前線ではタリバンが優勢だ!「米国発ニュース」では分からない「戦争の真相」(週刊ポスト)

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投稿者 いがらし 日時 2001 年 11 月 06 日 22:05:39:

週刊ポスト11月16日号
「米国発ニュース」では分からない「戦争の真相」
前線ではタリバンが優勢だ!

●本誌特派 マルクス・ベンスマン(ジャーナリスト)
●協力 グレッグ・デービス(IPJ)

タリバン分裂工作の手痛い失敗

 冬が近付き、タリバン勢力へのアメリカ軍の攻撃は激しさを増している。
 数日前から、ジャマリー台地の唯一のアスファルト道では、アメリカ軍の軍事
顧問たちを乗せたジープが頻繁に見られるようになった。ジープは、パンジシー
ル渓谷の出入り口に位置するジャバルサラシュの北部同盟総司令部と、前線都市
・チャリカルとの間を往復しているのだ。
 実は、アメリカ軍の軍事顧問たちの存在は、パンジシール渓谷に何百人も集まっ
ている報道関係者には隠蔽されている。しかし、その姿は至る所で見かけられ、
彼らはカブール前線部のタリバン陣地への空爆を指揮している。
 アメリカ軍の空爆が始まってから既に4週間になろうとしている。最近では、
タリバン前線陣地に執拗な爆撃が繰り返されているが、それでもタリバン勢力は
まだ衰えていないのが現状だ。北部同盟部隊は、アメリカ軍の後押しにもかかわ
らす、カブールやターロカーン、マザーリ・シャリーフなどの前線で、いまだ決
定的に有利な状況を作り出すには至っていない。
 例えば、北部同盟のウズベク民族系アフガン人であるラシド・ドスタム将軍は、
アフガン北部の拠点都市マザーリ・シャリーフの奪還を目指してタリバン側と戦
闘を繰り広げてきたが、現在は戦いを中断せざるを得なくなっている。弾薬が尽
きてしまったというのである。ドスタム将軍は、山岳地帯で戦っている限り、タ
リバンと互角の勝負ができる。しかし、平野部では戦車や大砲を中心としたタリ
バン勢力の火力の前に歯が立たないのが現状だ。
 タリバンは、空爆によって壊滅的打撃を受けたわけではないし、アフガン国内
での諜報能力も衰えていない。それを如実に証明したのが、反タリバン勢力のパ
シュトゥーン系有力指導者だったアブドゥル・ハクの処刑だろう。
 旧ソ連と戦ったムジャヒディン(神の戦士)で、ゲリラ戦の勇士として知られ
たハクは、CIAの協力を得て、10月21日前後に50人の部下を引き連れて
パキスタンからアフガニスタンへと入った。同じパシュトゥーン系のアフガン部
族指導者たちと人脈があったことから、彼らを扇動して、タリバンの内部分裂工
作を目論んだのだった。
 しかし、アフガン潜入直後からタリバン側の執拗な追跡を受け、拘束され、処
刑された。タリバンに包囲されたハクから衛星電話で助けを求められたアメリカ
軍は、空爆で支援しようとしたが、結果的には救出は果たせなかった。
 北部同盟が有利に立てないでいるのは、9月9日に暗殺された最高指導者アフ
マド・マスードに代わる指導者が現れていないことも一因だ。
 旧ソ連軍のアフガン侵攻の際(79年)、ムジャヒディンたちを率いて戦い、
“パンジャールの獅子”と勇名をとどろかせたマスードは、どんな困難な状況か
らでも配下の兵士を勝利に導いてきた。わたし自身、何度もマスードの姿を目に
してきたが、そのたびに彼の存在が兵士の士気を高めていると実感させられた。
 現在、マスードの後任に就いているのは、前政権時代、諜報機関の長官だった
モハメド・ファヒーム司令官だが、そのカリスマ性はマスードに遠く及ばない。
北部同盟の将軍たちも、「ファヒームは秘密諜報機関の長としては優れていたか
もしれないが、第2のマスードではない」と、こぞって認めるところだ。

自宅から“通勤”する前線兵士

 そうした事情もあり、現在のアメリカ軍はハイテク兵器で爆撃を続けるしか手
がないようだ。同時に、世界中から目を注がれているため、旧ソ連のケースと異
なり、一般市民を巻き込まないように留意しなければならない。
 しかし、そのために軍事顧問たちを派遣しているにもかかわらず、爆撃がいつ
も正確に標的をとらえるとは限らない。例えば、北部同盟支配下にあるジャマリー
台地の前線近くの村では、娘の花嫁衣装を縫っていた母親が、誤爆によって命を
落とした。
 誤爆が続く理由は簡単だ。
 北部同盟とタリバンが対峙する前線の両側は、いずれも住宅地と隣接している。
しかも、双方の兵士は兵舎に住んでいるのではなく、自分の家がある近くの村々
から前線に通い、戦闘が終われば家族の元に帰っていくのである。そして、たと
え前線の近くであっても、農民たちは牛を使って畑を耕し、作物を栽培し、井戸
から水を運ぶ。子供たちは、粘土作りの家屋の周りで遊んでいる。
 これだけ市民生活と戦場が密着していれば、誤爆をしない方が不思議である。
空爆の効果も怪しい。アメリカ軍の爆弾は、粘土と砂を固めた家屋が並ぶタリバ
ン陣地を廃墟と化すが、タリバン側もさるもので、その残骸を集めて、またすぐ
に家屋を建て直してしまうのである。
 タリバン勢力が依然として意気軒昂なもう一つの理由は、外国人兵士の存在だ。
彼らは1000人単位でタリバン勢力の最前線にあり、アフガン人兵士が北部同
盟に寝返るのを阻止している。さらに、ビンラディンの最強の側近と言われるジョ
マバエフ・ナマンゴニ率いるウズベキスタン・イスラム運動(IMU)が、タジ
キスタンへ逃れるルートを確保しているようだ。
 タジキスタンとアフガニスタンの国境にはピャンジ川が流れ、そのタジク側に
は1万人以上のロシア国境警備隊が警備に当たっている。さらに2年前からタジ
キスタン政府は、要衝都市カライフムブを含む国境地域の警備を強化した。カラ
イフムブを抜けるルートは、アフガンからタジクへの主要ルートの一つだ。
 ところが、IMUはこのルートを自由に行き来しているといわれる。というの
も、タジキスタン側の警備を担当しているカランダロ・ハキム副司令官は、実は
ナマンゴニの親しい友人でもあるのだ。
 タジキスタン政府は、IMUが国内で活動していることを否定するが、わたし
は実際に東部の山岳地帯から戻ってきたばかりだという人物から、
「山岳部のタヴィルダルーでIMUの兵士たちを見た」という証言を得た。別の
人物からはこうも聞いた。
「IMUの兵士は確かにそこにいたが、タリバンと共に戦うために行ってしまっ
た」
 このルートの存在は、タリバンの活動範囲を広げるとともに、その資金源とさ
れる麻薬の流通も可能にしている。
 さらに、ナマンゴニは、タジキスタンのある新聞に掲載された公開書簡で、
「タジキスタンかウズベキスタンに侵攻する」と予告した。その真偽は定かでは
ないが、ナマンゴニがタリバンに敵対する隣国に圧力を加えれば、戦況はますま
すタリバン有利に傾く。
 何年間もアフガンで戦闘に参加した経験を持つロシア人士官のひとりはこうい
う。
「北部同盟は自らの力を過大評価し、タリバンは逆に自らの力を過小評価してい
た」
 その根拠は明確で、どの前線でも、北部同盟はタリバンの3分の1程度の兵力
しか擁していないのである。
 タリバンは優勢を保ったまま冬を迎える。



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