米国に厭戦気分が蔓延の兆し

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投稿者 転載 日時 2001 年 11 月 05 日 20:00:12:

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   宮崎正弘の国際ニュース・早読み
        平成13年(2001)11月2日
           通巻 224号  
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◆ ☆このWEBニュースはほぼ日刊。転送自由
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     アフガンの嵐、イスラムの風
       米国に厭戦気分が蔓延の兆し
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 このところ米国のムードがあやしい。心理的に弱気が目立ち、とくに炭疽菌テロが拡大してからというものは、犯人の断定もできず、「9月11日事件」への復讐心が希釈されて、むしろ厭戦気分がマスコミ、知識人の間に静かに広がっている。 
 あのテロから二ヶ月。空爆開始から一ヶ月近いのにさしたる成果が上がっていない。
 政権にとっては「イヤな兆し」である。
 昨日付けのニューヨークタイムズなどは「米国はこの戦争に勝てるのか?」等と言い出すコラムを公然と掲げ始めた。緒戦のときの勇壮な論調はすっかり陰を潜める。

☆ タリバン逆転勝利の可能性はないにしても。。。

 筆者がたびたび指摘してように「タリバン逆転勝利」の可能性はなくとも「タリバンが負けない」シナリオは起こりうる。
 それは報道されているような「効果がなかなかつかめない空爆」「北部同盟の意外なもろさ」「ビンラディーンの隠れ家がまだ掴めない」等のもどかしさが醸成する作戦上の物理的遅れや苛立ちから直接に来ている感情や心理ではない。

 戦場が二つある、というベトナム戦争の教訓は、どうやらまた反古となりそうである。
 自由世界では、自国における最大の敵は「国内のテレビ」なのである。
 ベトナム戦争の敗北原因は米国国内のメディアが「反戦活動家」と称するロシアの代理人たちによって操作され、厭戦気分を蔓延させて議会を「反戦」の場と化してしまったからだ。
 大統領から権限を奪い取り、これから戦いに赴こうという自国の兵士を後ろから羽交い締めにしたのである。

 湾岸戦争でも「粉ミルクがない」「民間の医療がない」などとCNNが盛んにイラク側のプロパガンダに利用された。
ブッシュ(父親)政権は空爆を四日間で打ち止めにせざるを得なかった。
 サダム・フセインに決定的な致命傷を与えられずに「停戦」に持ち込まざるをえなかったのも、国内のテレビが、いつ反戦に転化するか不明確であったからだ。

 今回もユダヤ系が強いリベラル派のメディアをふくめ、すでに同じパターンが始まっている。ライス大統領安全保障担当補佐官はラディーンの宣伝にあたる「ジハード宣言」を繰り返して報じた米国のテレビをたしなめ、放映を自粛するよう要請した位だった。
タリバンが演技する「民間居住区」「ミルク工場」「病院」などを外国記者に撮影させる。あるいは「演劇部員」が「反米」を叫ぶ場面。
 米国の国民を不利にする、あるいはパニックに陥れるような報道を戦争中にも放任するというのは米国の最大のアキレス腱(日本はそれ以下だが、ここでは論じない)である。
 報道管制を敷けないばかりか、敵に自国のマスコミが利用されているのに、彼らは「反戦思想」に汚染されているから、政府の介入に「反対」する。(第二次大戦中なら炭疽菌テロなどは厳重に完成を受け、絶対に報道されることはなかっただろう)。
 まして速報を使命とするテレビは拙速があたりまえ。締め切り直前の画像を検証もしないで放映するくせを、「彼ら」の方が知悉し、そのアキレス腱を突いている。

  ☆テレビ画面が軍事作戦に悪影響

このことが次に軍に何を及ぼすか?
 軍の作戦が「テレビ向け」に収斂され、戦争現場での物理的損害は殆どないという戦闘パターンが繰り返される。
先週に放映された地上戦の一こまは「資料映像」で、特殊部隊は匍匐していなかった。地上部隊は本当にアフガニスタン国内の奥深くにいるのか、テレビ向けのフィルムだけなのか。
つまり軍もまた「操作」に懸命なのだ。
 加えて軍は戦争を長引かせるときが有利と判断すれば、そういう作戦をとり、「誇大な報告を行うのは常、これが軍の体質です」(軍事アナリスト)、短期に収束させようと思えばテレビ向けにそういう場面を流させようとするだろう。
 こうなるとペンタゴンの上層部へ報告されている「戦果」をどこまで信頼するべきか?
 かなり深刻な状況が近く起きるだろう。

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と考えてきたところへ、とうとう象徴的な「事件」が起きた。
10月26日にアフガニスタン潜入に失敗し、息子とともに処刑されたアブドル・ハク(パシュトーンの指導者、元国王にも近い)を米軍が庇護できなかったという大失態だ。
 これはアフガン戦争の「これから」を幾重にも、深刻に残酷に、鮮明に象徴してあまりある。
 第一にハクは100名から200名の「護衛部隊」つきで、その中には数人のアメリカ兵が混じっていたのに、中から裏切りがでて、簡単に包囲され、拘束された。
 第二に「米軍ヘリ」が上空を警護していたにもかかわらず、包囲されても「適切な」反撃作戦を展開できなかった。これはパキスタンを事実上、米軍の基地として効果的に利用できていないからである。
 第三にハクはパキスタンのペシャワールから出発したらしいが、要するにペシャワールはタリバンの「志願兵」の集積地であるばかりか、反米、親タリバン色に染まったシンパ、「スパイ」、裏切り、一発屋、武器ブローカー、懸賞金狙いなどの有象無象、魑魅魍魎が盤踞する「無法地帯」であることが、この事件は図らずも露呈されたのである。
 第四にハクは米ドルを相当額、アッタシュケースに入れて「裏切り」を奨励し、タリバンの結束を分裂させる工作をするはずだった。この重要な軍資金もタリバンに亘り、彼らの武器購入などの戦費に回されるだろう。

 タリバンへの継続的な武器搬送はパキスタンに「無法地帯」が存在しており、この箇所へパキスタンが手を出せない。なにしろパキスタン軍の四割はパシュトーン系であり、反米感情が強い。
彼らは政府の方針に逆らってでも米軍に協力をしないであろう。
このような状況が続く限り、昔の「ホーチミン・ルート」と同様にパキスタン国境からカンダハルへの「兵站ルート」は機能し続けるだろう。

 従って、米軍は作戦の根底的な見直しを迫られているのである。
 パキスタンの四カ所の基地利用は「時間的リミット」が近い。つまりこの基地を守る事態が発生するのは時間の問題であり、新しい兵力がパキスタンに必要である。かといって駐留米軍の主力を印度へ移せば、印度・パキスタン紛争が再燃してしまうだろう。
 北部同盟を最初から猜疑心で見てきた米国は、この一週間の空爆支援でも「北部同盟」が何ほどの「前進」を示せなかったことに改めて落胆した。彼らもまたロシアからの武器だけではタリバンに勝てないことは明白、かといって米軍はハイテク兵器を「北部同盟」には渡さないであろう。

猜疑心が工作し、偽情報が飛び交い、便宜上の呉越同舟のディレンマが、整合された軍事作戦の展開を不可能にしている。
 ここに米国内の厭戦感情が倍加して加われば、「第二のベトナム化」という悪夢にブッシュ政権は直面することになる。


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