「アフガン紛争:『自由と正義』とは誰の自由と正義か?」

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投稿者 いがらし 日時 2001 年 10 月 12 日 23:19:01:

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 Political Affairs E-Mail Edition
 13/10/11 第107号

 Web Edition
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 「アフガン紛争:『自由と正義』とは誰の自由と正義か?」


 英米軍から防空施設やレーダー、デポ等への連日の空爆を受けている
タリバン政権は、地上ではロシアから銃火器や弾薬、戦車や装甲車等の軍事
援助を受けた北部同盟の攻勢に喘いでいる。
 自軍の損害を可能な限りゼロに近付けたい英米は、北部同盟を露払いに
使う事で容易くタリバン政権を滅ぼそうとしている。一方北部同盟は、英米
軍に空爆と言う露払いをして貰う事で異民族主体の政権を打倒し、名実共に
正当なアフガニスタンの支配者になろうと考えている。今の所は利害が一致
しているので彼らは協力している。

 ところで、そもそものアメリカの目的は、反米テロリストの絶滅であった。
タリバン政権を倒す事でそれは実現するだろうか? 仮に新政権がアメリカ
に従順であると想定しても、答えは否である。タリバン政権を潰すだけでは
逆に、怒りに燃えてテロへの道に向かう人々を増やすだけだ。彼らは新政権が
出来れば「反体制派」となり、単なるテロ組織ではない、ある意味で政治的
に正当な武装組織となるだろう。

 そしてこういう事は、アメリカにも判っている筈である。それではアメリカ
は、タリバン政権打倒後に何をするだろうか?
 もっとも可能性が高いのは、アメリカがこれまでに世界各地で行なってきた
戦略である。つまり、新政権の反体制派との戦いを、様々な方法で支援する
のである。具体的には、警察軍、治安警察、秘密警察といったものに装備と
設備を与え、特別の訓練を施し、反体制派を弾圧する術を伝授するのだ。
 こうなるとアメリカや日本政府が盛んに唱えている自由や正義など御題目
以外の何ものでもなくなってくる。同時に、アフガン反体制派の政治的正当
性も高まるだろう。このようにしてアメリカは反米に燃える人々を自ら作り
出す事になろう。アメリカがグローバリズムを放棄するまで、この憎しみの
再生産は延々と続き、多くの血が流れる事だろう。


 欧米のマスコミはタリバン側の蛮行を盛んに宣伝する一方、北部同盟の残虐
行為については口数が少ない。しかし現実には、北部同盟によって略奪や非人
道的な処刑、難民の虐殺が以前から行われている。もし北部同盟がアフガン
全土を支配するようになれば、パシュトゥン人は大規模な迫害に晒される事に
なる可能性が高い。
 そもそもタリバンとは、現在の北部同盟を構成する軍閥による暴虐に耐えか
ねた人々がイスラム法学者達に率いられて活動を開始した組織である。当時は
幼女から老女に到るまで、女性が家の外に出ればレイプされ、また女だけでなく
男も白昼堂々レイプされるほど治安が悪かった(タリバンの宗教指導者ムハマド・
オマルが仲間を率いて決起する引き金になったのが、軍閥の検問所で幼い少年
達が繰り返しレイプされた事件である。決起したタリバンは、この軍閥の兵士
達を戦車の砲身から吊り下げた)。また、レイプした女性の目を刳り貫く、
虐殺する、などの残虐行為も横行していた。タリバンが犯罪には過酷な刑罰を
科し、とりわけ女性の活動にとって厳しい戒律を布告しているのにはこのような
背景がある。(とはいえ、タリバン政権下でも犯罪や民族間闘争は存在する)

 日本人の尺度では、タリバンの厳格な戒律は異常に見えるかもしれないが、
だからといってタリバンを倒せばアフガニスタンが素晴らしい国になるなど
と短絡的に考えるべきではない。そもそも今回の武力行使の目的であった、
国際テロの絶滅(国際問題)とタリバンの人権問題(国内問題)とは、本来
全くの別問題である事を認識しておかねばならない。国際問題解決の手段と
しての戦争はさておき、他国の国内問題解決の為の戦争は、原則として行う
べきではないのである。


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