分析「日本の政治を読む」〜したたかな計算目立つ一見“無手勝流”の小泉首相(PAXNET)

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投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 26 日 21:31:04:

●「小泉改革」実現に大きく前進

小泉内閣が看板に掲げる構造改革の行方を占う上で象徴的存在となっていた特殊法人改革は、日本道路公団など重点7法人の廃止・民営化の方針が決まり、「小泉改革」の実現に向け、大きな一歩を踏み出した。焦点の高速道路整備計画について小泉純一郎首相が借入金の償還期間をそれまでの「30年以内」から「50年以内」と譲歩したことで、“抵抗勢力”の古賀誠自民党道路調査会長らは「これで残り2400キロメートルは建設できる」「名は首相が、実は我々が取った」と“勝利宣言”している。
しかし、これまでの特殊法人改革が国鉄、電電公社以来、「数合わせ」に終始してきたことを考えれば、「大きな前進」(首相)であることは間違いない。

●国費投入ゼロで採算性重視へ

高速道建設に対する年間3000億円の国費投入を2002年度から実際に中止すれば、少なくとも建設順位に優劣がつき、不要な路線まで予定通りどんどん造られるという事態は回避される。「50年後など誰も生きていない」(政治評論家の三宅久之氏)と改革実現に悲観的な見方もあるが、民営化と国費投入ゼロで今後の高速道建設は採算性重視や建設費適正化などへの大転換につながることは確実だ。
首相と抵抗勢力との“痛み分け”と評した新聞もあったが、宿痾(しゅくあ)にも似た戦後の行政手法に風穴を開けた功績を考えれば、首相の「勝利」とみていいのではないか。

●第3者機関立ち上げを急げ

今後重要なことは第1に、12月中旬までにまとめられる予定の特殊法人整理合理化計画に、まだ手付かずの政府系金融機関など70法人の廃止・民営化案をどれだけ盛り込めるかどうか。第2に、道路4公団の今後の在り方や高速道の具体的路線の建設の是非を審議する第3者機関の立ち上げを急ぐことだ。特に、国鉄改革時の「再建監理委員会」のような行政への調査権や審議権も持つ国家行政組織法8条に基づく権威ある組織を目指す第3者機関は、2002年度予算が成立する来春以降に法案提出などと悠長なことを言っている場合ではない。一刻も早く法律を成立させ、審議を始めることこ
そが抵抗勢力の妨害を封じる最良の手だ。改革には「スピード」が不可欠なことを首相は今一度再認識すべきである。

●NTT株売約益の財源化はつけの先送り

一方、これより先に決まった2001年度第2次補正予算は新規国債発行枠30兆円にこだわるあまり、財源を政府保有のNTT株売約益に限った結果、真水が2兆5000億円と中途半端な額にとどまった。NTT株売約益はもともと国債償還費として積み立てられてきたもので、いずれ戻さなければならないいわば“隠れ借金”だ。首相は「うまいへそくりがあった」と喜んでみせたが、つけの先送りという点では新たな国債発行と大して変わりはない。

●国民の「痛み」にどう答える

それよりも問題は第1に、NTT株売却益の使途がハコ物建設事業などの従来型の公共事業に限られること。第2に、2兆5000億円の公共投資では国内総生産(GDP)を押し上げる効果が0.5%程度しかなく、内閣府が修正予測した2001年度の実質経済成長率マイナス0.9%をプラスに転じさせるには力不足ということだ。小泉首相は「2、3年はマイナス成長が続く」とかって言明したが、それではデフレスパイラルに陥ることは避けられない。
9月の完全失業率5.3%が実感としては10%を超え、年末に向け失業者がさらに100万人以上増えるとみられる国民の「痛み」を首相はどう考えているのか気になるところだ。仮に「中小企業の1つや2つ潰れても仕方がない」というのであれば、かつての池田勇人蔵相(後に首相)と同じく弱者切り捨てになる。

●迷走する鳩山代表の首相支持発言

小泉首相に支持のエールを送ったかと思えば、次は批判と鳩山由紀夫民主党代表の言動がまたもや迷走している。鳩山氏は21日の党首討論で「首相の改革が何としてもやらなければならない話であれば、与野党を超えて支持するのはやぶさかではない」と首相にラブコールを送った。しかし翌22日、小泉首相が高速道建設の「50年償還」で抵抗勢力と妥協したため、「改革やるぞと言いながら族議員に妥協しているのなら、私たちは支持できない」と一転して批判。菅直人幹事長も「大いんちきだ。たった1日で腰砕けになった」と首相を非難した。

●抵抗勢力けん制に利用されただけの「民主党カード」

しかし、こうした鳩山氏らの見通しの悪さに、党内からは「大ばくちは完全にはずれた」「抵抗勢力を抑えるのに利用されているのが分からないのか」との幹部批判も聞こえてくる。鳩山氏としては、小泉首相を応援することで自民党内の分裂を誘い、あわよくば衆院解散ー政界再編を狙って打った手だったが、これまでのところ、ことごとくはずれている。首相がいざとなれば本当に民主党と組む気があるのかどうか不明だが、現状では少なくとも同党が抵抗勢力に対するけん制のための「カード」として利用されているだけに終わっているのは紛れもない事実だ。

●存在の希薄さ増す公明党

一方、与党の一員である公明党もテロ対策特別措置法や衆院選挙制度改革問題でのごり押しで首相に「公明党が政権から離脱してもやむを得ない」と言われたことがよほどこたえたとみえ、特殊法人改革では音無の構えだ。冬柴鉄三幹事長らが住宅金融公庫や都市基盤整備公団の廃止について「高齢者や低所得者が多い」ことを理由に一応反対する姿勢を示してみせたものの、首相の決断にはなすすべもなく、単に党内・支持者向け発言であったことが露呈しただけに終わった。同党の神崎武法代表は民主党の鳩山代表の「小泉支持」発言がわずか1日で上滑りしたことについて「残念ながら空振りに終わった」と揶揄(やゆ)してみせたが、その存在の希薄さを皮肉られているのは何も民主党だけに限ったことではない。

●三木元首相を上回る改革のリーダーに

こうして見てくると、小泉首相の一見「無手勝流」にみえ、その実したたかな計算に基づく行動ばかりが目立つ。人によっては1976年当時の三木武夫首相とよく似ていると指摘する向きもある。三木首相はロッキード事件に徹底的に取り組み、田中角栄前首相を逮捕に追い込んだだけではなく、政治資金規正法制定など当時としては画期的な動きをみせた。それだけに自民党内の反発もすさまじく、公然と首相に叛旗を翻した福田赳夫副総理や大平正芳蔵相ら15閣僚らが挙党体制確立協議会(挙党協)を結成、三木首相の解散権をついに封じ込め、任期満了による総選挙“敗北”を理由に辞任に追い込んだ。それでも四面楚(そ)歌の中で三木首相は半年間政権を持ちこたえた。
小泉首相が目指す構造改革は恐らく三木首相のそれを大きく上回る。従って党内の抵抗は当時より強いはずだが、小泉首相にとって幸いなことはかつて厳然と存在したいわゆる「保守本流」なるものが事実上なくなり、一匹狼の小泉首相が圧倒的多数の国民の支持を受けているという現実である。三木氏も当時「クリーン三木」としてある程度の国民の支持はあったものの、しょせんは「傍流政治家の反乱」にとどまった。
それから四半世紀が過ぎ、「永田町の変人」は今や並ぶ者もない権力も有した改革のリーダーへと変身した。
[政治アナリスト 北光一 2001/11/26 09:12]

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