防衛論考−(2) 自衛官の「宣誓」と派遣の「大義」  行政調査新聞社 

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投稿者 dembo 日時 2001 年 11 月 15 日 23:45:02:

防衛論考−(2) 自衛官の「宣誓」と派遣の「大義」

行政調査新聞社 (社友)阿悠 幸友
http://www.gyouseinews.com/domestic_prospect/nov2001/002.html

「宣誓
 私は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみがき、政治的活動に関与せず、強い責任感をもって専心職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえることを誓います」

 駐屯地の大きな講堂。駐屯地指令と幹部自衛官が日章旗と隊旗の前であしらえられた雛壇に列線をなし、その顔前にはまだあどけなさすら残る新隊員たちが、緊張した面 持ちで頭をあげ、背筋をのばして服務の宣誓をよみあげる。

 その後方に父、母、兄弟姉妹たちが見守り、基礎訓練期間を修了してみちがえるようになったわが子、兄、弟の立派な姿に目を見張り、母や姉妹の目には感激の涙すら浮かぶ。自衛隊は、このように営々と新隊員を迎えてきた。

 いまでこそ、倍率すら高くなって誰もが入隊できるものではなくなったが、かつて自衛隊は様々な事情をかかえる青年男女が希望すればほぼ誰もが入隊を果 たし、健康な心身を鍛え、国民の負託に応える崇高な任務を自覚して汗を流し、知力を使う国家公務員として働ける場といえた。かつて陸上自衛官だった作家の浅田次郎が『歩兵の本領』で描いたように、たとえ「不良少年」の烙印をおされ、不健康な暮らしを過ごしてきた者も「落ちこぼれを絶対につくらない」教育・訓練の中で、心身の形が整えられ、集団の立派な一員に鍛えられていく、そうした組織が自衛隊だった。

 「宣誓」は、基礎教育期間を修了した新隊員が、正式の自衛官として自他ともに認められる、そうした節目のいわば「自衛官生活」の出発の大事な儀式として、執り行われる。しかし、およそ「危険を顧みず、身をもって責務の完遂」との「宣誓」を行う公務が、他に存在するだろうか。

 10月のある日、自民党本部で開催された同党国防部会で、部会メンバーである複数の国会議員が「この臆病者!」と説明のために出席していた幹部陸上自衛官を罵った。幹部自衛官は、政府が検討する「テロ根絶のための軍事活動にあたる米軍」を支援するための自衛隊派遣について、その条件や考えられる事態について説明することを求められ、現行の自衛隊行動規範の中でパキスタンを含む周辺地域に陸上自衛隊が「難民救援」や兵站活動への協力のため派遣された場合に予測される問題点を有体に述べたのである。

 「現在、一言でいうなら『撃たれたら、撃ち返せ』式の武器使用制限では、隊員を死なせにいくに等しい」「しかしながら、憲法が『国家の交戦権は認めない』としている以上、よく論議されているROE(交戦規定)を各国軍なみに自衛隊に整備することは憲法を改正する以前には不可能」「こうした条件の自衛隊を米軍展開地域、或いはその後方地域に派遣することは、相手側が常に『弱点』を狙うゲリラ・テロリスト的行動を特質にすることからも、たいへんに危険」等、軍事専門家として忌憚のない見解を説明したのに対して、「死ぬ のが怖いのか!」「臆病者!」との罵り声が浴びせられたのだ。

 しかし、自衛官たちは知っている。罵りの声をあげた議員たちの身内、子息に一人でも自衛隊に任官している者のないことを。

 テロ対策支援法が衆議院委員会で可決された翌日、歴代の陸上幕僚長経験者が新聞紙上でそろって懸念の声を上げた(「毎日」10月17日付)。

 「与野党とも陸自を派遣することの重さへの認識が不十分だ」「…相手はテロリスト。自衛隊は軍隊ではないと言っても通 用しない。武器使用を多少緩和したぐらいでは安全を期せない」「任務を遂行できるしっかりした装備を持たせ、列国並みの武器使用を認めてやってほしい。派遣の期限も切るべき」(渡辺信利氏)、「自衛隊派遣は、日本が太平洋戦争以来初めて戦争に参加するということ」「輸送や医療の支援と言っても、米軍の作戦の一環。相手は自衛隊と米軍を区別 しない。また、最も弱いところを突くのがゲリラ戦。不十分な装備で、武器使用に制限のある自衛隊は最も狙われやすい」(磯島恒夫氏)等、 現状をふまえた問題点を勇気をもって発言している。

 更にここに紹介した両氏は共通して、「行く以上、犠牲者が出たからと言って引き揚げるわけにいかない。しかし、補償問題などはまったく論議されていない。もっと隊員たちの立場を考えてほしい」と強調している。

 筆者は、航空自衛隊の幹部から次のような話を聞かされたことがある。「結局、政治家は『自衛官は死んでも、当たり前』という感覚なのでしょうな。耐用年数の過ぎた廃棄ジェット機から取り外した部品を組み直して、脱出装置がまともに動くかどうかもわからない半世紀以上も前のアメリカ製練習機を飛ばす。そして、先日の入間の事故のように、殉職者が出ると『住宅に落ちないよう、最後まで操縦桿を放さなかった』なんて歯の浮くような美談にしたてあげて、国会で天まで持ち上げている。ほとんど毎月のように墜落事故が起きている空自のパイロットが、就任から退職まで何人生き残っているのか、本気で調 べたことがあるのかね」

 “平時”においてすら、こうである。

 11月9日あさ、3隻の自衛隊艦船が佐世保を出港し、インド洋に向かった。名目は「情報の収集」。派遣艦隊の指揮にあたる第2護衛艦隊群司令官は、「派遣を拒否する隊員は一人もいない。どんな状況下でも、柔軟に対応できるよう日々訓練しており、国民の負託にこたえるため全力を尽くす」と述べた。
 しかし、派遣艦艇の乗組員5名が派遣決定後、辞職している。その一人は、「自分はわが国の平和と独立を守ることを宣誓して入隊したのであり、他国の戦争に参加するためではない」と胸中を語っている。

 3隻の艦艇が出港した立神桟橋で息子を見送った父親は、代表取材した通 信社記者に対してこう語った。「派遣を決めた政治家には、二度とこんなことしてもらいたくない」

 中谷元防衛庁長官は、「歴代で初めて自衛隊任官経験者からでた長官」と自衛隊内及び父兄会を含む関係者から評判と期待が高かった。秋口恒例の陸上自衛隊総合火力演習では、視察に訪れた中谷長官に対し、全国から集まった数万人の自衛隊家族関係者から例をみないほどの拍手喝采が浴びせられた。

 しかし、中谷長官はテロ対策法案審議の際にROE(交戦規定)について野党議員から質問された際、「日本にもROEがある」と誠にトンチンカンな答弁をしてしまった。防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊に任官して二等陸尉までつとめた人間としては信じがたい無知ぶりだった(あるいは、“無知”を装ったのか?)。

 その中谷は、9日あさ、記者会見で艦艇派遣についてこう述べた。「今回の派遣は国権の最高機関の決定に基づくもの。国際的にも期待と関心がある。胸を張って、期待に応えるべくいい仕事をやってもらいたい」

 立神桟橋には、幼子をだいた若い妻たちがいつまでも立ち尽くしていた。出港直前、各艦艇の食堂で乗組員と最後のお別 れをした際、妻たちの多くが声をあげ泣いた。「軍艦乗りの妻」とはいえ、こんなに不安な気持ちで夫たちを送りだすことがなかったろう。

 「国際的責務」「命令」「任務遂行」…こうした言葉で納得させえないものが、隊員と家族の胸の中で払拭されないまま残る。桟橋に立った妻たちは、目に涙をためながら、声をあげることはなく、手をふって各艦艇の甲板に整列して帽子をふる夫たちを送りだした。遠くから、左翼団体の叫ぶ「派遣反対」「アフガン空爆反対」の拡声器からのシュプレヒコールが冷たい風にのって届いていた。しかし、それらの声には激励に訪れた政治家たちの訓話同様、「無事」を祈る隊員・家族の胸に響くものは何もなかった。

 筆者は、本紙上でテロに対する軍事対応の無意味さを9月17日に論じた。その中で、いかなる軍事行動をアフガニスタンで実施しようと、あらかじめプログラミングされた各国潜入のテロリストたちの行動は何ら妨げられない、と予告していた。残念ながら、この予告は、「炭疽菌テロ」の続発という形で具現してしまった。この動きは、アメリカにとどまらず、ロシア等、イスラム原理主義勢力に敵対した諸国に広がりつつある。

 こうした状況下、あえて自衛隊派遣にふみきりつつある我が国は、「事に臨んでは危険を顧みず」と宣誓した自衛官にどのような任務上の「大儀」を示しうるのだろうか。ルワンダPKO派遣の時、「機関銃をもっていくかどうか」という瑣末な、しかし隊員にとっては生命にも係わる問題について陳腐な論争が社会党政権下の国会で展開された。結果 は「1丁のみ軽機関銃を装備」で政治決着したが、この時は派遣隊員の“創意工夫”によって、「修理部品」の名目で3丁の64式機関銃が持ち出された(もうハッキリさせてよい事実だろう)。

 しかし、今度は現場の“創意工夫”で乗り切れない難題に、派遣隊員たちは直面 するに違いない。我が国の政治は、いつまで責任回避を続けるつもりなのか。なぜ、テロ対策で真に求められている自主的なイニシアチブを、誰も旗印に掲げないのか。

 自衛官の「宣誓」の重みをもう一度かみしめてもらいたい。武士(もののふ)の生命を軽んじる国民は、そのハネ返りを必ず受け取ることとなろう。  (11月10日記)


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