テロリズムと非暴力 アルン・ガンジー

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投稿者 dembo 日時 2001 年 10 月 05 日 18:35:08:


テロリズムと非暴力

 

アルン・ガンジー

 
http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/ganji.html
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“絶望したときには、私は歴史において真理と愛の道がいつも勝利したことを思い出す。歴史の中には専制君主も殺人者もいて、しばらくの間は無敵のように見える。しかし最後には、彼らはいつも没落する。“(M.K. ガンジー)

 もっともなことですが、9月11日のニューヨークとワシントンDCの悲劇の後で、あの信じられないくらい非人間的な行為に対する適切な非暴力に基づく回答を求めて、たくさんの人が私に手紙をよこしたり、電話をかけてきたりしました。

 最初に私たちは、非暴力が平和の時には用いられ、危機の時には放棄される戦略ではないことを理解しなければなりません。非暴力は、私たち個人の態度に関することであり、私たちがこの世界で見たいと願っている変化に関することなのです。なぜなら、国民全体としての態度というものは一人一人の態度に基づいているからです。 非暴力は、すべての人々との間に、愛、哀れみ、尊敬、理解と感謝に基づく建設的な関係をつくりあげることです。

 非暴力は、また、他人を生まれによっては判断しません。殺人者は殺人者として生まれるわけでもなく、テロリストはテロリストして生まれるわけでありません。 人は、環境と人生の経験によって、殺人者にも泥棒にもテロリストにもなるのです。誤って人を殺してしまったり、あるいは故意に人を殺したりすることや盗みやテロは、この世からなくなら無いように見えます。 ある人がそれをしなかったとしても、他の人が取って代わるからです。われわれがするべきことは、そのような人々を生み出す環境と、どうしたらそのような環境をなくすることができるかを冷静に分析することです。そのような人々をうみだす環境ではなく、そのような人々自身にわれわれの努力を集中することは、暴力の問題を解決することにはなりません。 正義とは、報復ではなく改革を意味するのです。

 イラクでもパレスチナでも、他の諸国においても、ワールドトレードセンターやペンタゴンで起こった悲劇を喜ぶ人がいます。 そのことは当然のことながら私たちをぞっとさせました。しかし私たちも同じような事をしていることを忘れないようにしましょう。 イスラエルがパレスチナ人に対して爆弾を投下したとき、私たちは喜んだり、喜ばないまでもパレスチナ人に対して同情を表明することはしませんでした。 われわれの態度は、パレスチナ人は自業自得だというものでした。 パレスチナ人がイスラエルの人々に爆弾を投げつければ、われわれは立腹し、パレスチナ人は社会のくずであり、この世から抹殺すべきだと非難するというのに。

 私たちは、イラクの人々に爆弾が投下されたときにイラクの人々に対する同情を表明することはしませんでした。 テレビにくぎ付けになり、テレビによってつくられたかのようなドラマを見ている数百万の人々の中に私はいました。 数千人の無辜の男性、女性、子供たちが粉々になっているというのに、私たちは彼らに対して同情を表明する代わりに、軍の効率のよさに驚嘆していたのです。10年以上にわたって、私たちはイラクを滅茶苦茶にしてきました。ある評価によれば、私たちが強制している制裁によって、毎年5万人の子供たちが死亡しています。しかし、そのことは、私たちに同情を引き起こしてはいません。これらのことは、サダム・フセインという悪魔を退治するために必要だというわけです。

 私たちは、今度はオサマビン・ラディンというもう一つの悪魔を退治する準備を整えています。私たちは、悪魔の滞在を認めているという理由で、アフガニスタンの町々を爆撃することになるでしょう。千人の別のオサマビン・ラディンを生み出しながら。

 ある人は、「われわれは、世界がわれわれの力に敬意を払っている限り、世界がわれわれのことをどのように考えているかを気にすることはない。われわれは世界に存在する唯一のスーパーパワーだから、結局、われわれは世界を粉々にしてしまう手段を保有しているのだ。」というかもしれません。私は、学校で子供たちがガキ大将を「尊敬」するのと同じように他の国に「尊敬」されたいのか、と尋ねたいと思います。それが世界における私たちの役割でしょうか。もしガキ大将が私たちの目標であるというのならば、私たちは、校庭でガキ大将が直面したと同じような結果が起きることに備えなければなりません。一方、私たちは世界に対し「われわれのことをかまわないで置いてくれ」ということは出来ません。孤立主義というものは、世界の存在原理に反するものです。

 これらすべてのことは、「テロリズムに対し、われわれはどのように非暴力で対処すればよいか」という問題に私たちを引き戻すことになります。

 軍事的な対処の結果は、ばら色ではありません。数千の人々が、ここで、あるいはわれわれが攻撃する国で死ぬことになるでしょう。好戦性は急激に増大し、ついには私たちは次のような道徳的な、核心を突く質問に直面することになるでしょう。“われわれが世界の半分を破壊して、何を得られるだろうか。われわれは良心の曇りなしに暮らすことができるだろうか。”

 私たちは、アメリカが世界に怪物を作り出すのを手助けしていることを認めなければなりません。私たちは、無辜の人々を傷つけることなしに怪物たちを封じ込める方法を発見し、それから世界における私たちの役割を再定義しなければなりません。軍事力によって尊敬されるのではなく、道徳的な力により尊敬されるように私たちが変わらなければならないと思います。

 私たちは、私たちがパン屑を投げ与えることによってではなく、私たちが建設的な経済プログラムに参加することによって、世界の“他の半分”がよりよい生活をおくることができるよう援助することができる位置にいることを感謝しなければなりません。

 わが国の外交政策は、あまりにも長く“わが国にとって何がよいか”ということに基礎を置きすぎました。それは自己本位です。わが国の外交政策は、“世界にとって何がよいか“、世界がもっと平和になるための正しい方策をどのように遂行することができるか、ということに基礎を置くべきです。

 今回の、あるいは他のテロリストによって愛する者を失った方々には、私は貴方がたの悲しみとともにあるということを述べたいと思います。私は、貴方がたが今回のおろかな暴力の犠牲になられたことを誠に残念に思います。しかし、今回の悲しい事件が貴方がたの復讐心を燃え上がらせることの無いようにお願いいたします。なぜなら、いかなる暴力も人間の内心の平和をもたらさないからです。怒りと憎しみは、絶対にいけません。今回の事件や他の事件によって亡くなられたかたがの記憶は、私たちが許すことを学ぶことによって、よりよく保存され、意味あるものとなるのです。私たちの人生を、平和な、お互いに尊敬し理解しあう世界を創造するためにささげましょう。

 

アルン・ガンジー


(河内謙策訳)

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