第1回「”大手30社問題”とは何か?」 (KPMGフィナンシャル社長 木村 剛氏)

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投稿者 sanetomi 日時 2001 年 10 月 26 日 17:14:17:

回答先: 第2回「『大手30社リスト』のナンセンス」 (KPMGフィナンシャル社長 木村 剛氏) 投稿者 sanetomi 日時 2001 年 10 月 26 日 17:08:42:

 不良債権問題に関し、少なからぬメディアで「大手30社問題」が取り上げられるようになってきた。難病の治療には、正しい診断が欠かせない。誤った処方せんは、ただでさえ重くなっている難病を悪化させかねないという思いから、「大手30社問題」の重要性を訴えてきた者としては、これをきっかけに正しい治療が始まってほしいと心から願っている。

ただ、誤解も同時に流布しているので、私が「大手30社問題」を主張している背景を明らかにしておきたい。

マスコミなどで報じられている不良債権処理のコンセプトをなぞると、

(1)不良債権処理は直接償却である
(2)直接償却はオフバランス化である
(3)オフバランス化は法的処理である
(4)法的処理は企業倒産を意味する
(5)その結果、中小企業がつぶれる

という流れになっている場合が多い。要するに、「不良債権処理を進めると、中小企業倒産が増える」という論理構成になっている。確かに、現在進められている不良債権処理は、「破たん懸念先以下を2〜3年で直接償却する」というものであり、「破たん懸念先以下」の3分の2は中小企業だから、そういう論理展開になってもおかしくはない。

不良債権処理の常識に反する現在の論調

しかし、この論理的な帰結こそが、私が問題にしている最大のポイントなのである。不良債権処理は、不良債権問題を解決するために実施される −− この命題を否定する人はいないだろう。不良債権を処理した結果、いわゆる「不良債権問題」は解決されねばならない。

しかし、どう考えても、「破たん懸念先以下」の中小企業をつぶしても、不良債権問題は解決しない。「正常先」「要注意先」にランクされている問題企業に手がつかないからだ。実際、つい最近破たんしたマイカルは、多くの金融機関で「正常先」「要注意先」として資産査定されていた。

また、諸外国の事例をみても、中小企業を不良債権問題の核心ととらえて対処する例はない。1億円の貸出先が5000社同時に潰れることにより、銀行が倒れるケースはないからである。銀行危機というものは、ほとんどの場合、おのおのの銀行が抱える問題企業(関連会社を含む)20〜30社に対する引き当て不足が表面化することによって引き起こされるものだ。

したがって、不良債権処理の結果、中小企業の倒産ばかりがクローズアップされている現在の論調は、不良債権処理の常識に明らかに反している。これは、診断がゆがんでいるので、処方せんが誤っているとしか思われない。
この誤った処方せんを白紙撤回し、正しい診断を基点にしない限り、いわゆる「不良債権問題」は解決しない。私はその誤った処方せんを「大手30社問題」という言葉に象徴させている。

問題の核心は「大手30社問題」

このため、「大手30社問題」という言葉は、巷間(こうかん)に流布している誤った論理構成のいくつかを象徴しているのだが、その中には次のような視点が含まれている。

(1)不良債権問題の核心は、「大手30社問題」である=中小企業を倒産させても問題は解決しない
(2)「大手30社問題」は、限られた産業と企業に集中した問題である=早晩、退場せざるを得ない大企業の問題である
(3)不良債権問題は銀行の引当不足の問題である=一義的には企業を倒産させるか否かという問題ではない
(4)「直接償却をしなければならない」という理屈はない=間接償却(引き当て)が十分であればオフバランス化は進む
(5)処理すべき対象は「破たん懸念先以下」ではない=問題の核心は処理が進まない「正常先」「要注意先」である

もっとも、私が「大手30社問題」と申し上げていることが、「中小企業の不良債権は問題ではない」ということを意味しない点には留意してほしい。私の主張は、「不良債権問題の核心は中小企業問題ではない」という点にある。現在の不良債権処理を黙認し続けるならば、問題の核心に触れることなく、その周辺を漂白するだけに終わってしまい、いつまで経っても「不良債権問題」は解決されないだろう。処方せんを書くなら、問題の核心である「大手30社」に焦点を当てるべきである。

また私は、「大手30社問題」という言葉で「銀行の引き当て不足」を指摘しており、銀行サイドから「不良債権問題」を解決すべきだと主張している点にも留意して欲しい。よく「不良債権と過剰債務企業はコインの裏表」という言い方で、「過剰債務企業を処理しないと問題は解決しない」という論理が展開されるが、不良債権問題において「過剰債務企業の処理」はあくまでも二次的な問題である。銀行における十分な引き当てがすべての出発点であり、それ が諸外国でも不良債権処理の王道になっている。マスコミは「大手30社」をつぶすことが「不良債権問題」の解決になると早合点しがちだが、そういう産業サイドからのアプローチを採る国は少ない。銀行サイドにおける引き当て処理を通じて、産業サイドの外科手術も自然になされていくものである。

構造改革成功のため真の不良債権処理断行を

小泉政権はこれからが正念場だ。構造改革を成功させるためには、「大手30社問題」に象徴される誤謬(ごびゅう)をただした上で、真の不良債権処理を断行しなければならない。「大手30社」に焦点を当てることなく、中小企業つぶしに精を出しているようであれば、日本経済の前途が拓かれることはないだろう。  

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