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Re: 生産性を上げても必ずしも経済成長できるわけではありません 投稿者 あっしら 日時 2002 年 3 月 11 日 23:46:05:

(回答先: Re: 生産性の高さは別に誇ることではありません 投稿者 596 日時 2002 年 3 月 10 日 07:39:04)

596さん、こんばんわ。


>アメリカ流の生存競争にはならなくても、市場経済下ですから、互いに競争しなく
>てはなりません。
>良い物を作ったものが勝つ。生産性を上げてコストを下げたものが勝つ。
>鎖国をする必要はありませんが、競争して少しでも利益を得なければなりません。


同じコストと同じ価格で良い物を作ったものが勝つのは問題ありませんが、「生産性を上げてコストを下げたものが勝つ」というのは、徐々に書いていきますが、自滅への道を歩むものです。

誤解があるようですが、自由主義を標榜している米国も、貿易に関して、そのような政策は採っていません。
米国の貿易政策は、建前「自由主義貿易」で本音「保護主義貿易」なのです。
それは、工業製品に限らず農産物に関しても言えることです。

今回の鉄鋼輸入セーフガードに限らず、戦後日本が経験した「日米繊維交渉」・「日米鉄鋼交渉」・「日米自動車交渉」という非自由主義政策を顧みればわかります。


そのような米国の欺瞞が通用してきたのは、どうのこうの言っても最大の輸入者だったからです。「鉄鋼や家電のためには繊維を犠牲にするのはやむを得ない」という判断で、米国の主張を受け入れてきたのです。

米国がわがままを通せてきたのは、コントロールしながらも世界最大の輸出市場であり続けたことと最強の軍事力を誇ってきたからです。

>>日本と違って他の国の多くは、それほど愚かな対米追随政策はとりませんから、
>>アメリカの巨大資本のものにはなりません。

>いつまでも門戸を開放しないで政府に頼り生産性を上げないでいると、日本の企業は
>飲み込まれてしまいます。
>生存競争していない国の企業は、強く大きくはなれません。

生産性を上げても、行き着く先は、どう転んでも世界規模での「過剰生産力状況」です。
そうなることが見通せるまでところまで、現実(近代資本制経済システム)が進んでしまったのです。


>>米国産業資本は、日本やドイツとの競争に負けたのではなく、国際金融資本の
>>利益のために衰退させられていったのです。

>いつの時代のことを言っているのですか。米国産業資本は現在はますます大きく
>なっています。

米国の産業資本がますます大きくなっているかどうか、米国の経済統計を見てください。


      製造業   金融業   サービス業(小売業を除く)
------------------------------------------------------------
60年  30.9%  15.9%   11.2%
70年  28.5   16.7    13.8
80年  24.6   17.6    15.9
90年  20.9   20.8    21.5
97年  19.3   22.0    23.2


軍需・原子力・CPU・加工食品産業以外の鉄鋼・化学・家電・繊維などで、日本やドイツより競争力がある企業名を上げてみてください。
製造業として分類されているGEも、実質的には金融資本です。
国際競争力が問われない軍需関連企業を除けば、ガチンコ勝負で国際競争力がある産業資本は、インテルやGMなど数えられる程度しかありません。

GEやゼニスなどかつて米国を代表した家電メーカーが、1960年頃からでも、戦後の日本に対して「自由貿易」や「自由な直接投資」を認めてもらっていれば、日本が家電について「世界の工場」になることはなかったでしょう。
これは、自動車産業についても言えることです。

米国の産業資本は、自立してしまった米国の産業資本よりも、日本の産業資本の資金需要に応えるほうが有利だと判断した国際金融家の犠牲になったのです。

国際金融家は、それと同じようなことを、中国と日本の関係で今行っているのです。
(日本の産業資本は対中投資を拡大していますが、中国民族資本がテイクオフすれば、中国から排除される可能性も高いと見ています)


>>前のレスでも書きましたが、生産性が高いということは、別に誇ることでも
>>何でもありません。

>生産性の高い企業はますます大きくなれます。生産性の低い企業は退出が求められて
>います。

何度も書きますが、他社に比して高い生産性の実現は、同等の生産設備・地価・給与であれば、労働強化か柔軟な雇用契約(首切りや一時解雇か自由にできる)でしか達成できないものです。
生産設備まで自社開発しているのであればともかく、機械メーカーから設備を購入しているのであれば、それなりの規模に達している企業の生産設備はすぐに平準化します。機械メーカーが、どこにでも最新の設備を売り込むからです。
(ブランド力という問題はありますが、ここでは無視しています)

そして、生産性が高い企業がますます大きくなれるためには、そのような企業が生産する商品を文句を言わずに受け入れてくれる市場(国)があるということが必要条件になります。

輸出に頼れないのであれば内需に頼るしかないわけですが、生産性の向上を給与の切り下げでなく生産の効率化で実現したのであれば、例えば、これまで1000人で生産してきたものを800人で生産できるようにしたということです。これは、国内市場で200人分の需要が減少することを意味します。
200人分の需要を補うためには、政府が扶助するしかありませんが、そのためには稼ぎがある人から税金を徴収するか、国債を発行しなければないので、やはり需要は減少します。
そうなると、生産性を上げた企業も、過剰生産に対応するために、800人から700人へと人を減らさなければならなくなり、さらに需要を減少させていくという悪循環に陥ります。(そして、生産設備の稼働率が下がるので生産性も下がってしまいます)

このようなことから、諸外国に輸出を制限されてしまったら、生産性を上げても企業は大きくなれないのです。

日本は、「保護主義貿易」で高度成長を遂げてきたという歴史を忘れ、1970年頃から「自由主義貿易」を声高に叫び続けてきましたが、あと数年もすれば、貿易赤字に陥り、「自由主義貿易」は亡国への道と言い始める人が急増するでしょう。


>>高い生産性の究極は、無人工場なのです。すべての商品が無人農場や無人工場で
>>生産されることを考えてみてください。
>>生産性を上げるということは、極端な例として上げた無人工場に少しずつ向かっ
>>ていくということなのです。

>すべて機械がやってしまうようになると労働する人間の給与も下がっていくでしょう。
>そうなるとわかっていても生産性を上げざるを得ない。そうしない企業は淘汰される。
前述のように、そうして生き残った企業も、苦境に陥ることになります。

>>なんにせよ、生産性上昇をめざして、わざわざ、一度“地獄に堕ちる”必要はない
>>と思いますよ。

>生産性が上昇しなければ輸出もできなくなる。輸入が増える。円が下がる。
>円が下がるのが云いか、生産性の低い企業は退出するのがいいか、よく考えてみます。
生産性を上昇させても、他国民の生活を破壊するような輸出を続けるわけにはいかないのです。
輸出は輸入に見合う額が実現できればいいのです。そのような範囲の輸出であれば、智恵と金融家の利益をなくすことで国際競争力を維持することができます。

日本の産業資本が、“国益”ではなく“自社益”のために、生産拠点を中国などに移していることが問題なのです。
貿易摩擦で北米や欧州にも生産拠点をつくったのと違い、現状の対中進出は、生産性向上のためなのです。
ある1社が中国に生産拠点を移せば、他の競争企業も追随しなければ生産性(製品価格)で負けるので、追いかけて移すことになります。この循環が続けば、日本も、米国と同じように産業が空洞化します。
現在著名な国際的日本企業の多くが、戦後復興の過程で、国家から厖大な援助(輸出振興策)を受けて大きくなってきたのです。そのような“恩義”を忘れて、「資本の論理」=私利私欲を当然のように主張しているのはとんでもないことです。

これは、「デフレ不況」の克服という総論で賛成していながら、デフレ克服のために日本に踏みとどまって生産活動を行う各論には反対するということです。
中国は日本と比較して人件費や地価がとんでもなく安いので、日本メーカーが中国で生産している工業製品は、まだまだ価格を下げることができます。日本が不況であれば、競争のなかで価格下げ圧力が働きます。それは、デフレがさらに進むことを意味します。
そのために、さらに日本での生産活動を縮小し中国に生産拠点を移すと、さらに日本の需要は落ち込みます。
日本メーカーは、個別の利益を追求することで、総体としての墓穴を掘っているのです。
そうこうしているうちに、日本企業が中国で生産した商品を日本に持ち込むというかたちではなく、中国企業自身も対日輸出を始めることになれば、さらに価格は低下していきます。(日本企業は、中国で生産してコストが下がっても、それをそのまま国内販売価格の低下には結びつけていません)


>>生存競争で生産性が上がることで、日本国民の3%が贅沢三昧の生活条件を得て、
>>60%がそこそこの生活条件を得、残り40%近くが生活もままならない状況に
>>なるというのであれば、生産性なぞ上がらなくてけっこうです。

>日本だけがこのような温室に居るわけにいきません。グローバル化が進む中、いずれ
>温室は取り壊されるでしょう。そうなれば生産性が抑えられてきた日本は一気に飲み
>込まれてしまう。

世界のほとんどが、国際金融家の利益だけに貢献する意味のない生存競争に飽き飽きとし、温室を求めるようになるでしょう。
グローバリズムを信仰しているのは米国でも、国際金融資本の活動に利益を依存しているごく一部の人たちだけです。(米国の産業資本は、労働者だけではなく経営者も、米国市場への製品流入に反対しています)
グローバル化を信仰しているのはごく一部の人たちとはいえ強力な力を持っているので、グローバル化をある程度まで推し進めることはできるでしょう。

しかし、それがもたらす弊害はすぐに目に見えるようになりますから、長続きはしません。(日本は弊害がずっと続いているのに是正されていないという現実はありますが(笑))
長続きしないどころか、グローバリズムを押しつけるためだけでも、戦争が必要なのです。

日本が置かれている立場で、国際金融家の尻馬に乗って「グローバリズム」や「自由主義経済」を叫ぶのは愚かなことです。
なぜなら、「グローバリズム」や「自由主義経済」は国際金融家以外にメリットがないものであり、まともな国やすべての国の多くの人たちからは、忌むべきものとして排除されることになるものだからです。


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