国会の「事前承認」にばかり固執する主張は、「21世紀の平和と日本の役割」という大問題をかえって見えにくくするもの

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投稿者 DC 日時 2001 年 10 月 27 日 00:23:12:

http://www.mainichi.co.jp/eye/kishanome/200110/26.html

対テロ法案と自衛隊派遣 「国会承認」の不確かさ
山田孝男(政治部) 


 ◇文民統制に遠い抽象論

 世界中どこへでも自衛隊を派遣できるようにするテロ対策支援法案なのだから、派遣の是非を決め
る時は国会の「事前承認」を条件とせよ――という主張は一見もっともであるが、よく考えてみると、深刻
な矛盾をはらんでいると思う。

 つまり、こういうことだ。国民がつねづね民意を正しく反映していないと不満を感じているような国会、しょ
せん駆け引きの場でしかないと観念しているような国会が、いざとなれば党利党略を離れ、速やかに公
正な判断をくだすなどというお伽(とぎ)ばなしを信じられるか。私には信じられない。

 そういう前提を無視して国会の「事前承認」にばかり固執する主張は、「21世紀の平和と日本の役割」
という大問題をかえって見えにくくするものであり、「文民統制(シビリアンコントロール)」のタテマエにとじ
こもって国会戦術にふける怠慢ではないかというのが私の疑問である。

 「事前承認」かどうかという手続き論ばかり目立ったのは、より本質的な議論が封じられたからである。
憲法問題で答弁に立った小泉純一郎首相は、自衛隊の活動範囲は「無限定」だし、武器使用基準は「常
識で判断」すればよく、「あいまいで答弁に窮する」けれども「神学論争はやめましょう」――とやった。

 粗雑、軽々しい、と評判は散々だったが、新法の早期成立が対米公約であり、「憲法解釈は変えない」
という方針で臨んだ以上、やむをえなかったという事情はわかる。国会の憲法論議は以前よりもかなり成
熟してきており、憲法解釈の変更を大胆に提起してほしかったという気がするが、論議の長期化と混乱と
いうリスクをどうするのかと問われれば、私も迷う。

 ともあれ、こうして封じ込められてしまったのは憲法論だけではない。外交論またしかり、である。

 民主党の菅直人幹事長が「日本は何もやっていないという強迫観念にかられて米軍支援に走るのでは
なく、定常的支援を(米国に)アピールしたらどうか」と迫り、首相が「強迫観念なんかにとらわれていな
い。主体的に考えている」とムキになる一幕(4日、衆院予算委)があった。

 菅氏の言う「定常的支援」とは在日米軍基地のことだ。遠く中東をにらむ出撃基地として、日本は第7艦
隊に横須賀、第5空軍に横田、沖縄を提供している。そしてこのこと自体、外国から見れば(日本国憲法
のタテマエ上は禁じられている)「集団的自衛権の行使」にあたるというのが、専門家の一致した見解で
ある。

 「強迫観念」問答のおもしろさは、菅氏が投げつけた言葉に小泉首相が過剰反応を起こしているところ
にある。首相はなぜムキになったのか。以下は私の想像である。

 米同時多発テロ事件への対応策とりまとめで首相は奮闘したが、「湾岸戦争コンプレックス」に引きずら
れ、自衛隊派遣の一本調子に流れ過ぎたかもしれないという反省が、おそらく首相自身の内に芽生えて
いた。そこを不意に突かれたのでムカッときた――ということではなかったか。

 一方、菅氏の方も全体としては首相の対応を評価しているから、深追いしない。外交交渉の巧拙という
機微に触れた鋭い切り込みだったが、残念ながら、日本外交のフリーハンドを探る議論にまで発展しなか
った。

 議論は不完全燃焼だったが、国際テロ対策に自衛隊を活用する枠組みとしての新法を私は支持する。
自衛隊の活動に歯止めが必要だという意見も支持するが、歯止めは国会の「事前承認」だという主張は
疑う。不確かな前提に基づく観念的な議論だし、まして「緊急時は事後承認でよい」という妥協案を抱えて
裏折衝が進むという不誠実さに我慢がならない。

 抽象論が横行した国会論戦の中で、例外的に具体的な情報の充実を感じさせたのが、アフガニスタン
でレスリングを指導した経験をもつ松浪健四郎議員(保守党)の質問(11日、衆院特別委)と、現地で医
療活動を続けている中村哲氏の参考人意見陳述(13日、同)だった。新法の評価は松浪氏が賛成、中
村氏が反対と180度異なるが、両氏の話から浮かび上がったものは、アフガニスタン、パキスタンでの自
衛隊の活動はきわめて困難だという現実である。

 有効な文民統制とは、こうした情報が広く国民に共有され、自衛隊派遣の目的と効果が常に意識され
ているということ以外にないだろう。


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