週刊メディア通信簿 「公的資金投入の失政問わない日経報道」 金子勝(慶応大学教授)[ 週刊現代2001年10/27 ]] 

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投稿者 sanetomi 日時 2001 年 10 月 15 日 18:12:42:

  不良債権問題ほど混乱した報道はない。どの新開であろうが、1面2面は大本営発表
が多いので、あまり読む気がしない。大抵、面白い記事は3面から7面くらいにかけて
載っている。記者が考え抜いて書いているのか、ただ官庁からの情報をそのまま流し
ているのか判断がつかないが、オッと思う記事に当たることがある。しかし、よほど
確かな眼がないかぎり、読み込むことはできない。
 たとえば、2000上期に倒産した企業の7割が正常債権と要注意先債権であったと報じ
た、6月26日の目本経済新聞がそうだ。これは、たんたんと事実を書いた記者にすぎな
いが、よく考えると、2〜3年で破綻先・破綻懸念先債権を処理してゆけば、不良債権
処理が終わるとした政府方針を真っ向から批判していることになる。倒産企業のわずか
3割にしかならない不良債権を処理したところで、何も問題は解決しないからだ。
むしろ引き当てが不十分なまま要注意先債権が破綻してゆくことが問題なのだ。そして、
その危険性はマイカルの倒産で現実化した。

 つぎは、9月27日の日経に載った、優先株の評価損に関する記事だ。1999年3月の公的
資金投入に際して、政府が買った銀行の優先株(優先的に配当を受けられる株式)に、
いま株価が下落して含み損が発生している。この記事によれば、その額は、2001年8月末
時点で、大手13行分だけで約8000億円、地方銀行への注入分を含めると、1兆円を
超えるだろうと言う。8月末の株価は1万713円なので、株価が1万円割れしていると、
含み損の額はもっと大きくなる。

 もし新たに公的資金を投入しようとすれば、この評価損を確定したうえで、自己資本
が不足する分について、公的資金で補填しなければならない。つまり、過去の政策的失
敗で生じた損失を、また新たな公的資金で埋めて国民に負担を負わせることになるの
だ。こんな失敗をしたうえで、新たに国民に負担を負わせるのは、一体誰だ、ってことに
なるのは必定だろう。  

 なるほど、柳沢伯夫金融担当相、竹中平蔵経済財政相が最初から公的資金の投入を
タブー視をするわけだ。1999年3月の公的資金投入を推進したのが彼らだったからだ。
当時の金融再生委員長だったのが柳沢大臣。そして、竹中大臣は、公的資金投入に際して
銀行経営者の責任を3年間棚上げにした経済戦略会議の最終報告を作成した。
                                                    ●
 彼らは、過去の政策的失敗の責任が露呈するのを恐れている。だから、何とか株価が
回復するまで、公的資金投入を先延ばしにしようとする。これが「市場に任せて自己責
任でやれ」と主張する輩の正体である。いつまでたっても不良債権間題が解決しないわ
けだ。      
 しかも、彼らはマイカルの倒産にあわてて、銀行に対して問題企業に引当金を積むよ
う求め出した。だが、銀行にその体力はない。10月6日の日経によれば、大手銀行が法
定準備金の取り崩しを検討していると言う。株価下落で含み損が出ているからだ。

 もし、銀行が優先株に配当できなくなると優先株に政府の議決権が発生する。つまり
実質的に、銀行は国有北されれてしまう。銀行は、それを恐れて法定準備金まで取り崩
して、配当原資を確保しようとしているのだ。だが、世界同時不況が着実に押し寄せて
きている。また時間稼ぎだ。
 そんな中で、10月4日に7人の著名な主流経済学者たちが「日本の金融システム再建
のための緊急提言」を出した。そこでは、過小資本行の国有化が打ち出されている。
 だが他方で、主流経済学者たちは、小泉内閣の郵貯民営化論を支持している。

郵貯は民営化で、銀行は国営化?

何を言いたいのだろうか?
 さらに、彼らは年率1〜3%のインフレ・ターゲットも提言している。もし、それで
金利が2%上がれば、銀行が持つ国債の評価損は4兆円、金利スワップの損失も数兆円
に上る。これで金融システムを救えるのだろうか? 

 日経御用達の経済学者たちは、主張がひどく混乱している。これなら、新聞は事実報道
だけの方がよほどマシだろう。

#金子氏の発言には耳を傾けよ。


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