日本の非常時、「レッサーパンダ」氾濫 不良債権問題と安全保障 by 衆議院議員 渡辺喜美 選択2001.6

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投稿者 sanetomi 日時 2001 年 10 月 16 日 04:48:30:

ガンの進行度合いを表す基準に、ステージT〜Wという数値が
ある。日本経済のガンとも言うべき不良債権問題についてこの隠
喩を使うなら、今はステージUといったところだろう。1990年代か
ら続いている日本の大不況は、それ以前の不況とは根本的に異
なることに早く気づくべきだった。適切な治療を欠けば、死に至る
病となる。

 日本はこの3年間消費者物価がマイナスになったから、デフレに
陥ったのではない。この10年間、地価が大幅かつ継続的に下落
し続け、株価が低迷しているがゆえに、デフレ経済に陥っている
のである。かつての金本位制の崩壊が1930年代の世界恐慌を
招いたとすれば、日本では「土地本位制」の崩壊が平成大不況を
招いたと言っても過言ではない。私の見るところ、通貨供給が金
本位制によって強い制約を受けたことが、30年代の失政の原因
であった。一方、名目成長率より少し高めの地価上昇によって支
えられた日本経済は、その信用の源泉が失われ、金融機関のリ
スク・テイク能力がガタ落ちした。過剰な債務をかかえた企業は信
用の著しい低下に見舞われて久しい。過剰な債務はガン細胞の
ごとく金融システムや実体経済を犯しながら増殖し続けている。

 1930年代の大恐慌時代、ルーズベルトのアメリカとヒトラーのド
イツは異なる処方箋をとった。米国は消費が減ったから不況にな
ったという過少消費説に基づき、ワグナー法やNIRA(全国産業復
興法)によって労働者保護と、所得の分配率を変え、賃金の引き
上げを通じて消費の活性化をはかった。AAA(農業調整法)は生
産調整・価格維持政策である。しかし、これらは結果として実質賃
金を引き上げ、企業収益を圧迫し、失業率の高止まりと購買力の
低迷をもたらし、大恐慌を長期化させた。

 一方、ナチスは一切の労働組合に解散を命じ、賃金を固定させ
た。強制的な労働奉仕制を導入し、軍事費を含む政府支出を増
大させた。実質賃金は微増で、GDPに占める個人消費は急減し
たが、企業の利潤は増加し、民間投資は拡大した。米国の経済
史家ピーター・テミンは、ドイツ人が低賃金を維持し、完全雇用に
到達したのに対し、アメリカ人は賃金を引き上げ、失業の長期化
を招いたことを指摘する。このドイツの政策的成功と米国の失敗
が、第二次世界大戦を用意したのだとしたら、何という歴史の皮
肉であろうか。

究極の不良債権処理
 日本では、第2次大戦期を通じて政府や国策会社等が、民間企
業に対し巨額の未払債務を積み上げていった。また、在外の占領
地や植民地における民間の請求権が敗戦によって突如放棄させ
られたことなどから、企業や金融機関に巨額の不良債権が発生し
た。政府の債務処理、即ち、戦時補償はどのように解決された
か。
 まず、政府はGHQの指示のもと、昭和21年、金融機関の預金
封鎖と新円切り替えを実施した。金融機関からの預金流失や過
剰流動性を一挙に解決する策に出たのである。間髪をいれず、
政府は、戦時補償の100%切り捨てを実行した。その一方、会社
経理応急措置法と金融機関経理応急措置法を公布、実施して、
新たな事業を司る新勘定と戦時期の取引にかかる旧勘定とを完
全分離した。さらに、この旧勘定の清算的処理を迅速化させるた
め、企業と金融機関の債権整備法を制定し、企業には資産再評
価益を損失処理の財源として認める一方、金融機関には資本の
取り崩しを実行した後に、公的資金を注入した。

 不良債権問題は措置を誤れば金融のシステミックリスクを招来
する。いろいろな欲望のうず巻くマーケットが疑心暗鬼に陥り、不
安の連鎖反応が起きるのだ。従って、この問題への対応は「市場
の失敗」に対する政府の戦略的介入が不可欠となる。いわば政
策対応を非常時モードに切り替えることが求められる。

 冒頭のガンの4段階基準に倣って言えば、まず日本における非
常時モード・レベルTでは、赤字国債の再発行金融検査とデスク
ロージャーの強化、株のふくみ益はき出しによる間接償却の促
進、公的資金を導入し、預金者保護と優先株による資本増強、再
建型倒産法制の整備、金融再生委員会とRCC創設などが主な柱
となる。残念ながら、遅過ぎ、小さ過ぎのためこれらの対応では全
快治療には至らなかった。

 そこで今はレベルUの対応が必要となっている。この段階では、
直接償却の促進、過剰債務業界の整理再編も視野に入れた産
業再生委員会の創設、RCCの平成復興銀行化(DIPファイナン
ス)、義務的土地再評価制度、優先株の普通株転換、普通株によ
る再資本注入、日銀の量的緩和政策、などが必要になってくる。

 これでもダメならレベルVに移行する。この段階は、30年代アメ
リカでやったバンクホリデー(銀行の強制的一斉休業)による不良
債権の別勘定隔離、預金封鎖と強制預金切り捨て、新円切り替
え、日銀資金による銀行保有持合株式の全量・強制買い取りと議
決権の行使、永久国債の日銀引受による土地の大量買い取りな
どが迫られるであろう。

 そして、レベルVからWへの移行の壁は低い。預金封鎖の風評
が流れただけでアングラマネーはドルに逃避し、遅れて個人金融
資産の大規模なドル化が起こるであろう。国家の過剰債務のカッ
トが、ハイパーインフレのもとで不可避となり、円は変動相場制か
ら離脱し、為替管理と資本取引規制が行われる。米国は日本か
らの金融不安の連鎖を断ち切るため戦争状態に準じて大統令を
発動し、在米資産の凍結にかかるのである。国家の破綻=ガン
死と言ってよい。

 このような状況のもとで国内治安は相当悪化する。おびただしい
数の「レッサーパンダ」がいたるところで暴発し始める。不安心理
が蔓延し、かつてエーリッヒ・フロムの分析した「自由からの逃走」
が現実化する。そして左右一体となった反米ナショナリズム勢力
が台頭していく。

 日本が破綻する前にアジアは、たまらずはじけていくであろう。
今年はじめに中国中央銀行のトップが来日したおり、「130円を
超えて円安が進めば元の切り下げがありうる」と言って帰ったが、
円の暴落(ドル化)は、アジア諸国に深刻な打撃をもたらすはず
だ。通貨危機が政治や社会の危機にまで深化した1997年の事
態が、更に安全保障問題に転化しうることは容易に想像がつく。

 このような最悪のシナリオを回避するために、小泉内閣は何を
なすべきか。不良債権・過剰債務という進行性ガンを早急に除去
することである。そのためには、私がかねて提案している産業再
生委員会をできるだけ早く立ち上げることである。(拙著 「反資産
デフレの政治経済学」東洋経済新報社)。

 国民の異常とも思えるほどの絶大な人気に支えられた小泉総理
は、ハンセン氏病訴訟の控訴断念に見られるように、官邸中心の
真の政治主導体制を作りつつあるかのように思える。小泉革命
は、守旧派のリベンジをはねのけて着実に進展していくであろう
か。おりしも、ムーディーズは日本国債の格付けを1目盛り下げ、
次の方向性をネガティブとする、との噂が飛び交っているのだ。

 不良債権問題について、残念ながら本稿執筆時点では総理の
強い意思が伝わってこない。柳沢金融大臣がひとりで孤軍奮闘し
てみても、債権放棄のガイドライン作りすら、経団連の離脱などに
よって片肺飛行の状態になっている。不良債権問題こそは小泉革
命が成就するための試金石だったのではないか。この問題の解
決策は民間にまかせにすると、先に送れられてしまうことが、いや
というほど経験済みのはずだ。銀行や問題企業というガン患者
に、「メスは自分で握って自分の腹を切りなさい」と言っているに等
しいからである。

 今こそ政治のトップが強い国家意思を示し、政府が戦略的に介
入し、問題解決を主導すべきである。小泉総理に課せられた歴史
的責任は重い。

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