中東最終大戦争のシナリオはこう動く!(河合洋一郎氏・プレイボーイ10/23号)

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投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 10 月 10 日 16:34:16:

中東最終大戦争のシナリオはこう動く!(河合洋一郎氏・プレイボーイ10/23号)

アメリカの中東政策崩壊でイスラエルがさらに孤立化。イラク・シリア・サウジを巻き込んで・・・・ビンラディンの反撃が始まった!

中東が非常に危険な状況に陥っている。サウジの反米化、パレスティナ問題の激化、そしてアメリカとイスラエルの間の微妙な軋轢・・・。今、中東の緊張状態は最高潮だ。この張り詰めたテンションがフセインの攻撃で破られたとき、中東は史上最悪の戦火に見舞われる。そして、そのXデーはすぐそこまできているのだ。

先週火曜日、ブッシュ政権はNATOに対して、ウサマ・ビンラディンが同時テロ事件に関与していた事実を示す決定的証拠を提出した。それがいかなる内容のものなのかは、この稿執筆時には明らかにされていないが、それがなんであるにせよ、いよいよアメリカによるアフガン攻撃が間近に追っているということだ。北部同盟もアフガニスタンの首都カブールに主力を集結しており、攻撃開始と同時にタリパンに大規模攻撃を仕掛ける準備を整えている。
パキスタンも攻撃に備えた動きを見せ始めた。先月末から始まった軍部内のパージである。マスコミでも報道されているように、パキスタンにはイスラム原理主義の一大勢力が存在する。特にアフガン国境沿いの地域はタリバンの勢力下にあると言ってもいいほどだ。ムシャラフ大統領はアメリカヘの軍事的支援を国民に発表したテレビ演説の中で、今、パキスタンは国家存亡の危機にあると述べたが、この言葉はパキスタン、におけるイスラム原理主義勢力の強大さを雄弁に物語っている。が、今の彼が直面している問題は民衆の蜂起よりも軍部内の造反である。軍、特にその情報部であるISIはイスラム原理主義組織と協力してタリバン支援を行なってきた。そのため軍部にもイスラム原理主義者たちが浸透しており、また、内戦勃発の危険性をはらむアフガン攻撃支援に反対する軍人たちも多数いる。ムシャラフ自身、参謀総長時代、軍を指揮してクーデターを起こし政権の座についた男だ。軍が離反する怖さを一番よく知っている。
アフガン攻撃開始後に予想される国内の騒乱に対処するためには軍をガッチリと握っていなければならない。そのためにムシャラフは反対派を一掃したのだ。対象となったのは少佐以上のオフィサーだが、少将クラスも含まれている。軍を追放されなかった者のなかでも大量の配置換えが行なわれ、反対派のカを分散した。それでもムシャラフとしては薄氷を踏む思いだろう。英BBCとのインタビューで吐いた、アメリカのアフガン攻撃はできるだけ短期間で終わらせてほしいという言葉が現在ムシャラフの置かれた状況が相当、切羽詰ったものであることを示している。
アメリカのアフガン攻撃はもういつ始まってもおかしくない段階に入っているが、対するビンラディン勢力もただ指をくわえて叩かれるのを待っているわけではない。各地で様々な不気味な動きが情報筋で確認されているのだ。そのなかでも注目すべきは、ビンラディンの右腕といわれるアイマン・ザワヒリがバルカン半島で活動する組織メンバーに戦闘準備を整えさせたことだ。ボスニア、コソボ、アルバニアなどには約6千名のアル・カイダの戦闘員がおり、ザワヒリの弟がその司令官を務めている。
彼らはこの地域の他のイスラム原理主義組織や麻薬マフィアと密接なつながりを持っており、5万人近い男たちを動員できると見られている。ザワヒリが何を狙っているのかは明白だ。アメリカのアフガン攻撃開始後、タイミングを見計らってバルカン半島でも戦端を開くことだ。また、プーチンから最後通牒を突きつけられたチェチェン・ゲリラたちが続々とウズベキスタンやカザフスタンなどの中央アジア諸国に移動し始めたという情報もある。彼らが現地のアル・カイダ組織と合流して、ウズベキスタンやタジキスタンのアメリカ軍がアフガン攻撃に使用する後方基地にゲリラ攻撃を任掛ければ、アメリカにとっては相当の脅威となるはずだ。
それにしても、アメリカは80年代、ソ連軍をアフガンから駆逐するためにイスラム原理主義者を支援してビンラディンを筆頭とする反米イスラム勢力を作り上げてしまったにもかかわらず、90年代にもミロシェビッチ打倒のためにバルカン半島で同じことをした。そして、再びバルカンの原理主義者たちがアメリカの前に立ちはだかろうとしている。アメリカには学習能力がまったくなかったのか、それとも他になんらかの意図があったのか、後世の歴史学者たちの研究テーマになることだろう。

●アフガンと中東、同時に開戦か?

前号で説明したサウジアラビアで起きた宮廷クーデターだが、その後の経緯を見ると、サウジのアメリカへの協力拒否をなんとか表沙汰にさせまいとするプッシュ政権と、権力を握ったアブドラ皇太子との激しい外交駆け引きが水面下で続いていることがわかる。両者の情報操作合戦だけ見ても非常に面白い。9月19日にファハド国王がジュネーブへ移動した情報を主要マスコミは一切報道しなかったが、これを抑えたのはアメリカだった。次に、9月末、サウジ政府がプリンス・スルタン基地の使用を許可したという情報が通信社経由で流れる。アメリカ情報筋によると、これをマスコミにリークしたのはスルタン国防相だった。ファハド同様、彼は親米派で、いわばアブドラ皇太子の敵対勢力なのだ。
続いて、駐米サウジアラビア大便のバンダル王子が記者会見で、まだ交渉中であるとしてその事実を否定。同時にファハドがジュネーブにいることを認め(最新情報では、一時帰国したとの説もある)、国王退位もあり得ると語る。
そして、先週にはサウジがアフガンを攻撃する戦闘機が基地から飛び立つのは認めないが、通信レーダー施設の使用は許可したという情報が流れる。これはアメリカ側の情報リークだった。これは一見、両者の交渉による妥協の産物のように見えるが、正式な発表ではない。結局、実権を掌握したアブドラの意思が反映されているのは、偽情報をリークして基地使用許可の既成事実を作ろうとした父親スルタンの尻拭いをさせられたバンダル王子の記者会見での言葉だけなのだ。
イスラム原理主義思想の持ち主であるアブドラが実権を掌握したことで、サウジが軍事的に協力する可能性はほぼゼロに近くなったと考えていい。なにしろアブドラほ96年に発生したサウジ国内のダーランの米軍施設爆弾テロ事件に関与していたという疑惑さえあるのだ。
とにかく、アブドラの実権掌握がアメリカの対テロ戦争の舵取りに及ぼした影響は少なくない。それはサダム・フセインがテロの容疑者として大きく後退したことからもわかる。ファハドが国外に出る前、アメリカは実行犯がイラク諜報部と接触していたなど、サダムが同時テロに関与していた可能性を示す情報をマスコミに流し始めていた。これはサダムも叩くべきであるとする国防総省の意見を反映したもので、アメリカがイラグ攻撃も視野に入れ始めたことを示していた。
だが、先月24日、プッシュ大統領は最初の攻撃はアフガニスタンのみに絞ると決定を下したのである。それと同時にイスラエルの軍情報部長官アモス・マルカが突然、異例の記者会見を行ない、イスラエルはイラクがテロに関与していた確証は持っていないと発言。イスラエル情報部は同時テロ勃発直後から背後にサダムがいたと言い続けてきたにもかかわらずにだ。
イラク攻撃にはトルコとサウジの空軍基地が使用できることが絶対条件だが、その片翼がもがれてしまってはアメリカは攻撃を見合わせるしかない。タイミングから考えて、マルカの記者会見はアメリカからの要請によるものだったはずだ。サウジで宮廷クーデターが起きたことでアメリカの動揺が最も顕著に表れたのは、プッシュ大統領が対テロ支援国リストに載っているシリアやイランなどの国に軍事支援が可能かどうか議会に打診したことだろう。
これは、反テロ連合にアラブ諸国を引き込もうとしているパウエル国務長官のアドバイスによるもので、結局、打診だけに終わった。しかし、対テロ支援国に軍事援助してまで協力を得ようとするアイデアが出てくること自体、テロリストに大鉄槌を加えようと拳を振り上げたアメリカが複雑怪奇な中東情勢の泥沼にはまり込みつつあることを示している。
この状況に最も危機感を抱いているのはイスラエルであるのは言うまでもない。同時テロが発生した当初、事件によって最も利益を得たのはイスラエルだという見方が強かった。それまでアメリカはイスラエル側の立場で中東和平を推し進めながらも、自爆テロを仕掛けてくるパレスチナ側に対してイスラエルがパレスチナ自泊区の再占領といった強硬手段に出ることを抑えていた。それが、やられたテロの規模に違いがあるにせよ、アメリカは武力報復を断固として誓ったのだ。そのアメリカがイスラエルに、お前たちだけガマンしろと言えるわけがない。
また、中東地域やイスラム原理主義勢力に対する情報収集能力はイスラエルのモサドが群を抜いており、アメリカの対テロ戦争にはモサドの諜報能力が欠かせない。つまり、イスラエルは今後、アメリカと一致協力してなんの制約もなしにイスラム過激派と戦いを交えることができるようになるはずだった。
が、状況はまったく逆の方向に進み始める。すでに述べたように、ブッシュ政権は反テロ連合にアラブ諸国を加えようとし始めたからだ。イスラエルが軍事的に対テロ戦争に参加すればアラブ諸国の協力は絶対に得られない。現にエジプトや湾岸諸国といった穏健派でさえ対テロ戦争は支援するが、軍事的な支援はできない、特にイスラエルと闘争している組織や国に対する攻撃には絶対に自国の領土は使わせないと言明しているのだ。
アメリカが対テロ戦争を宣言した直後、イスラエルのシャロン首相は、今度は湾岸戦争の時のようなことは絶対に起こらないと叫んだ。これは、イスラエルがアメリカの圧力でサダムのスカッド・ミサイル攻撃を反撃もせずに甘んじて受け続けたことを言っているのだ。しかし、すでにイスラエルは同じ状況に追い詰められつつある。アメリカが、アラブ諸国の参加する反テロ連合結成のネックとなっているパレスチナ和平を実現させるために強引に動き始めたからだ。
だが、アメリカのプレッシャーでやっと実用した9月26日のペレス外相とアラファトの停戦交渉は、インティファーダ1周年と重なったこともあって、より過激な対イスラエル・テロをもたらしただけだった。ハマス、イズラミック・ジハード、またPLO内部の過激派はイスラエルと和平を結ぷ気はまったくないということだ。このペレス・アラファト会談は、両者の報復の連鎖を断ち切り、停戦を実現させる最後の手段として8月から予定されていたものだ。しかし、それが完全な失敗に終わった今、イスラエルが問題を解決する唯一の手段はPA自治区の再占領しかない。だが、それをやってしまえばアラブ諸国の態度はさらに硬化し、アメリカのもくろみは崩れる。ブッシュは湾岸戦争の時に父親がしたように、イスラエルの報復攻撃を絶対に許さないはずだ。
イスーラム原理主義勢力はすでにそれを見抜いている。アメリカのアフガン攻撃と同時にシリアとイランの支配下にあるヒズボラなどとともにパレスチナ過激派が一気に攻撃を仕掛けてくる可能性は十分ある。そして、その時、サダムがミサイル攻撃で自らをパレスチナ問題にリンケージしてきたら・・・。
イスラエルはアメリカの報復攻撃のもたらす影響に備えて先月20日より戦時体制に入った。病院は負傷者の受け入れ準備を整え、戦略物資は地下のシェルターに移されつつある。アローやパトリオットといった迎撃ミサイルは最高警戒体制にある。
今度は湾岸戦争の時のようなことは起こらない・・・このシャロンの言葉が現実となった時、対テロ戦争の本格的なゴングが鳴るのである。

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