アメリカ政府が少し反イスラエルに傾くと、奇遇にも大事件が起きる 田中宇

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投稿者 イスラエル関与説6 日時 2001 年 9 月 19 日 00:56:59:

回答先: 恐慌を克服する道が戦争しかないのは歴史の確実な法則 東海アマ地震予知 投稿者 イスラエル関与説5 日時 2001 年 9 月 18 日 19:37:31:

 ところが、それからわずか2週間、今ではブッシュ大統領自らが「敵方の要
人暗殺が必要だ」と言い出している。アメリカ政府が少し反イスラエルに傾く
と、奇遇にも大事件が起きて、アメリカは再びイスラエル側に引き戻された。
こうした「奇遇」があるゆえに、証拠がないにもかかわらず、今回の大規模テ
ロ事件に対して「イスラエル謀略説」が出るのだと思われる。この「奇遇」は、
イスラエルの宗教右派の人々からすれば、まさに「神の意志」であろう。

田中宇の国際ニュース解説 2001年9月18日 http://tanakanews.com/

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★「戦争」はアメリカをもっと不幸にする
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 私のウェブサイトには、アフガニスタンの首都カブールで撮った写真がはり
つけてある( http://tanakanews.com/a0529photo.htm )。

 爆撃で壊された繁華街、廃墟のようになった旧王宮の建物など、見るも無惨
な姿の町並みである。今後、9月11日の世界貿易センタービルなどへの大規
模テロ攻撃への報復として、アメリカ軍がカブールを空爆したとしたら、その
後でこの写真を見た人に「アメリカによって空爆を受けた後のカブールの姿で
す」と言えば、信じてもらえるだろう。

 しかし、私がこの写真を撮ったのは昨年5月のことだ。カブールは1990
年代前半、アフガンゲリラどうしの内戦が続いた際、首都の支配権をめぐって
戦う2派のゲリラ組織が、一派は市街地に、もう一派は近郊の山の上に陣取っ
て相互に攻撃しあった結果、町の半分以上の地域が、この写真にあるような廃
墟になってしまった。

 その後、1996年にイスラム軍政組織「タリバン」がこれらのゲリラ組織
を打ち破った後、タリバンの統治下でカブールは平穏に戻った(イスラム的な
服装の強要などが行われたが)。

 しかし、対米テロ組織とアメリカから名指しされたオサマ・ビンラディンを
タリバンがかくまっているため、国連は1999年にアメリカの圧力でアフガ
ニスタンに対する経済制裁を開始し、カブールの復興はほとんど進まないまま
止まっている。

▼アフガニスタンより失うものがはるかに大きいアメリカ

 アメリカは「テロリストをかくまう国の政府はテロリストと同罪だ」と言っ
ているので、米軍が大規模テロ事件に対する報復攻撃を行う場合、その対象に
カブールが含まれる可能性がある。しかしカブールは、アメリカの空爆を受け
たとしても、すでにそれ以前から廃墟状態である町並みが、これよりはるかに
無惨な姿になることはない。

 加えて言うなら、カブールには現在、何十万人かの人々が住んでいると思わ
れるが、それらの人々の多くは、一度は隣国パキスタンなどに避難して難民生
活をしたことがある人で、難民キャンプよりもカブールに戻った方が、収入な
どの面で少しは生活が楽になるかもしれないと考えて、戻ってきた人である。
つまり、カブールでの生活は、多くのカブール市民にとって、仮住まいのよう
な形になっている。

 彼らがカブールから避難する場合、200キロほど離れたパキスタンのペシ
ャワールに向かうことになるだろうが、カブールとペシャワールの間は、平時
から内戦国アフガニスタンにしてはかなりの交通量がある。カブール市民の多
くは、兄弟や親戚がアフガン難民の都市であるペシャワールにも住んでいて、
内戦の戦況を見ながら、両都市間を行き来しているからだ。

 米軍がカブールなどのアフガニスタン諸都市を攻撃すれば、一般市民が多く
死傷することは間違いない。だが、ソ連軍が侵攻してきた20年前からずっと
戦場であり続けたアフガニスタンは、さらなる攻撃を受けても、人々はペシャ
ワールに戻るだけで、新たに失うものが比較的少ないのも事実である。

 それに比べ、アメリカはどうだろう。9月11日のテロリストの一撃は、あ
らゆる分野に計り知れない衝撃を与えている。そして、犯行を行った組織は事
件後もアメリカ国内でひそかに力を温存している可能性がある。もし米軍がア
フガニスタンを攻撃し、その再報復として米国内に潜んでいるテロ組織が第2、
第3の攻撃を仕掛けたらどうなるか。

 アメリカの全国民が「星条旗」のもとに心を一つにして「自分たちがどんな
危険な目にあっても戦い抜く」という態度を続けたとしても、アメリカがその
ような国家総動員の戦争体制になると、世界からアメリカに集まっていた巨額
の資金は、アメリカが持つリスクが急に大きくなったことを嫌って海外に流出
し、アメリカの繁栄は失われてしまう。アフガニスタンに比べ、アメリカが失
うものはあまりに大きい。

▼イスラエルになったアメリカ

 もう一つ、私が事件後に感じているのは「アメリカはイスラエルのような国
になった」ということだ。事件の被害者を悼むニューヨークでの市民集会は、
イスラエルでパレスチナ人によるテロ事件が起きるたびにテルアビブなどで開
かれている市民集会と似た雰囲気を持っているように感じた。イスラエルでは
空港や街頭でのセキュリティチェックが非常に厳しいが、アメリカ国内のセキ
ュリティチェックも今後大幅に強化されることは間違いない。

 イスラエルは昨年、パレスチナ人に小さな自治国家を与えることに対して最
終的な踏ん切りがつかず、1993年のオスロ合意から続いていた中東和平交
渉を白紙にもどし、それをパレスチナ側のアラファト議長のせいにした(アメ
リカ政府もアラファト非難に回った)。

 それ以来、イスラエルではパレスチナ人の自爆テロが続いている。これに対
抗するため、イスラエル当局は今春以来、先手を打ってパレスチナ側の過激派
の要人を暗殺する軍事プロジェクトを進め、すでに何人かが殺害された。

 これに対してアメリカ政府上層部では「イスラエルはやりすぎだ。これでは
人権侵害だ」と主張する派閥と、「最後までイスラエルを支援すべきだ」と主
張する派閥とが分かれたが、そんな中で少しずつ反イスラエル派が優勢になっ
ていた。8月末にイスラエル軍がパレスチナ自治区内のベイト・ジャラ村に戦
車を入れて占領したとき、アメリカのパウエル国務長官はイスラエルに撤退す
るよう求め、イスラエルに対する圧力を強めた。

 ところが、それからわずか2週間、今ではブッシュ大統領自らが「敵方の要
人暗殺が必要だ」と言い出している。アメリカ政府が少し反イスラエルに傾く
と、奇遇にも大事件が起きて、アメリカは再びイスラエル側に引き戻された。
こうした「奇遇」があるゆえに、証拠がないにもかかわらず、今回の大規模テ
ロ事件に対して「イスラエル謀略説」が出るのだと思われる。この「奇遇」は、
イスラエルの宗教右派の人々からすれば、まさに「神の意志」であろう。

▼一気に盛り返した米タカ派

 米政府内では、副大統領のチェイニーが親イスラエルで、国務長官のパウエ
ルはアメリカがイスラエルと運命をともにすることに懸念を抱いていた。2人
は対中国政策をめぐっても対立していたが、中国とは経済関係が大切なので反
中国の政策は引っ込めるという結論になり、反中国の姿勢が強いチェイニーは、
ブッシュ政権内で外されたような格好になっていた。
http://tanakanews.com/b0807USJP.htm 参照
それが9月11日の大事件を境に、チェイニー流のタカ派政策が、一気に盛り
返してしまっている。

 アメリカがイスラエルのような国になったなら、今後考えられる変化として、
イスラエルと同様に「タカ派指導者」と「宗教極右」の台頭があり得るかもし
れない。

 アメリカではここ10年間、タカ派政治家はアメリカの経済的繁栄にリスク
をもたらすので歓迎されず、クリントンもブッシュも安定を重視する「中道派」
として選挙に勝っていた。ところが、今後「戦時体制」が続くと、イスラエル
のシャロン首相のようなタカ派政治家が、アメリカの政権を握る可能性が出て
くる。イスラエルのように国民感情の揺れを反映し、タカ派と中道派の指導者
が交互に登場する流れになるかもしれない。

 シャロンのような政治家は、人々に「経済発展を犠牲にしても国を守るため
には仕方がない」と思わせる仕掛けを作るので、警戒が必要だ。アメリカのタ
カ派勢力は、そのあたりの手法について、すでにイスラエルの政治家からいろ
いろアドバイスを受けている可能性もある。

 もう一つの「宗教極右」はイスラエルではユダヤ教極右であるが、アメリカ
ではキリスト教極右であろう。すでに昨年の大統領選挙の際、ブッシュの勝利
にアメリカのキリスト教右派がかなり協力したと指摘されている。アメリカで
キリスト教右派が台頭すれば「十字軍のときのようにエルサレムを守れ」とい
うような言い回しが頻出することになるが、すでにその傾向は表れている。

▼「文明の衝突」という「企画書」

 もう一つ、事件後に私が気になっているのは、一時ベストセラーになった
「文明の衝突」という本についてである。ハーバード大学のハンチントンとい
う学者が書き、1998年に出されたこの本は、西欧文明と、イスラム文明の
中東世界とが対立するようになるだろうと予測しており、今回の大規模テロ事
件の背景を先んじて説明したものとして、改めて注目されている。

 しかし、この世の中で「当たる予想」というものは、「見せかけ」であると
疑った方が良いことが多い。たとえば、新興宗教の教祖が「近々この世の終わ
りが来る」と予言(分析)し、その指摘通りの事態を起こすために大都市に毒
ガスをばらまくというシナリオは、日本人にとってはすでになじみのあるもの
だ。そう考えると「文明の衝突」に対しても疑問が湧いてくる。

 日本に対する分析が日本人から見て筋違いであることも手伝って、この本の
理論展開は粗雑だという批判があちこちから出ている。
(たとえば http://www.hum.u-tokai.ac.jp/~haruta/clash.html )

 この本の著者のハンチントン教授が大規模テロ事件の犯人だとは思えないが、
この本は「現状の分析から、将来起きることを予測する」というより、「将来
こんなことが起きたらアメリカのためになるのではないか」という提案書、企
画書ではないかと思われてくる。ハンチントン教授は、米ソ間の冷戦時にも
「アメリカは国を挙げてソ連と戦わねばならない」という主張を表明していた
タカ派であり、世界のどこか外部に「巨大な敵」を持つことがアメリカにとっ
てプラスになると考えているようだ。

 しかし冒頭に書いたとおり、カブールを空爆してもアメリカにとってマイナ
スにしかならないと思われる以上「文明の衝突」がアメリカに幸せをもたらす
とは思えない。


この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/b0918afghan.htm

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