悪魔教=戦慄の儀式(『ムー』91年9月号)

 
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投稿者 SP' 日時 2000 年 5 月 23 日 17:19:06:

文=藤堂加奈子 (c)Campion Arno/Take off/PPS

生まれたばかりのわが子を生きながらに切り刻み、血を集め、その肉も血も当然のごとくに食してしまう。
学校に通っている児童たちも、墓の中に眠る嬰児の遺体までも−−。
今、米国の幼い子供たちはだれもが残忍な悪魔教の生け贄として狙われているのだ!
その、目を覆いたくなるような数々の惨状を努めて冷静にレポートする。


わが子の肉を食らう恐るべき黒ミサの実態

「シェリル、あなたがまだ小さかったころ、両親に黒ミサに連れていかれたことがありますね」
「いいえ、何も覚えていないわ」
「人間は、あまりにもつらいことが起こると、それを忘れようとして記憶を失うものです。あなたが昔起こったことを覚えていなくても無理はありません。でも、あなたの子供のことはどうでしょう。あなたが初めて産んだ子供、双子の男の子と女の子は、あなたの両親の手で殺されたのではなかったのですか」
「やめて、やめてよ……。私は何も覚えていないのよ!」
 カリフォルニア州ロングビーチに住む、ごく普通の主婦シェリル・ホートン(37歳)。彼女は3年前、極度の精神衰弱に陥り、精神科医サミット博士の治療を受けはじめた。治療が続けられる中、恐るべき事実が次々と明らかになっていった。
 シェリルの両親のロバート・アルトキンとバット・アルトキンは、シェリルが6歳のときにイリノイからカリフォルニアに移住した。父親が食料雑貨商から、大工に転職したのである。このころから、父親は凶暴な性格を発揮するようになった。シェリルをベッドに縛りつけては、幼い彼女の性器に箒の柄を突っこんだり、ひどいときには、階段から彼女をさかさまに吊りさげたり、皮膚を焼いたり、体中に針を突き刺したりするようになったのだ。
 父親の異常性は、さらにエスカレートした。シェリルをロープでぐるぐる巻きにし、内臓を抜いた犬の皮を縫いつけ、その内臓を顔に押しつけて箱の中に閉じこめたこともある。箱を暖炉から吊りさげて火を焚き、4時間にわたって降霊術の儀式を行ったのだ。
 母親もよく似た性癖の持ち主であった。シェリルの家では、胸が悪くなるような大乱交パーティーが頻繁に開かれた。パーティーにはシェリルはもちろん、なんと飼い犬まで参加させられた。
 そう、シェリルの両親は、悪魔教の信奉者だったのである。
「黒ミサは週3回、金曜の夜から日曜の夜にかけて行われました。祖父母、曾祖父母、全員が悪魔教の信者でした。ですから父や母にとって黒ミサは、ごく正常なことだったのです」
「私が9歳のとき、母は男の子を産みました。出産の夜には、たくさんの人たちが家に集まってきました。生まれたばかりの赤ちゃんを父は〈祭壇〉の上に乗せ、柔らかい新鮮な肉をえぐりとりました。そして私にナイフを手渡し、喉を裂いて血を集め、足を切り落としてその肉を客に振舞うよう命じました」
「大きくなって私は、男と女の双子の赤ちゃんを産みました。1人は産まれてすぐに、黒ミサの生け贄として悪魔に捧げられました。胸に逆十字が置かれ、肌が切り刻まれて客に渡されました。もう1人も同じように殺されました。父は『お前が悪魔を信じないから、赤ん坊が死んでしまったんだよ』といって笑っていました。生きていれば2歳のはずです……」
 以上はロサンゼルス高等裁判所の裁判記録である。シェリルは4万2000ドルもの費用をかけてすべての記憶を取り戻した後、両親を訴え、法廷の場でこのあまりにも衝撃的な事実を告白した。アメリカの全国民は、20世紀のアメリカで、このような残虐な儀式が行われているという、戦慄の真実を知らされ、震撼したのである。

悪魔教の餌食となった子“ジョン・ドゥー”の場合

 サンフランシスコ警察に、ある日、一人の小さな少年の死体が届いた。死体はあまりにも損傷がひどく身元の確定が不可能だったため“ジョン・ドゥー”と名づけられた。
 死因解明にあたった検死官は、“ジョン・ドゥー”があまりにも残酷な殺され方をしたのを知って愕然とした。最初はただの、ホモセクシュアルの変質者の仕業と疑っていたのだが、それだけでは説明のつかない背後の状況が、徐々に浮かび上がってきたのである。
 まず彼は、袋に入れられ縛り上げられて、3日間にわたり、めちゃめちゃに殴る蹴るの暴行を加えられた。激痛と恐ろしさに耐えかね、泣き叫んだのだろう。唇がナイフで切りとられている。
 胸に刻まれたペンタグラムが、これが単なる性犯罪でないことの決定的な証拠となった。睾丸は、そのまま食いちぎられていた。さらに性器から肛門にかけてもナイフで深くえぐられていたのだ。
 顔の状態もひどかった。暴行によって腫れ上がった顔は火であぶられ、複数の人間の精液と唾だらけとなっていた。
 右目は目玉がえぐられ、空洞になった眼窩にはロウが注ぎ込まれていた。左目だけはそのままであった。
 アメリカ全土で1年間に行方不明になる子供の数は、数万人とも数十万人ともいわれる。行方不明事件の大半は未解決であり、そのうちかなりの子供が悪魔教の犠牲になっているものとLAPD(ロサンゼルス警察庁)のパトリック・メトロイヤーは語っている。
 残忍な悪魔教徒たちに特に好まれるのは、6歳以下の子供である。この年齢の子供は彼らの命令に従順に従い、事件が発覚したとしても法廷で証言する能力がない。そして何よりも、罪で汚れていないピュアな肉体をもっているのだ。
 悪魔教の聖日とされるハロウィンの10月31日と、ケルト族の祭典に端を発するベルテーン祭の4月30日には、アメリカ全土で行方不明になる子供の数が急増するともいわれている。
 学校の教師が悪魔教信者だった場合はさらに悲惨だ。教師を慕ういたいけな子供たちが、格好の餌食となる。虐待された子供の親が担任教師を告訴するなど日常茶飯事だ。
 さらに、適当な生け贄の子供が不足すると、幼い子供の遺体を狙った墓荒らしまで横行する。暴かれた墓からは、子供の遺体だけが持ち去られるのである。

白日のもとに晒された悪魔教の全貌

「グループを裏切ることは、死の契約書にサインするのと同じだ」
 現在、全米には13万5000にものぼる悪魔教のグループや、カルト(教団)があるといわれる。
 それぞれのグループのメンバーは強い絆で結ばれており、機密保持の血の約束を交わしている。これはつまり、グループの秘密を漏らした者には、死が与えられるということを意味する。
 フロリダ州タンパに住むエンジェルは、悪魔教グループの中で実際に数々の儀式に参加していた生き証人であり、FBIに対して行った戦慄の告発のために、現在、執拗にその命を狙われている。
「16歳のとき俺が夢みていたのは、力を持つこと、それと女だった。ロックバンドをやったり、コカインの密売をやったりもした。だけど、いっこうにツキは回ってこなかったんだ。生活を変えて運をつかむために、俺は悪魔教に入信した」
「悪魔教信者の最大の目 的は破壊さ。グループに入ったばかりのころ、俺は教会に忍びこんで、中にあったものをめちゃめちゃに壊しまくった。その他、破壊できるものは何でも破壊してやった。
 悪魔に気に入られるよう、毎晩欠かさずお祈りもした。毎週日曜日には、必ず黒ミサに参加した。そして20歳になったころには、すべての儀式を司る大司祭にまで昇格していたんだ」
 エンジェルは、大司祭としての経験から、悪魔教が行う黒ミサの儀式の内容を詳しく語った。その内容は以下のようなものである。
 まず黒ミサの儀式には、悪魔の像が必要とされる。大司祭だけがそれに触れることを許されている。最初に大司祭は、参加者と儀式が行われる部屋を、悪魔の祈りによって清め、地獄の4つの方角を定める。4つの方角は、冠をつけた4人の魔王、レビシアン、ベローヤル、ルシファー、サタンに支配される。
 いっぽう祭壇は、西の壁を背にして作られる。参加者の背後にはペンタグラムが飾られる。そして大司祭が床に伏して祈りを捧げると、いよいよ破壊の儀式が始まる。参加者が破壊したいものの写真か絵を、マジックトライアングルの中に入れて呪いをかけ、短剣で突き刺すか燃やすかして壊すのだ。こうすることで、サタンの力が呼びさまされるのだという。
 真の悪魔教徒は、敵対する人間を呪ったりはしない。それはサタンの力を試すことになるからだ。それよりも、儀式と修練によって、自分の力を高めることが要求される。
 さて次は、自分自身の闇のパワーを高めるために、哀れみの儀式や絶望の儀式が行われる。大司祭がサタンの9の掟を読み上げ、参加者はそれぞれの願いを羊皮紙に書き留める。後に願いがかなったとき、この羊皮紙は祭壇に捧げられる。
 生け贄として生きた人間を捧げるグループもある。グループのリーダーが自ら首を落として、祭壇に捧げることも珍しくない。また子供を引き裂いて祭壇に捧げることは、サタンへの最高の賛辞とされているのだ……。

全米に勢力を拡張する数々の悪魔教グループ

 本誌の読者なら、アントン・サンダー・ラヴェイの名前を一度は聞いたことがあるだろう。彼は、もともと警察の現場カメラマンだったが、1966年のある日、突然剃髪し、「サタン教会」を設立して、全米に布教活動を行ったことで知られる。
 彼の主著『悪魔の聖書』は50万部という大ベストセラーになり、信者には映画『ローズマリーの赤ちゃん』の監督ロマン・ポランスキー、美人女優ジェーン・マンスフィールド、サミー・デービス・ジュニアなど、そうそうたる面々を擁していたのである。
 ラヴェイが60年代ビートジェネレーションの悪魔教の始祖なら、ハイテク情報化時代の悪の権化は、マイケル・アキノである。
 マイケル・アキノ博士は、悪魔教のカルトの一つ「セット寺院」の大司祭として有名であると同時に、士官学校を優秀な成績で卒業し、米軍の陸軍諜報士官・特殊勤務部隊士官、外国地域担当士官、内政問題士官、海外情報担当を勤める軍部エリートとして、たいへん高名な人物である。
 彼が1975年にセット寺院を設立して以来、彼のグループに関するさまざまな黒い噂が囁かれたが、確たる証拠は掴めず、彼はいまだに軍の要職にとどまっている。しかし、FBIの特別捜査によれば、少なくとも56人の子供が犠牲となり、被害者全体としては、102人にも及ぶという、恐るべき数字も挙げられている。
 かつてセット寺院内でアキノの愛人として辣腕を振るっていたリンダ・オズボーン・ブラッドも、カルトの中での彼の絶大な権力を証言する。そしてさらに、アキノがナチスの行っていたとされる秘儀に着目し、実際にそれを実践して世界全体の破壊を企てているということも……。
 ラヴェイやアキノのような、恐るべきパワーと野望を抱く指導者のもとに集まる悪魔教徒とは、いったいどのような人々なのだろうか?
「私の家に来ていた人たちは、一見、まったく普通の人たちでした。彼らは悪魔の存在を信じていると同時に、神の存在も信じているのです。ですから、クリスマスやイースターも、普通の家庭と変わらず祝いました。恐ろしい儀式が行われた次の朝も、母はまるで何も起こらなかったように朝食を作り、私を学校に送りだしました」
 と、シェリル・ホートンは語る。
 エンジェルもこう証言する。
「黒ミサや集会に参加するために、全米各地から集まった人々が飛行機から降りてくる様子は、観光で地方から都会に出てきた人々の団体と何ら変わったところはなかった。あいつらはにこやかに談笑しながらデニーズ・レストランのシートに陣どり、その夜の生け贄について話をしたりしているんだ」
 ごく普通の良識ある市民が、夜な夜な血に飢えた悪魔に変身し、幼い子供の生き血を、肉をむさぼり食らう。アメリカの悪魔信仰の恐ろしさは、まさにこの点にあるといっていいだろう。
 現在、悪魔教グループやカルトの強大なネットワークは、アメリカ国内にとどまらず、ヨーロッパを始め急速にその勢力範囲を拡張している。あなたの隣に住む人間が、真夜中に悪魔の儀式を行う日が来るのも、そう遠くないかもしれない。




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