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終わりと始まり、知識と知恵、地球と私達 投稿者 細野晴臣のウエブサイトから 日時 2002 年 5 月 31 日 11:23:40:

音楽家の細野晴臣さんが自分のラジオ番組を終わらせた時に(別の局で新番組を持つことになったそうですが)、HP上で発表したメッセージです。味わい深いので転載します。

細野晴臣                2002.04.22

Daisy Holiday
 長い間続いたJ-Waveのプログラムも3月一
杯で終了したと思ったら、4月になって間を開け
ずに今度は「デイジー・ホリデー」となって続くこ
とになった。Inter FMの寛容な受け皿がなけれ
ば本当は終わっていたのだが、有ると無いとで
は大違い。空気みたいなものだ。このような機会
にメディアを持つことの有り難みと重みを今一度
考えてみている。ちなみに4月一杯放送されて
いるものをβversion としたのはコンピュータ・ソ
フトの慣例を見習い、5月からの正式版以前に
未完成なものでも、即スタートさせる急務があっ
たからである。

Wisdom
 ぼくはいままでラジオの中で自分の全てを
投入してきた。それはもちろん音楽的な意味で
あり、音楽を通した世界観でもある。その点で
は、もうやるべきことはやってしまったという時期
が来たとも思っていた。だから終わるのもひとつ
の区切りであり、大事なことでもある。

 3月の終わりも近い週にぼくは「終わる男」だと
言った覚えがある。かつてやったどのバンドも潔
く数年で終わっている。それは比喩ではなく燃焼
そのもだった。物事は燃えつきるものだ。だがエ
ネルギーは熱となり振動となって時間を越えて伝
搬してゆく。終わりが始まりだという意味はそうい
うことだ。故に意図的に「終わらせる」ことは因果
関係上問題を残す。何故なら物事の本質は変
化であり、大げさに言えば死と再生だからだ。そ
のプロセスに人知が介入すれば、宇宙を動かす
輪の法則に反してしまう。自然に身を任せること
が肝要だ。終わって然るべきものを続けようとす
ればそれなりの代償がある。今の政治経済を軸
とする世界を見ても、それは明白だ。続けようと
する人間はまた終わらせようともする。その傲慢
な意図を支配するのは Mammon〜拝金の神
だ。それは利害の思考法以外を麻痺させる。そ
の魔力にかからない方法は、唯一自然を畏敬す
ることだ。このことを自然主義とは言わない。イデ
オロギーではなく、より良く生きる智慧にすぎな
い。

Hubert Selby, Jr.
 最近知った輝かしい存在が有る。ヒューバ
ート・セルビー・Jr.(Hubert Selby,Jr.)というアメリ
カの小説家である。「Requiem For A Dream」と
いう作品がダーレン・アロノフスキー 監督で映画
化され、そのDVDを見たのだ。映画は救われな
い中毒を扱った内容だったが、原作者自ら特典
映像に出演し作品について語っているのを見て
衝撃を受けたのだ。

「現在人々は悲しみの事実を受け入れ
られず、自ら苦しみを生み出している。
例えば心の痛みを伴うような出来事が
起こった時に、その痛みの存在を受け
入れれば苦しみはない。人生に起こる
出来事に抵抗しようとすればするほど、
苦しみは生まれるのだ。偉大なるアメリ
カン・ドリームもそれを避けてきた。(だ
からそんな夢は)いつか終わるだろ
う。」
「意識的に自分の存在を作品に残すま
いと努めている。作家の仕事は自らが
存在することじゃない。芸術家であるた
めにはエゴを消す必要があるのだ。自
分を取り除くのだ。小説の人物と読者
の間に自分を介在させることは許され
てないのだ。小説と読者とは互いに(直
接)関係を持つべきだ。故に本当に伝
えたいと思えば感情に訴えねばならな
い。だがそこに知性(intelligence)はいら
ない。知識が知恵(wisdom)に変わるこ
とはないのだ。自分たちの魂を救える
のは知恵だよ! 私たちには知恵が必
要なんだ・・・」

今のアメリカでこんなことが言える人が他にいる
だろうか。ぼくの心は動いた。

*Hubert Selby, Jr. 1928年生まれ。海軍時代に肺結核
(TB)で生死の境を体験、その後ホームレスをやりつつ作家
になる。「ブルックリン最終出口」(89年映画化)は世界で賛否
の大反響。他の著作「ザ・ルーム」(71)「ザ・デーモン」
(76/J.J.ベネックスが映画化権取得)。
*DVD 「Requiem For A Dream」ダーレン・アロノフスキー作
品「π」の作者)(2001)。

James Lovelock
 以上、ラジオでは抑えている音楽以外の
自分を表現してみたが、番組のオーラにはこの
ような自分の感情が入り込んでいたと信じてい
る。3月まで続いたデイジーワールドでは、ジェ
ームス・ラヴロック博士のメッセージに全てを託し
ていた。博士は今から30年以上も前に地球の恒
常性に着目し、海洋の塩分濃度や大気の組成
の普遍性に対し、唯一回答できる仮説を提唱し
たのだ。それは地球がセルフ・トリートメントをして
いる生命に違いないという、ガイア仮説である。
この仮説は当時から現在にいたるまで、芸術家
や思想家に新しいヴィジョンを与え続けてきた
が、一方では「目的論」にすぎないとアカデミズ
ムから冷遇されてきたり、プラスチック・ニューエ
イジのアドヴァタイジングに消費されつくした感が
あるのも事実だ。ただしぼくの中の直感は常に地
球を感じるべし、と言い続ける。概念ではなく体
感、五官で感じる事以外、意味はないのだが。
では今一度ここでその博士の悲痛なメッセージ
を掲げておこう。この会話は2年前に博士が来日
した折り、プロデューサーの桜井さんがインタビ
ューを行い、ラジオ用にコメントして頂いたもので
ある。ちなみに番組名やレーベル名の「デイジ
ーワールド」も博士の仮説の名前であり、レーベ
ル発足時に博士に打診し、名前を使用する許可
を受けていることもお知らせしておこう。

「デイジーワールド仮説を提唱したジェ
ームス・ラヴロックです。ガイア、つまり
地球に対して言うべきことは、私達人類
の存在は最悪に向かっているということ
です。我々は多くの生き物が分かち合
うべき、地球の幸せな道を邪魔してい
る。そして様々な悪事を行って来た。し
かし一方で私達は地球の美しさを認識
し賛美する最初の生命体でもありま
す。そのことに於いてどうか、できれば
私達の存続を許してください。」

http://www.daisyworld.co.jp/quiet/qv12.html

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