようとしている。
 「欧州安保の構築にはロシアの積極的な参加を必要とする」(NATO外相会議声
明)。だが、そのロシアは、中・東欧への拡大に踏みだそうとしている欧州連合(E
U)やNATOに神経をとがらせ、また、周辺の地域紛争に悩まされている。「拡大
する西欧」と「苦闘するロシア」の間の緊張は消え去っていない。
 こうした状況の中で、かつての東西両陣営の国が対等の立場で加盟していたCSC
Eは、米国と西欧がロシアと付き合ううえで好都合な「受け皿」としての存在意識を
強めている。
 一方で、米国がボスニア紛争を「欧州の問題」とし、本格的な地上軍を派遣しない
ことや武器禁輸解除問題で、米欧関係もぎくしゃくしたものになっている。
 こうした欧州安保をめぐる、西欧と米国、ロシアの三すくみ状況の中で、当面はC
SCEの「紛争解決」機関化が、手さぐりで進められることになりそうだ。
 ○独自PKOなど焦点
 今回の首脳会議では、CSCEを紛争予防・解決に実行力を伴う「組織」へと脱皮
させることが主要議題となる。(1)ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を中心とする地
域問題(2)CSCEの強化(3)一九七五年の「ヘルシンキ十原則」を補完する
「行動規範」などが採択される見通しだ。
 さらに、地域紛争の収拾を目的としたCSCE独自の平和維持活動(PKO)も焦
点となる。また、会議に出席するウクライナのクチマ大統領は、期間中に核不拡散条
約(NPT)の批准書を米英ロ三国に手渡し、ウクライナはNPTに正式に加盟する。
(ブダペスト=大塚誠)
 ●新体制作り視野に、前向き評価へ転換 米国
 【ワシントン4日=五十嵐浩司】今回のCSCE首脳会議で、米国はCSCEを懐
疑的に見ていたブッシュ前政権とは対照的な、「欧州の包括的な安全保障を作る努力
の頂点」(政府高官)との前向きの評価を明らかにする。この転換は、冷戦後の欧州
安保体制作りにロシアの参加を得る狙いからのようだ。
 クリントン米大統領 はCSCEでの演説で、今年初めから続けた欧州安保体制見直
しの結果を示す。CSCE強化を支持するとともに、NATOの拡大とどうかかわっ
ていくかなどについて、指針を示す予定だ。米国はCSCEの権威を確立し「監視調
整役」の機能を期待しているようだ。
 米議会調査局のスローン上級分析官は、米国の意図を「第二次大戦後のドイツを欧
州安保に巻き込んで成功したように、冷戦後の体制作りにCSCEを通じロシアを巻
き込もうとしている」と指摘する。CSCEの強化は、NATO拡大に懸念を示すロ
シアに、ある種の保障も与えるだろう。
 ●NATO封じ狙う ロシア
 【ワルシャワ4日=西村陽一】「NATOの拡大を阻止するか、先延ばしさせるこ
とが、CSCEサミットでのロシア外交の課題だ」と、ロシア大統領評議会のカラガ
ノフ氏はいう。
 ロシアにとっては、ポーランドなどがNATOに加われば、「ロシアとNATOの
間に広がる中・東欧諸国の回廊地帯」(ニコノフ下院議員)が姿を消し、NATOが
ロシアの国境に迫ってくることを意味する。
 ロシアでは、冷戦後の欧州の安全保障秩序の主導権をNATOに奪われ、やがては、
ロシアが勢力圏と見る旧ソ連諸国にもNATOの手が伸びるのではないか、という危
機感が強い。

 そんなロシアの目には、CSCEは、NATOの膨張を封じ込めるための格好のカ
ードに映る。だが、今のCSCEには、そんな力はないことも、ロシアは承知してい
る。今回のサミットに向けて、CSCEに地域紛争解決の権限を持たせ、国連安保理
のような「執行機関」を米国や欧州連合(EU)とともにつくろうと呼びかけている
のもそのためだ。
 【写真説明】
 参加国の国旗が並び、開会に向け準備が進められているブダペストのCSCE首脳
会議会場=ロイター

朝日新聞社
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◆000004 (T970319M08--05)
 NATO拡大巡り激論必至 あすから米ロ首脳会談
1997.03.19 東京朝刊 8頁 2外 写図有 (全3486字)
 クリントン米大統領とエリツィン・ロシア大統領が二十、二十一の両日、フィンラ
ンドのヘルシンキで会談する。二十一世紀の欧州の安全保障秩序や米欧ロの三極関係
に大きな影響を与える北大西洋条約機構(NATO)拡大問題が焦点だ。米国やNA
TOは、七月のNATO首脳会議で、中・東欧の加盟対象国を選び、一九九九年まで
に拡大を実現する方針だが、ロシアはこれに強く反対している。今回の会談では、ロ
シアとNATOの新しい関係を規定する協定のほか、核軍縮や欧州通常戦力(CFE)
条約などをめぐり、突っ込んだ議論が交わされるとみられ、「米ロ関係史上、最も困
難な会談」(エリツィン大統領)との見通しも出ている。
 ■アメリカ 欧州安保へ意気込み 「エリツィン後」見据え戦略
 【ワシントン18日=水野孝昭】クリントン政権は、NATOの東方拡大がロシア
の国益の根幹に触れることは承知のうえで、拡大をめざす。そこにはロシアの改革支
援を最優先した「冷戦後」から歩を進めて、二十一世紀の欧州新秩序の形成で主導権
を握ろうという二期目のクリントン政権の狙いがある。だが、拡大を急ぐあまり、こ
れまでの協調路線を損なうことを懸念する声は米国内でも強い。
 「平和で統一された民主的な欧州を、史上初めて実現させる」。クリントン大統領
はNATO東方拡大を対中関係と並ぶ二期目の外交政策の主柱に据えた。ロシアの猛
反対に対して、米国は様々な懐柔策は用意しつつも、拡大そのものについては「決定
済み」として譲る気配はない。「歴史に名を残すことを目指す大統領にとって、NA
TO拡大の実現は外交政策という以上の重みを持っている」と米軍備管理協会のメン
デルソン副会長は指摘する。
 十七日にプリマコフ外相を迎えたクリントン大統領は、米ロ関係の重要性を強調し
つつも、NATO拡大問題では強い姿勢を伝えたという。マカリー大統領報道官も
「ヘルシンキ会談の後も、対立点は残るだろう」と予想した。
 核軍縮を中心とした米ロ協調は、第二次戦略兵器削減条約(START2)のロシ
ア議会での批准承認の見通しがたたないうえ、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条
約下で認められる戦域ミサイル防衛(TMD)の範囲をめぐる交渉も中断状態になる
など、足踏み状態が続いている。
 NATO拡大について米国は新規加盟国の領土内には核兵器を配備せず、平時には
NATO軍も駐留しないなどの妥協案を出している。また、NATOの意思決定にロ
シアの意向を反映できるよう、NATOとロシア間の「憲章」制定を求めている。だ
が、ロシアが文書に法的拘束力を求めているのに対し、米国はあくまで「政治的公約」
にとどめる意向だ。
 就任以来、「エリツィン支援」で一貫してきたクリントン政権だが、昨年のエリツ
ィン大統領の手術以降は「エリツィン後」も見据えた対ロ政策の練り直しも迫られて
いる。NATO拡大を急ぐのも、エリツィン後のロシア相手の交渉はいっそう困難に
なると予想しているからでもある。
 だが、「ロシア民主化」からNATO拡大に重点を移したクリントン政権の姿勢に
対しては、「対ソ封じ込め」の提唱者のジョージ・ケナン氏が「致命的誤り」と決め
つけたのをはじめ、ナン前上院議員ら専門家の間でも異論が出ている。政権高官は
「ロシアには条件付き受け入れ以外の選択肢はない」としているが、拡大にともなう
コストが具体化してくるにつれて、そのペースや手順をめぐって議会でも論議が起き
そうだ。
 ■ロシア 欧州大国の地位要求、「拡大の第二波」は絶対阻止
 【モスクワ18日=西村陽一】エリツィン政権はNATO拡大に反対しつつ、拡大
後もにらんだNATOとの新しい関係づくりに腐心している。
 米国やNATOに様々な条件を突き付けているのは、拡大がもたらす脅威を減らし、
自らの勢力圏と見なす旧ソ連諸国にNATOの影響力が及ぶのを食い止めたいからだ。
同時に、NATOと結ぶ予定の協定を、欧州の安保秩序を担う大国としての「あかし」
に位置づけている。ここに影を落としているのは、欧州から疎外されたくない、とい
う心理だ。
 「NATO拡大は、国際社会でのロシアの居場所がどこにあるのか、というソ連崩
壊以来の難題を鋭い形で突き付けた 」。国防会議分析スタッフのコルトゥノフ氏は指
摘する。
 欧州とアジアにまたがるユーラシア国家ロシアは、欧米偏重外交から、アジアと中
東に目配りした多極化外交に重心を移している。だが、「欧州から孤立すれば国際政
治の辺境に追いやられる」(バトゥーリン国防会議書記)という懸念は指導部の多く
が抱く。
 ソ連のかつての同盟国の中・東欧諸国がNATOに加盟し、ロシア国境に迫ってく
る、という拡大の構図は、この懸念を刺激し、エリツィン大統領は「ロシアを欧州か
らはじき出し、封鎖しようとする試み」と受けとめた。疎外感や孤立感が、反発の底
流に渦巻いている。
 とはいえ、「背を向けても、『目には目』で軍事力で臨んでも、益にならない」
(ロゴフ米国カナダ研究所長)。軍の弱体化を背景に、NATO拡大とからめて第二
次戦略兵器削減条約(START2)の批准を遅らせ、CFE条約の修正を求め、
「最後のよりどころ」としての核戦力を重視する姿勢を強め、旧ソ連諸国の統合を進
めるなどの対抗策を矢継ぎ早に打ち出しつつ、最も力を入れてきたのが「欧州の大国」
にふさわしい地位の要求だった。
 それは、「NATO拡大問題の本質は、世界最強の軍事同盟が、欧州最大の国家ロ
シアの権利をいかに尊重するか、という点に尽きる」というリュリコフ大統領補佐官
(外交担当)の発言に示されている。
 だが、将来、あるかもしれない旧ソ連諸国のNATO加盟には、このような「条件
闘争」の余地すらない。カラガノフ大統領評議会員は「拡大の第二波が、バルト諸国
に及ぶのを絶対に阻止するため、拡大が高くつくことを欧米にわからせなければなら
ない」と話す。エリツィン大統領は今回の会談に、第二波に至る道を封じる狙いも込
めている。
 今、ロシアで「NATO拡大を許せば、共産党や過激な民族主義者に権力を奪われ
る」と高官たちが声をあげている。しかし、政権に真の危機をもたらしうるのは、N
ATO拡大ではなく、給料・年金の長期未払いなどからくる社会不安の方だ。病み上
がりの大統領は、今回の組閣で、市場経済化を進めてきたチュバイス前大統領府長官
(四一)を第一副首相兼蔵相に、ネムツォフ・ニジェゴロド州知事(三七)を社会保
障担当の第一副首相に配した。危機を乗り切るために、「若さ」と「改革」を前面に
出した政権づくりに着手した。
 大統領は十七日の会見で「経済の約七割が民営化されているのに、なぜ、市場経済
国家として認められないのか。どうして、米国はロシアに対する貿易障壁を解かない
のか。米国はなぜ、ロシアが国際経済機構に入ることに反対するのか」と語った。西
側に評価の高い二人の若手政治家を閣内の中枢に据えたのは、首脳会談に臨むエリツ
ィン大統領の足場固めの意味も帯びている。
 <米ロの主な争点>
 A:NATOの東方拡大
 B:核軍縮・軍備管理
 <ロシア>
 A:拡大に反対。ロシアとNATOの関係を規定する協定には次の4条件が満たさ
れるべきだ。新規加盟国に核兵器や軍事施設を配備しない▽ロシアの安保に影響を与
えるNATOの決定とその実行に対等な資格で参加▽CFE条約をロシアに有利な形
で見直す▽これらが口約束に終わらないよう協定に拘束力を持たせる。
 B:START2の批准と、核弾頭数をさらに大幅に削減するSTART3の締結
には、それぞれ、原則として、米国のTMD構想に関するABM制限条約交渉での合
意が必要。
 下院は、START2はもともとロシアに不利なうえ、NATO拡大でさらに不利
な立場に追い込まれるとして批准承認に反対。
 <米>
 A:1999年までに実現させる。今年7月に第一陣加盟グループを決める。その
後もバルト諸国など旧ソ連諸国を含め、どの国にも門戸を開く。
 ロシアとは安全保障関係についての憲章を定め、NATOの意思決定にロシアの意
見を反映させる。だが、憲章に法的拘束力は与えない。
 B:START2の批准はロシア自身の利益になるはずだ。START2でロシア
の負担が大きいというなら、その批准を条件に、START3の交渉に進む用意があ
る。
 ABM条約は維持し、同条約に違反しないTMDの範囲についてロシアとの交渉を
進めるが、実験・開発は拘束されない。
 【写真説明】
 クリントン大統領
 エリツィン大統領

朝日新聞社
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◆000005 (T970322M09--02)
 NATO拡大交渉でロシア「条件闘争」 米ロ首脳会談終え見方強まる
1997.03.22 東京朝刊 9頁 1外 (全1518字)
 【ヘルシンキ21日=西村陽一、水野孝昭】米ロ首脳会談でクリントン米大統領と
エリツィン・ロシア大統領は二十一日、欧州の安全保障の将来像を中心に意見交換し、
欧州の安全保障でロシアの位置づけが「カギ」となることで一致した。NATOとロ
シア間で結ぶ「憲章」(協定)でもロシア側が軟化した姿勢に転じており、米国側に
は「ロシアはNATO拡大を前提に、条件闘争に入った」という見方が強い。
 同日までの協議で、ロシアはNATO反対の基本姿勢は変えていないが、米国に対
しNATO新規加盟国に(1)核兵器を配備しない(2)NATO部隊を配置しない
(3)軍事施設を新設しない、などを要求。米国は(1)、(2)については原則と
して受け入れたものの、加盟国間の軍事施設の共用化は必要との考えだ。
 エリツィン大統領はこの日も、会談冒頭の記者団とのやりとりで、NATOはロシ
アへの脅威ではないという米側の説明には「納得していない」と語り、依然として反
対の姿勢を崩していないことを強調した。
 この対立は解けないものの、ロシア側はNATO拡大は避けられない、とみて「条
件闘争」に入っている。ロシアとNATOの新しい関係を規定する「憲章」の性格に
ついても、ロシア側は必ずしも批准にはこだわらない姿勢を示し、歩み寄りを見せた。
 ロシアのヤストルジェムスキー大統領報道官は二十一日、一部記者団に「ゴルバチ
ョフ時代、西側はNATOの『不拡大』を始め、多くの約束をしたが、裏切られた。
今回、国家のトップが約束をきちんと裏付け、強化すれば、信じることができる」と
述べた。
 ヘルシンキ入りしている政府高官や外交ブレーンも、朝日新聞記者に「批准につい< br>ては妥協の余地がある」(ベレゾフスキー安保会議副書記)、「(欧州の現状固定を
確認した)一九七五年のヘルシンキ宣言や(欧州首脳が新たなパートナーシップの発
展をうたった)九〇年のパリ憲章のような形もある」(カラガノフ大統領評議会員)
と語った。ただ、反NATO姿勢の強いロシアの議会が批准を求めるのは確実で、国
内調整は残りそうだ。
 ○ロ議会は妥協けん制 国内の強硬世論、背景に
 【ヘルシンキ21日=西村陽一】ヘルシンキの米ロ首脳会談をにらみ、ロシア議会
がエリツィン大統領に対し、北大西洋条約機構(NATO)拡大や軍縮問題で安易な
妥協をしないよう圧力を強めている。ロシア下院が二十一日にもNATO拡大問題の
審議を始めるのに先立ち、超党派議員連盟「反NATO」の代表バブーリン副議長は
拡大問題で、「黙認したと思われるような、中身のない協定を締結してはならない」
とけん制している。
 ヘルシンキを訪れているロシアのショーヒン下院第一副議長は、政権寄りの立場な
がら、第二次戦略兵器削減条約(START2)の批准とSTART3の交渉開始に
ついて「急ぐ必要はない。米国が、NATO拡大に対する我々の懸念にどこまでこた
えるか、を見極めてからで十分だ」と述べた。
 共産党系左派や民族派が多数を占めるロシア下院では、「NATO拡大は事実上、
決着がついてしまった」(共産党幹部のイリューヒン安保委員長)と見切りをつけ、
拡大後を見越して「独立国家共同体(CIS)との軍事同盟の強化、アラブ諸国、中
国との軍事条約の締結」といった対抗策を唱える声も表面化した。
 国内の強硬世論が、エリツィン氏への圧力になっているのは間違いない。共産党の
攻撃の標的になってきたチュバイス前大統領府長官を第一副首相兼蔵相として閣内の
中枢に据え、改革色を前面に出した新内閣の布陣に、ただでさえ野党の反発は高まっ
ている。NATO問題で譲歩した、と受け取られれば、突き上げはさらに強まるだろ
う。

朝日新聞社
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◆000006 (T970708M09--03)
 カラガノフ氏(拡大するNATO 欧州97インタビュー:6)
1997.07.08 東京朝刊 9頁 1外 写図有 (全1006字)
 ロシア・カラガノフ大統領評議会員 脅威は東、中国強大化
 ――ロシアは、北大西洋条約機構(NATO)の拡大を容認したのか。
 「反対は当然のことだが、あれほど大きな力を注ぐ必要はなかった。ロシアの西側
に軍事的な脅威はないし、近い将来もないと思うからだ」
 ○ベラルーシ関係を重視
 ――東側に脅威があるということか。
 「長期的にみて、強すぎる中国が出現する可能性に不安を持っているのは確かだ」
 ――旧ソ連諸国のNATO加盟は、絶対に容認できないのか。
 「ロシア国民の反発は強い。その意味で、ベラルーシとの関係を重視している。ベ
ラルーシがロシアの同盟国であれば、ウクライナは友好国、もしくは中立国として残
るだろう。反ロシアになるのを防ぐことになる。これに失敗すれば、ウクライナとの
関係が緊張してくる可能性もある」
 「ただ、将来の欧州が、集団安全保障機構を必要としない環境になるのは間違いな
い。地域紛争に対応するための柔らかなシステムが必要とされるだろう。その点で、
どこまでNATOが拡大するか、長期的には大きな問題とは思わない」
 ○旧ソ連再統合は考えず
 ――旧ソ連諸国の再統合は視野にあるのか。
 「戦略的に、とるべき道とは思わない。経済発展の段階や市場経済の普及度合いな
どで、この五年間で国によってずいぶん差がついてしまった。中央アジアでは封建的
な社会主義、ロシアでは野蛮な資本主義が育ち、国家間の経済的な切れ目が広がって
いる。再統合は、ロシアの持ち出しになるばかりだ。モルドバから農産物を買うより、
オランダから買った方が安い」
 ○世界経済へ統合目指す
 ――ロシアは当面、どういう路線を目指すのか。
 「最大の課題は、国内経済の立て直しと実務的な国家機構の整備だ。われわれは長
い間、核ミサイルを持った貧乏国だったが、これからは核兵器の持つ意義は小さくな
っていく。ロシアは、世界経済への現実的な統合を目指す。国内の資源と市場だけで
は、経済成長を加速できないからだ」
 ――欧州連合(EU)とはどんな関係を想定しているのか。
 「経済だけでなく、政治面でもEUとの協力に関心を持っている。でも、ロシア経
済が成長する過程で、今後、保護主義が強まるだろうから、EUとの間に強い摩擦が
予想される。これが好転するには、十年ぐらいかかるのではないか」
 (モスクワ=伊沢紘樹)=おわり
 【写真説明】
 外交・防衛問題でのエリツィン政権ブレーン。

朝日新聞社
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◆000007 (T980414M03--01)
 日ロ動かす「第4の波」 ロシア大統領、週末来日へ(時時刻刻)
1998.04.14 東京朝刊 3頁 3総 写図有 (全3484字)
 ロシア政局などに再び異変がない限り、エリツィン大統領は今週末、橋本龍太郎首
相との会談にやって来る。「今や北方領土問題を除けば、利害はすべて一致する」
(外務省幹部)。様変わりした日米中ロ関係が、両国の接近を後押ししている。それ
は両国の関係改善への戦後「第四の波」といわれ、中国、安全保障、そして経済が焦
点だ。この流れは日本の領土交渉に新たな問題を提起する可能性がある。これまで日
ロ関係で最優先課題の地位を占めてきた領土問題の新たな位置づけである。(政治部
・本田優)
 ●中国・存在、ロシアに脅威
 丹波実外務審議官「過去五十年でこれほど日ロの雰囲気が良かったことはない。両
国の接近は戦略的、地政学的に必要だ」
 カラシン外務次官「全く同感だ。今の日ロ間の状況は二十世紀で最も良い」
 川奈首脳会談の準備のため、三月二十六日に東京で開かれた次官級会議は、こんな
やりとりで始まった。
 外務省関係者によると、両国の接近には今回も含めて戦後四回の波があった。
 第一波は、ソ連のフルシチ ョフ第一書記の平和共存路線外交。一九五五年夏に日本
との国交回復交渉で「二島返還」を示唆した。日本は米政府からの圧力を受けて、合
意しなかった。
 「我々は米国との強力な協調関係をわずかでも害するいかなる約束も行わない」。
当時訪米した重光葵外相の演説が日本の姿勢を端的に示している。この時以降、冷戦
下の日本の姿勢は、ほぼこの線で貫かれた。七二、三年には、米中接近に対抗して、
ソ連が柔軟化の兆しを見せたが、この「第二の波」も第四次中東戦争などで消えた。
 「第三の波」は、冷戦後の八〇年代末から九〇年代初めにかけて。「スターリン主
義への批判」を背景に、改革派の一部が返還を主張したが、保守派の巻き返しで挫折
した。
 だが九七年に入って「第四の波」が、「戦略的、地政学的な共通の利益」という新
しいキーワードを携えて登場した。
 その一つの要因は、中国だ。ロシアは北大西洋条約機構(NATO)拡大に対抗す
るなどの目的で、九六年四月に中国と戦略的パートナーシップを結んだが、その中国
をけん制するために日本との関係改善を重視したのだ。
 九四年に発足した日米ロ三極フォーラムのロシア代表のブラゴボーリン氏は、こう
説明する。
 「極東で日米ロ関係がうまくいかなければ、ロシアは孤立する。中国と戦略的パー
トナーシップを持っても、子分役とならざるを得ない。冷戦崩壊直後の中国はソ連に
比べてあらゆる面で劣っていたが、十年後の今、すべての面でロシアより強くなった」
 日本では昨年十二月一日の衆院予算委で、宮沢喜一元首相が、日米中ロ外交の活発
化について「わが国にとり、実は初めて外交に大きな選択肢が生まれた、いわばカー
ドを持つことになる」と指摘した。ロシアカードの標的は中国にほかならない。
 ●経済・制約解け可能性、安保・共同訓練へ詰め
 第二の要因は経済だ。大統領評議会員のカラガノフ氏は先月、自分が主宰する外交
国防政治評議会で作成した「二十一世紀のロシアの戦略」で、「ロシアがシベリアに
適切な開発戦略を作れなかったり、中国との政治的接近、日本との関係改善の可能性
を利用できなかったら、同地域は戦略的弱点になる」と書いた。
 こうした動きを見据えているのが、日本の経済界だ。通産省は昨年七月、準備を重
ねて橋本首相の「ユーラシア外交」演説を仕掛けた。
 伊佐山建志通商政策局長が語る。「首相の演説とクラスノヤルスク首脳会談が転換
点だった。経済分野で制約から解放された。それまでは『外交のくびき』が非常に強
かった」。日米中ロの各二国間関係で、最も経済的な関係が細い日ロ(上図参照)は、
逆に「潜在的な可能性を意味する」と見る経済関係者も多い。
 第三の要因は安全保障だ。九三年の米ロ国防相の合意後、一足先に進む米ロの後を
追って、三月十六日にモスクワで、防衛庁とロシア国防省の課長、大佐級による初の
実務者協議が開かれた。川奈首脳会談で発表する予定の、今夏のウラジオストク沖で
の共同救難訓練などの詰めを行った。
 だが、こうした日ロ関係の広がりに北方領土問題が影を落としている。
 かつて返還を主張していたロシア外務省の改革派はほとんど表舞台から姿を消し、
保守派も領土問題を争点化していない。ロシア外務省も極めて慎重だ。
 日本側にとって頼みの綱は昨年、クリミア半島、セバストポリのウクライナへの帰
属決定、リトアニアとの国境画定、中国東部国境画定宣言と、矢継ぎ早に懸案を片づ
けた「エリツィン大統領の指導力」だ。
 だが、もしも領土問題の打開が見られないと、日本は領土と戦略的に重要な関係改
善のどちらをとるのかという難しい選択を迫られることになりかねない。それは、領
土問題の位置づけについての再定義につながる可能性をはらんでいる。
 ○米国 「日米が軸」と指摘 北方領土非軍事化で出番も
 【ワシントン13日=西村陽一】米国にとって重要なのは、自らが主導して築くア
ジア太平洋の地域秩序に、中国とロシアをどう取り込むかという点だ。望ましい安定
をつくるには、「米中」に加え「日ロ」の軸も太くなった方が好ましい、と米政府は
見ている。
 クリントン大統領は昨年六月、「ロシアと日本という、われわれの二大友好国が同
盟関係となるのを妨げている要因を取り除き、アジア太平洋地域を安定させることが、
われわれの唯一の関心だ」と語った。
 米国の国防政策にかかわってきた平和研究所のクローニン氏は「ロシアが市場経済
への移行に成功し、二十一世紀のアジア太平洋を支える資源を提供できる国になるよ
う、日米がロシアに建設的なプレーヤーの地位を保証する。これが日米ロの共通の利
益になる」という。
 中国の要素も大きい。日本と核大国ロシアとの安全保障上の垣根が低くなれば、中
国もこれら三カ国との安保対話に乗り出さざるを得なくなる。プリンストン大学のロ
ズマン教授は「日ロ協力が進めば、エネルギー分野で多国間協力が生まれ、中国の安
定にもいい影響を及ぼす」と指摘する。
 ただ、米ロ関係がぎくしゃくする中で日ロ関係に前進のムードが出たことには、
「日米の緊密な協議抜きに日ロ交渉が進み、日本が外交の『独立性』を志向している
ように見られるとすれば、生産的ではない」(ジアラ元国防総省日本部長)という懸
念も聞こえる。あくまで日米の枠を基本に進めることが肝要という指摘だ。
 ソ連崩壊で、米ソや中ソの対立にもてあそばれる形だった北方領土問題の性格も変
わった。日ロの学者や日本の一部の官僚には今、北方領土の非軍事化などで、米国に
「一定の関与」を求める時期がいずれ来る、との見方がある。米政府のロシア専門家
は、伝統的に大西洋・欧州の文脈からモスクワを見てきたが、日ロ関係の進展によっ
ては、将来の「関与」のあり方も含め、アジア太平洋から極東・シベリアの文脈でモ
スクワを見る時代が来るかもしれない。
 ○中国 警戒しつつ見守る 対ロ経済、後押し期待
 【北京13日=藤原秀人】アジア太平洋地域の現状について、中国側は「日米のき
ずなが強すぎる」(有力紙幹部)と受けとめており、中国やロシアを含めた四カ国相
互の関係の底上げを望む点で、日ロの関係強化の動きは歓迎すべきものだ。ただ、ロ
シア(ソ連)とは長年、敵対関係にあった歴史からいって、その存在感がこの地域に
強まり、さらに巨大な経済・技術力を持つ日本とのつながりを深めることに、不安感
が漂うのは否定できない。
 政府系の現代国際関係研究所の劉桂玲副研究員は「ロシアは日本を突破口にこの地
域で影響力を強め、ユーラシア大国としての地位を確立する狙 いがある。日本も、ロ
シアの支持で国連安保理の常任理事国の座を占め、政治大国を目指す戦略だろう」と
分析する。
 「多極化世界の構築」を基本的な外交戦略に掲げる中国にとって、ロシアや日ロ関
係の比重が高まることは、米国の存在感の相対的な低下につながりうるものであり、
「中国の外交方針に合致する」(外務省高官)。警戒しつつこの関係を見守り、育て
る、というのが中国の本音だろう。
 一方、帝政ロシア時代以来初めてという東部国境画定を実現させたロシアとの関係
は、首脳の相互訪問など政治面では軌道に乗っているが、経済や貿易面は発展してい
ない。「経済が政治の発展方向を決める時代に、これは問題」(李英武・吉林大学研
究員)との見方もある。中ロだけでは企業化が難しい東シベリアのエネルギー開発に
日本の資金と技術をたぐり寄せるためにも、日ロの関係進展を期待したいところだろ
う。

朝日新聞社
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◆000008 (T981002M09--01)
 新政権ロシアに吉?凶?(社民の風 ドイツ総選挙の波紋)
1998.10.02 東京朝刊 9頁 1外 (全1177字)
 【モスクワ1日=大野正美】ドイツ総選挙での社会民主党の勝利を受けて発足する
シュレーダー氏の新政権をめぐり、ロシア国内の評価がゆれている。エリツィン大統
領とコール首相は一緒にサウナに入るなど親密な個人関係で知られた。このため、ロ
シアの改革支援に熱心だった首相の退陣で両国関係の冷え込みを予想する向きがある。
一方では、最も経済的な結びつきが強いドイツでの社民主導政権の誕生を、米国や国
際通貨基金(IMF)流の市場原理万能型から社会政策や国家の役割にも配慮する欧
州流の混合型へと、ロシアの経済改革の方向を転換する契機ととらえる勢力も力を増
している。
 改革支援を中心に両国関係冷え込みを予想するのは、政治学者のブーニン政治技術
センター所長だ。ゴルバチョフ元ソ連大統領からエリツィン大統領へと続いた首脳同
士の親密な個人関係を持つコール首相と違い、「社民党はロシアにドライな立場を取
れる。債務返済の要求は厳しいものになろう」と見る。
 首相承認問題で共産党など野党に屈服してエリツィン大統領の指導力も大きく低下
したことから、首脳外交はもはや今後のロ独関係に重要な意味を持たないとの見方も
強い。「大統領に現実的な統治能力はもうない。シュレーダー氏はルシコフ・モスク
ワ市長らエリツィン後の政治家たちとより実務的な関係の構築を目指す」とカラガノ
フ欧州研究所副所長は予測する。
 実際、ロシアへの金融支援については、すでにコール首相が総選挙終盤に「西側諸
国が新たな支援をする理由はない」と表明していた。シュレーダー氏も、総選挙の勝
利直後に「ロシアはまず自ら解決に努めるべきだ」と述べた。
 しかし、こうした改革支援に対するドイツ指導層の姿勢の変化をベロフ欧州研ドイ
ツ部長は「むしろロシアに害をもたらしたIMF路線の見直し勧告と見なすべきだ」
と歓迎する。
 緊縮財政と自由化を軸とするIMF路線の金融・経済危機による崩壊が独総選挙で
の社民勝利に重なったことで、ロシアのマスコミの注目も、国際投機筋に対する規制
や外為相場の安定、IMFや世界銀行の機構改革などの方向を取り始めた欧州の中道
左派の経済政策に集まっている。
 こうした動向を見定めたかのように、ルシコフ市長は英労働党大会への出席を利用
して二〇〇〇年のロシア大統領選に事実上の出馬表明をした。経済政策には「第三の
道」のブレア英首相や、シュレーダー氏と近い「中道左派」路線をあげた。ただちに
ジュガノフ共産党委員長も、「中道左派」による市長との連携の可能性に言及した。
 イズベスチヤ紙のボフクン前ボン支局長は、ドイツ統一の闘士だったコール首相と
違って「社民のシュレーダー氏は、旧東独の共産党指導部とも接触を持っていた。ジ
ュガノフ氏らをパートナーに受け入れられる」と指摘。中道左派をキーワードに新た
な東方政策が展開される可能性を見る。

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◆000009 (T990427M09--04)
 拡大狙う米の戦略に影 NATO首脳会議終え
1999.04.27 東京朝刊 9頁 1外 写図有 (全3708字)
 【ワシントン26日=西村陽一】二十五日に閉幕した北大西洋条約機構(NATO)
首脳会議の意義として、米政府高官が強調していたのは、「二つのM」だった。NA
TOの任務(mission)と加盟国(membership)をともに拡大し、
NATOを自らの世界戦略に使いでのある軍事同盟に再生させる、という目標を象徴
した言葉だ。だが、ユーゴスラビア空爆は会議の性格を「コソボサミット」に変え、
米国が達成しようとした目標の阻害要因となった。紛争の長期化は、同盟の求心力、
米国と欧州のきずな、NATOとロシアの関係にも大きな影を落とすだろう。(2面
参照)
 ◆現実後追い
 「時代の変化はあまりにも早い。組織が未来も通用する力を保つには、時代の先を
進まなければならない」。ソラナNATO事務総長は語った。NATOに、二十一世
紀も通用する指針「新戦略概念」を与えることが、米国が会議に託した目的だった。
 だが、指針論議を仕上げる前に、NATOはユーゴ空爆に踏み切った。将来の紛争
対応の形を「新概念」で先取りするはずが、先行する「コソボ」を「新概念」が追認
したのが、現実の姿だった。
 事態の早さに追いつこうとして、NATOの任務は追加や変更を繰り返した。コソ
ボが保護区になれば、長期の駐留を強いられる。
 ◆嫌気に拍車
 米国の青写真は「グローバル(地球規模の)NATO」だ。中東や中央アジア、ア
フリカまで視野に入れ、民族紛争や人道惨事、テロに対する危機対応軍への脱皮をめ
ざした。その前提は、盟主としての指導力の維持と、欧州との責任分担だった。
 「欧州は、遠い地域で米国の政策の責任を負わされることに反対だった」とマンデ
ルバウム・ジョンズ・ホプキンズ大教授はいう。誤算続きの「コソボ」は欧州の嫌気
に拍車をかけ、「欧州の外で同じような紛争介入が繰り返されてはたまらないという
気持ち」(同氏)が強まった。会議では「コソボ」を紛争介入のモデルと位置づける
米国と、例外とみなす一部欧州諸国の溝が表面化した。
 ◆望めぬ勝利
 オルブライト国務長官を中心に米政府が拡大継続のために掲げた「門戸開放」は、
今回、希望国の加盟のハードルを上げることで後退した。同盟の野放図な拡大への警
戒心に加え、空爆で、冷戦後最悪の関係になったロシアを刺激するNATO拡大は好
ましくない、という抑制が加わった。
 米国は、空爆続行で結束を保った。だが、「コソボ」は、NATOの将来に影を落
とすだろう。「NATOは敗北に耐えられない。だが、戦争が長びけば、完全な勝利
は望めない。これから、地上軍投入の強硬論や、交渉に活路を開こうとする動きで求
心力を失う。欧州は『米国の行い』に、米国は『欧州の怠り』に不満を抱くだろう」。
戦略国際問題研究所のサファティ欧州部長はいう。
 クリントン氏やソラナ氏は「歴史的なサミット」「もっと強い同盟になる出発点」
と繰り返した。だが、米国の外交専門家や議員には、少数ながら「祝典ではない。葬
儀だ」と言い切る声すらある。少なくとも、戦争が長期化すれば、今回の会議はNA
TOの弱体化の始まりとして歴史に記録されるかもしれない。
 ○溝深まるロシアとの間 解消はコソボ次第 地上戦、事態悪化の恐れ
 【モスクワ26日=大野正美】ロシアは、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議
をきっかけに欧州での外交・安全保障政策上の孤立感を深めた。旧ソ連十五カ国のう
ち、NATOによるユーゴスラビア爆撃に抗議して式典をボイコットしたロシアに同
調したのはベラルーシだけだ。当然、NATOの域外展開を規定する新戦略概念への
ロシア国内の反発は激しいが、一方で欧州の地域紛争にロシアがNATOと協力して
対応することなどを孤立脱却の糸口にすべきだとの声もある。いずれにせよ、ロシア
とNATOの関係の将来は、コソボ紛争の行方しだいという見方が強い。
 ◆足かせ多く
 ロシアは、式典直前にセルゲーエフ国防相がベラルーシを訪問し、共同で両国の国
境を守る軍部隊の創設で合意するなど、NATOに対抗する姿勢を示した。同国防相
は、NATOのユーゴ爆撃を契機に国防ドクトリンを見直す意向も表明している。
 これまでの考え方は、ロシアに対する大規模な侵略の可能性はなくなったとの立場
から、民族紛争など国内的な脅威への対応に重点を置いてきた。国防相は、新戦略概
念によるNATOの域外展開がロシアに向けられる事態に備えて、防空軍の強化と核
抑止力への一層の依存をドクトリン見直しの柱とする考えも鮮明にする。
 だが、NATOとの全面的な対決策にロシアが乗り出すには制約も多い。
 国際政治学者でもあるアルバトフ下院国防副委員長は、ユーゴへの軍事支援実施な
どの強硬策が、ロシアの対外債務の繰り延べを不可能にし、不履行(デフォルト)か
ら本格的な経済孤立を招くと述べ、対決策の効果を疑問視する。
 このためアルバトフ氏は、(1)ロシアが調停努力を強め紛争を早期に平和解決さ
せる(2)NATO側と欧州の安保の将来像を協議する(3)その結果、国連と欧州
安保協力機構(OSCE)のもと、ロシア及び独立国家共同体(CIS)がNATO
と平和維持活動に共同で当たるような仕組みを築く、といった対応がロシアには望ま
しいと強調している。
 ◆「新冷戦」も
 しかし、こうした対応には、コソボ紛争の収拾に手間取ったNATO加盟国側にえ
ん戦気分が出て、新戦略概念への疑問が強まるなどの条件が必要だ。逆にNATOが
地上戦に踏み切れば、ロシアは国内の親ユーゴ的な保守・愛国勢力に押され、軍事支
援からユーゴやベラルーシとの連邦結成など、強硬路線に追いやられる可能性が現実
化する。
 また、「NATOが空爆でユーゴを屈服させて勝利すれば、NATOは東方拡大を
一層進める一方で、ロシアでは反NATO感情が増大し、西側との経済関係も縮小す
るだろう」(カラガノフ欧州研究所副所長)といった、「新冷戦」を予測する見方も
有力だ。
 ○中国、「国連う回」警戒 威信低下に打開策欠く
 【北京26日=加藤千洋】「NATOの危険な変質」(人民日報)と、中国は北大
西洋条約機構(NATO)の新戦略概念に強い警戒心をのぞかせてきた。新概念を先
取りした形の米主導のユーゴスラビア空爆からは、三つの「危険な先例」を見取って
いる。
 第一にNATO加盟国の「防衛」ではなく、紛争防止、危機管理のためなら、域外
でも軍事行動がとれる道が開かれたこと。
 次に米欧間に認識の差があるものの、コソボ問題の対応が正当化されたことで、国
連安保理決議にしばられずにNATO独自の軍事行動が可能になった。
 最後に、変質後のNATOを「世界一極支配」の道具として全地球的規模で使おう
とする、米国の野心があらわになった点である。
 中国が最も注目し、懸念を深めていたのは新概念における「国連う回」戦略だった。
「世界平和の支柱になった」(江沢民国家主席)と自負する中国が、近年、国際問題
で存在感を高めてきたのは、国連安保理で拒否権を有する常任理事国だという点が最
大のよりどころだった。それを封じられると、影響力は大きく減退する。
 ユーゴ空爆が始まった当時、欧州歴訪中の江主席は「武力行使にあくまで反対」と
のメッセージを発し続けたが、大きな反響をかち取ることはできなかった。安保理が
招集した緊急協議では秦華孫国連大使が「国連憲章と国際法に著しく違反する行為だ」
と論陣を張ったが、この一カ月間、中国の存在感はロシアに比べてもはるかに小さく、
外交当局の打つ手は手詰まり状態にある。
 一方で、新概念の登場は中国国内に波紋を投げかけるかもしれない。中国政局は正
念場の経済改革の進め方を中心に、主導権争いが静かに続いている。そうした情勢下
で、すべての外交問題が国内問題にからんで論議される状況が生まれているからだ。
 ナンバー2の李鵬・全国人民代表大会常務委員長が最近、対外政策で活発に発言を
始めた。朱鎔基首相の訪米と前後して訪れたギリシャでは米主導のNATO空爆を手
厳しく批判。また人民解放軍の熊光楷副総参謀長は最近、北京で会見した欧州の代表
団に激しい口調で空爆批判を展開したといわれる。
 朱首相自身が明かしたが、空爆と重なった首相訪米には国内で反対論が出た。だが
江沢民主席の決断で実行したという。NATO新戦略の登場は、冷戦後に江主席が先頭になって進めてきた米国をはじめとする大国間の積極外交、特に共通利益に立脚す
る「パートナーシップ外交」にも影を落としそうだ。
 【写真説明】
 NATOの面々 閉幕したNATO首脳会議に続き、25日にワシントンで開かれ
た経済政策会合で発言するクリントン米大統領(中央)。発言を聞く、左からダレー
マ・イタリア、コック・オランダ、一人飛ばしてブレア英、シュレーダー独の各首相
=ロイター
 ブルガリアの首都ソフィアで25日、北大西洋条約機構(NATO)のユーゴ空爆
に抗議する集会が開かれた=ロイター。会場では、「NATO」(ブルガリア語では
NをHと表記)がナチスのかぎ十字と同じとするゴリラが目立っていた

朝日新聞社
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◆000010 (T990506E07--04)
 イデオロギー脱し自由討議 日本とロシアで知的対話 袴田茂樹
1999.05.06 東京夕刊 7頁 文化 写図有 (全1751字)
 先日モスクワで、日本とロシアの知識人による文明論的な対話が、「日ロ知的対話」
と題して行われた。日ロの知識人が、仕事や専門のための討議ではなく、真に知的で
文化的な対話を行おう、それを通じて両国の本当の相互理解を深めよう、という趣旨
である。
 残念ながら、ロシアには日本人に対するネガティブなイメージがある。日本人は仕
事や専門の話ならいくらでもできるが、文明論を語るに足る知的な人物がいないとい
うイメージだ。悔しいが、「対話してもつまらない」というのは、世界に広がってい
る日本人観であろう。戦後の日本人が、本来の意味での教養や文化に目をふさいで、
生き急いできたからだ。
 一方、日本においても、ロシアに興味深い知性や文化人が存在するということが、
あまり知られていない。実は旧ソ連時代から、ロシアにはパステルナークやブルガコ
フなどの文学、タルコフスキーの映画など、公式の社会主義イデオロギーとは別のと
ころに、一種の「内なる亡命」として、深い精神文化が存在していたし、大型の知識
人がいた。
 そこで日ロの知識人が、仕事や専門を離れて、知性や感性を自由にぶつけ合おうと
いうことになった。我が国からは、猪口孝、山内昌之、北岡伸一、国分良成、田中明
彦らの学者、外務省からも有志が参加した。
 ロシア側は、フョードロフ政治調査基金総裁、カラガノフ外交国防会議議長をはじ
め、政界や言論界の代表十人余りが参加して、自由な討議を行った。私もこの対話の
提案者として参加する機会を得た。
 話し合いの中身は、日ロの内政、中国やイスラム世界、グローバル時代の外交、日
米・日ロ関係などの大きな枠を定め、自由に論じ合った。両国の参加者はそれぞれが
一家言を持っており、放っておいても対話は弾んだ。
 例えば、中国問題でも人権その他で欧米人とはニュアンスを異にする日本人の見解
は、ロシア側の強い関心を呼んだ。また日本の外交官が国際情勢について個人の認識
を述べると、早速ロシア側から「なぜ朝鮮民主主義人民共和国について述べなかった
のか」と質問が出たりして、ロシア側の関心のあり所を示した。
 私もロシアの経済危機や今日の混乱について、基本的にはロシアが信頼のレベルが
低い「砂社会」であることに問題があるという持論を展開した。欧米の個人主義は
「石社会」であり、日本の社会は個人が析出するのを嫌う「粘土社会」である。石や
粘土は共に安定した形を形成できる。しかし、ロシアは個人がばらばらであり、強い
権力や権威主義の要素がないと社会はなかなか安定しない。近代的な市民社会や市場
経済が定着しにくいのも、根本的にはここに原因がある。
 ロシアに厳しいこの私の論も、知識人の間では反発もなく素直に理解してもらえた
ように思える。昨年八月の金融危機の後、ロシアでは民主化や市場化への楽観論が砕
かれた。そのためこのような論理がかえって受け入れられやすくなったようだ。
 今回の対話で外交問題や文明論について、われわれは欧米や他の国の知識人と話す
のと同じ感覚で、イデオロギーと無関係に自由に討議できた。初めての対話であった
が、関心のあり処(どころ)からウイットやジョークのセンスまで、われわれの間の
波長はぴったり合っていた。おそらくこのことに、両国の参加者は最も驚いたのでは
なかろうか。
 対話の後、ロシア側の参加者に印象を聞いてみた。ロシア知識人は、日本側参加者
のはっきりした自己主張を聞いて、「彼らは日本人ではない」とか「日本人観が百八
十度変わった」などと述べた。日本側の参加者も「ロシア人のイメージが変わった。
彼らは欧米の一流の知識人とまったく変わらない」という印象を述べた。これらの言
葉を聞きながら、私は内心ニンマリとした。討議した内容もさることながら、ロシア
人の日本観や日本人のロシア観を変えること自体が、この対話の主たる目的だと私は
考えていたからである。
 実はこれまでも、日ロの興味深い知識人の交流は個別には存在した。しかし、それ
らは個別的、偶然的なものにとどまり、お互いに相手の日本観、ロシア観を変えるに
は至らなかった。われわれは、今後も対話を継続しようと約束して別れた。日本側は、
この対話を中国や米国とも行おうと話し合っている。
 (青山学院大学教授 現代ロシア論)

朝日新聞社
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◆000011 (T990902M08--03)
 ロシア、選挙絡み報道過熱 反大統領派が攻撃本腰 資金洗浄疑惑
1999.09.02 東京朝刊 8頁 2外 (全1230字)
 【モスクワ1日=大野正美】米国のニューヨーク銀行を舞台にしたロシアの犯罪組
織がらみの資金洗浄疑惑についてロシアでは、エリツィン大統領の反対陣営のマスコ
ミを中心に派手な報道が続き、政財界を大きく揺るがしている。大統領府を舞台にし
た別の汚職疑惑が新しい展開を見せたことも追い風に、反対勢力が十二月の下院選を
目指して政権攻撃に本腰を入れ出した形だ。大統領側は疑惑を全面否定しているが、
選挙に向けた政治勢力の再編に後れを取ったのに続いて大きな痛手となるのは必至だ。
 米紙の報道 などで資金洗浄疑惑に関与した可能性が指摘されるのは、大統領の次女
のタチヤナ・ジヤチェンコ大統領顧問、リフシツ元蔵相とチュバイス、ポタニン、ソ
スコベツ各氏という三人の元第一副首相だ。
 同顧問は沈黙を守っているが、チュバイス氏らは疑惑を全面的に否定した。資金洗
浄へのかかわりを否定するロシア政府も、疑惑解明までの国際通貨基金(IMF)融
資の凍結を唱えたサマーズ米財務長官の発言に、「政治的思惑によるものだ」(プチ
ン首相)と強い反発を示した。
 しかし、大統領の政敵、特に中道左派の選挙連合「祖国−全ロシア」を率いるルシ
コフ・モスクワ市長系のマスコミは連日、米国での捜査の動きなどを追う詳細な報道
を続けている。
 ○右派も防戦
 市長らの主要政策の一つは、IMFの主導で政権が実施してきた経済改革の見直し
だ。その点、IMF資金が関与した可能性も指摘される今回の洗浄疑惑は格好の攻撃
材料になる。下院最大野党の共産党も議会での疑惑究明を呼びかけ、政権攻撃に加わ
る構えだ。
 これに対しもともとは政権にいた右派勢力は、IMF路線の経済改革を進めてきた
だけに、このまま疑惑が燃え広がれば選挙での苦戦が避けられないとあって防戦に懸
命だ。「右派勢力連合」の指導者の一人であるガイダル元首相代行は、「今回のケー
スが米国の大統領選キャンペーンに利用されている事実も見逃すべきでない」と強調
する。
 ○疑惑絶えず
 一方、大統領府がらみの汚職疑惑はイタリアの有力紙コリエレ・デラ・セラが報じ
た。内容は、多くの政府施設の改修を手がけて大統領府高官との密接な関係を指摘さ
れるスイスの建設会社マベテクスが、(1)エリツィン大統領が利用するスイスの銀
行口座に百万ドルを送金した(2)大統領やタチヤナ顧問、長女でアエロフロート航
空社長夫人のエレーナ・オクロワさんのクレジットカードの勘定を支払った、という
ものだ。
 同紙は、スイス検察も事実を掌握しているとした。大統領府は否定したが、報道の
直後にロシア最高検でマベテクス社疑惑の担当者が配置換えとなったことなどが、さ
らにマスコミの論議をあおっている。
 資金洗浄疑惑やこのマベテクス社疑惑がほぼ同時に浮上したことで、「側近がらみ
の疑惑が絶えないクレムリンの現指導部に、西側諸国が距離を取り始めたことの明白
な表れ」(カラガノフ欧州研究所副所長)といった見方もロシア国内には有力になり
つつある。

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◆000012 (T000330M11--06)
 エリツィン氏より22歳年下 若さに期待(始動 プーチン時代)
2000.03.30 東京朝刊 11頁 1外 (全1241字)
 【モスクワ29日=大野正美】ロシアの第二代大統領に当選したプーチン大統領代
行の売り物の一つは、エリツィン前大統領より二十二歳も年下という若さと活動力だ。
政治評論家のニコノフ氏は「クレムリンに行くのすら大変だったエリツィン氏とは対
照的に、年内に一ダース以上の外遊をこなすだろう」という。停滞が目立った外交・
安全保障政策にも活性化が予想される。だが、「経済優先」を濃厚にしている外交・
安保政策が実際に成果をあげるには困難も多い。
 プーチン代行は二十八日、一九九七年五月から在任するセルゲーエフ国防相(六一)
の続投を決めた。五十万人の軍人を減らして定員を百二十万人にした軍改革と、昨秋
からのチェチェンへの軍事行動を指導した国防相を、六十歳という軍人の定年を延長
してまで留任させたことは、安保政策の修正は当面小幅にとどめるという同代行の意
向を反映すると見られる。
 一方、ロシア安全保障会議が大統領選の直前に同代行も出席して基本承認した「外
交政策の概念」は、「ロシアの国益重視」を正面に掲げる。具体的措置には「外交と
国内の経済的発展との密接な関連づけ」「在外のロシア人の権利や外国で活動するロ
シア企業の保護の推進」などをあげる。
 「国家の強化」や「愛国心の復活」を唱え、「帝国復活の野心」すら西側に指摘さ
れる同代行としては穏健で実利に重点を置く内容だ。カラガノフ欧州研究所副所長は
「ロシアは世界的な規模の大国ではもはやない。死活的な利益の擁護のみに力を入れ、
一極支配との戦いは日本やフランスなどにまかせるべきだ。代行の政策の本質は、国
内経済再建のために外国の資本と投資を最大限ロシアに引き入れることだ」という。
 「概念」が「予測可能性」や「一貫性」を重視するのも、前大統領の「予測不能性」
で損なわれた外交の信頼を、投資獲得のために回復する狙いがある。
 だが、その思惑の実現には、欧米との関係悪化の最大の原因となったチェチェン紛
争が影を落とす。
 マニーロフ参謀本部第一次長は「二万六千人の事実上の軍隊だった武装勢力は二千
五百人にまで弱体化させた。長期的なパルチザン戦争などあり得ない」という。武装
勢力の組織的な抵抗がなくなれば欧米の「人道批判」も弱まって関係は改善するとい
う楽観論も政権側にはある。しかし、「チェチェン人の反ロ感情は歴史的なもので抵
抗は長期化する。ロシア社会も兵士の犠牲が続けばえん戦に傾き、政権基盤がぐらつ
く」(パイン元大統領顧問)と悲観論は根強い。
 プーチン代行が早期批准を主張してきた第二次戦略兵器削減条約(START2)
も、仮に下院の批准承認が実現しても対米関係改善の即効薬とはなりにくい。下院の
批准法案には「米国が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約から離脱すればSTA
RT2を破棄する」との付帯条件がつく。米国と対等な関係を求めるためだが、まだ
根強い「大国意識」が「経済実利路線」には不利に作用する。
 新しい路線から出てくる成果は、まだまだ輪郭すら見えそうにない。

朝日新聞社




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