投稿者 東京新聞 日時 2001 年 11 月 08 日 08:28:12:
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20011107/mng_____kakushin000.shtml
「見えない戦争」行方見えず 東京新聞
アフガン空爆１カ月米に４つの誤算
米軍のアフガニスタン攻撃は十月七日（日本時間八日）の空爆開始から一カ月。米政権内では当初、タリバン政権はあっけなく崩壊するとの見方が強かったが、現実は思わぬ抵抗にあって長期戦の様相。テロとの「見えない戦い」は先行きまで見えなくなってきた。何が米国の目算を狂わせたのか。誤算は四つある。（アメリカ総局、金井辰樹）
１．特殊部隊奇襲 効果挙がらず
「十月二十日に行われた特殊部隊の奇襲攻撃の際、最精鋭のデルタフォース十二人が、タリバンの猛反撃を受けて負傷、命からがら逃げ出した」−四日発売の米誌ニューヨーカーは、ショッキングな記事を掲載した。
事実だとすると、米国が作戦の主体と位置づけていた特殊部隊の奇襲が、効果を挙げなかったことになる。マイヤーズ統合参謀本部議長は、報道を全面否定する。だが二十日以降、特殊部隊の奇襲攻撃は確認されておらず一方で空爆は強化されている。特殊部隊の作戦が首尾よく進んでいないことは確かなようだ。
２．対パキスタン 信頼感揺らぐ
当初、米国はパキスタンに絶大な信頼を寄せていた。現段階で唯一、タリバンと国交を持つ国でありながら米国支援を打ち出したムシャラフ大統領は「反テロ連合」づくりの功労者でもある。その信頼が揺らいだのは十月二十六日、反タリバン勢力指導者ハク元司令官がタリバンに処刑された時だ。ハク氏がタリバンにやすやすと身柄拘束されたのを不審に思った中央情報局（ＣＩＡ）が調査に乗り出したところ、パキスタンの情報当局者がタリバンに密告していたとの疑惑が浮上した。国防総省当局者の耳には、弾薬、燃料などがパキスタンから国境を越えてアフガンに密輸されているとの情報も入っている。
米軍は現在、タジキスタンなど中央アジア諸国の基地を作戦に利用すべく調査を進めている。米統合参謀本部のスタッフルビーム副作戦部長は「これで北と南からアフガンを攻撃できる」と強調するが、米国の中央アジア重視は、揺らぐパキスタンへの信頼の裏返しともいえる。
３．北部同盟との連携すきま風
今回の軍事展開の基本は、北部同盟の攻勢を米軍が空爆で支援するという図式。だが、米軍は同盟との連携には苦労している。同盟は各派の寄せ集め的な存在だけに、指揮命令系統がはっきりせず「現実にどの程度の兵力があるかも判然としない」（国防総省当局者）。逆に同盟は米軍からの連絡が十分伝わってこないことにいら立ち、相互不信の芽が出始めている。
米シンクタンク「ヘリテージ財団」のジャック・スペンサー上級研究員は「同盟がタリバンに勝てない状況になった段階で、その不足分だけ米特殊部隊や地上軍の投入が必要となる」と分析する。最近、米軍が特殊部隊の増派を急いでいるのは、同盟だけに頼っていられないと、見切り始めた証拠ともいえる。
４．想像を超えた地勢の悪条件
今月二日、アフガンで飛行していた米軍ヘリが豪雨のため緊急着陸し、大破した。ヘリは、高山病の隊員救出のため出動していた。
アフガンの地形、気候の悪条件は計算済み。特殊部隊員は米コロラド州など高地で訓練を積んでいた。だが、その特殊部隊員が高山病にかかり、それを救出するヘリが不時着した事実は、想像を超える悪条件であったことを見せつけた。
アフガンは間もなく冬を迎える。地形を知り尽くしたタリバン軍との戦いに、苦戦を強いられるのは間違いない。
ラムズフェルド国防長官は四日、ウズベキスタンからパキスタンに移動する際、アフガン領空を通過した。
米国がアフガンの制空権を握ったことを誇示するパフォーマンスだったが、空から入り組んだ地形をみた長官は「険しい。長い間、行進したくない」と、ため息をついたという。
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。