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田中真紀子前外相の電撃更迭などで支持率急落が著しい小泉純一郎首相。これを受け、息を吹き返した抵抗勢力が（１）武部勤農水相の更迭（２）医療費３割負担の導入時期（３）道路公団民営化を検討する第３者機関の人選といった“３点セット”をめぐって一転攻勢へ−と伝えられるが、事の本質はそれほど単純ではない。実は、壊滅的状況にある日本経済に打つ手のない首相官邸が、国民批判を避けるために“目くらまし戦争”を演出しているといった見方が強いのだ。
６日午前、参院議員会館一階の面談室。経済通の自民党若手議員８人が日本の経済危機について、こんな驚くべき会話を交わしていた。
渡辺喜美衆院議員 「残念ながら、首相官邸には解決能力がない。何も起きなければ何もしない姿勢だ。このままでは日本はアルゼンチンのように破局を迎える。ハイパーインフレや預金封鎖、強制預金切り捨てなど、とてつもなく恐ろしい出来事が始まる」
舛添要一参院議員 「官邸が聞く耳を持たないようではダメ。国民に医療費３割負担という痛みを強いるなら、首相が『今年１２月でデフレを止める』と宣言し、達成できなければ首相も国会議員を辞めるぐらいの公約をしないと」
近藤剛参院議員 「公約は守るべきだが、外さなければならないときは、大胆に外す勇気も必要だ」
緊縮財政への不満から全国各地で暴動が発生し、わずか２週間で２人の大統領が交代。史上最高額のデフォルト（債務不履行）を宣言したアルゼンチンのような経済危機が日本で起こるとは背筋が寒くなるが、これこそ政権与党が誇る経済スペシャリストたちの偽らざる分析なのである。
ところが、真紀子前外相更迭以来、クローズアップされがちなのが、小泉首相と抵抗勢力たちの“３点セット”をめぐる攻防戦。
確かに、狂牛病対策の不手際による武部農水相の進退問題は重要だが、抵抗勢力だけでなく公明党の神崎武法代表までもが農水相辞任を促しており、国民感情としても「農水相更迭は不可避」というのが大勢。にもかかわらず、頑に武部氏をかばい続ける首相の姿勢には首をかしげざるを得ないところ。
医療費３割負担の実施時期も、トップダウン型の政策決定を印象付けたい首相にとっては「来年４月実施」の方針が重要なのだろう。しかし、今年１０月からの高齢者医療の月額上限制廃止などで医療費全体が抑制されるため、「３割負担は必要なくなる」（自民党厚生族）といった意見もあり、坂口力厚相までが首相方針に異論を唱える始末。なぜ、この時期にこの問題の決着をつけなければいけないのか、はなはだ疑問が残るところ。
道路公団民営化のあり方などを検討する第３者機関の人選にしても、７日に自民党の古賀誠道路調査会長と党五役が「国会同意人事ではない」という首相の方針通りに合意した。だが、実は、古賀氏が５日時点で「政府から人選について事前に相談を受けるなら国会同意にこだわらない」との譲歩案を示しており、「古賀案に沿った手打ち」（与党幹部）といわれている。
要するに、この３点セットを見る限り、「本来なら大騒ぎしなくても良いことを、わざわざ官邸サイドの思惑で攻防戦に発展させている」（自民党中堅）と言っても過言ではなさそうなのだ。
経済ジャーナリストの藤丸佳秀氏も「３点セットで抵抗勢力と戦っているように演出しているようだが、あくまで改革の枝葉末節。それぞれは重要だが、危機的状況を迎えている日本経済の現状を“目くらまし”しているとしか思えない。まさに改革教の空念仏首相。このままでは、２、３月危機は避けられないだろう」と指摘し、こう話す。
「首相の日本経済に対する認識は甘すぎる。就任１カ月後ごろ、野党議員から『早く改革を進めないのか？』と聞かれて、首相は『そんなに慌てないでよ』と答弁していたが、市場関係者の多くはあの時点で失望した。本来は、早急に構造改革や経済政策を進めるべきだったがズルズル引き延ばした。だから、株価は一貫して下がり続けている」
日本の破局は一歩一歩、近づいているようだ。
ZAKZAK 2002/02/08
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。