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中小企業へ貸し渋り〜裏では“大企業詣で”の大手銀行〜政府保証に担保の有無、一向に変わらぬ融資体質(WEDGE1月号)

投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 1 月 21 日 21:42:18:

返したい企業には貸し、借りたい企業からは逆に返済を迫る――。
「正常先」か「要注意先」か、「大企業」か「中小企業」かを分水嶺に、極端なカネ余りとカネ不足が同居する「カネの偏在」が進んでいる。
企業倒産が過去最悪の水準に達し、多くの中小企業が年越し資金の調達に苦しむ一方で、ただ同然でカネを借りている大企業があるのはなぜか。
偏在の実態と、その裏にある大手銀行の思惑を探る。


●巨額のカネを押しつけられ 運用先を大企業に求める大手行

収益悪化で苦しいはずの大手銀行が、資金需要がないはずの大企業に「超低金利でいいからカネを借りてくれ」と「大企業詣で」を繰り返している。
NTT東日本、西日本には夏以降、複数の大手銀行の営業担当者が訪れ、激しい融資競争を繰り広げている。業績不振のNTTはグループで11万人の社員を新会社に転籍させる大リストラを断行するが、転籍する社員はいったんNTTを退職する形をとるため、社員への退職金の支払いが必要になる。各銀行は、1兆円を超えるそのリストラ資金を狙って群がっているのだ。
NTT債の発行利回りは国債とほとんど同じで、社債を発行すれば、安い利回りでいくらでも資金は調達できる。しかし、いくつもの銀行に貸し出し条件を競わせて金利を引き下げさせた方が、さらに負担は少なくてすむ。各銀行が厳しい条件を受け、勝手に金利のダンピング競争をしてくれるからだ。
東京電力がこの秋に行った長期借入資金の入札にも大手銀行が競って参加した。落札できても利ざやはほとんどないが、銀行もそれを承知の上で、なお借りてほしいと言ってくる。さすがに金利はこれほど安くはないが、自動車や電機などのメーカーや一部のサービス業にも「何か融資できる新規案件はないか」と、都市銀行や地方銀行の担当者が入れ替わりでやってくる。ある首都圏のIT関連メーカーでは、財務担当者が「今のところ案件はないので」と丁重に断ったが、「では、せめて残高は維持してほしい」とすがられたという。
大手都銀の担当者は、「相手が正常な融資先なら、リストラだろうが設備投資だろうが、需要があればいくらでも貸す」と言い切る。「何もしないと融資残高はどんどん減ってしまう。しかも借り続けていてほしい企業ほど、借金を返してくる」からだ。大企業は今、こぞって大リストラを敢行して有利子負債を減らし、不要不急な借金を返すことに血眼になっている。不採算部門を清算して収益性を高める狙いがあるのはもちろんだが、デフレが続けば通貨価値は時間とともに高くなり、借金はしないに越したことはないからだ。
にもかかわらず日銀は金融の量的緩和を重ね、カネを銀行に押しつけて、金融市場や企業に流せ、と言ってくる。さらに、預金者は2002年4月のペイオフ解禁を控えて、中小金融機関から大手銀行に預金を移動し始め、大手行には黙っていても預金がどんどん集まってくる。
日銀からも、企業からも、預金者からも巨額のカネを押しつけられれば、大手銀行といえどもすべて運用先にはめこむのは至難の業だ。正常先の大企業は、採算はとれなくてもとりあえず大きなカネをはめこめる運用先として、確保せざるを得ない。景気の実態はまったく異なるが、銀行が運用先が見つからないほどの巨額のカネを手にしているという点では、今はバブル経済以上の状況なのだ。

●中小企業には貸し渋る各銀行 頼みの政府系も融資縮小へ

しかし、大企業に競ってカネを貸すその裏で、各銀行は中小企業に対しては「貸し渋り」や「貸しはがし」を競っている。
日本ニット工業組合連合会に加盟している繊維メーカーには、夏頃から銀行の融資回収担当者がひんぱんに取り立てに訪れるようになった。中国などの攻勢に対抗するため工場の設備更新資金を借りたいのに、銀行は新規融資はもちろん、運転資金すら貸さず、返済の前倒しを断れば追担保を要求してくる。
工連は政府に対し、中小企業への緊急融資を求めるとともに、商工中金と中小企業金融公庫の民営化に反対する運動を始めた。工連サイドは「商工中金や公庫は大半の中小企業のメーンバンクになっている。これが民営化されて、銀行がやっているように長年築き上げた工場をむやみに不良債権とされたらたまらない」と憤る。工連には他の中小企業も同調し、日本商工会議所も協調して貸し渋り打破に取り組む方針だ。
大手銀行にとって「要注意先」以下の企業や中小企業は、「不良債権予備軍」だ。いくら資金需要があって高い金利がとれるとしても、引当金を積むのでは儲けは消えてしまう。それなら少しでも融資を回収し、過去に積んだ引当金を利益に回した方がずっと確実だし、不良債権は増えない。
政府は99年の公的資金注入にあたって、大手銀行に中小企業向け融資を増やすよう約束させ、各行はこれまで一定のカネを中小企業に回さざるを得なかった。その結果、大手銀行の貸出残高に占める中小企業への貸出比率は6割程度にまで達したが、不良債権に占める中小企業向け比率も同じ割合にまで膨らんでしまった。
公的資金を完済して政府との約束に縛られなくなった東京三菱銀行は、その後中小企業向けを5%以上減らしている。いくら運用先に困っても、中小企業向け融資は真っ先に切りたい存在なのだ。
その意味では、構造改革路線を掲げる小泉内閣の登場は、まさに渡りに船だった。小泉首相が今の路線をとり続ける限り、構造改革を遅らせる手厚い中小企業優遇策がとられることはないし、中小企業への「貸し渋り」「貸しはがし」に激しく抵抗してきた商工族議員も「抵抗勢力」として封じ込められている。長年のしがらみを断ち、問題企業への融資を打ち切る絶好機を与えてくれているのだ。
逆に中小企業にとって、これほど厳しいことはない。大手銀行が相手にしないだけではなく、中小企業に融資してきた信用金庫・信用組合などの地域金融機関は、ペイオフ解禁を前にした金融庁の検査で次々に債務超過と認定され、毎週のように破綻に追い込まれている。最後の頼みの綱となってきた政府系金融機関も、小泉改革で民営化が検討されていて、民業を圧迫しかねない融資は縮小している。融資が受けられないどころか、融資を頼みに行く先すらなくなりつつあるのだ。
大手銀行は「これほどまでに極端なカネの偏在を招いた責任は政府にある」と口を揃える。ある都銀の企画担当幹部は、「一方では超のつく金融緩和で銀行に巨額のカネを押しつけ、もう一方では融資先を厳格に選別し問題がある企業には貸すなと求める。まるでアクセルとブレーキを同時に踏めと言われているようなものだ」と政府の姿勢を批判する。

●リスク管理型経営に改めても バブルの教訓は生かされぬ

しかし、直接の原因はやはり大手銀行にあると言わざるを得ない。
各銀行はバブル経済で大きな傷を負った反省として、土地などの担保に頼らず、企業の健全度を厳密に査定して、貸し倒れリスクに応じて貸出金利を引き上げることで収益を確保する「リスク管理型経営」に改めることを相次いで表明した。そのために巨額の資金を投じて新システムも導入し、経営指標から企業ごとに倒産確率をはじき出したり、何%の金利で貸せばいいのかを判断できる体制も整えたはずだ。
「正常先には貸すが、問題先には貸さない」という各銀行の融資方針は、表面的には「リスク管理型経営」の表れのようにも見えるが、基本的なところがまったく異なっている。バブルの教訓が生かされていれば、カネは企業の規模や担保の有無にかかわりなく振り分けられ、これほど極端に偏在するわけがないからだ。
 例えばNTTは2002年3月期連結決算で3000億円を超える最終赤字を出す見通しで、優良企業に見えても融資が不良債権化する危険はゼロではない。「NTTがつぶれるはずがない」という見方が誤りだとは言わないが、「失われた10年」の間に、「つぶれるはずがない」企業がいくつもつぶれたことは忘れていいのだろうか。
倒産に備えた引当金は大げさとしても、企業の健全度を厳密に査定して「貸し倒れリスクに応じた金利をとる」という原則からすれば、NTTは金利のダンピング競争を行う相手ではないはずだ。こうしたリスクを無視してただちに融資に手を挙げること自体、バブル時の融資と同じ発想なのである。
反対に、中小企業や構造不況業種のなかにも、逆境に耐えて成長してくる企業は無数にあるはずで、そうした企業の価値を見抜いて融資すれば、大きな収益が期待できる。にもかかわらず銀行は相変わらず、担保があるか、政府の特別保証があるか、という点をよすがに融資し、将来性ある企業や復活の可能性十分な企業であっても、担保がなくなれば途中で見切ってしまう。これでは中小企業向け融資が伸びるわけがないし、不良債権化するのも当たり前だ。
「貸金の大リストラをする」。11月21日、2002年3月期決算で1500億円の連結最終赤字に転落する、との見通しを発表した三井住友銀行の西川善文頭取は、これまでの取引関係にとらわれず、融資では「リスクに見合った貸出金利を取る」本来の姿に戻すことを宣言した。法定準備金を取り崩すという異例の事態にまで追い込まれて、ようやくバブルの教訓を思い出したのかもしれない。
しかし、中小企業は「金利さえ払えば、カネが回ってくる」と喜んではいけない。「リスクに見合った金利を取る」ということは「リスクに見合わない金利しか取れない融資は打ち切る」ことの裏返しで、中小企業向け融資が増えることには直結しない。
当たり前のことだが、融資の適正化とは、回るべきところにカネが回るということで、欲しい全員にカネが回ることはあり得ない。企業側もバブルの教訓を思い出すことが必要なのだ。




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