伊藤隆敏教授VS加藤出エコノミスト--著書で金融政策巡り激しい火花 東京 12月1日(ブルームバーグ)

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投稿者 sanetomi 日時 2001 年 12 月 01 日 09:32:49:

 「デフレを止めるのが日本銀行の使命」VS「無謀なオペを行わない限り、インフレは起こせない」−−。一橋大学経済研究所の伊藤隆敏教授と、東短リサーチの加藤出チーフエコノミストが、最近上梓したそれぞれの著書で、金融政策をめぐり激しい火花を散らしている。さて、あなたはどちらに軍配を上げるか。

  伊藤氏は99年7月から2年間、財務省副財務官を務めた後、古巣の一橋大学に復帰。その名も「インフレターゲティング」(日本経済新聞社)という著書で、「物価安定数値目標というものを立て、それを達成するために『あらゆることをやります』と宣言するということが、非常に大きな意味を持ってきます。(中略)こういう数値目標を掲げることで、人々の期待が変わるかもしれないわけです」と主張する。

  「『期待に働きかける政策は重要だ』とよく言われるが、“幻想”は決して長続きしない。(中略)現時点で国民にインフレ期待を抱かせるには、円資産を保有していることに国民が恐怖心を感じるくらいのかなり無謀なことをしなければ実現は困難である」−−。こう主張する加藤氏は、日銀も一目置く短期金融市場の専門家。「日銀は死んだのか?」(日本経済新聞社)というショッキングな題名の著書で、インフレターゲティング論に真っ向から反論する。

      長期国債の大量購入でインフレは起こるか

  「いったんインフレ目標を設定すれば、手段は日銀に任せる」というインフレターゲット論。これに対し日銀から「短期金利がゼロ%まで低下した今、手段こそ議論すべき」という批判が出ていることを意識してか、伊藤氏は手段についても詳細に言及している。「インフレは、金融政策を運営する限り必ず起こすことができます。(中略)たとえば、大量の量的緩和や、長期債の買い切りオペの増額、さらには株式の購入などです」−−。

  そのうえで、伊藤氏はまず長期債について「日銀が長期債を買い上げることによって多くの現金が市中に流れるわけですから、これまで長期国債を持っていた人たちが現金を手にすることになります。(中略)それは株式の購入に向かうかもしれないし、外貨預金に回るかもしれません」と期待をかける。

  加藤氏はこれに対し「仮に、金融機関に体力がありながら、妙に運用スタンスが慎重化し、本来取るべきリスクを取ろうとしない状況ならば、そのような政策は意味があるだろう。しかし、現状は金融機関のバランスシートは痛んでおり、彼らにリスク許容力はない」と指摘。さらに「中央銀行が国債を購入し同時に政府支出が増加していけば総需要は拡大する。しかし、財政の蛇口を抑えたままで、1%前半という超低金利に位置している長期国債を今さら日銀が買ってもインフレにはならない」と断言する。

      株価指数連動投信や不動産投信購入の是非は

  次に、伊藤氏は「長期債購入をしても、なおかつデフレが止まらないという場合には」として、株価指数連動型投資信託や不動産投信(REIT)など、「実物資産に裏打ちされた資産を買い取っていくことが考えられます。(中略) 株には『リスク』がある、という人もいますが、株式市場全体を購入することで、リスクは分散されています」と主張する。

  しかし、加藤氏は「90年代前半に公的資金による大規模な株式相場下支え策(PKO)が行われたが、結局、支えきれなかった。(中略)もともと、日本経済の実力から乖離したレベルに人為的に株や土地の価格を誘導することは不可能だ。現在の株価・地価が先行きの成長率予想より不当に低いのなら別だが、不自然な買い支えは市場からはむしろ絶好の売り場と見なされる恐れがある」と反論する。

  加藤氏はさらに「インフレターゲティングを採用し、従来オペ対象としていなかった資産を『大胆』に購入していけば、日銀の資産規模はさらに膨張する。しかもその内容は明らかに劣化していくだろう。(中略)『大胆』かつ『不健全な』政策に日銀が踏み込む場合、それは国民負担増加につながる可能性が高い。(中略)事前に選挙で国民のその是非を問うべきだろう」と指摘する。

         主張こそ違え、問題意識は共通

  こうした批判に対し、伊藤氏はこれまでより一歩踏み込んだ反論を試みている。「日銀が多少の額の株式評価損を被ったとしても、それは日銀納付金が多少減るということですから、大きな問題にはなりません。たとえ、日銀納付金を上回る損失が出たとしても、これは、損失を一般会計から補填することが適切です」−−。

  伊藤氏はさらに「最終的には日銀の通貨発行益やバランスシート上の損失は、国の一般会計と一体であるということになります。したがって、日銀だけが損をする、得をするということではなく、これはあくまでも国民が持っている中央銀行になるわけです。この点は、政府や国会もはっきりさせるべきで、日銀が物価安定に成功したが、バランスシートが傷ついたという場合には、日銀の責任は問わない、ということを明言すべきです」と主張する。

  「日本経済をどうしたらいいのかというより広い観点に立つと、日銀、金融庁、内閣府、財務省が一致協力して、正しい政策のパッケージをつくらなくてはいけない、ということは大前提」(伊藤氏)、「構造改革に向けた財政、金融、不良債権処理、社会保障も含めた“長期的視野”に立つ国民的合意『新しいアコード』を検討すべき」(加藤氏)−−。主張こそ違え、問題意識は共通だ。日本経済がデフレスパイラルの入り口に差しかかった今、インフレターゲティングをめぐる議論はますますヒートアップしていきそうだ。


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