米軍が日本に駐留し続けるのはなぜか Marine Corps Gazette 2000年11月号

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投稿者 dembo 日時 2001 年 9 月 27 日 23:09:57:

米軍が日本に駐留し続けるのはなぜか Marine Corps Gazette 2000年11月号

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http://www.billtotten.com/japanese/ow1/00486.html
From : ビル・トッテン
Subject : 米軍が日本に駐留し続けるのはなぜか
Number : OW486
Date : 2001年9月5日
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 今回は米国の海兵隊機関誌に掲載された、ロバート・ハミルトンの記事をお送りします。ロバート・ハミルトンは沖縄に2年間駐留した元海兵隊員であり、退役後の1993年からはNASAと日本の共同科学プロジェクトに加わり、1996〜1998年には米国科学財団の研究員として東京に駐在していました。ハミルトンはこの記事で、なぜ米軍が日本に駐留するのかについて、日米両国の視点から分析しています。是非、お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。

(ビル・トッテン)
米軍が日本に駐留し続けるのはなぜか
Marine Corps Gazette 2000年11月号
ロバート・ハミルトン

 過去1年間のMarine Corps Gazetteへの寄稿者の意見を見ると、日本駐留の米海兵隊について一様に楽観的な見方をしている。こうした楽観主義者は、やるべきことは比較的単純だと考えている。それは、海兵隊が「善き隣人」でありつつ、「前方展開」戦略の重要性を日本国民に説きさえすれば、結果として相互理解と協力が得られ、日米安保のパートナーシップは頑強で永続的なものになるだろう、というものである。

 それほど単純なら話は簡単だが、これから述べるように在日米軍は本誌が描くよりもはるかに複雑な問題を抱えている。具体的には「前方展開」の必要性を説くこと、また現在適用されている政策には、両国の防衛パートナーシップを傷つける経済的要因が含まれており、それは在日米軍全体の評判を貶めるおそれがあることだ。本稿では、米国側の議論にはあまり登場しない日本の視点から、この重要なパートナーシップに悪影響を及ぼしている費用負担の問題について論じる。狙いは、本誌読者に新たな視点を提供すること、および海兵隊にとって重要なこの問題に関して議論を活発にすることにある。

 興味深いことに、日本における軍事プレゼンスを正当化するため、前方展開という明確な戦術的理由に加え、米国政府は2つの戦略的理由を挙げてきた。その1つは、1940年代をモデルにした、国粋主義および拡張主義の日本を封じ込めなければならないというものである。アジアの近隣諸国はいまだに日本に不信感を抱いているという事実もあることから、昔のテレビドラマの、ビンに入った「かわいい魔女ジニー」よろしく、日本国民を閉じ込めるために、日本での軍事プレゼンスの継続が正当化されるというのが現代の米国人の考え方なのである。2つ目の理由は、アジアにおける民主主義の砦という1950〜1960年代の日本のモデルであり、アジアでの共産主義の台頭を抑えるのを助けるために、在日米軍のプレゼンスが不可欠だという考え方である。しかし、イデオロギーとしての共産主義が崩壊した現在、この2つ目の理論はほとんど使われなくなり、1980年代になると40年間使ってきたこれら2つのモデルだけでは、日本における米軍の駐留継続を正当化するのに不十分になった。その結果、それを補うために日米両政府合意による新しい米軍の存在理由が出始めたのである。その理由とは、経済的なもので、1992年7月13日、ブッシュ政権から議会に提出された戦略的枠組報告書には次のように記されている。
 「米軍の駐留費用のかなりの部分を日本が快く負担し、さらにはそれを増加させているのは、日本が日米安全保障パートナーシップを重視していることの明白な表れである。日本が費用負担してくれるために、米軍を日本に駐留させることは極めて経済的である。日本政府は円払いの駐留米軍費用のほとんどを負担することに合意している。日本は米軍の施設整備計画(ほぼすべての米軍施設の建設費をカバーする)、借地代、環境整備費、電気/ガス/水道代、人件費分担金をすべて負担している。加えて借地代や税金、高速道路代、関税の免除などを通じた、日本政府による間接的な負担もある。日本がこれだけ費用負担をしてくれているために、米国本土を含めて、日本は世界で最も米軍駐留費が安い場所となっている」

 現在、在日米軍45,000人に対し、日本の年間負担額は約50億ドルに上り、米軍駐留に対する費用負担という経済モデルを米国政府も評価している。例えば、2000年2月16日、当時のタルボット国務副長官は次のように語っている。「日米安全保障同盟に対し、両国がそれぞれ異なる貢献をしていることについて河野外務大臣と会談した。日本が提供する米軍基地および接受国支援はこの同盟にとって不可欠である。接受国支援は単なる予算項目ではなく、この同盟にとって重要な側面である」

 米国政府は、なぜ日本からの財政支援を重要と考えるのか。もっとも率直な回答を、フルフォード海兵隊大将が本誌1999年7月号に記している。「平和の恩恵が海兵隊に与えた最も大きな影響は、今や米国予算では172,200人の海兵隊員をすべて装備できなくなったことだ。1996年、沖縄の海兵隊施設を移設するには、75億ドル、また日本本土の第三海兵隊師団の移設費は20億ドルを超えると見積もられた。日本に駐留する海兵隊の移設地を探すことは、財政的に不可能である」

 こうした発言からも、経済的理由から日本に米軍を配置していることは明らかである。日本からの年間50億ドルの支援がなければ、米軍を日本に駐留させることはおろか、米国内に移設先を見つけることさえ財政的に不可能なのである。この状況は、ベルリンの壁の崩壊以降も、東ドイツにソ連軍が駐留し続けていたことを彷彿させる。現在の米国政府と同様の財政的理由で、ソ連赤軍は東ドイツに引き続き駐留することを正当化した。ソ連政府が帰還兵のための基地や住居を用意する資金がなかったために、ソ連軍は東ドイツを去ることができなかったのである。これは、貧しいソ連赤軍が居場所を求めて嘆願しているイメージを世界に与えた。同じように米軍が日本の資金に依存することは、似たような印象を与え、特に日本国民は、毎年50億ドルもの税金をなぜ在日米軍のために使わなければならないのかと疑問視するようになってきている。もちろん在日米軍は、東ドイツのソ連赤軍とはまったく異なる。1つには、米国は記録的な財政黒字を出しており、駐留費用など簡単に自己負担できるはずである。それではなぜ米国は日本での軍事プレゼンスと引き換えに援助を受け入れているのだろうか。

 費用負担の問題といっても、ここで中心となっているのは誰が何を支払うべきかという議論である。特に、在日米軍経費の日本負担に関する取り決めが2001年3月で期限切れとなり、日本政府がそれ以降は負担額を削減すると発表していたことである。これに対して米国政府はいかなる削減にも反対だとし、日本の50億ドル負担が日米同盟にとって不可欠であるとの考えを再度明確にした。

 駐留米軍に対する年間50億ドルの日本負担を、日米両政府がそれぞれ違った名称で呼んでいるのは興味深い。米国政府が「寛大な接受国支援」と呼んでいるのに対し、日本政府は「思いやり予算」と呼び、日本で勤務する兵士の苦労を少しでも軽減するのに必要なものを負担するための支払いであると印象付けている。しかし残念なことに、日本では評論家が「思いやり予算」の中味を取り上げ嘲笑の的にしていることから、日本ではこの言葉が流行のジョークにさえなっている。例えば、細川元首相は次のように語った。「日本は2000年度末まで、米軍で働く日本の民間人23,055人の人件費と、駐留米軍の電気/ガス/水道代を立て替えることになっている。日本人労働者には、ゴルフ場のマネージャーやスロットマシンの修理係、料理人が含まれている」

 細川の発言から読み取れるのは、思いやり予算が膨れ上がった贅沢予算であり、米国人のすべてのニーズを満たすために、過剰な日本人が雇われているという不満が日本国民の間に高まっており、スロットマシンの修理やゴルフ場の管理は日本の防衛と何の関係もないと日本人が感じているということだ。

 しかし、特定の予算科目に対する不満が真の問題なのではなく、スロットマシン修理係の人件費を削ったところで問題解決にはならない。真の問題は、日本における軍事プレゼンスを、日本からの資金援助を理由に正当化しているという点と、日本資金に依存することがマイナスの影響をもたらしているということである。日本の納税者は駐留費用を負担する代わりに、中味を吟味する権利を主張しているのである。細川元首相は、日本人の間に広まる見方を次のように説明している。「冷戦時の共通の脅威が消えた今、日本国民が日本における米軍プレゼンスに疑問を持つのは当然である。世論調査によれば、日本人の70%が日米同盟の維持を支持しているものの、在日米軍の規模の縮小を望んでいる。今日、日本の財政は危機的状況にあるにもかかわらず、日本政府は毎年、駐留米軍のために40億ドルを費やしている。さらに、政府所有の土地の賃貸料やその他の収入が免除されていることを考慮すれば、日本の接受国支援は合計で年間50億ドルにもなる。この負担額は、ドイツの6,000万ドル、韓国の2億9,000万ドルと比べて途方もなく重い」

 日本国民が米軍プレゼンスを一般に支持しているものの、不満に感じているのはこの点だ。こうした不満は日本政府の中にさえ見られ、財務省の官僚も、なぜ日本の納税者が駐留米軍施設の絨毯代や電気代まで負担しなければならないのかと公に疑問を示し始めた。残念なことに、このプロセスに関わっている力の強い財務官僚は、その多くが日米貿易交渉に携わった経験があり、日米安保関係はますます日米貿易摩擦の様相を呈してきた。今回は自動車や鉄鋼輸入に関する摩擦ではなく、日本に駐留する米軍がどれほどの価値を持つかが争点になっている。

 元細川首相の指摘に同調して日本側予算交渉担当官は、米軍基地の年間負担費が韓国は2億9,000万ドル、ドイツは6,000万ドルであるのに対し、なぜ日本だけが50億ドルも負担しなければならないのかと尋ねるだろう。「日本が独自に米軍に代わる軍隊を訓練および装備すれば日本政府の社会的、経済的負担は莫大なものになるため、年間50億ドルですめば安いものだ」というのが、おそらく米側の非公式の回答であろう。さらに米軍基地の交渉相手ならば、「45,000人の軍人が年間50億ドルで配備できるということは1人あたり10万ドル換算になり、世界最高の兵力を1人たった10万ドルで雇えると思えば安いものだ」とさえ述べるのではないだろうか。

 もちろんお金と引き換えに軍事サービスを提供しているという説明が公の場で聞かれることは決してないだろう。しかし米国政府は、年間50億ドルの日本からの支払いを日米同盟の重要な要素と捉える政策を明確に打ち出している。しかし、金銭的な支払いをパートナーシップ維持の楔とすれば、最悪の場合、貿易摩擦の対象となった自動車や鉄鋼のように、日本国民は在日米軍兵士を値引きの対象として物品のように捉えるようになるであろう。

 これに対して米国は、経済性は単なる周辺的要素に過ぎないと反論するであろう。日本に米軍を前方展開している真の理由はまったく歴史的なものであり、日本の再軍国化を防ぐことと、それを未だ恐れるアジアの近隣諸国をなだめることにある、という主張だ。さらに、日本における米軍プレゼンスの現在の理由を確実に理解するには、アジアの歴史とこの地域における対立関係を把握しなければならない。しかし、歴史に基づき日本をビンの中に封じ込めておくべきだとする考え方には、大きな問題が1つある。それは、在日米軍基地の費用負担をしている納税者である戦後日本人が、この考え方をまったく受け入れないことだ。現代の日本人は日本が密かな軍国主義者だと思ってはおらず、「日本封じ込め」がその理由であれば、税金を使って米軍を支援することに反対を唱える日本人が増えているのである。

 さらにもう1つの歴史的モデルである中国モデルによる説明がある。この説明の方が、日本政府の米軍プレゼンスの捉え方をよりうまく表しているかもしれない。このモデルでは、日本は米国という征服者からの指針を受け入れるだけの受動的な国ではなく、むしろ日本特有の外交政策を能動的に策定する国である。この解釈だと、日本が米軍を利用するのは、戦いと犠牲は外国の傭兵に押し付ける古来の中国モデルに則ったやり方ということになる。歴史家のバーバラ・タクマンは、「異邦人同士を戦わせるのは、中国政治の伝統的法則である」と記している。

 この法則に則って考えれば、なぜ日本政府がアジアに駐留する米軍に対して現実的政策をとるのかについて、よく聞かれる説明が理解できる。さらにこの外交政策には、1950年代の朝鮮戦争に日本が参戦せずして、戦争特需で潤った前例もある。戦後の日本の偉大な首相の1人、吉田茂は、朝鮮戦争により日本の産業が目覚しい発展を遂げたことから、この戦争を「天の恵み」と呼んだ。日本兵を戦場へ派遣して欲しいとの米国からの要求を当時の吉田首相はうまくかわし、その一方で米国からの戦争特需で日本国民の雇用と賃金は上昇したのだ。

 この日本流の「傭兵には傭兵を仕向ける」という朝鮮戦争中の戦略は、外交政策として大きな成功であり、この吉田首相が巧みにとったこの戦略は、中国の偉大な兵法家である孫子ですら是認しただろう。日本人の観点からすれば、在日米軍は、1950年代に吉田茂から始まった日本の外交政策、さらには異邦人による代理戦争という中国古来の一般的戦略の延長ともいえる。しかし問題は、この中国流の戦略に、米国政府自体が手放しで、かつ熱心に参加している点にある。

 では米軍駐留費の議論はその後、どうなったのだろうか。2000年9月11日、ニューヨークで開催された日米安全保障協議委員会(ツー・プラス・ツー)で、日米両政府は日本の接受国支援を現状のまま次の4年間、2006年3月まで維持することで合意した。日本の資金負担に関する唯一の変更は、比較的重要でない部分について行われ、基地外部における住居用電気/ガス/水道代、年間3,000万ドルを日本に代わって米国が負担し始める、というだけにとどまった。

 この最新の合意の結果、両国政府によって批准された内容は現状維持となった。すなわち、米軍駐留費用のかなりの部分を日本政府が支払い続けるということだ。現在の日米防衛パートナーシップの基盤は、1つには、資金に基づいたもの、つまりかなりの資金を日本が負担し、米国が防衛するというものであることが明らかになった。ここまでは、米国サービスの買い手である日本の動機について詳しく述べてきたが、売り手、すなわち米国の動機についてはどうだろう。残念なことに、それは明白なようである。1990年代のほとんどを通して、米国政府は米軍費用をすべてカバーできない予算を組む一方で、世界中において様々な使命を米軍に負わせてきた。国防省はつねに予算危機の状態の中、在日米軍を維持するために日本からの資金調達を画策してきた。国防総省の予算問題については周知の事実であるが、少なくとも米国の予算不足を埋める方法として、日本政府に米軍を「アウトソース」するような格好になっていることが、道義的に許されてよいのかを議論すべきではないだろうか。悲しいことに、クリントンが選挙運動で訴えたスローガン、「分からないのか、問題は経済だ」という言葉が示すように、経済優先の時代では、米軍のプレゼンスと日本の費用負担を結びつけるという道義的に間違った政策が、ほとんど何も問題視されずにまかり通っている。

 これを是正するために、米国政府は日本で米軍を支援するための日本の支払いをすべて拒否すべきである。米国人は世界のどこであろうが、米軍費用は自国で賄うべきである。しかし、現実的に考えると、米国政府には、この資金が両国の防衛パートナーシップに与える腐敗的な影響に目をつむってでも、日本に米軍プレゼンスを売り続けなければならない年間50億ドル分の理由があることも確かである。


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