さぁ、矛盾を探してみよう。藤井厳喜(= 藤井昇)氏(ケンブリッジフォーキャストグループ代表) 著『「円」の消える日』 廣済堂出版(2001年10月) 

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投稿者 sanetomi 日時 2001 年 10 月 06 日 22:13:57:

p178
「パニックを煽る煽動者たちにお金を預けるな」

 パニックを煽ることで有名な某経済評論家A氏(sanetomi注:こりゃ、どう考えても
浅井 隆さんだ。)は、円と国債が紙クズになる日が近づいていると語っている。
「国債が紙クズになる」とは、つまり国が借金を返せなくなってしまうということで
ある。
 日本は今、国債依存率が4割に近づいている。年によって違うが、歳入が52兆円で
歳出が85兆円、その差額の30兆円余りが国債になる。したがって、実際に税金やその
他の収入が50兆円入り、国債が30兆円入り、80数兆円を支出しているという状況であ
る。そこでこのA氏は、今後、国債の割合がどんどん増えていくと、政府が国債を払
えなくなる日が来るのではないか、というのである。
 同氏はもうひとつ、ハイパーインフレになって円が使えなくなる、という予想も掲
げている。
 しかし私は、この考えに同意できない。まず、日本はハイパーインフレにはならな
い。したがって、逆にインフレで国や企業、個人を含めて、借金を棒引きにするとい
う発想は実現できないと思っている。
 A氏は、例えばレンテンマルクが登場したヒットラーが出てくる前のドイツである
とか、最近のトルコの例などをインフレの例として引き合いに出しているが、そうい
うケースは現在の日本には当てはまらないのである。
 また国債についても、日本国が借金を返せなくなるのかというと、それはちょっと
考えられないことである。日本の国債は日本人しか買っていない。アメリカの国債の
ように、外国人が買ってはくれない。(sanetomi注:これは事実誤認:海外機関投資
家は、金利がほぼゼロの日本の円を調達して別の投資に使ってボロ儲けしとる。
これ以降の文は「前提」に誤りがあることを銘記するように)

 したがって、日本政府と地方自治体を含め、だいたい累積600兆円の借金がある
と言われているが、肝心なことは、アメリカと違い、日本政府は日本国民から金を借
りているということである。
 たしかに600兆円という額は、巨大な借金であり問題と言えば問題である。借金
の総額は、国が490兆円、地方自治体を加えると650兆円近いものがある。しか
し、それは日本人が日本人から借りているわけで、外国から借りて毎年、利息分を吸
い上げられているわけではないのである。

 この政府の借金については、よく、子供から老人まで含め、国民1人当たりからい
くら借りている、という例えが話題にのぼるが、大切なのは、その利息分は日本人に
還元されているということである。(sanetomi注:タコが自分の足を食ってるように感じる。)

 利率は低いが、たしかに利息はもらっている。日本人のなかを金が回っているわけ
である。日本人のなかで比較的豊かな人が国債を買い、その利息をもらっている。国
民のなかで所得移転が起きているだけである。
 確かに、いつまでも国債を増発するわけにはいかない。しかし、景気が回復して税
収が増えたら徐々に償還していけばよいことで、パニックに陥ることは全くないので
ある。
 また日本政府は、日本たばこやNTTの株、また土地や山林などを所有している。
そうした資産と合わせて、これだけの債務があるという提示をしなければならないだ
ろう。我々個人に借金があったり、財産があったりするのと同様、国家全体としても、
資産があり、借金がある。さらに世界に冠たる製造業があり、収入を得られる仕組み
もある、しかし借金もある。というのが正しい見方である。(sanetomi注:楽観的に感じるが・・・)
 A氏は、アセット (財産)を見ずにライアビリティ (債務) だけを見て、645兆
円の借金がある、「大変だ、大変だ」と煽動しているのである。
 確かに借金はないに越したことはないが、先のように考えれば、そうパニックに陥
ることはないだろう。
 また、A氏は不安材料として、日本政府の信用の格付けが落ちたことにも触れてい
る。ムーデイーズに続き、スタンダード&プアーズでも日本の格付けを若干、落とし
ている。日本はムーデイーズでは「AAの2」という、スペイン、ポルトガルと同様
の格付けで、上から3番目であると言う。

 しかし、私の感覚から言えば、日本政府が国債を払えなくなるということは考えら
れない。税収がなくなれば、公務員の給料や、国債の償還資金を払えない状況になる
が、そこまで日本国政府は追い込まれていない。(sanetomi注:地方公共団体の公務員の
給料、来年度以降はどうなるの?) とくに政府として、対外債務が払え
なくなるということは、ほとんど考えられない。これは外国との関係で通貨が崩壊し、
国家としての信用がなくなるということだが、このようなことは考えられないのであ
る。
 一国の通貨が紙クズになるには、2つの可能性がある。第1は政府が外国からの借
金 (対外債務) が払えなくなり、信用がなくなり、通貨が暴落する場合。つまり82年
のメキシコのような場合である。第2は超インフレで円が紙クズ同然になる可能性で
ある。まず日本政府は外国への借金はないので、第1の可能性はない。巨額な国債だ
が、発行するたびに十分売れており、日本国民にはまだまだ、国債を消化するカはあ
る。そして小泉内閣自体がもう国債を減らす努力をしているのだから、国債が青天井
でふくらんでいく可能性はないのである。
 日本は国としては、海外に金を貸している世界最大の債権国である。だから円は相
当安くなっても紙クズになることは考えられない。(sanetomi注:今回はそうはいかんやろ)

 もうひとつ、国内で超インフレが起きたらどうなるのか、という疑問もある。
 戦後の新円切り替えのときには、猛烈なインフレが起きた。なぜインフレが起きた
かと言えば単純な話で、戦争中にどんどん、金だけ出して、物の生産が追いつかなか
ったためである。戦争中は強制的価格でやってこられたが、戦後は少ない物に対して
お金が大量にあったために超(ハイパー)インフレとなったわけである。
 お金の供給があって、物が足りなければ必ずインフレになる。70年代の経済成長期
には国民の消費意欲がどんどん上がり、それに反して土地やクルマなどの供給が不十
分であったために、インフレが起きたということである。
 今後、国内的にそのような状況が再び起こるかというと、これもほとんど考えられ
ない。むしろその逆のほうが正しいであろう。
 生産力が十分あり過ぎて、現在は物にあふれたデフレ状態である。物価は以前と同
じか、安くなっている状況である。国際的に見ても労働力は潤沢であり、資源も豊富
に供給されるため、インフレを起こそうと思っても起きない状況にある。今は長期的
にデフレ時代に入ったのだ。(sanetomi注:米国同時多発テロ発生により、世界はイン
フレ傾向に入ったのでは?)

 国内でインフレが起きれば、庶民は大変であるが、国家としては、借金が帳消しと
なるのであるから歓迎だろう。実際、戦争中に政府は戦時国債を発行した歴史がある
が、戦後の新円への切り替えによりこの債務から逃げてしまった。国家としては借金
を棒引きにできたわけである。生命保険会社なども、それによって救われたという背
景がある。
 しかし、そうした逃げはもうできなくなった。
 インフレターゲット論が云々されている。この論自体が実はナンセンスなのだが、
もし実現されるにしても、もとよりハイパー・インフレを目標としたものではない。
 A氏は、第1次大戦後のドイツで1兆マルクまでいった、あるいは、アメリカで29
年の大恐慌を境にものすごいデフレになった例などをあげ、日本でも何が起きるかわ
からない、今はデフレだが、いずれインフレになると主張している。しかし、A氏は、
なぜ今のデフレが超インフレに転化するかの理由については、全く説明していない。
突然にデフレがインフレになるという「お告げ」しか述べていないのだ。インフレは
起こらない。起こしたくても、起こらないのである。(sanetomi注:さて、どうだか?)

 むしろ、今後もデフレ時代が続くであろう。そうなれば国債は確実に額面価格で返
ってくるため、価値が出ると言える。国債は買いなのである。
 政府が財政のデイシプリン (規律)もなく、どんどん借金をすればいいというのな
ら別であるが、もう限界で、今の時点から減らすべきだと言っているわけである。現
在はデフレであり、そういうときは現金を持っているほうが強い。加えて、すぐに現
金に替えることのできる日本国債も強いと言える。10年債を10年間持っていれば、元
本保証で戻ってくるのであるから、これは買いである。円を「現金」と考えれば、現
金がデフレ時代に一番重要であるから、物に変えず、円を持っていたほうがいいので
ある。
 そのことがわかっているから、みな、今は株を買わず、一生懸命に国債を購入して
いるのである。(sanetomi注:株に投資出来ないから、仕方なく債券買っているのでは?)

 国債は株と違い、素人にとって危険はない。インフレになれば、確か
に国債も意味がなくなるが、インフレになる恐れはないのだから、大丈夫なのだ。

 したがってA氏の見方とは逆になる。氏の本では、なんの理由もなく、国が借金を
帳消しにするためにインフレを起こすように書かれているが、比較的最近トルコで起
きたことと、第1次世界大戦後にドイツで起きたことと、今、われわれが置かれてい
る状況とは全く違うのである。繰り返すが世界経済は今、極めてインフレを起こしに
くい体質になっている。労働力も資源もともに、極めて豊富なのだ。したがって、私
の理論からすれば現金、あるいは現金に近いものを大事にすべきである、という結論
になる。(sanetomi注:インフレの芽は出ておる。但し、強烈なデフレ圧力で潰されているが。)

(抜粋終わり)
−−−−−

−−−−−
p294「我々はどうサバイバルするのか」の中の一節

(前略)
 したがって、これからの3年間を考えれば、こうしたごく当たり前の優良企業の株
を買うことをお勧めする。それ以外には良策はない。
 金融業界で言えば、銀行はまだまだ買収や合併で、ひと波乱、ふた波乱あるだろう。
したがって、そのたびに株価が若干上がるところも出てくると思う。例えば三井住友
がどこかに買収されれば、そのとき一時的に高くなることはあるだろう。しかし、繰
り返すが、企業の業績やその中身を見る限りは、日本の全銀行が国有化される可能性
すらあるのだ。その合併や買収の機会を狙うぐらいしか、お勧めはできない。

 国債については今が大底で、しばらくは金利が動かないであろう。しかし、将来を
考えれば、金利が上昇しノーマルな時代に戻っていくと予想している。(sanetomi注:
なんだ、「上がる」って言ってるじゃん。それからホントに「ノーマルで」済むのか?)

 これからはもう少し金利の高い国債が出てくるであろう。
今しばらく発行される国債は、金利は非常に低いが、そのあと高い金利の国債が出て
くるだろう。そうすると、今買った低金利の国債の市場価格は下がってしまう。
 しかし、最後の最後まで持っていれば、元本は保証されるのだから、大きく損はし
ないのであるが。(sanetomi注:さて、どうだか?)

 アメリカは逆に今、どんどん金利を下げているから、過去に買った国債を持ってい
れば、どんどん値上がりして有利である。金利下降局面では、すでに出ている国債の
市場価格は上がる。というのもアメリカでは、さらに金利の低い国債しか出してこな
いからである。
 それを考えるならば、アメリカの国債は今が買いである。そして日本の国債は売り
である。日本では景気回復とともに金利がやがて上昇し、既発債券は値下がりする。
それがいやなら今売ってしまったほうがよい。

 アメリカの国債を今買っておき、もう少しすれば今の水準の国債はアメリカではな
くなるのだから、そのとき売り払えば、満期まで持っていなくても儲かるという仕組
みである。ドルに関しては間違いなく円安、ドル高になるから、恐らくドルの預金だ
けを持っていても、3年先を見た場合には十分得をするはずである。
 アメリカの株は今、調整期であるから絶対に買ってはいけない。ずっと先にならな
ければ買えない。したがって当然、アメリカの投資信託なども今、大底まで下がって
きているわけであるから買いではない。もっと調整が進むのを待たなければならないハ

 とにかくデフレ時代なのだから慌てないことである。今、持っている資産で現金に
換えられるものが一番有利なわけで、住宅ローンも含め、借金はできる限り避けるこ
とがベストだ。
(後略)

抜粋終わり
−−−−−

#国債に関する記述はちょっと考察が甘いと感じます。

参考資料、例えば:

小林慶一郎・加藤創太 著「日本経済の罠」日本経済新聞社p327 より

−−−−−
 財政破綻の危険
 ケインズ的な総需要管理政策は、財政政策の出動を通じ、政府財政に多大な負担を強いる。
実際、公的債務残高は二〇〇一年度末にはGDPの一三〇%を超えようとしている。このため、
財政政策はもう限界だと考える論者は多い。
 こうした状況にもかかわらず、財政問題が顕在化していないのは、いまだに国債価格が
下落していないからである。ただそれは、投資家が、金利の先高感や政府財政への信頼を
共有しているためではなく、他に投資する対象がないために、やむを得ず国債を買い入れて
いるためだと思われる。つまり、現在の日本では、「みんなが国債を買うから自分も国債を
買う」というメカニズムで国債価格が上がっており、一種の「債券バブル」が発生しているのだ。
 こういう状況下において、国債市場への投資家たちが「これだけ国が借金をしているのに、
国債の値段が高いのはおかしい」という(合理性のある)考えを共有するようになれば、日本
の国債は暴落する。
 八〇年代末のバブルの時代には、初期の段階で金融政策を多少引き締めても株式市場や土地
市場は反応しなかった。しかし、金融引き締めがある点を超えた段階で、株式・土地市場の収縮
スパイラルが急速に始まった。この経験からもわかるとおり、債券バブルの真っただ中においては、
国債の発行量が多少増えても、国債価格は反応しないだろう。しかし、ある臨界点を超えて国債
の量が増えたときには、国債価格が急落する可能性が出てくる。その場合、国債利回りおよび長期
金利は急上昇するはずだ。
 それでは、「臨界点」はどこにあるのだろうか。一説によれば、過去の海外における財政破綻の
事例などからすると、「国の税収から地方交付税交付金を控除した純税収が、公債金収入(国債発
行による収入)を下回る時」 に長期金利の急騰がはじまるという。二〇〇二年度には当初予算に
おいて、税収から地方交付金を差し引いたものが公債金収入を下回ることになるため、日本経済は
この臨界点に到達する。このため、「二〇〇二年度からは長期金利が加速度的に上昇する可能性が
ある」という予想も生まれてくる。

 また、京都大学の吉田和男は財政破綻シナリオと財政再建シナリオを比較し、「二〇〇五年度
まではどのシナリオでも、政府債務残高や長期金利に大差ないが、その後は急速に差が拡大する」と
指摘している (吉田和男「財政再建と日本経済」、日本経済新聞2000年11月15日付「やさしい
経済学」掲載)。

 こうした環境下において財政拡大を続ければ、国債市場は、「臨界点をいつ超えるか分からない」
というリスクを常に抱えることになる。すなわち、市場参加者が一斉に 「日本は財政破綻のリスク
がある」と考えるようになれば、実際に財政破綻が起こらなくても、長期金利が暴騰し国債価格は
暴落してしまうのだ。その結果、財政破綻と同じ破滅的な混乱が日本経済に自己実現的に生じる。
−−−

あと、「お勝手国家破産議事堂」における「牛&熊」氏の発言も考慮せよ。

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