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日本沈没!米国測地学会がすっぱ抜いた。「日本消滅の日迫る!?」 投稿者 小野寺 日時 2002 年 5 月 21 日 03:06:20:


海底開発KK所属の潜水艇操縦士小野寺俊夫は、海洋地質学の幸長助教授、地球物理の田所博士とともに
潜水艇「わだつみ」で日本海溝を調査していた。
実はこれに先立つこと数日前、鳥島近海のとある無人島が一夜にして沈んだ、という報告が入った。たまたま付近に
停泊していた漁船の話と総合すると、わずか二日半で160mも沈下したという。
この事件とちかごろ活動を増してきた富士火山帯の活動との関連を調べるのが今回の潜水の目的である。
小野寺の操縦する1万メートル級の潜水艇「わだつみ」は徐々に海底へと達しつつあった。
そして水深7000メートル、海底付近に達したとき三人は息を呑んだ。海溝に沿うようにまるで巨大な何かが這って言
ったような溝が何本も走っていたのだ。それだけではない、海水の塩分濃度はきわめて高く、海溝底に存在するはずの
ない密度飛躍層までも・・・。
小野寺は最後の照明弾を発した直後、本能的に危険を感じバラストを一気に放出したがその瞬間「わだつみ」は猛
烈な横殴りの流れに揉まれた。(地震か? まさかこんな海底で)
小野寺がそう思ったそのとき、最後の照明弾が外の光景を映し出した。「乱泥流だッ!」
田所が声を上ずらせながら叫んだ。海底乱泥流----それまで理論上唱えられていたが誰もまだその実物を見たものは
いない。急速に上昇していく「わだつみ」の中で三人は共通の思いを抱いた。
間違いない、日本海溝で大変なことが起こりつつある・・・。ではいったいそれは何なのか・・・。
東京のに戻った小野寺は本社の吉村部長に銀座の高級バーに飲みに誘われた。
意外なことに小野寺はそこで部長からお見合いの話を薦められる。相手は伊豆の資産家の令嬢・・・。
部長の話は暗に政略結婚を匂わせていたが、とりあえず小野寺は部長とともに伊豆に向かった。
玲子というその令嬢は奔放な女だった。彼女も今回の話が政略結婚だということは承知していた。
「わたし、セックスは猛烈に好きなんだけど、結婚したいって気が起こらないの。でもあなたは気にいったわ」
小野寺は玲子と浜辺に出かけ、そこで彼女を抱いた。
「もっと激しく抱いて」玲子がそういって小野寺にしがみついたとき、突然沖合いに電光が走った。
伊豆天城山が噴火したのである。
陸路が危険だと判断した小野寺は玲子のホバークラフトで一路東京へと飛ばした。
そのとき小野寺は彼宛の船舶電話を受けた。相手はあの田所博士である。
田所は天城の様子を二三聞いたあと、小野寺に相模湾の海底調査の結果を自分の研究所に持ってく
るよう伝えた。
この天城山の噴火の後、富士火山帯の活動は三原山、そして浅間山へと波及していった。
浅間山の噴火のとき、小野寺は田所博士の研究所にいた。
相模湾の海底調査結果を渡して帰りかけたとき、田所は重大な話があるといって小野寺を引き止めた。
------------「わだつみ」を今すぐにでも半年から一年長期チャーターしたい。
営業的に無理な話であった。外国の船を当たってみては、との小野寺の薦めにも白紙は首を横に振る。
「場合によっては日本の利益にかかわる。外国の船は借りたくないのだ」
一方、政府はこのところ相次ぐ地震、火山活動について学者を集めて意見会を開催した。
学会からは変人扱いされている田所だが、幸長の強い勧めもあって出席した。
しかし、ほかの学者は官僚的な当たり障りのない意見を述べるのに終始し、田所はいらだった。
「総理、為政者として相当の覚悟をしたほうがいい。場合によっては『日本がなくなって』しまうことも・・・」
この田所の言葉は他の出席者の失笑を誘ったが、数日後箱根のとある老人の耳に入ることになる。
この老人----渡老人は知る人ぞ知る日本の「黒幕」であった。
明治大正昭和・・・社会の闇を生き続けその一声で総理をも動かす。
ある日田所はこの老人にあるホテルに呼ばれた。もちろん彼はこの老人の正体は知る由もない。
老人は最近ツバメが来なくなったなど二三質問した後、科学者として一番大切なものは何か、と質問してきた。
「カンです」田所は即答した。
「おかしいとお思いになるかもしれませんが、科学者にとって一番大切なものはカンです。」
この問答の数日後、田所の研究所に一人の男が現れた。
フランスの深海艇「ケルマディック」を買い取って田所に貸し与えるという・・・。
呆然とする田所に、男は名刺を差し出した。「内閣・・・調査室・・・」
そのころ小野寺は大学時代の友人と京都で大文字を見ていた。
そのとき幸長から小野寺に電話がかかってきた。
「田所博士との調査の件で至急東京に・・・」
そう幸長が言いかけたとき猛然と地鳴りのようなものが聞こえたかと思うと、旅館のふすまが揺れだした。
小野寺は間一髪で机の下にもぐりこんだが、すでに彼の友人で動いてるものはいなかった。
死者4000名以上を記録した「京都大地震」である。
京都大地震のあと、小野寺の消息はしばらく掴めなかった。
しかし数日後海底開発KKに小野寺の辞表が送られてきた。
吉村部長は唖然とする。あまりにも彼らしくない行為だからだ。
ところが調べを進めるうち、小野寺はとある神戸の海洋会社に引き抜かれたということが分かってきた。
しかもなんとその背後には防衛庁がいるらしい。海底開発KKはその後も調査を続行したが「防衛機密」
に突き当たってしまい、うやむやになった。
一方、幸長助教授も大学を休職し、友人の中田、邦枝らとともに田所博士らに合流した。
彼らを巻き込むこの極秘プロジェクト「D-1計画」は「あれ」が・・・すなわち田所博士の頭の中にあるひとつの危惧・・・
「いつ」「どこで」「どの程度」「どのくらいの確率」で起こるのか、徹底的に調べる観測プロジェクトである。
そして、もし「あれ」が現実化し、国民の生命、財産をいかに安全に海外に逃避させるかというのを研究するのが
「D-2計画」となる。
政府も着々と影で布石を打ってくるようになった。
まず首相は教育論とも民族論とも受け取れる「海外雄飛」キャンペーンなるものを打ち出してきた。万が一のため
の心理的布石である。
その一方で、それを隠れ蓑にして国内の重要文化財の売却、外貨の買い付け、海外不動産・船舶の買い付け、
などが総合商社を通じて目立たぬように行われた。
D-1計画は次第にその規模を拡大せざるを得なくなった。
田所博士の危惧する「あれ」が起こる確率が刻一刻と高まってきたのである。
当初は「機密費」で賄われてきたD-1計画もそろそろそれも限界が近づいてきた。
そんなとき、あの渡老人が自己の所有する絵画コレクションを手放し、その資金をD-1計画に充てた、とい
う噂が流れてきた。
その一方で新たな問題も浮上してきた。「機密保持」である。いや、それより国内国外の学者たちが「あれ」
に気づくかもしれない。事実測地学審議会と気象庁が大々的な調査に乗り出してきている。
小野寺は久しぶりに東京で中田たちと飲んでいた。これから当分ケルマディックでの調査が続く。
その前にいったん自宅に帰り、いろいろと身の回りを片付けておこうというわけである。
帰り道、見覚えのある女性に出会う。確か彼女はマコといった。玲子と出会う前吉村部長と行った銀座のバ
ーのホステスである。二言三言話したあと、彼女とは別れたが、一瞬部長や玲子の顔が脳裏に浮かんでは消
えた。
自宅に帰ってみると、留守番電話に聞き覚えのある女性の声が入っていた。玲子だった。
玲子の父はあの地震で死んだという。最後に玲子は言った。「あなたと・・・もう一度寝たいわ・・・」
いよいよD-1計画が本格的に動き出した。ケルマディックの就航である。
田所、小野寺らD-1の主要メンバーはケルマディックを搭載した護衛艦「たかつき」で一路日本海溝を目指していた。
艦内にはあまり海洋学に詳しくない政府関係者も乗り込んでいることから、航海の途中で田所博士による講義、
そして「あれ」の全貌が明らかにされることになった。
まず田所は地球の内部構造について説明した。地殻、マントル、核の構成、そしてマントルは固体だが長期的に
見れば液体として振る舞い、それによって原始大陸が分裂し、今見るような世界ができた・・。
そして太平洋側からのマントル対流の下降部分の上部に上昇流が発生し、日本海と日本列島が誕生したことを気団の
前線とのアナロジーにより解説した。
つまり日本海側からの圧力と太平洋側からの圧力の均衡により今の日本列島があるわけだが、博士によると
太平洋側のマントル対流に急激な変化の兆候が見られるという。すなわち太平洋側の圧力の急激な減少・・・。
聞いているメンバーたちは静まり返っている・・・。誰かが重い口を開いた。
「博士、いったいどのような被害が出るのですか?」
「分からんッ!!」田所は一喝した。「それが分からんから今一生懸命調べとるんじゃないか!!」
博士は続ける、今起こっている地震や火山活動はその後に襲ってくる巨大な地殻変動に比べたらほんの序の口だと。
「地震に被害にかかわらず、最悪の場合・・・」
皆が唾を飲み込む音が聞こえた。
「最悪の場合・・・日本列島の大部分は海面下に沈む!」
艦内は凍りついた。ただ波の音、機械がカタカタとデータをはじき出す音だけが響いている。
そのときだった。「たかつき」が大きく傾いた。かなり長い時間傾いている。どうやら180度針路変更したようだ。
廊下で仕官の乾いた足音が聞こえ、ドアが勢いよく開かれた。
顔面蒼白の士官は手を震わせながら手に持っていた紙片を読み上げた。
「艦隊司令部より入電。関東地方に大地震発生! 震源地は東京湾沖30km マグニチュード8.5。本艦は針路変更し東京
に向かいます」
後世「第二次関東大震災」と呼ばれることになるこの大地震は史上最も悪条件の重なった地震でもあった。
地震発生は午後5時過ぎのラッシュアワー。潮位は満潮でしかも南風である。
死神は真っ先に東京駅、銀座、池袋、新宿、渋谷といった繁華街に広告塔、ビルのガラスを雨あられのように降り注
ぎ人々をなぎ倒した。高速道路では玉突き、炎上、橋脚は倒れ一般道路に「火の車」が降り注いだ。
都内のあちこちの道路でマンホールが耳を劈くような大音響を立てて吹っ飛び、炎上する車で完全に道路は麻痺。
地下鉄はさらに悲惨で、脱線・炎上した電車に河川の水が押し寄せ、ホームは有毒ガスが充満し無人地帯となった。
下町では、まさに数百箇所から同時に火の手が上がった。零細な化学工場が密集する地区などでは猛烈な有毒ガス
が発生。そして地震発生後数分で押し寄せてきた10メートル以上の津波によって港湾部の石油タンクなどが破壊され、
広範囲に可燃物を撒き散らし、都内東部はほぼ壊滅。
夜になると、皇居前に数万の避難民が押し寄せた。
めいめい負傷し、恐怖におののき声を震わせながら情報交換していた。
曰く、・・・・東京湾は火の海だってよ。
・・・・渋谷で山手線が脱線して・・・乗客みんな死んでるのにほったらかしだよ!
政府は戦後初の非常事態宣言を発表した。
後に発表される死者行方不明者は250万人だった。
翌日・・・首都東京に巨大な「休日」が訪れた。都内全人口の4分の1が住むところを失った。
それが起こったとき、D-1計画メンバーの安川は原宿にあるD-1計画本部の6階にいた。
猛烈な横揺れにビルは傾き、非常階段から下に下りようとしたとき余震がきて・・・。
それから先の記憶があまりない・・・。たしかそのときビルは倒れたような気がする。
安川はあてどもなく歩いた。意識は朦朧とし、自分が誰かであるかさえ定かではなくなってきた。
しかし安川は「あること」を考えていた。
今度の地震の被害から見てマスコミは一斉に「人災」だと報道するだろう。野党の追及も厳しくなる。
もし今の内閣が倒れたら・・・D計画は・・・。「まずい。・・・・・これはまずい・・・・・」
「たかつき」は東京湾にゆっくりと進入した。
前方に津波にやられたらしい漁船が漂流していた。生存者がいるらしい。
救命艇が派遣され、士官が生存者の状況を尋ねる。
「だめだ・・・。」隊員は首を横に振った。「狂ってるよ。」
甲板では田所博士がまだ燃えている東京湾を眺めていた。「序の口だ・・・。これはまだ序の口なんだ・・・。」
第二次関東大震災は世界中に大きく報じられた。
すぐさま世界各国から義捐金、援助物資、ボランティアが集まったが、一方ある種興味本位的野次馬的な見方もあった。
ある海外の新聞などは「トウキョウ、第二のヒロシマと化す」だの
「カミカゼ的経済発展を遂げてきたまるであの大和のようなトウキョウはついにギョクサイに終わった」など
センセーショナルな見出しを掲げた。
そんな中都内の某国大使館では、日本の新内閣のメンバーの分析が行われていた。
明敏なその大使は新内閣の陣容にある不審な点を見出していた。おかしい・・・。
震災直後の内閣である。真っ先に優先されるべき課題は国内治安の強化と復興であるべきではないか・・・。
しかしこの人事は・・・極端な「外交重視型」だ。
そう考えているとき調査官が耳打ちした。それによると、日本の対外投資のペースは震災直後一時的に落ち込んだが、
すぐに震災前のペースに戻ったという。しかも特に海外不動産の買い付けペースが増していると・・・。大使は舌打ちした。
いったい日本人はなにを考えているんだ・・・それとも何かが・・・日本で何か重大なことが起こりつつあるのか・・・。
そのころオーストラリア、キャンベラ市郊外の邸宅でオーストラリア首相と野崎と呼ばれる初老の日本人が対面していた。
首相はすでに「あれ」については聞かされていた。「まったく信じられんし、想像もできん話だ・・・。」
首相は考え込んだ。野崎と呼ばれる男は単刀直入に切り出した。
「今後2年以内で、できれば500万人受け入れていただきたい」
500万!首相は絶句した。オーストラリアにもうひとつの国ができてしまう。
苦悩する首相に野崎は部屋の隅から木箱を差し出した。
鎌倉初期の国宝級仏像である。首相は東洋古美術にたいへん造詣が深いことを彼は知っていた。
「これを閣下への贈り物に・・・」
東京のD-1計画本部では意外な事態が進行していた。田所博士が暴行で逮捕されたのである。
事の発端は、ある週刊誌に博士が情報をリークしたことに始まる。
「日本沈没の危機!? 海洋学権威田所博士の予言!」
その後博士はD-1本部を辞職。その後ワイドショーに出演し、T大教授と論戦、キチガイ扱いされ
その教授を殴ってしまった・・・というものである。
本部ではもちろん大騒ぎ、非難ごうごうだったが、一部のものは真相を理解していた。
D-1計画はもはや隠し通せるものではなくなりつつある・・・。誰かが「あれ」に感づくのも時間の問題であろう。
少しでも時間の優位を確保したい-----そのような状況で中田の発案により博士が"陽動作戦"を引き受けた
のである。
一方、小野寺は"母死ス"との電報を受け取り、郷里の関西に帰った。
葬儀の翌日、小野寺は兄から転職の相談を聞かされた。
兄のかかわるプロジェクトが地盤沈下の影響でまったく進展しないからだという・・・。
兄はカナダの石油地帯から仕事のオファーが来ていることを小野寺に告げた。
「それはいい! ぜひ家族と行ったほうがいい。しかもなるべく早いうちに・・・。じゃないと日本は・・・。」
小野寺はその先を兄にいえないのが悔しかった。その晩は兄と北新地で飲んだ。
帰り際イルミネーションが光り、サラリーマンやカップル、学生で繁華街はあふれていた。
小野寺は少し酔いながら心の奥で叫んだ。(みんな逃げろ! この国はもう少しで沈む! 今のうちにたくさん楽しむんだ!)
そのとき小野寺の目の前で声がした。「ずいぶん探したわ・・・」それは玲子だった。
防衛庁内のD-1計画本部の一室に最新鋭3Dディスプレイが設置された。
そこで現在まで総力を挙げて収集したデータをいちどすべて総合し、大シミュレーションが行われた。
結果は驚くべきものであった。フォッサマグナが裂け、東日本が東に押され、西日本が南に押されて流されていく。
この大変動が起こるのがあと10ヵ月後! そしてその後完全に日本が沈みきるのがあと15ヵ月後!垂直移動距離は
マイナス2キロ! この驚くべき結果は早速総理に報告された。
一方政府では臨時閣議が開かれ、日本沈没の一般公表が2週間後と決められた。
2週間後首相が国会で演説し、直後超党派内閣を結成、国民退避計画D-2が発動されることになった。
その2週間内に政府は円および国債の買い支え、船舶、航空機の確保、一般公表後の退避計画、配給計画の立案に
全力を傾ける。すでに経済界トップ、マスコミ関係者の一部には事態を明らかにし、彼らを抱きこんで「そのとき」に備えた。
だが、その4日後、巷間に不吉な噂があっという間に広まった。
東京でもう一度大きな地震があり、今度こそ徹底的に破壊される、と。
株式市場はその日から暴落、ついに一時取引が停止される事態に陥った。
それにくわえ、海外の学会、軍、政府の動きが急に活発になった。アメリカは3基の測地衛星を打ち上げ、
そのことごとくが日本上空を周回するものだった。
そしてついにその不安が的中した。発表予定の三日前、米国測地学会がすっぱ抜いた。「日本消滅の日迫る!?」
直ちに株式市場は再び取引停止となり、その日午後1時から首相の重大演説が国会で行われることになった。
そのとき地中深く富士山に噴火の兆候が顕著に現れてきた。D-1本部ではもはや時間の問題だと見積もっていた。
まもなく総理演説が始まろうとするとき、小野寺が荷物を抱えてD-1本部に現れた。
彼は玲子と婚約し、彼女とその日の午後成田を立ち、スイスへ向かうことになったのだ。
国会では演説が始まっていた。「・・・政府は国民の生命と財産を守り・・・・」
小野寺に後ろめたさはなかった。彼は公務員でもなんでもない、ただの潜水艇乗りだ。
それなのにD-1のため会社を捨て、なんら見返りがあるわけでもないのに今まで国のために尽くしてきた・・・。
D-1がひとつの区切りを迎えた今こそ国から見返りを受けるときであると・・・。
そんな彼の感傷は観測員の乾いた声で打ち消された。
「富士がいよいよ噴火します。宝永火口の三箇所で噴気が上がっています」
そのとき、窓ガラスがびりびり震えたかと思うと、ドゥーンドゥーンと大砲のような音が響いてきた。「はじまったな」
観測員はみんな屋上に昇って煙を吹く富士を眺めていた。小野寺はなぜだか悪い予感がしていた。
そのときその悪い予感を裏づけするかのように一本の電話がかかってきた。玲子から彼宛への電話だった。
彼女はそのとき真鶴道路にいた。前の日にスイス行きの最後の支度のために伊豆に帰っていたのだった。
「玲子!なんだってそんなところにいるんだ!」小野寺は絶叫した。
受話器の向こう側から途切れ途切れの玲子の声に混じってゴゥゴゥ地鳴りのような音が聞こえてきた。
「小野寺さん・・・あなた・・・だけでも先にスイスへ・・・熱い! 石が降って・・・ゴゴゴガガガ・・・」
気がつくと小野寺は荷物も持たずにしゃにむに外に飛び出していた。
首相の国会演説の真っ最中に起こった富士大爆発・・・最初の二回の爆発で頂上部は完全に吹き飛び、
東海道新幹線は転覆、高速道路も各所で寸断された。
そしてしばらくして第三回目の大爆発が起き、300メートルにわたって頂上部が吹っ飛び、富士は完全に真
っ二つに裂けてしまった。
この爆発に誘発され浅間、穂高も大爆発を起こし、富士火山帯はいっせいに火を噴き東西交通は海路と
空路のみになった。

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