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回答先: ロシア総主教を外務省賓客に 共同 投稿者 倉田佳典 日時 2000 年 5 月 11 日 19:03:56:
【モスクワ11日=斎藤勉】
ロシア全土や旧ソ連各国に幅広く信者を持つロシア正教会の総主教、アレクシー二世(七一)が十二日、初訪日し、天皇陛下や森首相と会談する。「宗教はアヘン」と断罪したソ連が崩壊して九年、宗教の完全自由化が成った新生ロシアを象徴する宗教界の最高指導者の訪日である。ロシア憲法は建前上、政教分離を明確に規定しているが、プーチン新政権と密接な関係を保つアレクシー二世は、五日前に正式就任したばかりのプーチン新大統領の事実上の政治的メッセンジャーとしての役割も負っている。
九〇年六月に総主教に就任したアレクシー二世はソ連が解体した一九九一年、イスラエルと英国を訪問したのを皮切りに毎年、欧米や中東を歴訪してきたが、極東訪問は今回が初めて。
十一日にはウラジオストクで正教会関係者との会談のあと、太平洋艦隊でミサイル巡洋艦に乗船、司令官たちと会談した。帝政ロシアではロシア正教と軍は濃密な関係にあり、これを再現させた格好だ。総主教は十二日、函館経由で東京に入る。
十一日の有力紙イズベスチヤは「ロシア正教の総主教の史上初の訪日は、国家間関係の改善への積極的参加という点に問題の本質があり、(プーチン)新政権から日露交渉への明確な用意があることを示している」と論評した。森首相も四月末のプーチン氏との首脳会談で「総主教の訪日は日露関係強化に貢献しよう」と期待を表明している。
ロシア正教は一八六一年、ニコライ・カサートキン大主教が布教で来日して初めて日本に移植された。約二十年後、そのニコライ師が東京・神田駿河台に起工したのが今のニコライ堂、正式には日本ハリストス正教会東京復活大聖堂だ。
二十世紀に入り、ロシア革命、国内戦、第二次世界大戦などで難を逃れたロシア正教徒たちは世界各国に亡命、日本にも移住、布教活動を行った。現在の日本の信者は「多くて三万人」(イズベスチヤ紙)といわれる。
ソ連共産党支配下、とりわけ独裁者スターリン治世下でロシア正教会の教会は軒並み破壊され、宗教指導者は逮捕、弾圧された。スターリンは第二次大戦中、国民の愛国心を鼓舞するため一時的に信仰の自由を許したが、それ以外は一貫して教会は「反体制の巣窟(そうくつ)」とみなされ、ソ連国家保安委員会(KGB)が教会内部に深く浸透して信者を抑圧する時代が長く続いた。
ソ連崩壊前後から宗教はにわかに復活、アレクシー二世はエリツィン前大統領とプーチン氏を大統領選で公然と支持して宗教的自由の保持をはかり、政権側はその見返りに、国民の精神的支柱となったロシア正教を通じて政策への支持を求める政教蜜月(みつげつ)時代が到来している。