激動の世界情勢と日本の経済政策 2000/10/13 NHKラジオ放送より 藤原直哉

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投稿者 sanetomi 日時 2001 年 10 月 15 日 17:02:09:

激動の世界情勢と日本の経済政策

Q:9月11日の米国同時テロから1ヶ月が経ちました。アメリカ・イギリス軍によるアフガニス
タンに対する軍事攻撃が始まり、世界情勢はこの1ヶ月で劇的に変化しました。この間、日
本と世界の経済情勢はどのように変化したでしょうか。

A:・ 戦争は現代の経済にとっては最悪の要因。日本も米国も欧州も経済は急激な下降線
をたどっている。
・ 戦争で景気が良くなるという話は昭和20年代の朝鮮戦争かせいぜい冷戦時代までの
話。平和を前提に組み立てられている現在の経済では戦争が起きればすべての基盤が崩
れてしまう。
・ 各国で株価は大きく下落し、安全を求めたお金が満期の短い債券やゴールドに向かって
いる。また安全を求めてスイスフランが買われる動きもあった。
・ 米国のドルが価値を下げた。日銀は空前の規模の市場介入を行ってかろうじて円高・ド
ル安を止めている。
・ また米国人の消費意欲や先行きに対する見通しは大きく落ち込み、米国初の世界同時
不況という状況である。
・ テロに対する恐怖から、全世界で人々が航空機に乗らなくなった。また極力旅行も手控
える雰囲気が出ている。そのため、航空会社や旅行会社の経営が大変になっている。
・ 90年代には経済のグローバル化ということで世界中で製造業が分業体制を作るようにな
った。また在庫も極力減らして、頻度の高い貨物輸送でコストを下げる努力をしてきた。とこ
ろが航空機の運航が米国では5日間も止まり、その後世界中で航空輸送に対する懸念が
高まってきて、こうした90年代のコスト削減、競争力強化政策が全部裏目に出る結果とな
った。これから再び一国経済に戻り、大量の在庫を抱える体制に戻るわけにも行かず、製
造業は世界全体で大きな危機に直面している。
・ 同じように米国がテロに対する攻撃をアフガニスタン以外にも広げると言っており、この戦
争に中立の立場は許さないと言っている。そのため世界各地で政治的な緊張が生まれて
いる。これは製造業のみならず経済全体にとってカントリーリスクの高まりを意味し、貿易や
投資に急ブレーキをかける要因になりつつある。

Q:このような状況に対して日本政府の政策としてどういうことが考えられますか。

A:・ まず世界経済の中心である米国のことから考えたい。
・ 米国ではこの経済の落ち込みに対して8兆円以上の財政支出を行って対応すると言って
いる。しかし米国の財政は昨年まで黒字だったのがバブルの崩壊で黒字が減ってきている
ところへ、テロ後の景気の急激な落ち込みと軍事費の増加、そしてこの財政支出が重なっ
て、今年以降大きな赤字になるのは必至。すると米国経済は再び財政と貿易の双子の赤
字。するとドルがもつのか。ドルが大暴落して世界の金融が大混乱になるのではないか。
そのことをブッシュ政権は全然考えていないのではないか。
・ すなわち、戦争の行方も心配だが、ドルの暴落と世界金融システムのパニック、すなわち
ニューヨーク発の世界大恐慌という心配を今真剣にしなければならない時だ。
・ 日本では株価の下落や景気のさらなる落ち込みからひどいデフレ経済の状況になってお
り、銀行経営がいよいよ危機的な状況になってきた。
・ 巨額の負債を抱えた大型倒産と失業者の大量増加ということもいよいよ懸念される状況
になっている。
・ このような不景気の中で小泉内閣は実質的に改革をトーンダウンさせている。改革よりも
目先の経済の落ち込みに対処することに追われそうだ。しかしそれは国債の増発を招き、
問題の先送りにつながる。
・ 米国の格付け機関は日本国債の格下げを検討している。米国もこれから財政が赤字に
なれば、米国国債もいよいよ格下げされると考えられる。日本も米国も結局はバブル崩壊
後の不景気を財政で救いに行き、それが限界に達したところで巨大な問題が起きるという
同じ構造になりつつある。
・ 日本としてはまず失業対策が肝心だ。職がなくても1年間は何とか家族全員が食いつな
げるぐらいのことを政府は考えておかなければならない。
・ 日銀総裁は国会での答弁の中で、これだけお金を増発すれば、いずれひどいインフレが
来るかもしれないと述べている。これは大いにありうる話だ。ひどいインフレ、ハイパーインフ
レというのは金融システムや通貨、そして政府に対する信用が崩壊したときに一番ひどくな
る。人々の信頼を裏切らないように何ができるのか、そして何をあきらめなければならない
のか、政府は今こそ戦略的に考えなければならないところだ。
・ 来年4月からいよいよ銀行のペイオフが始まる。銀行の大整理をやるなら今しかない。銀
行の頭取を呼んで、一人一人聴いたらよい。4月以降も取り付けを起こさないで自力で経営
をやっていける自信があるか、ないかを。もしないと言えば、その銀行は国有化し、できるだ
け預金者や貸出先に迷惑がかからないように整理だ。その結果日本中の銀行が大々的に
整理統合されれば、ひとつ銀行問題の峠は越えるのではないか。生保も同じようにやって
整理統合すればよいのではないか。
・ そして銀行の整理や改革の遅れで国債の増発は必至。その結果長期金利が上がること
も避けられないだろう。銀行の整理がついたらいよいよ政府および民間企業全体の本格的
な整理と構造改革である。そのときに必要なことが21世紀にどういう国を造りたいか、21
世紀にどういう企業になりたいのかというビジョンだ。これを今から大胆に考えておくことが
みんなにとって必要ではないかと思う。

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