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米国のテロ資金規制で縮み上がる金融市場〜世界の資金循環の大変化で日本が被る影響とは〜(ウエッジ12月号)

投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 12 月 20 日 11:22:12:

米国のテロ資金封じが世界の資金循環を変えつつある。
日本からは一見遠く見えるテロ資金包囲網だが、実は米国向けの資金の蛇口を細らせ、世界中の資金の巡りに動脈硬化を起こしかねない副作用を持っている。
実体経済にもじわりとデフレ圧力となって効いてくるだけに、不況と金融危機に直面する日本にとってこそ影響は甚大なのである。

●急ピッチで進むテロ資産凍結 米欧金融機関の影響は深刻

米軍がアフガニスタンに空爆を開始する直前の10月6日、ワシントンで開いた主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は、異例のG7会合となった。世界経済の行方に関する議論もそこそこに、話題はテロ資金の根絶に集中したからだ。米国の音頭とりでまとめた共同声明も、「テロリストに資金を援助する疑いのある個人や国家を捕捉する」、「テロリストの資産を封鎖するための国連制裁を実施する」などとうたった。
日米欧を中心とした主要国の当局は、テロ発生後の9月24日からウサマ・ビンラディンらテロの関与が疑われる個人や組織をお尋ね者にして、資産凍結措置を講じている。米政府は10月11日までにウサマ・ビンラディンの関連資産を全世界で2500万ドル(約29億円)凍結した。
日本も当然、テロ包囲網に加わっている。政府はタリバンとの関与が疑われる215の個人や組織のリスト(P13図参照)を公表し、金融機関に対して顧客名簿のチェックと資産凍結を求めている。日本はアフガニスタンと遠いせいか、現在までのところ公表リストと同一名による口座数は3件にとどまっている。金融関係者からも切実感は伝わってこない。
しかし、アラブ系の顧客との取引の多い米欧の金融機関にとって、資産凍結措置の影響は深刻だ。
例えば、銀行の顧客守秘が堅固でマネーロンダリング(資金洗浄)の温床になっているとされるスイスでは、早くも9月20日にはビンラディンと関係があるとされるアラブ系金融機関の口座を封鎖した。英財務省も大手英銀であるバークレイズ銀行にある疑問の口座を封鎖した。これまでだったら考えられないピッチで、世界的規模でテロリストの資金源が絶たれているようにみえる。
その証拠とされるのが、欧州におけるアヘンなど麻薬の価格の暴落だ。タリバンは領内で麻薬の原料となるケシを栽培しており、アフガニスタンは世界最大の麻薬産出国。麻薬は最大の資金源だ。「次々と金脈を絶たれたことで、手持ちの麻薬を投げ売りして現金に換えている」と金融関係者は指摘する。

●米欧で洗浄されるテロ資金 行き着く先はサウジの疑惑

タリバンやビンラディンの資金封じは、米欧の紳士たちがテーブルの下で行ってきた取引をあぶり出し、ブーメランのように跳ね返ってこようとしている。例えば、ウサマ・ビンラディンの実家であるサウジアラビアのビンラディン家が、米投資会社カーライルに出資していたことが発覚した。
カーライルは防衛、航空関連産業への投資ファンドであるが、それ以上にチェーニー副大統領が最高責任者を務め、ベーカー元国務長官ら先代のブッシュ政権の閣僚がパートナーに名を連ねていることで有名である(本誌2月号「ブッシュ政権を支えるスポンサーは日本で何を狙うか」参照)。そのチェーニー氏やブッシュ現大統領を含めた現政権の人脈は、軍事、航空、エネルギーなどの絡みで、中東、とりわけサウジアラビアと深くリンクしている。
ビンラディン家はウサマを勘当し、サウジ政府もウサマを国外追放している。それにしても、ビンラディン・グループの名が米共和党系の投資会社の出資者の中に現れたのは、いかにもばつが悪い。結局、ビンラディン・グループは10月下旬に出資1000万ドルをカーライルから引き揚げた。その裏には、米当局から懸命の説得があったとみられる。
カーライルへの出資問題のトラブルは氷山の一角にすぎない。米国の同盟国であるはずのサウジが、今回のテロ資金封じには協力的でないのだ。業を煮やしたパウエル国務長官が、「サウジはなすべきことをすべて行っていない」と、異例の批判を加えた。
保守派の王室が牛耳るサウジと、原理主義者集団タリバンとのコネクションが絶たれていない。つまり、サウジを通じてテロリストに資金が流れているのではとの疑念は、米欧では根強く残っている。
極めつきは「サウジの諜報機関のトップはタリバンと繋がりの深いロイヤルファミリーの一員で、テロ事件の24時間以内に突然辞任している」という事実だ。カレツキー氏(英「タイムズ」コラムニスト)は、「テロのマネーと血痕をたどってゆくと、最終的にはサウジに行き着く恐れがある」と指摘している。
テロ資金封じの行き着く先がサウジであるとすれば、厳格な犯人追及は米国の中東政策を根底からひっくり返すことにもなりかねない。人口の急増と国家財政赤字に直面するサウジ王室は、いまや累卵の危にある。国内の米軍基地がタリバン攻撃に使用されることを拒むサウジ王室は、自らのリスクをよく承知しているともいえる。

●国際的な資金移動にブレーキ 資本流入大国の米国を直撃

防衛、エネルギーを最重点に置くブッシュ政権はどこかで問題の蓋をすることになろうが、日産800万バレル のサウジ・オイルの最大の輸入先が日本であることは忘れるべきではない。その一方で、テロ資金根絶のための資産凍結措置は、世界最大の資本輸入国である米国の台所をこそ直撃する。
2000年の段階で、米国の経常収支赤字は4447億ドル、対外純債務は2兆ドルに膨れ上がっている。膨大な対外赤字と債務を穴埋めしたのは、米国への資本流入だった。90年代前半は日本からの債券投資、後半からは欧州からの直接投資や株式投資が、米国の対外赤字の穴埋めをした。
それに加えて、カリブ海諸国など当局の規制を受けないオフショア市場などを通じた資金流入が、米国の金融・株式市場に潤沢なマネーを提供した。米国に一極集中したマネーは米国の株高と経済成長の原動力となり、米国の投資家は余った資金を全世界に再投資した。米国は自由な資本移動が自らの経済の生命線であると承知しているからこそ、1998年のヘッジファンド危機に際してもオフショア市場への規制には強硬に反対した。
ところが、今回の同時多発テロでは主張を180度転換して、テロ資金封じを打ち出したのである。その結果、国際的な資金移動に強力なブレーキをかけることになるのは目に見えている。ただでさえ昨年来の米国株安で海外の投資家は対米投資に二の足を踏み始めていただけに、米国へのマネーの流入は今後、大幅に細ることが避けられまい。
半面で、皮肉なことに米国の経常赤字額が急速に縮小している。テロ前から鮮明になった個人消費の落ち込みで、米国の輸入額が急減しているのだ。クリスマス商戦の不振が確実視されるなかで、今後米国の輸入は一段と減少する可能性が大きい。

●ダメージ被る新興成長諸国 資金負担する日本は自覚なし

米国をめぐるモノとカネの流れは、両建てで縮小してゆくことになろう。その過程で米国経済はダメージを被るが、それ以上に深刻なのは対米輸出に依存している新興成長諸国である。これらの諸国では頼みの綱の米国マネーの引き揚げにも直面している。
例えばアルゼンチン国債はデフォルト(債務不履行)寸前の水準まで売り込まれており、ブラジルでもカントリーリスクを嫌気した資本逃避が加速している。アラブ世界に近接する北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるトルコでも、資本流出とインフレが進み国家予算は兆のひとつ上の単位である京で編成せざるを得なくなった。
こうしたなかで、パキスタンのカラチの株式市場が米軍の空爆開始以降、活況を呈しているのが目を引く。対アフガン戦争の前線になることから、米国など西側による軍事特需が期待できると踏んでいるのだ。しかし、同じイスラム国家であるインドネシアでは空爆以降、社会不安が増幅している。全世界規模でみれば、新興市場は総じて投資マネーの引き揚げと深刻な経済不振に見舞われつつあるのである。
日本は国際金融市場が縮み上がることで、直接、間接にさまざまな悪影響を覚悟しておく必要がある。ひとつは、日本の株式市場の唯一の買い手だった米国投資家が、対日投資の引き揚げに動きかねない点だ。米国勢は9月に日本株の売り越しに転じた。10月には若干買い戻したもようだが、従来のような日本株投資は期待すべくもない。今後不良債権処理が本格化し、デフレ圧力が強まると予想される中で、日本経済は有力な下支え役を失うことになる。
もうひとつは、例によって資金負担だ。日本がアフガン復興会議を提唱しているのは、国際貢献に必死の小泉首相の意向を映している。軍事面で貢献できないのだから、前もって資金面の貢献をうたうのは悪いことではないが、問題は米国などのマネーが引き揚げるなかで、日本が肩代わり役になることをどこまで自覚しているかだ。パキスタンのカラチ市場の特需期待は、米国の肩代わりをするお人よしの存在を前提にしているようにも見える。
ともあれ、世界がグローバル化した現状では、「近くの戦争は売りだが、遠くの戦争は買い」などという昔の株式市場の格言は通用しない。テロ資金規制は、国際金融市場のパンドラの箱を開けてしまった。資金フローの変化による大打撃を被りかねないことに無自覚な日本は、10年前の湾岸戦争と同様、今回も敗者になるのだろうか。




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